毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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相談に乗る毛玉

「あたし、実は河童じゃないんですよね」

「えええええええええええええええ!!??」

「嘘ですけど」

「貴様あああああああああああああ!?朝起きて5分で嘘つくのは性格悪いぞ!!」

「なんで信じるんですか逆に」

「……実は私、毛玉じゃないんだよね」

「あ、知ってます」

「どうしてだよおおおおお!!」

 

はいはい、自称毛玉ですよ私は……

 

「朝から元気ですね……大丈夫です?紅茶飲みます?」

「自分で淹れるからいいです………」

「というか、そんな趣味あったんですね」

「とある人に影響を受けまして……」

 

そういやアリスさん、というか魔法の森にはあんまり行ってないなぁ……行ってもわけわからんキノコしかないし行く意味がないだけなんだけど。

 

「正直毛糸さんに紅茶とか似合ってないですね」

「おいお前、そういうこと言っちゃう?怒るよ?さすがに怒るよ?ガチガチに縛って妖怪の山で吊るして晒すよ?」

「ごめんなさい」

 

私だって気にしてるんだからそういうこと言うなよな!

 

「……そういや、今日にとりんに呼ばれてたな。一緒に来る?」

「えぇ〜………」

「えぇ〜、じゃなくて、向こうも心配なんだと思うぞ?最近会ってないっしょ。まだ帰らないみたいだけどさぁ」

「うっ………ま、まだ心に負担が」

「帰りたくないだけだろ、働きたくないだけだろ、このニートがっ」

「働いてない毛糸さんにはこの気持ちはわからないですよ!」

「うん、極度の人見知りの気持ちなんぞわからん」

「冷たいですね!?」

「いつも通りだろ」

 

うーん……確かにるりが来て、多少暇は潰せてるけど、うるさい……そろそろ自立してくれてもええんやで?って言ったら妖怪に襲われるのが怖いので嫌です!って本気の表情で言われた。

それなら妖怪の山に行けば安全……って思ったけど、そういやこいつ山の中で死にかけてたんだった。

 

「極度の人見知りで、人との関わりが不得意で、引きこもりで、友達が全然居ないお前には同情するよ」

「煽ってますよね、憐れみが一番心にくるんですよ。あと引きこもりは好きでやってるんで放っておいてください」

 

今は洞穴に住んでるんだし、狭くて閉ざされてる感じのある場所だったらどこでもいいんじゃねーのお前………

 

「とりあえず、行かないんだな?」

「はい、よろしく言っておいてくださいね」

「あいよー」

 

……まぁまだ行かんけど。

 

「そういえば毛糸さん」

「んー?」

「なんでそんなに色んな知識あるんですか?それこそ河童も知らないようなこと知ってたりしますし、ただの妖怪が持てる知識じゃないと思うんですけど」

「んー……前世の知識かな」

「前世?またまたー、そんな嘘には引っかかりませんよ」

「そう思うなら、そう思ってりゃいいんじゃねーかな」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

「ここで合ってる……よ、ねぇ……?」

 

妖怪の山にきて、待ち合わせ場所になってたにとりんの工房にまできたんだけど……誰かがいる気配がないなぁ。

 

気配がなさすぎて私が場所を間違ってる可能性まで考えたけど、にとりんの工房は間違いなくここだし……

というか、にとりんが私をわざわざ呼び出すことってあんまり無いな、よくよく考えると。

 

「にとりーん!来たよー!………返事なし、ヨシ!」

 

しょうがない、中入って待っておくか……

 

「………っているんじゃん!いるなら返事くらい…し……おーい、どしたー、大丈夫かー」

 

にとりんを発見したけど、机に突っ伏したまま起きない……寝ては無いよな。

 

「え、なに……なんかあったの?ねぇ」

「盟友………私が今どうなってるか当ててみなよ」

「落ち込んでる」

「正解だ」

「よし帰るな」

「ちょっと待った!友達だろう!慰めたりしないの!?」

「いやめんどいから」

「面倒くさいのは認める!でも目の前で友達が悩んでるのに何もせずに帰るやつがあるか!」

「残念だったな!私はそういうやつだ!カウンセリングなら他を当たるんだな!ヘハハハハハ!」

 

……さてまぁ冗談はさておき。

 

「なんや言うてみいや、私で良ければ相談に乗るで」

「………その喋り方なに」

「気にせんでええから、はよはよ」

「えぇ………」

 

そこから数秒間待ったが、にとりんが話す様子はなかった。

ふむ……私のエセ関西弁がいけなかったのか?なんでや阪○関係ないやろ。

 

「言わないなら帰るよー?」

「その…なんだ、我ながら馬鹿みたいな悩みで言うのも恥ずかしいから……」

「はぁ?」

 

なんだそれ、口で言うの嫌だから察してくれってか。そういうのはさとり妖怪にでもやってもら………ハッ!

そういや私もさとりんに昔似たようなことをしたことがある……

つまりそういうことか。

 

「ははーん、さては最近研究が上手く進まないから悩んでるんだな?」「それならいちいち他人に相談せずに自分を見つめ直すよ」

「ぬぅ……ほなあれやな?…………あれやな?」

「なんだよ」

「待って今考える………そう!そろそろきゅうりに飽きてきて精神的な限界を」

「きゅうりに飽きるわけないだろ、謝れ、きゅうりと河童に謝れ」

「サーセン」

 

きゅうりについて話した瞬間にめっちゃキレられた………思えばるりにも似たようなキレ方されたし、河童ってそういうもんなんだろう。そのうち尻子玉抜かれそう。

 

「なぁ、分かってるんだろう?いちいちそう言うのしなくていいからさ」

「むぅ……今のは私なりに場を和ませようと」

「ありがとう、でも今はいいよ」

「なっ…あぁそうかい!」

 

感謝された上で拒まれるとなんかもう………帰りたい!

 

「はあぁー……はいはいわかったよ、るりのことでしょ?なんとなーくそんな気はしてたよ、最近会っても元気なさそうな顔してたしさぁ」

「あー、分かっちゃってたかー…できるだけ普通にしてたつもりなんだけどなぁ」

「まあ、私も似たような顔してたことあるし」

 

後悔やら何やらか、よくわからない感情が自分の中でぐるぐるとして、吐き出そうにも吐き出せない、そんな気持ち。

 

「なんというか……恥ずかしい話なんだけど、るりが出て行ったのは私のせいなんじゃないかって、ずっと悩んでてて」

「うん、にとりんのせい」

「否定しろよ!そこは!否定しないにしてももうちょっと言い方あるでしょ!?」

「私に慰めは期待するな!私だってこういう時どういうテンションでやればいいのか分からなくて結構迷走気味なんだよ!我慢しろ!」

「何を!?」

 

そんなさ……私に期待されても困るわ!まあにとりんの他にるりと仲がいいの私くらいだから相談相手が私しか居なかったんだろうけども!

 

「よし、じゃあ趣向を変えよう」

「そういうのいいから」

「あ、はい………わかりました……とりあえず座っていい?」

「うん」

 

ふぅ……このまま溶けて無くなりたい、この椅子ごと溶けたい。

 

「で……なんだ、とりあえず言っとくけど、本人はなんも気にして無いよ、結構元気」

「うん、だろうね、その辺の心配はしてないよ」

「あと、別ににとりん嫌われてないからね?本人もにとりんには迷惑をかけてるって、申し訳なさそうにしてるし」

「そう、だよねぇ……」

「んー?」

 

なんだろうこの……私なんか的外れなこと言ってる?

 

「あのさ、毛糸」

「んあ?」

「やっぱり私のせいなんだよね、るりが出て行ったのは」

「さっきもそう言っ………そんなこと…んまあ、そうなるかなぁ…」

「やっぱりさ……無理矢理働かせたのが悪かったのかなぁ。私としては、他の妖怪との繋がりを持てたらと思って、いらんなことをさせたんだけど………」

「そういうことも……あるさ」

 

誰かのためを思ってやったことが必ずしも上手く行くとは限らない。当然のことながら、失敗したなら大分落ち込むだろう、私だってしばらく立ち直れない。

 

「やっぱり無理させちゃいけなかったかなぁ…」

「いや、あれは甘やかしたらダメなタイプだね、飴と鞭を上手く使い分けないとどうやっても落ちていくタイプだ、間違いない。にとりんはよくやってたよ」

「嫌われてない…?」

「二日に一回はにとりんの話してるよ」

「そっかぁ………ちょっと待ってどんな話してるの」

「んー?例えば、にとりんがある夏の日涼しくしようとして——」

「待った!も、もういい分かったやめて!はぁ……あいつ、他にも何か話して…いやいいや、知らない方が幸せだろうなぁ…」

 

にとりんのことを話しているときのるりは、とても楽しそうな顔をしている。それと、ちょっとだけ寂しそうな顔も。

自分から離れたものの、やっぱり寂しいんだろう。

 

「まーその、なんだ、慰めにもならないかもしれないけどさ。本人はお前のことすっごい感謝してるよ、どうしようもない自分とずっと付き合ってくれて、って」

「………」

「一番最初で、一番の友達ってさ」

「……勝った」

「おいどういう意味だこら言ってみろ」

「別にー」

「このっ……ふんぐぐぐぅ…」

 

まあ本人がそう言ってたからそうなんだろうよ!とりあえず、しょーもないことで張り合うのはよしてだ。

 

「本人の言葉借りると、外に出るつもりの全くなかった自分を唯一気にかけてくれて、無理矢理にでも外と触れ合えさせてくれて、とても感謝してる。今の自分はにとりんがいなかったら存在してない、いつか恩返しがしたい。…こんなこと言ってるよ」

「…そっかぁ」

「……まだ浮かない顔してっけど」

 

にとりんとるりは、私と会う前から知り合いだった。その程度がどれくらいのものかは知らんけど……私が魔法の森にいた間も二人はずっと付き合ってきたんだろう、いろんなことがあったはずだ。

 

「覚えてるだろ?毛糸が倒したけど、妖怪の山での事件」

「あぁ、うん、一つ訂正、私が倒したんじゃない、トドメを刺したのはにとりん、だから倒したのはにとりん」

「どうでもいいよそこは……とにかく、あのときるりは死ぬ一歩手前まで行った。そしてその前も、るりは一度、一人で反乱を起こした天狗たちに立ちはだかったことがある」

「うぇ!?そんなことあったの?あーいや、なんか聞いたような……あ、あー続けて」

「……どっちともさ、るりが部屋に引きこもってたままなら、私が無理に外に出さなきゃ、あいつはそんなことに巻き込まれなかったかもしれないんだ。私の自己満足で、あいつは二回も命の危険に晒されたんだ」

 

………

 

「あぁわかってるさ、本人が大して気にしちゃいないのは。でもあいつが気にしてなくても、私が気にするんだよ、私が後悔するんだよ。しかも私はこの前までそこまで重く思ってなかった。あいつがここを出ていって初めて、私は気付かされたんだよ」

「………」

 

にとりんの言っていることが、すごく自分と重なる。

自分がもっとちゃんとしていたなら、気づけていたなら、もっといい行動をしていたならば。

今更そんなことを考えたってしかたがないのはわかっている、でも、どうやっても自分の中で折り合いがつかない。ひたすらに自分を責め続ける。そんなことをしても仕方がないと分かっていながら。

 

でも、にとりんは違うから。

 

「まあにとりんより年下の私が言うのもなんだけどさ。私たちって、死ぬまで長いよ?悩む時間も、後悔する時間も、いくらでもある。るりだって死んだわけじゃないんだ、今頃私の家できゅうりでも齧ってるだろうさ。だからさ、たっぷり時間を使って悩めばいいと思う」

「毛糸……」

「私だって、似たようなことあったけどさ。結局は、自分を許せるかどうかなんだよ。だからにとりんも、自分を許せるようになれるまで、たっぷり悩めばいいんだよ。ってか、許せなくたっていい、満足するまで悩めばそれでいいよ。私だってそうしたんだから」

 

にとりんは立派だ。私なんてりんさんが死んだ時は一人で抱え込んでいつまでもズルズル引きずって……というか今でもまだ引きずってるか。

そんな私に比べてにとりんは、ちゃんと誰かに相談できてる。

相手だってちゃんとまだいる。

 

「いくらでも相談乗るよ。友達だろ?」

「……そうだね」

「元気出せよ、いつまでもそうやってたら辛いだけ。そんで近いうちにるりに会いに来い、あいつも喜ぶさ」

「うん、そうだね。ありがとう、やっぱり毛糸に頼んでよかったよ」

「フッ、流石だろ?でもあんまり褒めるなよ、照れるから」

 

にとりんの顔が少し明るくなった。

 

「じゃあ早速、私の最近の成果を紹介しよう!」

「元気出すのはえーわ、あと二日は寝込んどけ」

「断る!」

「元気な返事でよろしい!」

 

………これでよかったのかな?

私こういうことしないからいけてるかどうか……今度誰かに確認とってみよう、行けてると思うけど……アリスさんとさとりんには聞いておきたいなぁ。もし間違いを犯してて実はにとりんを傷つけてたとかだと私が落ち込む……

 

「今回紹介するのは」

「醤油はもういいぞー、変なもの飛ばす銃ももういいぞー」

「この私がいつまでもそんな時代遅れな物を作ってると思うの?」

「いつまでも醤油引きずってたじゃん」

「改めて、今私が紹介するのはこれ、義手砲!」

「アームキャノンやん」

「これさえあれば腕がなくなっても球を発射できる!」

「アームキャノンやん?」

「出るのは醤油だけどね!」

「あぁ、うん………」

 

なんか……大丈夫そう。

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