毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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いじられて楽しまれる毛玉 ※

「アリスさん、春っていえばなんだと思う」

「そうね…桜とか」

「桜以外で」

「桜以外……桜以外?んー……春告精とか?」

「人物やんそれ、まあ春といえばって言われて浮かんでくるのなんてだいたい桜だと思うけど」

 

というか、桜の印象しかない。

花見も結局桜だし……確かにリリーは毎年恒例だけどさ。

リリーホワイト、春告精、春が来たと告げることだけを生き甲斐にしてるらしい。

多分レティさんと仲悪い、知らんけど。

 

「なんで急にそんな質問を?」

「いや、今冬だけど、もうすぐ春くるし。あと湖の周りは寒すぎるから春が待ち遠しい、はよこい」

「あぁ、冬の間は来ること多いと思ったらそういうこと」

「そういうこと……」

 

レティさんとチルノが大暴れするせいで寒くてたまらん。いや、流石に毎年同じようにとはいかないけど、あの二人の近くにいたら冷凍毛玉になってしまう。

冬でテンション上がるのはわかるけどもうちょっとセーブできないかなあ……できたらしてるかあ。

 

「一応冬の間はやることあるんだけどね」

「冬に?」

「そう、式神の面倒みなくちゃいけなくて」

「あぁ、前に言ってた」

「言ったことあったっけ」

「ちょっとだけね」

 

あー……代わり映えのしない毎日が続きすぎてて話す話題はもうあんまりない。

 

「アリスさんって紫さんと話したことあるの?」

「あったような気もするわね」

「え、マジで?いつどこでなんで」

「昔、ここで、なんでかは知らない、まあこの土地で魔法使いって珍しいからじゃないかしら、顔だけ見せておくみたいな」

 

はあ、なるほど、そういや魔法使いって外国じゃいっぱいいそうだけど日本じゃそういないわな。

なんで日本来てるんだこの人………

…………幻想郷って日本だよね?

 

「でも魔法の森って案外住みやすいよね」

「そうかしら、気を抜いたら胞子吸い込んでめんどくさいことになるけど」

「だって変なやつ絡んでこないし、自然豊かでのどかだし、何よりそこまで寒くない」

「本音最後だけでしょ」

「だって今の私の家寒すぎるんだもん!動物も震えが止まらない寒さだもん!な、イノセーム」

「ふごっ」

「そんなに……?」

「今朝起きたらこいつが私の布団の中潜り込んでたくらいには寒かった」

「そ、そう……」

 

生きる自然災害だよあの二人……そのうち絶対零度でも行くんじゃねえかな、マジで。

 

「はぁ……そうだ、自分で考えて動く人形だっけ?どうなってるの?」

「………まあ、全然ダメね、正直進展してるのかもわからないわ。もとより難しい夢なんだけどね」

「そっか〜、ふ〜ん」

「興味ないならなんで聞いたのよ」

「なんとなく」

「………その子は?もうその辺の妖怪に比べても随分長生きしてると思うけど」

「こいつ?特に何も変わったことないけどね」

 

猪……私と同程度かそれ以上の年月を生きている。年取ってる様子もないし、いつまで経っても元気だし、なんだこいつ。

 

「でも心なしか、この森にいた方がくつろいでる気がする。やっぱ生まれて育ったところが居心地いいんだろうなぁ」

「まあそうでしょうね、なんであなたについて行ったのかも謎だし」

「そうなんだよねぇ……懐いてくれてるのはわかるんだけど」

 

…というかなんで私に懐いてんだこいつ、なんで私もこいつのこと飼ってるんだ。

 

「……というか、そんなに長生きしてたら私やいろんな妖怪みたいにこんな体手に入れてそうだけど、なんでずっとこいつこのままなん?」

「本人が望んでないんじゃない?長生きはしてるけど力を持っているわけじゃないし」

「そういやそうだった」

 

………マジでなんなんだこいつ。

 

「まあこいつの話はいいや……というかアリスさん、この森の外には出ないの?」

「出る必要ないし」

「友達少ないでしょ?」

「別にそこまでほしくないし」

「ずっとこんな森いて飽きないの?」

「魔法の研究とか、やることはいくらでもあるからね」

 

わぁ……本当にこの森の中で完結してるんだなこの人。

 

「じゃ慧音さんとは?」

「ん?たまーに会いに行くわね、たまーに」

「まあ私もそんなもんだけど……」

 

この森、アリスさん以外の魔法使いもいるにはいるらしい……いるかもしれないって話だけど、見たこともないし、一人でずっとこんなところいるの私には無理なんだけど。

 

「確かにあなたがここに住んでた頃に比べたら、まあ少し寂しくはなったわね。あと私あなたみたいに持ってる力が強いわけじゃないから、安全なこの森から出ないのは別におかしいことじゃないからね」

「あー……つまり私がおかしいと」

「そういうこと」

 

まあそりゃあね?自分でもいろんなところブラブラしすぎだとは思うよ?でもさぁ………でも……ね?

 

「私なんかよりあなたの方がよっぽど寂しがり屋よね」

「うっ………そうですけど何か?」

「そのくせにあなたは……まあいいわ」

「え?なに言えよ」

「言わない」

「なんでさ、まあいいけど」

 

何か言おうとしてやめるの、気になるからやめて欲しい。言うなら言う、言わないなら言わないではっきりして、気になるから。

 

「変なこと言ったらまたあなた考え込みそうだから」

「どんなこと言うつもりだったのさ……よくわからんけどまあいいや。というかまた人形増えた……ね?来るたびに増えたり減ったり変わったりしてるけど」

「趣味だからね」

「そういや最近アリスさんが人形使ってるとこみたことないけど」

 

私がそう呟くと、アリスさんが手で変な動きをし始めた。

するとどこからともなく頭の白いもじゃもじゃした人形がやってきた。

 

「いや、これ私じゃん」

「この家にある人形でこんな頭してるのこれだけよ」

「それはそうだろうけど、なんでこんなの作ってるのさ。いや私も前に作ったのもらったけどね?まだ家で保管してるけどね?」

「正直この頭のもじゃもじゃは作りがいがあるから」

「そんな理由!?」

 

く、くだらねー……私の人形が宙を舞ってるし……

 

「暇だからこんなことしてみたり」

「おあああ!やめ、やめろって!もげるって!腕足その他もろもろもげるって!どんな姿勢だよこれ!なんかやだ!私じゃないし私の見た目した人形だけどこんな形容し難いことになってるのやだ!」

「………」

「おいいいいいい!!なに無言でさらにえぐいことしてんの!なんか私した!?なんか恨みある!?ごめん謝るからもうやめてっ!許してあげてそれ!」

「…フッ」

「何笑ってっ……ああ首もげたああ!!」

 

ひ、ひどい……もう見るも無惨なことに……これが人形に対してやることなのか。

 

「まあ戻るんだけどね」

「うわすごっ、マジで戻ってる」

「あなたの再生力も再現してるわよ」

「どんな再現?あと流石の私も首もげたら死ぬ、多分」

「多分って……」

 

いやだって……この前だって首が完全に後ろ向いてもなんか普通に生きてたし……

 

「……あ、次あなたと会った時にやって欲しいことがあったんだった」

「待て、当てるから……また髪の染色……もしくは髪型が変わる……さては髪の毛が伸びてさらにクルクルしてその上で七色になる薬だな!?」

「なんでわかるのよ気持ちわる!」

「なんで当たったんだよ適当言ったのに!あとそんなもの作ってなんになるんだよ!てかなんで私で試す必要あるんだよ!」

「あなたなら多少何があってもなんとかなりそうだし」

「ほら私の扱いが雑!」

 

どいつもこいつもさ……毛糸さんならええやろ、みたいな感じで適当にしやがって……私のことなんだと思ってんだ。ちゃんと心あるからね、ちゃんと傷つくからね!

 

「はぁ……まあ飲むけど」

「はいじゃあこれ」

 

すぐに人形がその薬を持ってきた。

 

「毎回思うけどなんで薬品を経口摂取しないといかんのさ、あんた魔法使いだよね?魔法しろや」

「魔法で作った薬よ」

「しかもこれ虹色じゃん、どんな味するんだよこれ」

「ミント」

「わぁ………わぁ?」

 

歯磨き粉かよ……というかなんでミント?

こんな虹色の液体飲んだら頭おかしくなりそうだけど。

 

「……じゃあ飲むからね」

「どうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってお腹痛い、笑いすぎてお腹痛いっ」

「なにわろてんねん」

「ぷっふふふふ……はぁ、はぁ………ふふっ」

「いつまで笑ってんだコラ、いい加減にしろよコラ」

「いやだって…ぷっ……鏡で見てみなさいよ」

「はぁ〜?そんなに?言うてシュールなだけで別に面白くなブフォッ」

 

この世のものとは思えないものが私の頭についているのをみて思わず吹き出してしまった。

 

「お、おおい!ど、どうなってんのこれ!ど……何をどうしたらこうなるんだよ!!」

「待ってこっち向かないで呼吸困難になる」

「おうなっとけよ、一回三途リバーみてこいや」

「ふぅ………はい元に戻る薬」

「そういうのはちゃんと用意してるのな……何味」

「柿」

「柿?なんで?まあいいけど」

「柿は柿でも渋柿」

「ぶふッ」

 

お、おおォおおぉ………口が……口がァ……

 

「その変な薬に変な味をつける努力を別のことに向けろや……」

「魔法って素晴らしいと思わない?まさになんでもできる」

「思うけど思わない、いつか仕返ししてやるからなこのやろう」

「思いつきで作った薬だったけど、ここまでの破壊力があるとは、我ながらとんでもないものを作ってしまったわね」

「おう本当だよ、とんでもないもん作りやがってさぁ」

 

もうね、絶対飲まない。アリスさんから出された薬絶対に飲まない。

 

「まあ流石に今回はやりすぎだったわね、ごめんなさい」

「え?あ、うん。良くないけど別にいいよ」

「今度からはもう少しマシなものを作るわ」

「本当に申し訳ないと思ってる?」

「思ってる思ってる」

「本当にぃ…?」

「本当本当」

「私になら割と酷いことしても許してもらえると思ってる?」

「思ってる」

「舐めてない?」

「舐めてるかも」

「怒っていい?」

「駄目」

 

キレそう。

 

「はぁ……似たようなやりとりずっとしてない?」

「そうかしら?」

「出会った頃からなんにも変わってないよこれ」

「年が経つにつれ見た目が変わって死ぬ人間と違うんだから、私たちみたいなのには時間の流れなんてそれほど意味をなさないわよ」

「それもそうだけどさぁ……」

「私はこのままのふわーっとした関係気に入ってるけど」

「私は嫌なんですけど、変な薬飲まされる関係いやなんですけど」

「飲むあなたもあなただからね」

「いやそれはっ……そうだけども」

 

私、ふわーっとした関係しか持ってない気がするんだが。

 

「そういえば、あなたはどうなの?自分のことわかった?」

「わかったら報告しにきてるよ、アリスさん私のこと調べるとか言ってたくせに大したことわからなかったんだから」

「それは……まあそうね」

「まあ自分で答えに辿り着くのがいいんだろうけど。それにしても…なんていうか、結構な付き合いになってきたね、私たちも」

「そう?」

「なんかもう慣れてるけど、本当は数百年なんて時間、私にとってはめちゃくちゃ長い時間のはずなんだけどなあ」

 

時間の流れをはっきり認知できるのが人間や人里だけだからなぁ……

 

「……そういえばあなたのその刀、いつから持ってたっけ」

「これ?私がここからもと住んでたところに戻ってからじゃないかな」

「となるとそれも相当時間経ってるわね、刀って使わなくてもそこまで長持ちしないはずだけれど。………あー、確かそれ普通じゃなかったんだっけ」

「うん、多分妖刀」

「よく持ち歩くわねそんなもの……」

「なんでか知らないけど、手入れを程よくしといたらずっと綺麗なままなんだよね。多分妖刀以前にこの刀が多分特殊」

 

刀身が真っ黒な時点で多分普通の刀とは違うんだろうなぁ……あの人が使ってたんだから普通なわけないし。

 

「アリスさんこそその二つの人形いつも見るけど、何かあるの?」

「上海と蓬莱ね」

「上海と蓬莱?どっちがどっち」

「シャンハーイ」

「喋ったああァァ!?…そっちが上海ね」

 

び、びっくりした……人形が喋るとかどこのホラーだよ……

 

「一応お気に入りの二つね」

「あ、あーそう……」

 

喋ってるけど自律してはないのね……喋らせてるの?よくわからんけど。

私のこの刀も半分自律してるようなもんだけど、突然喋り始めたらどうしよう……ないとは思うけど。

 

「そういやアリスさんが戦ってるとこって見たことないなあ」

「挑まれたら受けるわよ、ただの戦いなら。命の取り合いになるならやめておくけどね」

「そりゃあねぇ……命の取り合い好んでするやつとかただのヤバい人だもの」

 

アリスさん人形操る以外にもいろいろな魔法使えるから、いざ戦いになったら結構強そう……

 

「せっかくだし今日は魔法の森を少し歩いてみる?結構環境変わってるわよ、その子も多分歩いてみたいでしょうし」

「ん、いいよー」

 

アリスさんがそういうと猪が起き上がった、喜んでるのかなこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

この後歩いてたら変なキノコの胞子吸って昏倒した。

油断っていけないね。






【挿絵表示】


今回のワンシーンをなおなーお様に描いていただきました!とても素敵なイラストをありがとうございます!
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