かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった 作:おこめ大統領
愛上くん(あいがみ・オリ主)
一人だけギャグマンガの住人
めちゃめちゃ空気を吸って、ちょっと太ったことがある
でいご
沖縄の唄によく出てくる謎の花
大きくて長い
1、授業など
ここは天上学園
生前にまともな学生生活を送れず、悔いを残して死んだ若者が集まる学園である。
生徒の多くはいわゆるNPCと呼ばれる「最初からこの世界に存在している者」であり、彼らはここに来た死者の悔いを果たすための舞台装置として存在している。
そんな世界に、また一人新たな若者が死を受けてやってきた。
それからしばらく経ったある日のこと
▼△▼△▼△▼△
天上学園3年のある教室。
教卓では、世界史の先生が、オリエントがどうとかアッシリアがどうとか声を張って言っているが、そのかい空しく生徒たちはどこか上の空だった。無論、僕もあまり聞いていなかった。
ちなみに、僕の名前は大山。現世で無残に死んでこの世界に来てからずいぶん経つんだけど、未だに脱出方法がわからなくてとどまり続けている、なんの特徴もない一般男子生徒です。新しく来たルームメイトも中々心を開いてくれないし、悩みは増えるばかりだよ。
まぁ一番の悩みはこの隣の席の男子なんだけどね。
「おす、おす、めす、おす……」
なんで、ひよこのおすめすを振り分ける作業をしてるんだろう? クラスのみんなも気になって授業どころじゃないよ。
「なぁ、そこの君、教室にひよこを連れ込まないでくれ……」
「おす、おす、おす、め…おすか、」
やっとのことで先生がそのひよこ男子に注意をしたが、彼はそれを無視した。先生も少し青筋を立てて彼の席の正面まで近づいて再度注意した。
「おい、聞いているのか? ひよこを今すぐ外に出せ」
「おす、おす、バトルタワー、おす、おす…、え? なんか言いました?」
なにか不穏な仕分けをしなかった?
というか彼、無視しているというよりはひよこの鳴き声で先生の声が聞こえてないんじゃない? 隣にいてもこんなにうるさいわけだし。
「だから! そのひよこを今すぐ教室の外に出しなさい!」
「おす、おす、おす……え? 『そのひよこを今すぐモー娘。の子たちに変えなさい?』 すみません、モー娘。あんまり詳しくないんですよね」
関係ないけど、よく聞いたらオスのひよこばっかりだね。
僕の心のツッコミと共に、先生の何かが切れる音が聞こえたような気がした。
「だぁぁ! 違う! 何度言わせるんだ! ひよこ! 外! 連れ出せ! 今すぐ! それに、初生雛鑑別師は養成所に入って実務をして資格を取らないとなれない特別な仕事で、高校生がなれるものじゃないんだぞ! 君は一体何でそんなことをしているんだ⁉」
その言葉を聞くと、彼はすこし仰け反り、たそがれるように上を向いた。どこか涙をこらえているようにも見えるけど、それがかえっておかしかった。
先生もなぜかひよこ鑑定士に詳しいし、やっぱり変な学園だなー。
「……、俺の、未練なんです……! あの時、正確な鑑定ができていれば、あの人を死なさずに済んだのに……! だから僕はこの世界で立派なひよこ鑑定士になるって誓ったんです! そうすれば、きっと俺もあの人も成仏できるはずなんです」
そう言って彼は地面に膝をついて泣いた。感情が忙しい人だなぁ
「うぅ、うぅぅ、死にきれねぇよぁ。なぁ、破滅ジェントルさん……!」
誰⁈
いつの時代の何をした人に贈られる称号なの?!
「ちなみにこれが、はめジェンさんの写真です」
「え、あ、ありがとう」
彼から急に一枚のカードを貰い、戸惑ってしまった。カードには㊙と書いてあり、裏返してみると、よくわからないURL(多分画像のリンク)が書いてあったのでその辺に捨てた。
ていうか、さっきの発言からするに、この人も僕と同じで亡くなってここに来た人なのかな。後で話を聞いてみよう。
先生の顔が怒りで真っ赤になったその時、教室の前の扉がぴしゃりと開いた。そこには銀髪で小柄な見た目が特徴の生徒会長が立っていた。
生徒会長はこの学校の規律を何より重んじており、それを破る生徒には、授業中だろうと構わず連行してしょっぴく権限が与えられているらしい。
……そんなことしてたら、生徒会長が勉強についていけなくなるんじゃないかな?
「また
「なにおぅ! 俺がまじめでないとでもいうつもりか!」
「そもそも、あなたこのクラスじゃないじゃない」
やっぱりそうだったのか! どおりで今日まで見たことないと思った! 他の生徒も不審な目で見てたけど、そりゃ他のクラスの生徒が授業にいるんだもんね! いや、それ以前にひよこ鑑定してたら、同じクラスの人でも不審か。
「くそー痛いところを突きやがって! もしそっちがそのつもりなら、こっちもそれなりの手段に出させてもらうぞ!」
そういうと、愛上君はひよこを『バトルタワー』と書かれたかごにドボドボと入れていく。
すると、かごに入れられたひよこが一つの光の塊になり窓の外に飛び出した。そこには巨大な緑の龍が佇んでおり、窓越しにこちらをにらみつけていた。どう見ても神龍なんだけど、もうここまでくると逆にびっくりしないよね。悟りに近づくだけだよ。
『願いをいえ、言わないとひどい目にあわせるぞ』
随分とジャイアニズムな神龍だ!
「学校で龍を呼び出すのは校則違反よ」
「違うね! 昨日校則を全部確認しなおしたけど、学校で龍を呼び出すことに問題はなかったはずだ!」
「計画的犯行だったのね。反省文だけでは済みそうもないわね。懲罰室へ行きましょう」
「え、何その怖い部屋……。やめて、襟首をつかんで引きずらないで! やめてぇぇぇぇ…」
愛上君はそのまま連行されて、その日は戻ってこなかった。
代わりに、ジャイアニズムドラゴンだけが気まずそうな顔で残り続けていた。
授業終わりに、試しに僕が龍に向かって「この世界から脱出させてください」と言ったら、「悪いがこの願いは三人用なんだ、じゃあな」と言葉を残して消えた。ドラえもーん!
翌朝、僕が教室に来ると、愛上君は昨日の席で普通に本を読んでいた。髪の毛は丸刈りになっていたけど、それ以外は普通だった。きっと生徒会長さんに刈られたのだろう。丸刈りさえ無視すれば、普通の人みたいなその光景に僕は少し感動した。
「ねぇ、愛上君、僕大山って言うんだ。よろしくね」
「お、奇遇だね。僕もだよ」
「いや、君は愛上君でしょ⁉」
「地方によってはそういう呼ばれ方もするね」
「そんなわけないよね⁉」
指スマみたいな存在なの⁈
「まぁ、それはさておき、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いま大丈夫?」
「うん、いいよ。俺も聞きたいことあったし」
そう言って愛上君は読んでいた本を閉じてこちらに向き直った。なんだ、結構普通に話せる人なんだ。少し身構えて損したな。
そして、彼にも聞きたいことがあったとのこと。やはり、彼も僕と同じ疑問を持っていたのだろうか。
ちなみに、本の表紙に『人それぞれの尻しゃもじ』と書いてあったのは頑張って無視した。これを見たら人として大事な何かがなくなってしまう気がした。
「あ、僕のは後ででいいから、先に君から質問してよ」
僕は少しの気恥ずかしさから自分を後回しにした。
愛上君はそれを了承した後、鞄をごそごそといじり、一枚の紙とクリップボード、そしてボールペンを取り出した。
「えー、じゃあいくつか質問させていただきますね。全部答えていただきましたら食券を2枚プレゼントさせていただきます」
「そんなアンケートみたいな感じに進めるの⁈ 別にいいけどさ!」
愛上君はクリップボードを構え、紙に何かを記入しだした。
「全部YesかNoでお答えくださいね」
「い、いえす」
「Q1、村おこしには最適だ?」
「え、いえす…?」
何が⁈ 何が最適なの?
「Q2、家系図が一周したことがある?」
「の、のー」
どういうシチュエーションの話をしてるの?!
愛上君はふむふむと頷きながら何かを書き続けている。
何かの参考になっているとは、到底思えない。
「Q3、電ボでいやらしい気持ちになったことがある」
「……おじゃる丸の? のー、かな」
「Q4、本当はアメリカではない」
「いえす」
その後も取り留めのない謎の質問を繰り返していたら、授業が始まってしまい、僕の質問は聞けず仕舞いだった。クリップボードをチラ見したら『一番日本神話みたいなおおやまの漢字 御乎耶摩』と書いてあったので、多分アンケートに意味はなかったんだろう。
ちなみに、彼は今日の授業では、突然立ち上がり「心配しないでください!」と叫び水筒の水をがぶ飲みして一息ついた後に爆発四散した。
そして、直後に現れた生徒会長が肉片を驚きの手際の良さで肉片を回収しその場を去っていった。
その時間はみんな呆然として授業にならなかったが、次の時間には何事もなかったかのように授業を受けている姿は、なんというか、さすがの舞台装置という感じだった。
▼△▼△▼△▼△
ここは生徒会室、目の前には一人の生徒。
今は授業中だけど、私には生徒会長としてこの生徒に確認しなくてはいけないことがある。
「愛上君」
「はい? なんでしょうか?」
「いろいろと聞きたいことがあるのだけど、その前にまず一つ」
私は彼の肉体が再生し終わったその時から気になっていたことを思わず聞いてしまった。
「なんで、頭からクレーンが生えているの?」
「いやー、ほんとは
昨日無理やり丸刈りにした影響かしら。まぁ、私も答えが聞けるとは思っていなかったから、別にいいのだけれどね。
「じゃあ本題ね。あなたがAngel Playerを使う目的はなに?」
「おしえなきゃだめドーザーか?」
「そんなとってつけたような語尾は要らないわ。せめてクレーンに引っ張られなさい」
「クレーンだけに?」
「会長パンチが炸裂してしまいそうだわ」
思わず、ハンドソニックも出そうになったけど、それは我慢した。
偉いわ、私。殴るにしても、素手にしておかないと。
「もしかして、変な目的で使うなら返してほしいとか、そんな感じですか?」
彼にしては珍しく、少し真面目な声色で返答した。
「いえ、それは最初から私のモノでもないから、あなたの好きにしていいと思うわ。でも、あなたの目的によっては、私は実力行使でそれを取り上げるかもしれない」
「なるほど。まぁ生徒会長だし、当然ちゃ当然だよね」
そういって彼は腕を組んでうなりだした。話すかどうかを考えているのだろうか。
よくみると、彼のうなり声に合わせてクレーンが動いている。
糸を机の下に垂らして、それが引き上がると、先端のフックに小さな二足歩行の猫が格好つけて立っていた。「実は俺が裏で糸を引いてんのよ」と猫が言うと、愛上君がデコピンで吹っ飛ばした。もったいない、ちょっとだけかわいかったのに。
「俺、かめはめ波を撃ちたいんですよ」
「え?」
唐突な発言に少し驚いてしまった。かめはめ波って、あの?
「いやね、小さい時からの夢でして。この世界でAngel Playerを授かってからというもの、時間を見つけてプログラミングやモデリングをしてるんだけど、なかなかうまくいかないんですよ。気っていう概念をどう再現するかで止まってて」
他の能力はその副産物ですね、と付け加える愛上君。
大きなため息とともに、彼は肩を落とす。
なるほど。生前は体が不自由だったから漫画を読むことだけが彼の娯楽で、かめはめ波のような漫画の中の技にあこがれを抱いてそのまま亡くなったとか、きっとそんな感じなのね。だから私に、彼へAngel Playerを与えさせたのかもしれない。
あれ? でも以前、彼は…? まあ、深く考える必要はないわね。彼については何が本当かなんてわからないんだし。
「あなたはかめはめ波が撃てたら満足するの?」
「分かんないけど、多分するんじゃないですか?」
「そういうことならいいわ。今後も励みなさい。でも、他の生徒の迷惑にならないようにね」
「了解です!」
びしっと敬礼する愛上君。少し微笑ましいわね。
そうだ、いいことを思いついた。と、そんなところで彼の方から声がかかった。
「そうだ、会長もAngel Player使ってもますよね? 手から剣を出したりしてますし! コツとか教えてください! 代わりに、腸で縄跳びするくらいなら喜んでするので! あ、腸と言っても、もちろん大腸の方ですよ。小腸は長すぎですからね!」
「そんな猟奇的なことはお願いしないわ。それに私も最低限の機能しか使っていないと思うからあまり参考になるかわからないけど、そうね、あなたが生徒会に入ってくれたら、考えてあげるわ」
「それだけは絶対に嫌だ! 僕は自由でありたいんだ! さようなら!」
彼は足をぐるぐると渦巻きの形にしながら駆けだした。ちなみに比喩ではなく、本当に足が渦巻きになっていた。
「腸で縄跳びすること以下なのかしら、生徒会に入るのって……」
基本的に3500字~5000字の文量の1話完結で投稿します。
改行や段落下げとかが読みにくい気がするんですが気のせいですかね。
作風含め、こんな風にしたらいいなどのアドバイスがありましたら是非お願いします。