かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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11、入院など

 目を覚ますと俺は保健室にいた。

 ふと脇に目をやると、『日向くんへ 起きたら読んでね』と書かれた手紙が置いてあった。

 

 俺が寝ている間に誰かお見舞いに来たのだろうか。

 

 そもそも、俺はなんで入院しているんだ?

 

 ここは病院じゃなくて保健室だから、正確に入院ではなく入室になるが、正確さと引き換えに意味が全く変わってしまうから便宜上入院と呼ばせてもらおう。

 

 確か、久しぶりに屋上でゆりっぺと二人で話していて……。

 

 あー、もう思い出す必要ないな。

 

 犯人はもちろんゆりっぺ。原因は屋上からのノーロープバンジー。つまり、いつものだ。

 

 全く、出会ったときのことを思い出すな。あの頃は何度も落とされたっけ。

 

 とりあえず本部に戻るかと思い、体を起こそうとしたが、うまくいかない。両手足が痛くて動かせなかった。きっと、複雑骨折でもしているのだろう。てことは、当分このままだろう。

 

 どうやって暇をつぶそうかと呑気に考えていると保健室の扉が開いて人が入ってきた。

 

「げ……!」

 

 俺は素直に嫌だなと思った気持ちを隠すことなく口と顔に表した。

 入ってきたのが愛上だったのだ。

 

「日向先輩、怪我しちゃったんだってな。これお見舞いなんで、よかったら。お大事にね」

 

 そう言って愛上は手に持っていた大きな木の板をそばの机の上に置いた。

 

「? なんだこれ?」

「空手部の看板。日向先輩に元気になってもらおうと道場破りしてきたんだ。んで、勝ったからもらった」

「要らねーよ! 戻してこい!」

「えー、PKにもつれる位の名勝負をしたのにー!」

「空手で戦ったんじゃねーの?!」

 

 愛上はほっぺを膨らまして、ぶーぶー言いながら看板を回収して扉の方に戻っていった。

 扉を出る直前に「黒帯はいりますよね?」と言って黒帯を見せてきたが、当然要らないのでそのままおき取りお願いした。

 

「要らねーは言い過ぎたかな……。あいつも俺のためにって言ってたし」

 

 なんであいつなんかに罪悪感を覚えなきゃいけないのか意味わかんねーけど、今回はこれでトントンということにしておこう。

 にしても随分と情報が早かったな。戦線メンバーでもないのに。

 

 最初から置いてあった手紙は別として、実質最初にきたお見舞いが戦線メンバーじゃないというのは少しショックだった。

 

 悲壮感に駆られていると、またしても扉が開いた。先ほどとは違って今度は勢いよく、音を立てて開かれた。

 

「日向君! 大丈夫?! ひどい怪我をしたんだって?!」

 

 大山が俺のベッドのそばまで駆け寄ってきた。

 

 流石はおれのルームメイト! やっぱりお前は来てくれるよなー!くぅぅ、涙が止まらないぜ!

 

「日向君、なんで泣いてるの? 気持ち悪いよ」

「落差がすげーな! さっきまであんなに心配してくれてたのに!」

「まぁあれはノリみたいなのもあるよ」

「ノリで心配してたのかよ!」

 

 こいつらはなんでこう素直に感動させてくれないんだよ!

 

「でも、怪我はそんなに大したもんじゃないぜ。すぐに治るだろ」

「そう? よかったー。あ、これ、一応お見舞い持ってきたんだ」

 

 大山が制服の内ポケットから巻物みたいなものを取り出して、脇の机においた。

 

「なんだよ、それ?」

「秘伝の書だよ。椎名さんからもらったんだ」

「おーちょっと興味あるな。でも、俺今手も動かせないだ。悪いな」

「じゃあ、僕が読ませてあげるね」

 

 読ませてあげる、という言葉に疑問を覚えていると、大山は巻物を手に取り、俺の目の前で開き、中身を見せた。ああ、そういうことね。普通読み聞かせるだろ。

 

 中身は……、達筆すぎてなんて書いてあるのか全く読めなかった。

 ちょっと残念だぜ。せっかく椎名っちの強さの秘密がわかると思ったのに。

 

「まぁこんなことだろうと思ったぜ。大山、これなんて書いてあるんだ?」

「もしこれを読んだら、1日以内に誰かに渡さないと死んじゃうとか、そういう感じだよ。でも、ここは死後の世界だから安心だよね」

「おいおいおい!! なんなんだよ、そのチェーンメールみたいな内容は!! 椎名っちの時代にはすでにその文化があったっていうのか⁉ てか、そんな縁起の悪いものをお見舞いの品にしないでくれませんかねー!!」

 

 わざわざ俺に直接読ませたのはこれのためかー! 

 

「ごめん、気に入らなかった?」

「気に入るか!!」

「そうだよね、ごめんね。悪ふざけが過ぎたよ。本当に、ごめんね……!」

 

 大山はそう言って半泣きになりながら保健室を後にした。

 なんでそう揃いもそろって俺に罪悪感を残して去るんだよ……。

 

 

 

 

 

 

 やることが無さ過ぎて、一人しりとりをして時間をつぶしていると、今度は意外な人たちがお見舞いに来てくれた。

 

「よう、日向。結構な怪我をしたんだってな。見舞いに来てやったぜ」

「うん、元気そうで何よりだ」

 

 ひさ子と岩沢だ。

 お見舞いに来てくれたことはとてもうれしいが、正直まだそこまで話したことのない学校のスターが見舞いにくることには少し違和感を覚えた。

 

 俺がそんな怪訝な顔をしていることに気が付いたからなのか、ひさ子が続けて話した。

 

「そんなに私たちがお見舞いに来るのが不思議か?」

「まーな。でも、嬉しいことには変わりねーよ。ありがと」

「いいってことよ。それに私は感動してんだぜ?」

「感動?」

 

 俺に何か人を感動させるエピソードなんてあったっけ?

 ……だめだ、思い当たらない。そんな情熱的な人間でもないしな。

 どうせ、俺のかわいそうなエピソードのどれかに哀れ悲しみを覚えた、とかだろう。主にゆりっぺが原因でおきたやつ。次点で愛上。

 

「その怪我、愛する女と子犬を凶弾から庇うときに負ったんだろ? 映画みたいでかっこいいじゃねーか」

「そんなバッドエンドみたいなことはしていない!!」

 

 そんな感動エピソードがあったら真っ先に思い浮かんでるわ!

 

「照れんなって。しっかし、ゆりも隅に置けないな。恋人がいるなら言ってくれてもよかったのに」

「そのゆりっぺにやられたんですけど⁉ あとゆりっぺは俺の愛する女ではない!!」

 

 確かにゆりっぺの本性を知る前はちょっといいかなって思ったりもしてたけど! 一緒にいるほど恐怖心がそういう気持ちをかき消したわ!

 

「てか、誰から聞いたんだよ、そんな情報」

 

 全部間違ってたぞ。そもそも銃撃されてないし。

 

「あー、そう言えばだれに聞いたんだっけな。岩沢、覚えてるか?」

「さぁ、私はお前についてきただけだから」

「そうか。人のこと言えないけど、もう少し人の話を聞いたほうがいいと思うぞ」

「ひさ子が言うならそうするよ」

「もうずっと言ってるけどな」

 

 岩沢と会話をするのは大変そうだな。この一瞬だけ聞いててもそう思ったわ。ひさ子も苦労性だな。俺もゆりっぺにとんでもない目にあわされてばっかりだし、少し共感するぜ。あれ、涙が…。

 

「そうだ、ひさ子。お見舞いをくらわせないと」

「くらわせねーわ。それだとボコボコにするみたいだろ。ほら日向、これで元気出せ」

 

 そう言ってひさ子は脇の机にダンベルを置いた。

 俺、両手足が動かないんだけど。

 

「あ、ありがと」

 

 くっそー、さすがにこいつらにはお見舞いに文句は付けられないぜ。

 

「じゃーな、次のライブんときは手伝いよろしくな」

「お大事に」

 

 そう言って二人は保健室を後にしようとして、

 

「あ、そうそう、そのダンベルさ。一日10回以上持ち上げないと死ぬ呪いのダンベルらしいから、気を付けて励めよ」

「今すぐ持って帰ってくれませんか?!」

 

 なんでこの世界はこんなに呪いのアイテムであふれてるんだよ!

 

 俺の魂の叫びも空しく、二人は保健室から笑いながら出ていった。

 

 なにこれ、おれいじめられてんの?

 

 にしても、お見舞いの品が空手部の看板に秘伝の巻物、それにダンベルか。あれ、なんで空手部の看板がここにあるんだ? あいつ、持って帰ってたよな?

 

 まぁいいか。愛上の奇行は今に始まったことじゃないし。

 

 ……てか、お見舞いが武道家への誕生日プレゼントみたいになってるんだけど。俺ってそんな「強さに貪欲」みたいなキャラに思われてるんのかな?

 ちょっと立ち振る舞いを考え直さないといけないかもしれない。

 

「ふ、元気そうだな」

 

 今度は男の声。いつの間にか保健室の入り口には巨大なハルバードと謎の大きな白い包みを持ったバカ、野田が立っていた。

 

 俺は身構える。

 

 今までまともなお見舞いが出来た奴は一人もいなかった。しかも、こいつはバカだ。いきなりとんでもないことを言い出して、この場で俺が殺されることだってありうる。

 今の俺は文字通り、手も足も出ないからな。そんなことされたらたまったもんじゃない。

 

「聞いたぞ、日向。お前、じゃんけん列車に轢かれたんだってな」

 

 思ってた10倍バカだったー!!

 

 その死因が意味わかんなすぎるし、そんなん信じてるお前はもっと意味わかんねーよ! じゃんけん列車ってそもそも列車じゃなくてただの人間ですから!

 

「お前も意外と馬鹿なやつだ」

「お前にだけは言われたくねーよ!!」

 

 安心しろ、野田。お前がNo.1だ!

 

 というか、入ってきてからずっと気になってたその白い包みは何なんだ。

 すでに恐怖しか感じないんだが。

 勇気を出して聞いてみるか。

 

「なぁ、野田。その包みはなんだ? 随分と大きいけど」

「お前へのお見舞いの品だ。手足が動かせないと聞いたからな、これでもみて時間をつぶせ」

 

 おー、気が利いてるじゃないか! 野田なのに。

 他の奴らにも教えてやりたいぜ! お前ら野田より気遣いできてないぞって!

 

 野田は一旦ハルバードを壁に立てかけて包みをほどいていく。もしかして、テレビか何かか? 四角くてそれなりに薄いし。この世界で使えるのかは知らないけど。

 

 野田は包みの中に入っていたものを俺の正面の壁に引っ掛けた。

 

「なんで絵なんだよ! しかも内容こっわ!」

 

 野田のお見舞いの品は絵だった。

 しかも、濃い緑とか灰色とか、とにかく絵具を混ぜすぎたような色がふんだんに使われた花と海の絵だった。

 

 なんだこれ、見たら死ぬ絵か? それとも魔王が描いた絵か?

 てか、ここは流れ的に筋トレとか武道系グッズだろ!! なんで「呪い」の側面だけ引き継がれてんだよ! 俺嫌われてんのか?!

 

「ふ、俺の力作に打ち震えるがいい」

「しかも自作?!」

 

 手作りのお見舞いが許されるのは千羽鶴と孫が描いた絵だけだ!

 

「ゆりっぺが絵を描いてお見舞いに行くといいと教えてくれたんだ。はっ、さすがゆりっぺ。俺なんかとはセンスが一味も十味も違うな」

「一味も二味も、な」

 

 なんで2進数なんだよ。

 あと、やっぱり黒幕はゆりっぺかよ! 俺の平和な学園生活を返してくれ!!

 

 くっそー、てことはこの机に置いてあった手紙もゆりっぺからのやつか?

 早いところ内容を確認しないと、こんなひどい目に今後もあい続けるかもしれないな。

 

「なぁ野田。そこの机に置いてある手紙を読んでくれないか? 俺今手足が動かせなくてさ」

「いいだろう。弱者を守るのが強き者の務めだ」

 

 そう言って野田は手紙を開いて目を通した。

 目を通しているのだが、

 

「なぜ、黙読…?」

「あぁ、読み聞かせろってことか。だったらそう言え」

「普通はよみあげるんだよ」

「えー、と、『日向君 さっきは怪我をさせてしまってごめんなさい。いっつもあなたに世話になっているのに、こんなことをしてしまって、本当に申し訳ないと思っているわ』」

 

 お、ほんとにゆりっぺからの手紙か?

 しかも、かなり殊勝じゃないか! 一体どうしたんだ! 変なものでも食ったか?

 

「『お詫びと言っては何ですが、みんなには嘘のカッコイイ死因を伝えておきました。あと、日向君は武力に目がないということにして、男子力も高めておきました。ご自愛ください 仲村ゆり』」

 

「やっぱり全部てめえのせいか!! くっそ、この野郎! お前は俺をどれだけの目に合わせたら気が済むんだ!! 一番長い付き合いだろうが! たまには普通に感心させてくださいませんかねー!」

「貴様、いまゆりっぺを侮辱したな!」

「ぎゃー!」

 

 野田に3回は殺された。手紙も粉微塵にされた。入院が一日延びた。やっぱり、あのお見舞いの品々はほんとに呪いのアイテムだったのかもしれない。

 

 しばらく、引きこもろうかな。

 

 




ゆりの手紙 全文(全部にひらがなでルビが振ってありました)

「日向君 さっきは怪我をさせてしまってごめんなさい。いっつもあなたに世話になっているのに、こんなことをしてしまって、本当に申し訳ないと思っているわ。
だから、お詫びと言っては何ですが、みんなにはそれぞれカッコイイ死因を教えておきました。あと、日向君は武力に目がないということにして、男子力も高めておきました。ご自愛ください 仲村ゆり

P.S. 明日昼ご飯奢ってあげるから、ちゃんと学食来なさい」

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