かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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13、水泳大会など

 今日は部活対抗水泳大会の当日

 

 この日のために私は……、私は何もしてないけど、私の仲間たちが血のにじむような特訓をしてきた。

 生徒からの注目も高く生徒会も参加しているイベントで私達死んだ世界戦線の実力をまざまざと見せつけてやるのよ!

 

 そうすれば天使は私たちに恐れをなし、そして一般生徒たちの中にいる人間は私たちに尊敬の念を抱き仲間になってくれるはず!

 

 完璧な作戦よ! おーっほっほっほっほっほ!

 

 ……ってなるはずだったのに!

 

「なんであんたがいるのよ! 部活に入ってないでしょ!」

 

 私はプールサイドに魚の着ぐるみを着て立ってる愛上君を指しながら地団駄をこれでもかというほど踏んだを

 こいつがいたら全部めちゃくちゃになっちゃうじゃない!

 

「色々あって、ある部活に誘われたんだよ。とりあえず今回だけでいいからってことだったんで、まぁ流れで」

「めんどくさいことしてくれる部活もあったもんね。んで、どこに入ったの? 水泳部? バスケ部?」

 

 こいつの運動神経がいいかどうかなんて知らないけど、わざわざ部外者を誘ったってことは本気で勝ちにきてるってことよね。

 魚の着ぐるみなんか着てるけど、まさかふざけさせるために呼ぶなんて考えられないし。

 

「いや、まさか俺が入ったのは、」 

 

 言いかけたところで、生徒会からのアナウンスがあった。

 そう言えば、今出場者発表の真っ最中だったわね。

 

『第8レーン、コント部!』

「そうそう、これに入った」

 

 そのまさかだった。ほんとにふざけるために呼ばれてた。

 なんでコント部がわざわざこんなガチの水泳大会に出てるのよ! 観客もざわついているじゃない!

 

「何よそれ! 絶対おかしいわ! ちょっと天使! こんなやつ出していいの? 部活のメンバーじゃないでしょ?!」

「……不本意だけど、彼は正規の手続きを踏んでいるわ。しっかりと入部届も出されている。むしろ、彼を認めないと、それ以上にグレーなあなたたちはこの大会に出れないわ」

「くっ!」

 

 言われてみれば部活ですらないのよね、私達。

 愛上君がにやにやとこちらを見てるのがムカつくわね。

 

 というか、そもそもコント部ってなによ? たまに変わったNPCいるなとは思ってたけど、こんな部活できるくらい変な学校だったのね。

 

 さっさと神を殺してこの世界からおさらばしたい機運が高まってきたわ。

 

 その後、10レーンの死んだ世界戦線の紹介と共に、選手たちが各々準備に入った。

 私たちの紹介に対する観客の反応が、コント部と反対にしーんとなったことは言うまでもない。

 

『スタートの前に、一点注意です。コント部アンカーの愛上くん。着ぐるみを脱いでください!』

「そんな! 自由形なのに!」

『5…、4…、3…、2…、』

「こわ! 有無を言わさぬカウントダウンが怖い! はい、脱ぎましたー! 普通の水着になりました!」

 

 愛上君がくるりと体を回転させるといつの間にか普通の水着になっていた。

 ああいうのを前日とかに頑張って仕込んでいるのかと思うと泣けてくるわね。憐憫の涙だけれど。

 

 彼の着替えが終わるとともに、各部活の選手たちが飛び込み台にあがった。いよいよ勝負のときね。頑張ってよ、野郎ども。

 

『それでは位置について…よーい』

 

 バンッ!

 

 号砲と共に選手達が一斉にスタートする。

 

 うちの日向君は……少し遅れてるけど、何とか食らいついているわね。

 無理もない。他の出場者は運動部、それも精鋭なんだし。

 

 他の部活と言えば、コント部はどうなってるのかしら。

 気になってそちらに目を向けるが、普通に背泳ぎをしている。日向くんより更に遅れているくらいか。

 

 ん? 私の目がおかしいのかしら?

 コント部の泳者がダブって見えるような?

 

 目をこすりつつ、不審に思って遊佐さんにでも聞こうと思ったその時、アナウンスが入った。

 

『え、これを読めばいいんですか? わかりました。 会場の皆さん、8コースのコント部泳者が体調不良で遠近感に乱れがでてしまっているそうです。正しく視たい方はお手元の3D眼鏡をご利用ください』

 

 いつの間にか私のすぐそばにもサングラスのような3D眼鏡が落ちていた。

 試しにかけてみると、なるほど、これはびっくり、飛び出して見えるじゃない。

 まるで目の前を泳いでいるみたい!

 

「ってそんなわけあるか!!」

 

 私はやけくそで地面に眼鏡を叩きつけた。

 やっぱりふざけに来やがったわね。しかも観客のNPC達への受けが意外といい…!

 くそ、これじゃ椎名さんの活躍が目立ちにくくなるじゃない!

 

 コント部のおふざけに気を取られていると、いつの間にか第二泳者の大山君がスタートしていた。まだ5mほどしか進んでいないようだったが、現時点で既に1位とは25mくらいの開きがある。

 

『8コースのコント部がようやく第二泳者へ交代! すでに水泳部は第三泳者へ渡っているがどうな……おおっと! コント部! まさかの空中を平泳ぎしています! さながら、落下する際に少しでも空中にとどまろうとするルパン三世のようです!』

 

 ……、まぁ今実況の人が言ったとおりである。

 コント部の人が空中を平泳ぎしてる。しかも、それなりに速く進んでいる。

 

 なんというか、面白いと言えば面白いけど、どちらかというと怖いわね。

 自分の常識との不協和が絶え間ないわ。

 

 観客はどうかしら? ああよかった、ちゃんと引いてるわ。これでドッカンドッカンきてたらどうしようかと思ったわ。だとしたら、そのうち皆狂って、物を鼻から食って耳で呼吸したりするような世界になる可能性もあったわね。

 

 大山君が第三泳者の野田君と交代したのとほぼ同時にコント部も次の人へバトンタッチをした。

 

 その人は勢いよくプールに飛び込もうとしたが、まるでトランポリンかのごとく水面に反発し、そのままぴょんぴょん飛び跳ねてた。

 

 今回のネタは観客にはやや受けていた。先ほどの空中平泳ぎの衝撃が強すぎたため、少しマイルドに映ったことが原因だろう。

 って、なんで私がこんな真面目に考えなきゃいけなんだよ!

 

 野田君がもう少しで椎名さんにバトンタッチできる! 一位の水泳部はまだゴールしてない!

 これなら、勝てる!

 

 戦線とコント部が同時にアンカーの番になる。

 

 椎名さんは飛び込み台から少し下がり助走をつけ、ゴールに向けてひとっ跳び!

 自由すぎるけど、自由形だし問題ないでしょ!

 

 愛上君はというと、なんか全身が光に包まれてるんだけど。光が晴れると、そこにはドデカイミサイルが宙にふよふよと浮いており、そして噴出口から炎を上げ勢いよく発進した。

 

 くそ! 意外と速い! これじゃまだ誰の勝ちか判断できない!

 

 シンプル泳ぎで現在トップの水泳部か?!

 ジャンプの椎名さんか?!

 ミサイルの愛上君か?!

 

 決着は?!

 

「ははっ! 勝つのは俺たちコント部だ!!」

 

 ミサイルが飛びながらなにか喋ってるが、風切り音がうるさくて何も聞き取れなかった。おそらく挑発かなにかだろう。

 言い返したいが、文明の利器を活用してる愛上君が一歩リードしてるのは事実。あいつにだけは負けないでほしい。なんとか、椎名さんがんばって!!

 

 と、私が祈ったその時だった。

 

 

 ドカーン!!!

 

 

 頭一つ抜けていたミサイル愛上君がゴール直前で爆発した。その爆風に空中にいた椎名さんが煽られ、プールの脇に着地してしまった。

 

 一着は、今まで堅実に練習を積んで頑張ってきた水泳部のものとなった。

 

 プールの上には黒焦げアフロになっている愛上君が突き刺さったように浮いていた。人間ってそうは浮かないでしょ。

 そんな異様な光景を気にせずに他の部活が次々とゴールをかっさらっていった。

 

 え? 私たちは何位? 実質一位よね? あいついなかったら勝ってたんだし。

 

『優勝は水泳部! なお、死んだ世界戦線とコント部は反則により、最下位とさせていただきます!』

 

 うおおおと会場が沸き上がる。

 

「はああぁあ? ちょっと待ちなさいよ? この爆発バカは別として、なんで私たちまで反則なのよ?! あいついなかったら勝ってたじゃない! 泳者妨害よ!」

 

 私が生徒会に抗議しに行くと、生徒会長が前に出てきて、ルールブックを見せてきた。

 

「助走は禁止よ。ここにも書いてるでしょ?」

 

 そう言われたので、天使からルールブックをひったくった。たしかにそう書いていた。

 つまり、椎名さんが大ジャンプのために助走をつけたのがだめだったということ? それだと椎名さんがわるいみたいじゃない!

 

「でも、こんなの貰ってないわよ! それなのに反則って言うのはいくらなんでも……」

「ゆりっぺさん、エントリー時に受け取ってます」

 

 思わぬところから返事をもらった。遊佐さんだった。遊佐さんの手には生徒会長が持っているものと同じ本が握られていた。

 

 あー、そう言えば貰った気がするような気がしないでもない気がするわね。

 

「へへへいへい! 俺たちは別に反則してないだろ! ちょっと爆発したくらいじゃんか」

 

 無謀にも愛上君が抗議してきた。

 いや、勝ち目ないでしょあんたたち。爆発した時点でアウトよ。

 

「いいえ、ちゃんとルールブックに書いているわ。見てみなさい」

 

 天使は再度ルールブックを差し出し、ついでの私も覗き込んだ。そして天使の指さした場所には小さなQRコードが印刷されてあった。

 

 愛上君がなぜか持っているスマホでそれを読み取ると500以上のルールがかかれたwebページへと飛んだ。

 

 なにこれ、こわ。

 

「こことここ、あとこれと……あ、ここよ」

 

 天使はスクロールした先にあった「禁則事項」という項目を見せてきた。

 

『慣性、遠近法等の自然の摂理に則らないこと』『プール以外の場所を泳ぐこと』『水の上で跳ねること』『火器や金属類は厳禁』

 

 もれなく全部明記されていた。

 

「あなたがやりそうなことは分かってきたわ。あなたを参加させる以上、対策しないわけないじゃない」

 

 天使は空いている手を腰に当てて、少し誇らしげにそう言った。きっとドヤ顔しているつもりなのだろう。ちょっとかわいい。ちょっとだけね。

 愛上君はぐぬぬとか言いながら拳を握りしめていた。

 

 そんな愛上くんの元に数人の生徒が集まってきた。水着の生徒もいるし、コント部の人達かな。

 

「先輩、ありがとうございました! 先輩のおかげで、俺たちとっても楽しかったです!」「一生の思い出にします!」「俺、先輩のおかげでコントがもっと好きになりそうです」「こんなマンガみたいな経験ができてよかったです!」「大学行ってもコント続けます!」「これからも俺たちの先輩として遊んでください!」

 

「お前ら……!」

 

 愛上くんが涙目でコント部の部員を見回し、そしてそっと抱きしめた。

 

『俺、1年やで…』

『『『『そうでしたー』』』

 

 なぜか脳内に直接響く声と笑い。

 

 あほくさ、帰ろ。

 

 

 

 

 




みていただいてる方、お気に入りしてくれた方、評価してくれた方、本当にありがとうございます。

コント部は架空の部活ですが、Hell' kitchen(関根入江がメインのOVA)に登場する部活見てると、コント部くらいあってもおかしくないかなって思ってます。
あとHell' kitchenって曲はドリムシの曲名からとってるんですかね? 
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