かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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14、クイズ番組など

 朝起きるとすでにルームメイトの大山はいなかった。

 枕元の時計を見ると時刻は既に午前10時半。そりゃいなくてもおかしくはないか。

 

 俺はすっかり日課になってしまった筋トレを終え、学食で少し早めの昼飯を食べると、その足で戦線本部へ向かった。

 特に呼び出しを受けているわけではないが、どうせすぐにゆりっぺが新しいオペレーションを思いつき、実行のために呼び出されるんだから、最初から校長室にいたほうが楽ちんだ。

 

 扉の前で合言葉を唱えるとがチャリと鍵の開く音が響いた。いつもと少し違うように聞こえたが、仕組みでも変えたのだろうか。気にせずノブに手をかけ中へ入ろうとすると、そこには黒いカーテンのようなものがあり、室内が見えないようになっていた。

 

 ゆりっぺがなにか新しい装飾でもしたのか。そう考えていた俺の耳にどこからかマイクを通した声が聞こえてきた。

 

『さぁ続いての出場者は日向君です! 皆さん盛大な拍手をお願いします!!』

 

 この声は……、愛上だな。

 なるほど、また変なことに巻き込まれたな。ゆりっぺのやつ。そして俺。

 わざわざ付き合う義理もないので引き返そうとしたら、地面が勝手に動いて、カーテンの向こうに移動させられた。ちゃっかり足も固定されてる。

 

 カーテンをくぐると拍手と国歌が俺を包み込んだ。リズムの合わない二つの気色悪いコントラストが、俺に現実逃避をおすすめしているようだった。

 

 カーテンの向こうは、なんというか、テレビのスタジオみたいだった。明るく広い空間、ひな壇上の観客席、そして、4つの回答者席のようなものと1人の司会者。

 

 回答者席にはすでに3人が座っていた。ゆりっぺ、最近加入した遊佐、そして天使だ。

 この時点ですでに驚きだったが、俺はもう一人(司会者は除く)に目を奪われた。

 

「野田! なんで出会い頭で死んでんだよ!」

 

 スタジオの隅っこの方で、髪がモヒカンになって血まみれで倒れている野田の姿があった。

 

 こいつ、今後もこういう扱いなのかな。俺は心配だよ。

 

 やがて地面の移動がとまり、俺は空いていたゆりっぺの隣の回答者席に座らされた。若干血が飛び散っているのが気になる。もしや野田のか?

 

 ってことは、俺が来る前からすでにコレは行われていたのか。なんでゆりっぺたちはこんなんに付き合ってるのか。

 

 俺がゆりっぺに怪訝な目線を向けると、

 

「12時になったら終わらせるって言うから仕方なくよ。私に不利すぎるゲームでもなかったから、他の誰かが犠牲になってくれるだろうし、別にいいかなって。例えば野田君とか、日向君とか」

 

 つまり半分諦め状態よ、と付け加えるゆりっぺ。すでにその境地に行ってしまったか。俺と大山はだいぶ前からその境地で暮らしていたぞ。

 愛上の意味不明な力に一度巻き込まれたら逃げることはできない。ここはおとなしく付き合うふりをして攻略の糸口を掴むのが一番賢いだろう。

 

 俺は大きなため息をついてあたりを見渡す。

 愛上の格好はカラフルなスーツに、同じ柄の長ハット。自分の机の上には赤いボタン、紙とペン。そして、このテレビスタジオっぽい空間。

 

 ここまでくれば察するのは簡単だ。今から行われるのはクイズ番組だ。となると、さっきのゆりっぺの発言の意味も、なるほど、納得できる。

 

 あー見えてゆりっぺは別にバカではない。遊佐も雰囲気的にバカではないだろう。天使は……、よく知らないけど生徒会長やってるくらいだし頭もいいのだろう。

 

 翻って俺は人生で野球しかやってこなかったバカだ。高校も野球で入ったし、大学も野球の推薦で行くつもりだった。勉強なんてしてこなかった人生だ。クイズででるような問題がわかるとも思えない。

 

 つまり俺は、そこで無惨に死んでる野田と同じ未来を迎えるのだろう。

 

 だが、それだけは絶対に嫌だ。今日こそ俺は自分自身に、そしてゆりっぺに打ち勝つ!

 

「いいぜ、望むところだ! やってやろうじゃねーか!」

 

 俺は気合を入れるために手に拳を打ち付けて叫んだ。

 

「いい心意気ですね! では、回答者もそろったことですし、そろそろ始めますか!『クイズ! 血みどろゴン!』」

「番組名こわ!!」

「新鮮な反応ね」

 

 だから野田はあんなに血まみれなのか。

 なんで観客はこのタイトルで盛り上がることができるのか。スタンディングオベーションまでしてるぞ。まだ何も始まってないのに。

 

「まずは早押しクイズです。では、問題! 漫画Dragon Ballで主人公が使う技のうち、」

 

 来た!これはいける! 俺だってさすがにDragon Ballは読んだことがある。それに、あいつが出す問題だ! 答えは一択だろ。

 

 俺は回答ボタンに手を伸ばし、勢いよく押す。

 しかし、音が鳴らない。何の反応もない。

 何度も押すも、カチカチとボタンが台にぶつかる音しかならない。

 

 ちらりと横の3人をみると、何かを必死に書いているように見える。これ早押し問題だよな? どこに書きの要素があるんだ?

 

「……使う技のうち、亀仙人から伝授されたものは何でしょう?!」

「おい! 俺押してるぞ! 何にも鳴らないんだけど! おい!」

 

 俺の声と筆記音、そしてボタンがカスカスと鳴る音がスタジオに響く。そしてやがてピコンと音がなった。天使の席から。

 

「答えは、かめはめ波よ」

「正解!!」

 

 ピンポンピンポンと軽快な音が鳴り響く。

 

「おい、不正だろ! なんで俺のボタン鳴らないんだよ」

「うるさいわねー。もう見飽きたわよ、その反応。そりゃあなたが押印してないからよ」

「は? 押印?」

 

 ゆりっぺが俺の手元を指さす。そこには紙が、いや、よく見ると契約書のようなものが置いていた。甲がどうこか、丙がどうとか、そして、下の方には俺のサインと印鑑を押すところがあった。

 

「え、早押しクイズって、そういう? ボタンじゃなくて判を押すってこと?」

「はい! 最近はコンプライアンスとか色々ありますので! きちんと書面にて了承を頂いたほうがよいかと」

「ふざけんな、愛上! 人が死ぬ番組にコンプライアンスもくそもないだろ!」

「はっはっはっは。それでは次の問題です」

 

 愛上は上司のつまらないジョークに対する笑いのようなものをして、俺との会話を切り上げ、新しい契約書を配り始めた。

 そっちがその気なら俺も本気だ。どのみち早く書いて答えてしまえば問題ない。俺がペンを持ち、気合を入れると、ブッブーと歪んだ機械音が鳴り響いた。

 

「おっと、日向さん、アンスポーツマンファウルです! 問題文を読み上げる前にペンを持ってしまった!」

「はぁあ?!」

「何やってんのよ、あんた」

「日向さん、まじめにやりましょう」

「無理もないわ」

 

 俺が意味の分からない反則を取ってしまった。

 そんなルール聞いたことないんですけど? そもそも契約書への押印で回答権を得るクイズ番組を知らないんですけど?!

 

 てか、なんで天使より仲間たちの方が当たりがきついんだよ。ほんと、天使がマジで天使に見えてきたぜ。

 

「ペナルティとして、モヒカンになっていただきます」

 

 その言葉が言い終わった瞬間、何かが俺の頭の上を通りすぎた。恐る恐る頭を触るとモヒカンになっていた。早業すぎる。

 そして俺は、着実に野田と同じ道を歩んでる。野田には同情はするが、あれと同じくらいバカなのかと思うと少し悲しかった。

 

「じゃあ気を取り直して、問題です。ヨーロッパにある国で唯一台湾と国交がある国はどこでしょう?」

 

 急にむっず! 普通に難易度高いんですけど!

 

 でも、とりあえず契約書を書かないことには始まらないと思い、ペンを持ちサインを開始する。書きながらなんとかヨーロッパの国名を思い出していると、ピコンと音が鳴り遊佐に回答権が渡った。

 

 なんか、普通にボタンを押して回答してるんですけど。

 

「バチカン市国」

「正解!」

「ちょっとまてー!!」

 

 正解音と俺のクレームが重なり、愛上や他の人たちから注目を集める。

 

「何か?」

「何か、じゃないだろ。遊佐が契約書書いてないだろ! なんでOKなんだ?!」

「だって1問目で書いたじゃないですか? わざわざ問題のたびに書かせてたら、手間でしょ?」

「だったら、始まる前に書かせろよ!」

 

 じゃあ俺はなんで反則を取られたんだよ! アンスポーツマンとまで言われたんだぞ!

 

「いちいちうるさいわねー、日向君。どのみちあなたは難易度的に答えられなかったからいいでしょ? 順応しなさいよ、順応」

「理不尽にまで順応する必要はないだろ?!」

「ちょっと、近寄らないでよ。モヒカンが伝染るわ」

「伝染るか!」

 

 くっそ、なんでこんな不条理な目に会わないといけないんだ。だが、俺は絶対に負けられない! 野田の二の舞にはなりたくない。

 

 逆に考えるんだ。野田がしてしまいそうなミスや、愛上がやりそうなことを考えろ。先読みするんだ。俺ならできる! がんばれ、日向秀樹!

 

「では次に行きます。こちらの画面に映る二つの絵をご覧ください」

 

 そういって、俺たちの前に大きな液晶を持ってきて、同じに見える2枚の動物園の絵を映した。まるで幼稚園児が描いたようなテイストの絵で、お世辞にもうまいとは言えなかった。

 

 間違い探しか?

 

 ぱっと見は間違いは見当たらない。細かいか、そもそも存在しないのか。

 

 いや、よく考えろ。間違いがこの絵に起こるとさえ限らないじゃないか。

 

 そう思い、俺はスタジオを見渡す。特におかしな点は見当たらない。

 

「さて、みなさんの美的センスも向上したところで、次の問題にいきます」

「は? 問題は?」

「別にありませんが? 絵を見てもらう時間だったので」

 

 なんじゃそりゃ!

 別に向上もしないしな、こんな絵じゃ。何も養われないだろ。

 

「問題です。まずは、こちらの絵をご覧ください。徐々に変化が訪れますので、正解した方はラップでお答えください」

 

 先ほどの液晶に、汚い色使いの花の絵がうつされる。

 ラップってyoチェケラーのラップか? ラップで答えるのはハードルが高いが、それは他の人も同じ条件だろう。

 俺は絵の変化を探すとともに、一応スタジオにも目を向ける。

 

 すると、客席になぜかスナイパーライフルを構えて愛上を狙っているサングラスの男がいた。絶対あれだろ!

 

 俺は確信をもって、ボタンを押した!

 ラップ、ラップを考え出せ! 俺の脳みそ!

 

「ここでようやく日向さんに回答権が! さぁ答えをどうぞ!」

「えー、あー、きゃ、客席のあいつ!構えるライフル!お前のライフ!迫りくるデンジャラス!」

 

 決まった!

 うまいとは言えないかもしれないけど、とりあえず言いたいことは伝えられた!

 

 しかし、俺の努力を否定するように不正解の音が鳴り響いた。

 

「なんでだあああ! あってるだろ! 絶対あいつはおかしいだろ!」

「いえ、彼は音声さんです。私の声をあの集音マイクで拾っているだけです! それに、最初からああでしたので、別に変化はないです」

「だったらせめて客席から降りろ!」

 

 くっそー!!! そんなややこしいことをよくも!

 最初から周りに目を向けていればよかったぜ!

 

「あと、急に韻を踏みだしたのも不快でした」

「それはお前が言ったんだろ! ラップで答えろって!」

「ええ、だから、ラップで答えるんですよ。彼女たちみたいに」

 

 そういって愛上は回答者さんの方に視線を誘導した。

 そこには、サランラップでせっせと何かを造形しようとしている3人の美少女の姿があった。

 

 そっちのラップかよ! いつの間にか俺の机の上にもあるし!

 

「不正解ペナルティとして、日向さんには丸坊主になっていただきます」

 

 ひゅうんという音と共に頭の上を何かが通過した。きっと坊主になったのだろう。

 ……まあモヒカンよりはましだ。野球部時代は坊主だったし。

 

 それよりも、野田がモヒカンだったという事実から、野田がこのミスをしていないということになる。つまり俺は野田以下だということが証明されてしまった。

 

 俺が絶望の淵に立たされていると。どうやら時間切れになってしまったようだ。ゆりっぺたちは思い思いの何かを作っていたが、それが何かは分からずじまいだった。

 

「あー、残念ですね。正解は、皆さんの足元をご覧ください」

 

 言われるがままに俺たちは机の下に目を向ける。するとそこには巨大な亀がいた。

 

「正解は、『飼ってはいけない危険な亀が足元にいる』でした!」

 

 わかるか!

 そんな危ない亀をこんなところに置くな!

 

 正解発表とともに、今までおとなしかった亀たちが一斉に机の下から這い出て、計4匹の亀が俺を囲った。つまり、ゆりっぺたちのところにいた亀もだ。

 

 おい、なんだ、この嫌な予感は。

 

「それでは結果発表です! 会長0点、遊佐さん1点、ゆりっぺさん1点、日向さん-6点ということで、罰ゲームは日向さんに決定!!」

「よっしゃー! また生き残ったわ! 流石私ね!」

「ぎりぎりの戦いでした」

「よかったわ」

 

 3人が思い思いの感想をつぶやいているが、そうは流されてたまるか!

 俺は命がかかってるんだ!

 

「待て待て待て! そのマイナスはなんだ?!」

「2回のペナルティに決まってるじゃないですか。それぞれ-3点ずつ」

「ペナルティなら受けただろ! この頭に!」

「それはおまけみたいなものですよ! ペナルティを受けた証というか。でないと、こちらが忘れてしまうので」

「こんな短いクイズで点数を忘れるな!」

「滅相もないです」

 

 頭に手を当てて会釈する愛上。そんな軽く謝罪をするなよ。俺の命も軽いみたいじゃないか。

 その後も抗議するが、どうやら意味をなさなかったようで、普通に愛上は番組の進行を再開してしまった。

 

「では、亀さんたち! お願いします!」

 

 一斉に亀が俺にとびかかる。

 全身を強力な噛みつきが襲うのがわかる。

 

 ああ、この学園生活も、わるく、なかった、ぜ……。

 

 

 

 

 意識が戻ったとき、俺は保健室のベッドの上にいた。

 

 4匹の亀がそれぞれ四肢に噛みついた状態で。

 

 

 




11話の入院や今回の話のように、みんなでコントする話をいっぱいかけたらなぁと何となく考えてる所存です。
せっかくABにはボケキャラがいっぱいいるので。
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