かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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16、監視など

 どうも、遊佐です。

 

 今日は愛上さんの監視を行う日です。

 時間があるときはいつも彼や天使の行っているのですが、1日丸々監視に時間を割ける日というのは今までなかったので、そう言った意味では初の試みとなります。

 

 お二人ともかなり規則正しい生活を送っているので、監視をする側としてはやりやすいので助かります。

 

 ちなみに今は朝の5時半。食堂もまだ開いていないような時間ですが、愛上さんはそろそろ起床します。

 時間になると枕元に置いている貝殻の中から海の音がなり、その音で毎朝起床しています。その音はむしろヒーリングミュージックとして寝る前に聞くべきだと愚考します。

 

 おや、言ったそばから起きましたね。彼は電気をつけたまま眠る派のようなので、部屋内の動きもばっちり視認できます。

 

 軽くストレッチをすると、2段ベッドの上にいる大きなイカを起こして、いつも通りはた織りをさせます。この部屋に元々いたNPCは彼の奇行に耐え兼ねて出ていったそうです。代わりに彼はでっかいイカを住まわせてあげています。

 

 歯磨き、着替えなどを済ますと、「いらっしゃいませ」「またお越しください」「少々お待ちください」「光の速さで蹴られたことはあるか」など接客業の発声練習みたいなのを一通りし、窓を開けて壁を歩いて1階まで下りていきました。

 

 それにしても、なぜ農夫のような恰好をしているのでしょうか?

 白い大きめのロンTに緑のパンツ、首からタオルを下げ頭には麦わら帽子をかぶっています。もちろん、手には(くわ)も持っています。

 

 そのまま森へ歩いていくと、やがて少し開けた場所に到着し、そのままそこを耕し始めました。しかもソーラン節を歌っています。それは、漁民の唄ではありませんでしたか?

 

 一通り耕すと、ポケットから何やら紙切れのようなものを取り出し、丁寧に植えていきました。あれは……、食券でしょうか?

 ついに食券の栽培でも始めたのでしょうか。交配でもさせて新たな食券を生み出すつもりなのかもしれません。

 

 ちなみに、この時点で時刻は6時です。まだ30分しか経っていません。耕すスピードが尋常ではなかったので当然と言えば当然です。

 

 前世は耕うん機か何かだったのでしょうか?

 私は彼の前世が何だったとしても、もはや驚きません。

 

 彼は近くの岩に腰かけておにぎりを食べると、そのまま寮に戻っていきました。

 この情報量が続いたら私は死ぬのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 現在時刻は12時です。

 部屋に戻って以来、彼はPCで何かの作業に没頭しております。

 

 私としては見ごたえがなく、とても暇でした。生前はラジオや読書を趣味にしていたので、そういった類のもので時間を潰せればよかったのですが、そうもいきません。

 どのみち、この世界にラジオはありませんからね。

 

 それにしてもずーっとPCに張り付いていますね。もしかして、能力の開発はあれで行っているのでしょうか?

 可能性がないとは言い切れません。だとしたら一度調べてみる価値はありそうです。

 

 そんなことを考えていると、急にイカが高速ではた織りを開始し、あっという間に1冊の文庫本が出来上がりました。イカは少し疲れた様子でシャワーを浴びに行きました。

 

 あ、いつの間にか愛上さんが先ほどの文庫本を寮を出ています。どうやら食堂へ向かうようです。

 入り口にはなぜか天使がおり、二人で中へ入り、仲睦まじく食事を開始しました。といっても、愛上さんが一方的に話しているだけにも見えますが。

 

 それにしても意外ですね。天使は愛上さんのことが嫌いなのかと思っていましたが、少なくとも食事を共にするくらいにはよく思っているようです。

 

 食事が終わると、愛上さんが天使に文庫本を渡し、解散したようです。天使が歩きながら読んでます。あ、いま壁に激突しました。あの本はいったい何だったのでしょうか? 

 念のため後ほど改めて調査します。

 

 愛上さんが巨大なたい焼きにまたがってどこかへ出発しようとしています。たい焼きの後ろには小さなカルガモが何匹もいるので、たい焼きのことをお母さんだと思っているのでしょう。

 

 カルガモの赤ちゃんがみんなでドラベースを回し読みしていたその時、急に私のインカムに通信が入りました。ゆりっぺさんからでしょうか?

 

『あ、遊佐先輩。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いまいいかな?』

 

 今たい焼きに乗ってるはずの愛上さんからでした。

 

 監視・観察しているのがバレた?

 

 もしばれていたら今後の任務もやりづらくなるうえ、戦線と愛上さんの関係性も悪くなりかねません。ここは何とかごまかさないと。

 

 通信が来たことに驚きつつも、とりあえず冷静に愛上さんの方を見ると、たい焼きの頭頂部からマイクが生えているのがわかった。アレを使って私に通信しているのでしょう。

 頭頂部のマイクのせいで、タイというかアンコウに見えますが、そんな些細なことは気にしないでおきます。

 

「はい、遊佐です。どうかしましたか?」

 

 内心のドキドキを声に出さないように努めながら、いつものように返した。

 

『ちょっと大事な話なんだ。それも、俺と戦線との関係に関わるような』

「それはいったい何なのでしょうか?」

 

 まずい、確実にバレてます。

 私は頭をフル回転させ、言い訳を考える

 

『めちゃめちゃでっかい栗を使えば、少しでっかいモンブランができると思う?』

「それはですね、……はい?」

 

 あれ? 私の想定していた文字が何も聞こえてこなかった気がしますね。

 モンブランという言葉を言っていたような気がするのですが。

 

『いや、だからさ。モンブランって栗じゃん? だから、でっかい栗で作れば、モンブランも少しでっかくなるはずだよなって思って聞いてみた。遊佐先輩って頭よさげだしさ』

「今の話を聞いていると、特に戦線とは関係ないように思いますが」

『いやいや、冷静になってよ。俺がでっかい栗を使って戦線のみんな用に大きなモンブランを作ろうとしても、大きな栗からでも普通サイズのモンブランが作れないとしたら、小さな一個のモンブランを戦線メンバーが取り合って殺し合いにまで発展するかもしれないじゃん?! 俺は常に『かもしれない』を重視して行動してるんだよ』

「そうですか。二度とかもしれない行動なんてしないでくださいね」

 

 私はインカムの電源を切った。

 

(無視シナイデヨ~)

 

 外国人のイントネーションで脳内に直接話しかけてこないでほしいですね。

 

 

 

 

 

 

 彼はその後、武道場の近くで屋台を開いてました。

 

 売っていたのは羊です。サイズや色などバリエーションに富んでいて、中にはトゲトゲしているものやアジサイが咲いているもの、またファンがついており、夏場でも涼しい風が浴びれる機能的なものまでありました。

 

 羊と言うか、クリーチャーと言う感じでした。私も店名が『(メェ~)店 ジンギス館』でなければ、あれを羊と思わなかったでしょう。

 よく聞いたら羊が何かしゃべってますね。どれどれ…「人間が1匹…、人間が2匹…、人間が」嘘です。何もしゃべってませんね。羊が怖いことをつぶやく世界なんてありません。

 

 天使がクレーンの先に鉄球が付いた重機にのって、その屋台をつぶしに来てくれた時は心底応援しましたが、愛上さんが真っ黒のキリンに乗って対抗したため、引き分けに終わりました。

 

 その後、3年のあるクラスの授業に乱入し、先生を丸飲みしたたい焼きが光り輝いてほうれん草のロボット兵器になるという事件もあったが、全部見ていてもよく分からなかったので省略させていただきます。

 彼はその現場から逃げる際に窓から飛び降りたのですが、突如現れたUFOに連れていかれてしまいました。UFOの下には『新装開店』と書かれた垂れ幕がぶら下がっていたので、もしかしたらパチンコ屋の回し者かもしれません。

 

 愛上さんがいなくなってしまいましたので、本日の調査はいったん終わります。

 

 

 

 続いて補足です。

 

 彼が天使に貸していた本はただのエッセイでした。タイトルは『やぁ、江東区にて』。少しだけ中を読みましたが、意外と面白かったです。トランスフォームした練馬区を倒したと思ったら、実は恩師の北区だったという展開が、序盤から興奮させてくれました。エッセイでした。

 

 あと、山の中に植えた食券たちは、ガソリンスタンドになってました。

 ノズルから出るのがガソリンではなく、合いびき肉だったのでソーセージ作りに活用できそうです。さっきの羊もいっぱいいましたしね。

 

 そして、私事で申し訳ないのですが、明日は戦線活動をお休みさせていただきます。

 私の思考を常識に戻してきたいと思います。

 

 それではさようなら。

 

 

 

 

 ▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 私は校長室という名の戦線本部にて遊佐さんからの報告書を読んでいた。

 今日は彼女はお休みだ。どこで何をしているのかは知らないが、次会うときは元気な姿を見せてくれるだろう。

 

 報告書を引き出しの中に仕舞い、紅茶を片手に窓の外を見ながら一息ついた。

 

「あいつの監視、もうやめさせてあげましょう」

 

 

 




毎度のことながら閲覧、評価などありがとうございます。今朝、急にUAが増えてて何事かと思ったらランキングに入っていました。皆さんのおかげです、ありがとうございます!

この前電車に乗ったときに、「背が低いって理由で、好きな子に自分のアプローチを無視されて悲しい」と嘆くヤンチャな大学生みたいな人がいました。その友達たちは彼をいろいろ慰めてるのですが、最終的に「お前パンチ力つえーから」みたいな慰めを言っていてとても微笑ましかったです。
パンチ税(パンチ力が高い人に課せられる累進課税)がなくてよかったね。
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