かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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向こう5話くらいタイトルの指向を変えてみます。
不評ならやめます。


18、オーストラリアなど

「ほ~、キャンプファイヤーにバーベキューねぇ。いいじゃん、俺も参加しようかな」

「私の話を聞いていたかしら?」

 

 廊下の掲示板に貼られた『キャンプファイヤー復活祭』のビラを見て愛上君がそんなことを言った。

 キャンプファイヤーの開催は例の彼ら、SSSの仕業だ。私が許可を出さなかったから強硬策に出たわけだ。

 

「あれですよね、会長。昨日見たダサい鮭が実は美容師だったって話でしたっけ。俺ずっと散髪屋に行ってたから美容師あるあるとかあんまりわかんないんですよね」

「あなたの耳を切り落としたいわ」

 

 そう言って冗談半分で彼の耳を掴むも、そのままびよーんと伸びたのが気持ち悪かったので手を放してしまった。そうしたら、ゴムのように勢いよく縮み、破裂音と共に彼がぶっ倒れた。

 ……私が悪いのかしら。

 

「痛い! 体をゴムにするのは危険度がやっぱ高すぎるな。やっぱ人間、電気を通すくらいがちょうどいいんだな」

「その結論にはふつう至らないと思うわ」

 

 自分に言い聞かすように言う愛上君。電気を通す体でよかったと思う機会ってあるのかしら。少なくとも私にはないし、今後もないと嬉しいわ。

 

「それにしても、随分とアレを使いこなしているみたいね。もう私よりよっぽど熟練していると思うわ」

「かもしれませんね。会長の目的はあくまで自衛や鎮圧ですから、そこまで積極的に使う必要もないですしね」

「あなたの元々のスキルも役立っているのじゃないかしら? 生前はゲームとかもつくっていたのでしょ?」

「そうですね。まさかこんなところで活きるとは思いませんでしたよ」

 

 カラカラと笑う愛上君。

 彼はAngel Playerを渡した次の日には簡単にだが使用できていた。私はかなり時間を要した、というか今でもまだ自分の理想のプログラムが出来ていない。

 そういう意味では少しだけ彼のことを尊敬していた。

 

 より正確に言うならば、彼のことは尊敬している面もあるけど、その2000倍くらい軽蔑もしているので、尊敬の度合いが相対的に小さくなっているのだ。

 

 不憫ね、愛上君。

 

「で、キャンプファイヤーは山火事になって危ないから止めさせたいって話でしたっけ?」

「聞いてるじゃない」

「そりゃ天使様のありがたいお言葉ですから」

「私は天使じゃないわ。それにあなたは私をありがたがっていないでしょう」

「どうでしょうね」

 

 彼と会話をしていると、自分が今何を話していて、何が聞きたかったのかがわからなくなってくる。ディベート大会とかあったら絶対に戦いたくはないわ。色んな意味で勝負にならなさそうだもの。

 

「そんなに心配なら俺が現場に行っときますよ。何かあったら止めますんで」

「あなただけじゃ不安だわ。私も行く」

「できれば、来ない方がややこしくならなくて済むんですが?」

「……? 私が行くとややこしくなるの?」

「ええ、とっても」

「あなたに言われるのは心外だわ」

「俺が蛇に見えたなら、自分が蛇になってるらしいですよ。偉いクズの言葉です」

「? あなたの言っている言葉はたいてい意味が分からないわ」

「俺が蛇に…って、無限ループに入った感じがするので、僕は帰りますね」

 

 そう言って彼は頭からコーンポタージュをかけると、いつの間にか消えてなくなり、コーンポタージュだけが廊下に残り汚していた。

 それをたまたま通りかかったロバがそれを飲み干して、どこかへ消えていった。

 

 私も授業を受けにクラスへ行くと、私の席にさっきのロバが座って勉強していたので無理やりどかした。ロバってあんな手触りなのね。意外と硬かったわ。

 机の上にはテストに出そうな個所をまとめたノートが置いてあった。きっとロバがまとめてくれたのだろう。私は無理にどかしたことを少し後悔した。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△▼△ 

 

 

 

 

 

 待ちに待ったキャンプファイヤー当日。

 開始からまだ10分程度しか経っていないが、既に30~40人くらいの生徒たちが集まっている。

 生徒たちの多くはチャーが焼いている肉や野菜のあたりに群がっており、それを手に入れた生徒たちから順に、椎名っちのテンションと同じくらい高いキャンプファイヤーの火柱を眺めている。

 

 俺もチャーの肉を取りに行こうかな。

 

 以前に大山と野田と3人でチャーの作った飯を食ったことがあるが本気でおいしかった。いかにもな男飯だったが、その武骨で荒っぽい料理がかえって男子高校生である俺らを虜にした。

 人生で初めて胃袋を掴んだ相手が男だというのは、少しばかり悲しい気もするが、それも気にならないくらいに美味だった。

 

 俺の出番はまだだなと、ズボンと腹で挟んである銃を触りながらあたりを見渡した。

 

 椎名っちはチャーの焼いた肉を両手にもち、キャンプファイヤーをキラキラした瞳で眺めていた。その様子はかつて地下ダンジョンの女王として君臨していたとは思えないくらい年相応の女の子で、少しドキッとした。

 

 ゆりっぺはその辺のNPC達と軽い会話をしながら人間の情報を探っている。そういうしたたかさは流石だと思わされる。

 

 大山は俺の隣でおいしそうに肉を食ってる。お前も少しはゆりっぺを見習え。

 遊佐と野田は…、知らん。どっかにいるだろ。

 

 NPC含め思い思いに過ごしていると、岩沢とひさ子の二人がギターを持って現れ、オクラホマミキサーを弾き始めた。それに呼応するように生徒たちが自然にキャンプファイヤーの周りでチークダンスを踊りだした。

 

 なんというか、青春だな。

 

 俺が送れなかった方の、ちゃんとした青春だ。

 

 俺にも、こういう可能性があったのかなと少しナイーブになっていると、あることに気が付いた。

 

 愛上がいない。

 

 こういうイベントごとには必ず参加していそうなものなのに。というか、イベントなんてなくても勝手にイベントを作り、そして自分でぶち壊すような人間なのに、この大々的なキャンプファイヤーにいないことに、俺は疑問を覚えた。

 

 しかし、その疑問も解消されないうちにゆりっぺから招集がかかった。

 

「天使が来たわ」

 

 はいはい、行きますよー。

 俺は銃を手に取り、ゆりっぺについていった。

 

 

 

 

 

 

「なぁゆりっぺ、聞きたいことがあるんだけどさ」

「……、それ私に答えられると思う?」

「だよなぁ」

 

 俺とゆりっぺの視線の先には天使がいた。ゆっくりと会場に向かって歩いている。

 正確には、歩いているのは彼女ではない。

 天使は小さなロバに乗っているのだから。

 

「天使の乗り物ってさ、普通ペガサスとかユニコーンとか、そういう神秘的なもんなんじゃねーの?」

「かのナポレオンの有名な絵に写ってる馬もほんとはロバだったっていうし、そういうものなんじゃないかしら?」

「納得いかねぇぜ」

 

 そう言いつつも俺たちは散開して、天使を待ち伏せる。

 当初の予定通り、ゆりっぺと共に銃による挟撃を行うも、俺が弾を外してしまい失敗する。

 

「ちょっと! ちゃんと当てなさいよ!」

「んなこと言ったって反動が凄いんだよ!」

 

 天使は拳銃が2丁あることに少し驚いていた様子だったが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻り、ロバに乗ったまま俺たちに話しかけてきた。

 未だガードスキルは展開していない。なめられているのか、とこちらが警戒していると天使の方から話しかけてきた。

 

「……愛上君は来ているかしら?」

「は? 愛上? どうだったかしら、来てないと思うけど。日向君知ってる?」

「来てなかったと思うぜ。俺も来てないことに疑問に思って探してみたから」

「そう。ならこのまま行かせてもらうわ」

 

 天使はロバから降り、ハンドソニックを両手に展開した。ロバは二足歩行でそそくさとその場を離れ、脇でお茶を立てだした。風流だな。

 

「遂に天使までああいう不思議生物を作り出したか……」

「そんな憐みの目を向けないでくれるかしら。これは彼からの借りものよ」

「よかったわ。あんたまであんな意味わかんないことされたら溜まったもんじゃないから、ね!!」

 

 そう言ってゆりっぺは銃を撃ち始めた。それに呼応するように、俺も天使との距離を取りつつ発砲を開始する。反動が酷くて、撃つたび肩が外れそうだ…!

 

 天使は相変わらず人間とは思えない素早さで銃弾をいなし、不意打ちしてきた野田までも瞬殺した。さらに、ゆりっぺの弾が切れたすきに急速に近づいて、銃を両断し、ダウンさせた。

 

「ゆりっぺ!」

 

 ゆりっぺを守るために天使に向け発砲しようとするも、俺の銃も弾切れを起こしてしまった。くっそ、万事休すか。

 そう思ったとき、俺らの元に遊佐から通信が入った。

 

『ゆりっぺさん、キャンプファイヤーは中止です』

「はあ?! ちょっ、なんでよ!」

 

 通信の内容に思わず声を上げるゆりっぺ。その様子に天使も首をかしげている。

 

『キャンプファイヤーから発生した煙から大量のオーストラリアが降ってきて火が消えてしまいました。椎名さんが薪をすべて使ってしまったため、今から改めて火をつけるのは困難かと思われます』

 

 キャンプファイヤーの中止。そのことにゆりっぺは動揺していた。いやちがう、あれは怒りか?

 オーストラリアが鎮火させたなんてことは自然現象では起こりえない。てか意味わかんないし。そんなことを起こせるのはこの世界で一人だけだ。

 

「ここにいたか。探したぜ、総長」

 

 飄々と現れたのは、噂の愛上だ。こいつがキャンプファイヤーの火を消した犯人で間違いないだろう。ゆりっぺはそいつを見つけるや否やズンズンと近づいていき、愛上に掴みかかった。

 

「なんで火を消したのよ!! せっかくの祭りだったのに、あんただってあーいうの好きなんでしょ?!」

「悪いけど、そこの天使さんと約束したんでね。危なくなったら止めるって」

 

 そういって天使の方を指さす。

 天使は話についていけなくなったか、ロバの立てたお茶を丁寧に飲んでいた。こちらで名前を呼ばれたことにすら気が付いていない様子だった。

 

「あんた……、裏切ったの?」

「むしろ守ったんだよ。火は森に延焼しかけてた。俺が消さなかったらもっと大きな山火事になってたぞ。最悪死人もでただろうよ。この世界じゃ死なないけどな」

 

 それを聞いて俺は天使にキャンプファイヤーの許可を取りに行ったときのことを思い出した。曰く、昔のキャンプファイヤーで同様の事故が起きたそうだ。

 

 つまり、天使の言った通りの展開になったってことかよ。

 

 ゆりっぺはその言葉に少なからず動揺していた。自分ならうまくできると確信していたのだろう。しかし結果はこのざまだ。自分で大事故を起こしかけといてしりぬぐいを部外者たちに任せていた。

 

 そんなゆりっぺの方を愛上は何度も軽くたたいて励ました。

 

「そんな気に病むなって。ほら、言うだろ。失敗は冷凍の釈迦って」

「……意味わかんないわよ」

 

 失敗は成功の母、と言いたいのだろうか?

 俺の疑問符を無視するかのように、愛上は俺に目配せするとそのまま転がり帰っていった。

 

 俺もゆりっぺの方へ近づき励まそうとしたが、普通に殴り飛ばされた。どうやらもう心の整理がついたみたいだ。立ち直りが早くて助かるが、なんだか釈然としないぜ。

 

 

 

 




原作漫画で、岩沢がオクラホマミキサーのことをボクラホモミカターと言っていたのも最高だし、ひさ子の「そんな押しつけがましいの嫌だろ」ってツッコミも天才だと思った。嫉妬しますわ。

日向君視点は無理もなくて、とても書きやすいんですが、「絶対こんな語彙ないだろうな」というジレンマが付きまとってしまいます。早く音無君来てくれ。
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