かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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大人しめの回です。


26、武士など

 体育祭が終了し、高松が仲間になった直後、俺と大山、野田だけが戦線本部に居残りを命じられた。

 何について聞かれるかなんて分かり切っているが、それに対するゆりっぺの罰が怖すぎて足が震えかけている。大山なんて顔が真っ青になっていた。隣の芝生でも、こんなに青くは見えないと思う。

 

「あんたたち、なんであんな劇に参加したのよ?」

 

 ゆりっぺからの質問は予想通りというか、案の定、体育祭での愛上劇場に参加したことについてだった。

 だが、俺らだって理由もなく参加したわけじゃないので、そのあたりはしっかり弁解させていただく。

 

 と、思っていた矢先だった。

 

「ゆりっぺぇぇぇええ! お前は俺を信用してくれていたのに、俺はそれを裏切る行為をしてしまったあああ! 戦線のためとはいえ、何たる屈辱! 死んで詫びるしかない!」

 

 野田がハルバードで切腹を試みたのだ。

 俺と大山が必死に止めようとしたが、その際野田の手が滑って頭にハルバードがぶっささり、お陀仏してしまった。なんだったんだ、今の無駄な時間。

 

「……まだコントは続いてるわけ?」

「野田だけは続けていたみたいだったが、今しがた終了した」

 

 俺がゆりっぺの嫌味に適当に返すと、改めてゆりっぺの前まで移動した。野田の死体を見て大山は具合の悪そうにしていたけど、お前さっきの劇で俺の脳天を撃ち抜いただろ。

 

「んで、愛上君のコントに協力していた理由よ。野田君は戦線のためとか言ってたけど、どういう意味よ?」

「ああ、そのことか。ほら、俺らと愛上って元々同盟関係って形だけど、あいつに協力してもらうことこそあれど、俺らからあいつらに協力したことってないだろ? そのことを愛上に盾に取られてさ。今後、あいつと変に敵対しないためにはここで協力しとかないとってなったわけだよ」

「ふ~ん、そういうことね」

 

 ゆりっぺは一旦納得したような顔をするも、まだ何かを考えているようだった。

 

「確かに、あいつから協力をお願いされたことないけど、こっちの借りの分くらいは迷惑かけられてるからトントンだと思っていたわ。まぁ、そういうことなら今回は不問にしておきましょうかね」

 

 よっしゃ!

 俺は心の中でガッツポーズをとった。大山も安堵の表情を浮かべていた。野田はまだ死んでいた。

 

「明日から1週間、学食でかつ丼以外食ってはいけないという罰を遂げられたら不問にしてあげるわ」

「はぁぁぁあ⁈ なんでさ! 俺らはお前のために頑張ったんだぜ?! それらのになんで罰なんて受けなくちゃいけないのさ⁉ しかも、一回安心させてからの不意打ち! 大山を見ろ! 絶望のあまり白目をむいちまってるじゃねえか!」

「やる前に私に相談すればよかったでしょ? 報告連絡相談は基本よ」

「したさ! お前が聞く耳もたなかったんじゃねぇか!」

 

 そう、俺らは最初から独断で愛上に協力したわけではない。愛上に話を持ち掛けられた段階でゆりっぺに相談に行ったら、愛上という言葉を出した瞬間に「愛上君のことはそっちで片づけておきなさい」と一蹴されたのだ。

 

 こんな悲しいことってあるかよ。意味わかんねーぜ。

 

「そうだったかしら? じゃあ、親子丼も食べていいことにしましょう」

「ほとんど一緒じゃねーか‼︎ せめて朝食べられる軽いものを所望するぜ!」

「男の子なんだから、がっつりしたものをいっぱい食べたいでしょ」

「おばあちゃんの考えかよ! あっさりしたものをくれって本人が申告してるんですが⁈」

 

 俺の抗議に耳を貸さないアピールなのか、ゆりっぺは椅子をくるりと半回転させ、窓の外に目をむけてしまった。

 こうなったら俺にはもうどうすることもできない。諦めて丼ぶりマン生活に興じるとするか。

 

 そこで俺の思考は中断させられた。校長室に大きな音が響き渡ったのだ。硬い何かが破壊されたような、鈍い音だ。

 

 俺は反射的に音の鳴ったほうに振り返ると、そこには(まげ)と着物で武士のような装いをしている愛上と、くっきりその形の穴があいた壁があった。

 こんな人型にあいた穴、トムとジェリーくらいでしか見たことなかったぜ。ちょんまげまで綺麗に反映されてるぞ。

 

「いてててて」

 

 頭を抑えながらそんなことをのたまう愛上。壁を突き破ってそんなダメージで済むわけないだろ。

 その光景に、先ほどまでお澄まし顔をしていたゆりっぺも額に青筋を浮かび上がらせていた。

 

「ちょっと! 勝手に壁を壊してくれてんじゃないわよ! 入り口の罠が意味なくなっちゃうじゃない!」

「ちゃんと後で直しまする故、何卒お許しくだされ!」

 

 立膝をついて謝罪する愛上。そんなとこまで武士みたいにならなくてもと思う。

 てか、なんでこいつはこんな武士みたいになっているのだろうか?

 

「そういや、なんで愛上が来てんだ?」

「私が呼んだのよ。あんたらを拷問しても答えが得られなかったときの保険として」

「俺たちが拷問される可能性があったのか⁈」

 

 速攻で答えてよかったぜ。変にはぐらかしてたら今頃とんでもない光景がこの校長室に広がっていただろう。いつの間にか俺の額には冷や汗が浮かんでいた。

 

「つかぬことをお伺いしたのでござるが、」

 

 武士の愛上が唐突に口を開いた。

 

「今は一体何時代でござるか? みな、随分と珍妙な格好をしておるが」

「あんたの方が珍妙よ! そんなド定番のやり取りなんてよそでやってきなさい!」

「この世界に時代とかの概念ないしな」

「では、西暦で言うと何年になるのだ?」

「だから、ないって言ってんでしょ! そもそも武士のあんたが西暦なんて知ってるわけないでしょ!」

「よく考えたら何時代って聞いてたのもおかしいよな」

「適当に答えて進めちゃった方が早いよ。じゃあキリがいいし2000年ってことにしておこうよ」

 

 ようやく現実世界に意識を戻した大山がそう発言する。

 大山は地味に愛上の扱いに慣れてきてるからな。さすが、クラスメイトは違うぜ。

 

 大山のその発言を聞くと、愕然とした顔で床に手をついた。

 

「そんな……、まさか、まさか!」

「タイムスリップがそんなにショックか?」

 

 よくある展開だな。

 この後は書物で過去の出来事を知って、歴史を変えるために何かするのだろうか?

 

「過去に来てしまっていたなんて!」

「未来人なのかよ!!」

「いらんフェイントかますんじゃないわよ!」

 

 まさか未来の日本はまた武士の世の中に戻るのか?

 歴史は繰り返すとはよく言うが、きっとこういうことではないのだろうとは思う。

 

 こいつ、きっとこのやりとりをやりたかっただけなんだろうな。そのために、わざわざこんな格好できたのかと思うと、なんつーか、さすがだなって思うぜ。

 

「じゃあ切腹でも致すか」

「風呂行くみたいなテンションで言うなよ」

「まぁ拙者の腹はペコペコすぎて背中とくっついてしまっておるので、切腹はできないのだがな。ははは、ブシジョーク」

「そんな奇妙な現象、絶対に見たくないな」

 

 俺が律儀に愛上にかまっていると、イライラした調子のゆりっぺが話に入ってきた。

 

「そんなしょうもないことはどうでもいいのよ。愛上君、今度から戦線に何か依頼する場合は私んとこに直接来なさい。なるべく応えてあげるから」

「ほーい」

 

 愛上は武士キャラを捨てた返事をして、その場から去ろうとしたが、何かを思い出したかのようにゆりっぺに質問した。

 

「そういや、戦線て次もなんかの行事に参加すんの? もしくは、肝試しみたいに何か企画したりとか?」

「う~ん、まだちゃんと考えてないけど、学園祭で何かするんじゃないかしら。企画は……、私の気分次第ね」

 

 やっぱり今までの色々な企画は気分でやっていたのか。うすうす勘づいてはいたけどさ。

 別に楽しかったからいいけど、あんまり振り回さないでほしいぜ。

 

「それがどうかしたの?」

「いや、なんかやるんだったら俺も参加しようかなって思ってさ。事前に決まってたら教えてもらおうかなって」

「それでいうなら、学園祭では岩沢さんとひさ子さんに女子のドラムとベースを探してもらう予定だから、それでも手伝ってもらいたいわ。あんた、今実質あのバンドメンバーみたいなところもあるでしょうし」

「確かに、練習にはちょいちょい参加してるな」

 

 知らなかったな。こいつそんなことしてんのか。

 そういや、椎名っちやゆりっぺに楽器を教えたのこいつだったな。

 知らないとこで色んなことやってんだな。聞いた話だと、何やら悩み相談とかもやってるらしいし。

 

「そういえば、肝試しには参加しなかったよね? 企画は持ってきてくれたけど」

 

 大山が不思議そうに愛上に聞いた。

 言われてみれば、こいついなかったな。そのおかげで、珍しく真っ当な行事っぽくなったぜ。天使とはコスプレしながらバトったけど。

 

「いやー、俺()()()に来てから暗いのが苦手になっちゃってね。肝試しなんて怖くて参加できないよ」

「お前、その性格でビビりなのかよ」

「いいじゃん。お茶目だろ? ジャップ萌えってやつよ」

「なんで見下しながら日本人全般に萌えてんだよ」

 

 こっちに来てから、といういい方には少し気になったが、まぁ死後の世界だしな。死因とかが何か関係してるんだろう。

 こいつの生前はマジで謎だよな。TKと同じくらい謎だ。

 

 それは言い過ぎたな、TKの方が謎だ。

 

「まあ、学園祭では俺も何か出店するか、どっかでなんかやったりするわ。ベースとドラムの件は二人にも伝えとくよ」

「助かるわ。ありがと」

「ひょ~い」

 

 そう言って愛上は扉を出ていった。

 今気が付いたが、入ってくるときに愛上が開けた人型の穴がもうふさがってる。この世界の持つ再生能力なのか、愛上の持つ天使の力なのかはわからないが、相も変わらず意味不明だな。

 

 その後はゆりっぺから二、三言だけやりとりをして、その場はお開きになった。高松の加入で戦線メンバーも大台の10人が近づいてきたし、全体的にはいい調子なのではないか。

 神や天使の謎にはまだ迫れていないが、ゆりっぺのことだ。きっと何か考えているに違いない。

 

 そんなことを考えながら廊下に出ると、そこには切腹して死んでいる愛上がいた。地面には血文字でこんなことが書いてあった。

 

『タラちゃん 蝋燭を食べる

フネ 感謝の正拳突き

カツオ 老い』

 

 

 俺はキモいサザエさんの次回予告と死んでる愛上をしっかり踏みつけつつ、大山と学食へ向かった。

 

 野田はまだ死んでいた。

 




最近ハーメルンにRTAものが多いですよね。トレンドなんでしょうか?
この小説は26話やっても主人公が謎だしタイトルも回収しないしでRTAのかけらもありませんが、今後ともお願いします。

【次回予告】
天使と愛上君が一緒にAngel Playerを使ったスキル開発をします。
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