かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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27、スキル開発など

「いらっしゃい。時間ぴったり、几帳面ね」

 

 私が自室の扉を開けると、迷彩服を着た愛上君が立っていた。

 彼を招き入れ鍵をかけた私は、とりあえず彼をその辺に座らせて、お茶を入れることにした。

 

「誰かに見つからなかったかしら?」

「迷彩服着てましたし、多分大丈夫だと思います、会長」

「その赤と黄色の迷彩は逆に目立つと思うわ。警戒色だし」

「赤と黄色しかない道を通ってきたんで問題なしです」

「道路において赤と黄色は基本的に『進むな』よ」

 

 お茶を持って部屋に戻ると、彼はカーペットに直接座り、自分のノートPCを開いて何か作業をしていた。何をしているのか少し興味があったけど、勝手に覗き見るのも悪いのでそのままそっとお茶を差し出した。

 

 我慢して偉いわ、私。

 

「座布団とか適当に使っていいのに」

「すみません、座布団の中にトゲトゲのブーブークッションとか仕掛けてあったら怖いなと思うと、どうも座れなくて」

「あなたと一緒にしないでほしいわ」

 

 とりあえず、彼をベッドの上に座らせて、私は自分のノートPCを持って座布団に腰かけた。

 

「それで、今日はなんでしたっけ? 自分たちの持ってる博士号をマヤ暦占いするんでしたっけ?」

「私もあなたも持っていないから、そんな遊びは成立しないわ」

「僕は持ってますよ、ほら」

 

 そう言って彼は一枚の紙を差し出した。手に取って見るとそこには『ハミガキよくできました博士』と書いてあり、かわいらしいお花のイラストなどがちりばめられていた。

 

「これ、幼稚園とかでもらうやつでしょう? これは博士号ではないわ」

「ふふ、やはりそうでしたか。想定内です」

 

 凄い頭よさそうなセリフなのに、とっても馬鹿に聞こえるのは不思議だわ。これもある意味彼の才能ね。

 

「今日は、あなたに新しいスキルの開発を手伝ってほしいの。最近あのグループも活動が大胆になってきてるから、私も新しい対抗策を持っておきたくて」

「なるほど。だから『今夜、誰にも見つからないように私の部屋に来て』なんて言っていたんですね。そんなこと言うから勘違いしてましたよ」

「勘違いって?」

「阿修羅のしまじろうを作ることに成功したけど、絵日記にガソリンのことしか書いてなくて怖すぎるから僕に食べてほしいのかと思いました」

「しまじろうには顔が3つある品種がいるの?」

「結構いますよ。そいつは阿修羅なので手も当然6本ありますし。ただ、深爪しているので、物をしっかり持てませんし、Tシャツも着れません」

「不憫ね」

「あと、あまりしまじろうに『品種』という言葉は使わないと思いますよ」

「そう。気を付けるわ」

 

 私はそんなことを言いながらPCを立ち上げ、Angel Playerを起動した。

 これを手に入れたときはそもそもPCのどのキーが何かすらわからず四苦八苦していたが、今となっては起動することなんて朝飯前だ。

 

「会長、手伝うのはいいんですけど、そもそもどういうのを作る予定なんですか?」

「……、そういえばそれを考えてなかったわ」

 

 ズコーと音を立てて、愛上くんがベッドから転げ落ちた。

 口も3の口になっていて、ずっこけ感が万歳だった。でも、どうして今ずっこけたのかしら?

 

「じゃあ、それから考えてきますか。とは言っても俺、あいつらと同盟関係結んでますし、積極的に危害を加えるようなコマンドなら手伝えませんからね。会長に限ってそんなことはないとは確信してますが」

「そのへんは大丈夫よ。でも、せっかくだったらかっこいいのにしたいわね。腕にサイコガンが仕込んであるとか」

「サイコガンですか。確かにかっこいいですけど、学校を破壊しかねませんよ」

「それはいけないわ。学校は大事にしないと」

 

 私は頭をひねって色々と案を考える。

 う~ん、彼らは銃を使っているから、それに対抗できるのがいいわよね。痛覚調整しているとはいえ、弾が当たるととっても痛いし。

 

 全身がゴムになって銃弾を跳ね返すって言うのはどうかしら? あ、でも前愛上君がゴム人間になってた時、後悔していたわね。じゃあなしだわ。

 

 一人でいろいろ思案していると、愛上君の方から声がかかった。

 

「そもそも戦闘系の能力にしなくてもいいかもですね。会長の目的はあくまで彼らに校則を守ってもらい、他の生徒に迷惑をかけないでいてくれることなんですから」

「言われてみればそうね。正面からボコボコにしなくてもいいのかもしれない」

「別にからめ手でボコボコにすることも推奨はしてないですけどね」

 

 愛上君が一旦お茶を飲み、呼吸を整えた。

 お茶を飲んだ時「あ、うま」と感想をこぼしてくれたのは素直に嬉しかった。

 

「だから、反抗する気力自体を削ぐような力にすればいいのではないかということですよ。それが一番平和的に解決できますし」

「一理あるわね。なんで今まで気が付かなかったのかしら。どんなのがいいかしら」

「すごい低い声が出せて、威厳がめっちゃくちゃ出るとかどうですか?」

「つまり、今の私に足りない威厳を補えば、彼らもいうことを聞いてくれるということかしら?」

 

 とても魅力的な提案に思えた。

 確かに、私は背も低いので威厳と言うものが出ていなかったのかもしれない。これを機にバリトンボイスを手に入れてみようかしら。

 

「ほかに何かないかしら? 威厳が出るような何かは」

「あとは、そうだな~。湯葉の美味しさがわかるようになるとか」

「威厳あるわね。少なくとも若者には分からないものね」

「でもその代わり腎臓が7個になっちゃうとか」

「威厳がないとかじゃなく、もうそれは何でもないわ」

 

 腎臓がいっぱいあっても困っちゃうじゃない。

 他の内臓を圧迫しそうだし。

 

「こんなんどうですか? 野球モノマネでちゃんと笑えるようになるとか」

「確かに、野球モノマネってわかりにくいわ。私は選手とか全然知らないし、あれで笑ってる人は確かにおじさんのイメージがあるわ」

「他は、そうですね~。家の近所の更地を見た時に、前そこに何が建っていたかを思い出せるとか」

「あれってなんで思い出せないのかしら。気が付いたら住宅展示場になっちゃってるし」

「それ以外は、ミルタンク2体がお互いに乳を搾り合う試合の賭けに絶対勝てるとか」

「賭け事はおっさんの始まりだものね。いよいよ威厳たっぷりになってきたわ」

 

 PCのメモ帳を開いて今言っていたことをメモし始めた時、私は違和感に気が付いた。

 

「全然関係ないじゃない。そんな能力あっても彼らと対峙することは難しいわ」

「ついに気が付きましたか。腕を上げましたね」

「あなたもね」

 

 私は少しだけ書いてしまったメモを消して、改めて考える。

 やはり、彼女たちと対峙するには最低限の戦闘力は必要だわ。

 戦闘、ねぇ。あまり具体的なイメージが湧かないわ。何か参考にできるものがあればいいのだけれど。

 

「愛上君は何か戦闘向きの力は作ってないの? あまりイメージはないけれど」

「もちろんありますよ。見ますか?」

「ええ、ぜひ参考にさせていただきたいわ」

 

 彼はそう言って立ち上がると、手をくねくねと動かし、何かを唱えだした。

 

 すると彼の正面に、体長20㎝ほどのデフォルメされた巨大なクワガタムシが出現した。デフォルメされてるから別に問題ないのだけど、自分の部屋にこのサイズのクワガタがいるってちょっと嫌ね。

 

「このかなり強いクワガタと一緒に戦うのが俺のファイトスタイルです」

「このクワガタ、どれくらい強いの?」

「少なくとも百首全部暗記してますし、機動力も高いので決まり字にもすぐ反応できます。全国大会に出しても恥ずかしくない強さだと思ってます」

「もしかして、百人一首の話をしているのかしら?」

「はい!!!!!!!!!!」

「いい返事ね。できれば武力的は話を聞きたいのだけれど」

「あぁそっちですね。そっちも強いですよ。熊とかも倒せますし」

「あら、すごいわね」

「熊と言ってもリラックマですけど」

「じゃあ、すごくないわね」

 

 リラックマを熊として見ている人なんていないわ。まして対戦相手として見ている人なんて、いたとしたら真剣に心配してしまうわ。

 

 でも、もしリラックマと戦いたいという後悔を持ってこの世界に来てしまった人がいたらどうしましょう? その時は私がリラックマの格好をして戦うしかないのかしら。

 

「かいちょー」

「はっ!」

 

 愛上君が私の目の前で手をパタパタ振っていた。少し関係ないことを考えこんでしまっていたわ。

 どのみち、このクワガタは参考にならなかったわね。別の戦闘向きの力を見せてもらおうかしら。

 

 そういえば、彼はかめはめ波の研究をしているのだったわね。だったら、私も漫画とかからそのまま持ってくるのもありかもしれないわ。

 

「愛上君、漫画に出てきた力で使ってみたい能力ってあるかしら?」

「そうですね、長台詞を噛まない力はほしいです。俺よく噛んじゃうんですもょにぇ」

「取ってつけたように噛まれても困るわ。他には何かないの?」

「う~ん……、あ! ジャムおじさんのあの能力がほしいですね」

「パンに命を吹き込むとか、美味しいパンが焼けるとかそういうの?」

「いえ。アンパンマン号みたいなヤバい車でも全然車検に通せちゃう能力です」

「あの世界に車検なんてないと思うわ。生きている汽車がいるような世界なんだから」

 

 子供向けアニメにそんなリアルな社会構造があったら嫌ね。子供が森の中で腹をすかして泣いているような世紀末世界とはいえど。よく考えたら、アンパンマンの世界ってお金とかあるのかしら? あまりイメージがないわ。

 

「そういうこまごましたのじゃなくて、戦闘向きなやつがいいわ。あなたの好きなドラゴンボールの技で何かいいのはないかしら?」

「グルグルガムって言う技があるんですがどうですか? 口からぶっといガムを吐き出して相手を締め付けるって技なんですけど」

「拘束技ね。確かに、相手の戦闘力を奪うって意味ではかなり重宝しそう。それにしましょう」

「すみません、冗談です。会長がグルグルガムなんてやったら、とんでもない絵面になっちゃうので、やめましょう」

 

 そうかしら? 結構いいアイデアだと思ったんだけど。

 まぁ、彼が言うならやめておきましょう。

 

「そもそもあれなんですよね。ドラゴンボールの技って気を使ったやつが多いんで、Angel Playerで再現するのむずいんですよね。俺もまだかめはめ波できてないし」

「そう。今のかめはめ波はどんなかんじなの?」

「でっかい青い熱々のところてんを手から出して、相手を押しつぶす感じです」

「固体にはなったのね」

 

 私は青い熱湯をぶっかけられた時のことを思い出した。

 

 順調なのかそうでないかの判断はできないが、少なくとも彼は今でもかめはめ波の研究を熱心に行っているらしい。彼の成仏の条件はきっとかめはめ波を撃つことだから、私としてもその辺はしっかり協力していきたいわ。

 

「ドラゴンボールの中であからさまには気を使ってない技って何かある?」

「太陽拳とかですかねぇ。光を放って相手を目くらましする技なんですけど。あ、あとは残像拳とか」

「残像。いいわね、かっこいいわ。銃に対するかく乱にもなりそうだし、それにしましょう」

 

 その後私は、彼に協力してもらいつつ、残像を出すスキルの開発を手掛けた。

 一日ではとても終わらなさそうだったので、その日は2時間ほど時間を貰ったのち解散する運びとなった。

 

 帰り際になって彼は私に向かってある疑問を投げかけてきた。

 

「そういえば生徒会長のあなたが俺を女子寮に入れてしまってよかったんですか?」

「忘れてたわ。今すぐ出ていって」

 

 あぁぁぁぁぁぁ……

 

 ずどぉぉん……

 

 私は彼を窓から突き落とした。

 これで生徒会長の威厳は守られたわ。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ僕もこの辺で失礼します」

 

 クワガタも帰っていった。

 




こうしてガードスキル「Delay」ができたとさ。
スキル開発の話、あと5回くらいやりたいです。



【次回予告】
松下五段加入回です。愛上君のフルパワーがついに……。
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