かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった 作:おこめ大統領
愛上君(オリ主)
びしょびしょすぎて逆に乾いたことがある
春風亭昇太
笑点の司会
摩擦がないので、ずっと同じ速さで動いてる
愛上君がいなくなって2週間が経った。
一応みんなで探しているのだが、彼と面識のあるのが戦線で僕だけというのもあって、なかなか捜索が捗らない。
そして僕たちは一度情報を整理しようということで、拠点である校長室に集まっていた。
メンバーは僕に日向君、ゆりっぺ、野田君、椎名さん、そしてチャーまで来ている。情報共有のためにわざわざ呼んだみたいだ。
「さて、大山君。チャーも来てることだし、謎の生物である愛上君について、わかっていることを改めて共有して」
「謎の生物って」
日向君がジト目で軽くツッコミを入れる。気苦労が多くて大変だね。楽しそうだけど。
「うん、分かったよ。まず見た目はこんな感じね。美術部の人に似顔絵書いてもらったんだ。背は僕と同じくらいか少し低いくらいかな」
僕はポケットに4つ折りで入れていた似顔絵を机の上に出す。すさまじい出来だ。似すぎていて怖いくらい。
チャーを含め他のメンバーの身を乗り出して覗き込んでいる。
「ふん、意外と大したことなさそうだな。もっととんでもない感じだと思っていたぜ」
「つまりお前は前回話を聞いてなかったってことだな。ほとんど大山が前回言っていたまんまの見た目じゃないか」
「みてくれは理解した。それで大山、そいつは何ができるんだ?」
チャーに言われて僕はポケットからメモを取り出した。彼の変な力を忘れないようにメモっておいたものだ。
「僕の見たことある限りだと、ひよこを龍に変える、頭からひまわりを生やす、骨がないみたいにくねくねする、あと分身と変装もできると思う。あ、そういえば足をマンガみたいに渦巻きにして走ってた気もするなぁ。それ以外は……まあ、変なことを色々するかな」
「変なことって何よ」
「ごめん、ゆりっぺ。あんまり思い出したくないんだ。まさか、カニスプーンをあんなことに使うとは……。僕の生前をもってしても予想できなかったよ。ふふふ」
「お前の生前にはいったい何があったんだよ! いや、このツッコミは少し違う気もするけど!」
その後も一通り、質問に答えたりして、とりあえずの情報共有は終えた。
ちなみに椎名さんはその間一言も発していない。ひよこという言葉が出た際に少しぴくっと反応していたけど。もしかして、ひよこが好きなのかな?
やがて、ゆりっぺが両手を叩いて注目を集める。
「はいはい。とりあえず、これが今ある限りの情報ね。それで、チャーに聞きたいんだけど、いま話に出てきたみたいなものを錬成でできると思う?」
「無理だろうな。あれはそんなに万能じゃない。どちらかというと、天使のアレに近いんじゃないか? とても同じ力とは思えないが」
「ありがとう、その言葉が聞きたかったわ。みんな、実は彼のいる場所に心当たりがあるの。今からそこに向かうわよ。ついてきなさい」
突然の提案にみんなが目を見開く。
「え、今からかよ。心の準備が」
「何よ、むしろ捜索中の不意の遭遇じゃなくなったことを感謝しなさい」
「ふん、お前らはついてこなくてもいいぞ。ゆりっぺを守るのには、この俺さえいれば十分だ!」
「すごいよ野田君、久しぶりにそんなに説得力の無い言葉を聞いたよ」
「なんだと!」
「ひぃ!」
「ふざけてないで、さっさと行きますよー」
こうして僕たちは、ゆりっぺに付き従って校舎を後にした。
「しっかし、なんでまたこんなところにいるんだ」
日向君がふいに疑問をもらす。
僕たちはいま、森の中を歩いている。チャーのねぐらがある辺りとはまた違った場所で、僕もこの辺りにくるのは初めてだった。
「そんなの知らないわよ。昨日ラジコン部にお願いして森をくまなく探してもらったんだけど、彼ら、愛上君が何をしていたのか教えてくれなかったのよ」
「ラジコン部スゲーな‼ 一日で見つけたのか⁈」
森に入って1時間くらいしたころだろうか。僕らの耳元に何かの音が聞こえてきた。唸り声のようにも聞こえ、僕は一瞬身震いした。
「なんだ? 獣か?」
「いや、人の声だと思うわ。多分彼よ。椎名さん、いきなり斬りかかったりしないでね。まずは対話よ、対話」
「うむ」
ゆりっぺの言葉に、腰を落とし臨戦態勢に入っていた椎名さんが頷いた。姿勢は変わっていないけど。
……め……ぁぁぁ‼
僕たちは音の発生場所まで少しずつ近づいていく。どうやらゆりっぺの言ってた通り、人の声のようだ。
……は…め……はぁぁぁぁ!
何か叫んでる? もし助けを求めてるとかだったら早めに行ったほうがいいんじゃないかな。僕はゆりっぺの方を叩いてそのことを伝えようとした瞬間、彼女はその足を止めた。
か……め……は……め……波ぁぁぁぁぁぁ!
「高校生にもなって何してんのよあんた!」
全身全霊でかめはめ波を撃とうとしている愛上君に、ゆりっぺが思わずツッコんでしまった。
愛上君はこちらに気が付くと首から下げていたタオルで汗を拭きながらこちらまで歩いてきた。
「こんなところに人が来るなんて珍しいねぇ。旅のものかい? さぁさぁこちらへどうぞ、何もない場所ですがもてなしくらいはさせていただきますぇ。へっへっへ」
「こいつ、全力のかめはめ波の練習を見られたのに全く動じてないぞ……! こりゃ確かにただモノじゃねぇな」
「日向君。まずは日本昔話みたいなこと言ってる彼にツッコんであげようよ」
日向君のズレた感心をみんなが無視して、愛上君の誘導に従い、近くの座れる岩場まで来た。 僕と日向君、そして愛上君は普通に腰かけたが、他の4人は立ったままだった。警戒しているのだろう。普通に座っちゃって恥ずかしいや。
「単刀直入に聞くわ。あなた、何者なの?」
「そうかっかなさんな。まずは落ち着きましょう。どうぞ、粗茶です」
「あら、お気遣いありがとう、ってなんで水鉄砲に入れて渡してくんのよ!」
そう言ってゆりっぺはお茶の入った水鉄砲(お茶鉄砲?)を地面に叩きつけた。
「あ、なんてことを! 作るのに結構時間かかったのに! 俺の11時間を返せ!」
「あんたこんなものを作るのにそんなに時間かけてたの⁈ いくらこの世界の時間が無限にあるからって無駄遣いしすぎでしょ⁉」
思わず先ほどまでのキャラをかなぐり捨てて怒る愛上君。まぁ、庇う気にはなれないかな。
「ほう、よくできてるな。にしても、お前プラスチックを作ったのか。すごいな」
「えっへっへ、鼻が高いですね、ひげの旦那。なかなか苦労しましたよ」
「お目が高いの間違いじゃないのかなぁ? それじゃただ顔の造形を褒めてるだけだよ」
「なぁ、なんで俺だけグラタンが出されたんだ?」
「あ、そちら粗グラタンです。冷めないうちに召し上がってください」
「あぁぁ! もう、話を聞けっ!!!」
ゆりっぺが再度怒鳴ったことで、お茶鉄砲に予想外に食いついたことチャーも、出されたグラタンに戸惑っていた日向君も一旦黙った。
「話を戻すわよ。あなた、いったい何者なの? この世界について、何か知っているの?」
愛上君はゆりっぺの顔をじっと見つめ、やがて覚悟を決めたように口を開いた。
「そうだな。そのことを話すには、俺の過去を話す必要があるだろう」
そう言って、彼は上を見上げた。
……あれ?
「さっさと回想に行きなさいよ!! 何してんのよ?!」
「え? いや、スプーンをどこに仕舞ったっけなー、って考えてた。ほら、グラタン出したのに、スプーン出してなかったからさ」
「どうでもいいわ! さっさと回想にいけ!」
「わかったよ、でもその前に」
そういうと彼は手を勢いよく自分の額に突っ込んだ。
僕たちがその光景に驚愕したり、身構えたりしていると、頭から引き抜かれた彼の手には見覚えのある細ーい銀食器が握られていた。
「はい、スプーン」
「カニスプーンじゃねぇか! こんなほっそいスプーンじゃグラタンが進まないんですけど! すでに結構冷めてるのに、食べ終わるころにはすっかり冷え切ってると思うんですけど!」
「すごいね、キルアがやったイルミの針の出し方みたいなのをしたのに、血の一滴もついてないよ。てか、食べる気があるあたり、日向君も相当だよね」
日向君が渋々スプーンを受け取り、スプーンのにおいをかいだ後、恐る恐るグラタンを口に運ぶ。
額からは血も出てないし、本当に額から出したわけではないけど、それでもそのスプーンを使える日向君には、少し引いてしまった。
「うわ、麦茶の味がする。見た目も触感もグラタンなのに……」
「あまり食欲はそそられなさそうだね。諸々の事情込みで」
文句を言いつつもグラタンを口に運ぶ日向君。そういえば、学食でも彼が残しているのを見たことない気がする。きっと、食べ物は残せない質なのだろう。
「まぁ、こんな青ミジンコのことはさておいて、俺の昔のことなんだが」
「青ミジンコ⁈」
「ちょっと日向君、黙っててくれる。ようやく彼が話そうとしているのに」
「理不尽だ……」
ごほんと咳払いをする愛上君。僕たちの体にも緊張が走る。
「あれは俺がまだ、でっかいエビだった頃の話だ」
「消えてくれ」
ゆりっぺの躊躇ない銃弾が彼の胸を貫いた。
3話~5話はちょっと繋がってます。
1話完結でなくてすみません。