かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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32、出し物など

「なぁ日向。俺らの学園祭の出し物はどうするよ?」

「そうだな~」

 

 俺は藤巻からの問いかけにやる気のない返しをし、そのままソファに倒れこんだ。なんとなくやる気が出なかったのだ。

 

 俺と藤巻、そして野田は現在3人で戦線本部、つまり校長室にいる。

 

 ゆりっぺと椎名っちはミスコンのエントリーに、松下五段と高松と大山はうどん作りに行ってしまい、俺ら3人が取り残されていたのだ。TKは何処かに行った。

 どのみち、ゆりっぺから「学園祭で何かはしろ」と言われており、何をするかを相談する時間が出来て丁度良かったのだが、波に乗るタイミングを逃したこともあり気乗りせず、こうしてぐだぐだとしていた。

 

「そういう藤巻はどうなんだよ? なんかやりたいことはねーのか?」

「学園祭で何やっていいのかわかんねーんだよ」

「わかるわかる。やっぱ経験ないと想像つきにくいよね」

「まぁ、それもそう……あ?」

 

 いま、藤巻でも野田でもない声が会話に入ってきたぞ。俺は不審に思い、顔を上げるとそこにはご存じ愛上が当たり前のようにいた。

 

「……、合言葉をしらないと入れないはずなんだが」

「うん。だから普通に窓から入ったわ」

「藤巻、ここ何階だっけ?」

「4階」

「上ってくる根性すげーな」

「俺と壁は似た者同士なんだ。磁石のように引き付け合って離さない。だから登れるのさ」

「似た者同士って。同じ極の磁石は互いに反発すんじゃねーのか?」

 

 俺がそんなことをツッコむころには愛上はなぜかお茶も入れ終わっており、俺の対面に座りすっかりくつろぎモードに入っていた。なんでお茶の場所さえ把握してんだよ。

 藤巻は愛上を怪訝な表情で見つめていた。愛上との接触回数の少ないこいつは、愛上のことを警戒してるんだろう。天使vs戦線で見せたような意味不明な現象を起こすような人間だ。そりゃ当然の反応だろう。

 

「んで、結局何しに来たんだ?」

「結局学園祭で戦線が何すんのか聞きたくてさ。バンドメンバー探し以外は聞いてなかったから」

「あぁそういうことか。ゆりっぺと椎名っちはミスコン。俺ら以外がうどん作りだ」

「ミスコンかぁ。そういうのもあるんだなぁ。まぁ了解したわ、ありがと」

 

 愛上は感謝を述べるとぐいっとお茶を飲み干し、立ち上がって後片付けを開始した。

 もう帰るのか? 珍しいこともあるもんだな。

 

「お前は何かしないのか?」

 

 愛上が窓枠に手を掛けたところで、珍しく野田が愛上に質問した。こいつらが会話してるの初めて見たかも。

 愛上は窓枠に乗せていた手を顎に持っていき、話し出した。

 

「う~ん、考え中。俺、学園祭ってやったことないから何していいかいまいち分かんないんだよね」

「そういやさっきそんなことも言ってたな。学校行ってなかったのか?」

 

 藤巻がなかなか聞きにくいことをずばっと聞いたな。確かにこいつは、以前「高校に行っていなかった」と言っていた。それについては俺も少し気になってはいたけど、藤巻の奴、ほぼ初会話でよくそこまで踏み込めるな。

 

 対する愛上はその質問にも特に嫌な反応はせず、普通に返答してきた。

 

「うん。俺、高校にあがるちょっと前にこの学園に来たから。中学には学園祭なかったし、高校のも見に行ったことなくてね」

「なるほどな。じゃあ一緒に考えてやるよ」

 

 藤巻の奴、さっきまでとは打って変わって気前がいいな。こいつが高校にいってなかったことにシンパシーでも覚えたのか?

 

 というか、高校に上がる前に死んだってことは、こいつほんとは中学生だったのか。確かに背は低いが、中学生もここに来れるんだな。高校に上がる直前に死んだから、おまけで高校に引き上げたって感じなのか?

 

「お、やったね! じゃあさっそく聞きたいんだけど、普通どんな出し物をするの」

「いい質問だな。それじゃ答えてやってくれ、日向」

「結局俺かよ!」

 

 いきなり振るなよ。確かに藤巻も学園祭に詳しく無さそうだったから俺が言うしかなさそうだけど。野田も当然ダメだろうし。

 

「そうだな~。無難なのは飯を売る系だな。現に松下五段達はそうするし」

「それいいな。でも無難なだけあってライバルが多そうだな。より美味しさやサービスを追及しないと勝てなさそうだ」

「でも、確か一食当たりの売価と経費は上限が決められてたはずだぜ? 無視して出すなら止めないけどさ」

「いや、ちゃんとルールに乗っ取って戦わないと意味ないだろ。それに、俺にはある秘策がある」

「秘策?」

「ああ、つまり金を使わず味を向上できればいいんだろ」

 

 俺と藤巻がそろって首をかしげる。野田は壁に寄っかかって、興味なさげに窓の外を眺めていた。

 こいつが言いたいのはつまり、調理技術で他を圧倒するということだろうか? あまり料理をしているイメージは湧かないのだが、そんなことがこいつに可能なのか。

 

 俺らの反応に対し、愛上は口角を上げて得意げに言葉を紡いだ。

 

「客をしごき回して疲弊させてから食わすんだ! 空腹は最大の調味料って言うだろ!」

「最低だな!」

 

 自身のレベルを上げるのではなく、客の色んな機能を引き下げて『何食っても上手いモード』に追い込むことを選びやがった。こいつ、まっさきに出てきたアイデアがそれかよ。イカれてやがるぜ。

 

「あー、目に浮かぶな。空腹に苦しんでいたお客様が涙を流しながら旨そうにうちのナンを食っているところが」

「しかもカレー屋かよ。そこそこ重いな」

「いや、ナンだけだ。カレーなど食う軟弱ものなど不要よ」

「ナンにメインを張る力なんてない! あいつはカレーと一緒だから輝くんだよ!」

 

 疲れ切った体にカラッカラのナンだけ食べるとか地獄すぎるだろ。流行んねーよ、そんな店。流行らせてたまるか。

 俺はとりあえずこの話題を変えるために、次の学園祭定番の店を紹介することにした。

 

「他にはお化け屋敷とかも多かったぞ。あれは暗幕の数が限られているし、必然ライバルも少ないだろうよ」

「いいね、お化け屋敷。ワニとかライオンとかチーターの幽霊を解き放とうか」

「そんなサファリお化け屋敷嫌だろ。怖さの種類が違うわ」

「お互いの恐怖を打ち消しあってる気がすんな」

 

 藤巻からも同様に反対意見が飛んできた。こいつのアイデア、誰かに賛成されたことなんてあるのか?

 

「じゃあどんなお化け屋敷がいいかな?」

「最低でも人間のお化けを出せ。獣じゃなくて」

「人間ねぇ。それなら間をとってゴロリのお化けを出そう」

「間をとるな。あんな工作ゴリラのお化けなんて怖くもないだろ。まず死んでねーし!」

 

 意味不明な提案すぎて少し口が悪くなっちまったな。こんなので怖がる奴なんていないだろ。そう思っている俺の肩に藤巻が手を置いた。

 

「いや、意外と怖いかもしれないぞ。あいつの目には感情が宿っていない。急に殴りかかってくる狂気を孕んでいるぞ」

「藤巻お前、そんな気持ちであの番組を見てたのか?」

 

 だからヤクザになんて入っちまったのか? と、的外れな感想を持ってしまった。

 ゴロリは正常だ。純粋な心と工作への愛情を忘れない、素敵なゴリラだ。万が一にでもいきなり殴ったりなんてしないぞ。子供でも安心して楽しめる。

 

「なかなかいいアイデアが出てこないな。どうしようかな」

「コンセプトを先に決めればいいんじゃないのか? こまごましたとこなんて後で詰めればいいだろ」

「おぉ、それもそうだな。じゃあ、王道だけど廃病院なんてどうだ?」

「まぁいいんじゃねーのか? ちゃんと人間の幽霊が出るんだろうな?」

「もちろん、白衣のナースの幽霊が俺たちを連れまわすんだ。そして、バリウムや採血、胃カメラなんかで客を脅かしてやるぜ」

「健康診断すんな! 幽霊が人間の寿命を延ばそうとするなよ。呪い殺せよ!」

「いや、ちゃんと怖い要素もあるぞ。そこの病院はかつて放射線事故があって、未だにその名残があるんだ」

「ほう、面白いシチュエーションだな。なかなか想像つかなくて恐怖をあおるぜ。んで、どんなことが起きるんだ?」

 

 意外にも食いつきの言い藤巻。こいつ、最初はちょっと悪ぶってたけど、結構ノリもいいし、面白い奴だよな。バカだけど。

 

 愛上はそんな藤巻に機嫌を良くしたのか雰囲気を出す為に少し声を低くし、溜めてから話し出した。

 

「お化け屋敷にいる間、ずっと放射線が体を通り過ぎるんだ。そして出口では、それで撮影したスケスケになった自分の体の写真を無理やり渡される」

「お、おぅ? それって怖いのか……って、それただのレントゲン写真ですからー! 放射線ってX線かよ! 終始健康診断してんじゃねーか! だから幽霊なんだから呪い殺せって!」

「そんな物騒な言葉を使うんじゃありません! モっ!」

「怒るときはメっだろ。一文字行き過ぎだ」

 

 今日出会って最初の2秒で気が付いていたが。こいつ真面目に考える気がねーじゃねぇかよ。どんなにちゃんとした前提を用意してもしっかり台無しにできるところはもはや尊敬さえするな。俺にとっては一切のメリットがないのも、ポイントが高い。

 そろそろこいつの相手すんのも面倒になってきたから、手っ取り早くこいつ向きなアイデアだけ提示してやるか。

 

「別に店を構えなくても、1人で音楽ステージに出場すればいいだろ。店やるなら今からスタッフとか資材集めないといけないだろうからかなり厳しいぞ。その点音楽だったら問題ないだろ」

「やっぱりそれが無難だよなぁ。でもそれだけじゃ学園祭感がないというか、非日常感が足りないというか」

「贅沢だなぁ」

 

 まさか却下されるとは思わなかった。しかし、よく考えたらそんなことくらいとっくに考慮してるわな。

 俺が頭をかいてわかりやすく困っていると、野田から予想外の助け舟が入った。

 

「おい、ダンスはどうだ? 一人でもできるし、学園祭感もあるだろ」

 

 野田、お前、たまにはいいアイデアを出すじゃねーか!

 くぅ~、俺は泣きそうだぜ。お前の有能なところなんて、俺は初めて見たぞ! 今のお前は輝いているぜ!

 

「おい、なんで泣きそうな顔なんだよ」

「ほっとけ」

 

 藤巻に不審がられつつも、愛上の反応を伺う。自分の中で検討していたようだったが、やがて拳で逆の手のひらをポンと叩いた。

 

「よし、ダンスで行こう。具体的にどうするかはまた後で決めるとして、俺はそろそろ戻るわ! 色々相談に乗ってくれて助かったよ! またな!」

 

 そう言って愛上は俺らに握手し、そのまま入り口のドアの方まで歩いていき、ドアを出たところできっちり罠にかかった。

 

「あいつ……! また直す手間を!」

 

 野田が拳を握り怒りをあらわにしてる。

 すっかり罠直し係だな。そのほとんどは愛上のせいだけど。

 

「なぁ日向。俺たちは結局どうする?」

「うどん屋を手伝おう」

「だな」

 

 さっきまでの愛上のアイデアが頭をぐるぐる回ってしまっているので、もう今から考えてもまともなものができる気がしなかったので、俺たちはけっきょくうどんグループに合流することに決めた。

 

 

 

 

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