かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった 作:おこめ大統領
待ちに待った学園祭当日。
結局、俺と野田と藤巻、あとTKはうどん屋台の手伝いをすることにした。
最初は「うどん屋にこんなに人数いらないだろ」とも思ったが、どうやら松下達は本気でうどんの研究をしたらしく、販売開始と共に行列ができていき、瞬く間にてんてこまい状態になった。
手伝いをはじめて1時間くらいした頃だろうか。列の整理をするために、最後尾付近にいった俺の目にある光景が目にはいった。
言うまでもなく愛上だ。
ターバンを頭に巻いて縦笛を持ち、地面にあぐらをかいて座っていた。彼の目の前にはアラビアンな紋様の壺もおいてあり、異国情緒あふれていた。
道行く人も出し物か何かでもやるのかと思い愛上の方をチラチラ見ているが、一向に動き出さないのでみんな不思議に思っている様子だ。
俺も観察を始めると同時に、愛上は持っていた縦笛をゆっくりと吹き始めた。タイミングがよかったのか悪かったのかは良くわからないが、まぁここは素直に見届けることにしよう。
あれ? そういえばこいつ、学園祭ではダンスを披露するとかいってなかったか? 俺がそんなことを考えていると、笛の音に呼応するかのように、壺からなにかが出てきた。
おい嘘だろ。
普通に蛇だ。
愛上のやつ、どうしちまったんだ? いつもなら入れ歯とか選挙カーとかを出すところなのに、想定通り過ぎる蛇を出しやがった。しかも、良く見るタイプのコブラだ。色や模様も普通だし意外性がなにもない。
愛上は一度呼吸を整えてから縦笛を改めて吹いて、蛇を操りだした。奏でている曲も普通にアラビアンな何かだ。
いつものこいつならサビしか知らないCMソングとか、音楽の教科書に出てくる外国の変な歌とかを演奏しそうなのに、そんなことはなかった。とても普通で、なんなら演奏も上手かったため、それだけで十分に出し物として成立していた。
蛇も特に変な動きはせず、笛の音に合わせてクネクネ動いたり、壺から出たり入ったりをするだけだった。
てっきり最初は「ダンスは蛇にやらせるんだ」とか言って蛇にコサックダンスとか盆踊りでもさせるのかと思ったが、そんなこともなかった。
いったいどうしちまったんだ?
そこから2分くらいして出し物は終わったらしく、愛上はターバンを脱いでゆっくりとお辞儀をした。蛇もそれに合わせてお辞儀させる周到っぷりだ。いつの間にか周りに集まっていた観客やうどんの列に並んでいた人たちは拍手をし、愛上も満足そうに笑っているのが見えた。
片付けを開始した愛上にタイミングを見計らって声を掛けようとしたところで、俺は背後から誰かに声を掛けられた。
「日向さん」
やべ、そういえば今うどん屋の手伝いしてるんだった。大山辺りが俺を注意しに来たのか?
そんなことを考えて振り向くと、そこにいたのは遊佐だった。まあ女子の声だったし、そうだろうとは思っていたが。
いかんいかん、大山の女装を見てから、大山をたまに女子として見てしまうことがあったから、そのイメージに引っ張られてしまった。
「おぉ、遊佐か。どうかしたのか?」
「それはこちらのセリフです。ずっと虎なんか眺めて何しているんですか?」
「は? 虎?」
何を言ってるんだこいつは?
俺が見ていたのは愛上の蛇遣い芸だぞ。
そう思って愛上がいた方を振り向くと、そこには後ろ向きに座って、しっぽを振っている虎がいた。
「なんでだよ⁈ 今の今まで愛上がいたじゃねーかよ! 愛上が蛇を操ってたじゃねーか!」
「見間違いじゃないですか? あのしっぽを蛇に、虎の体を愛上さんに見間違えたんのでは。ネッシーの正体も本当は巨大うなぎだって言いますし、そういうこともありますよ」
「いやいや! 虎と人間は見間違えねーわ! 山月記か!」
「山月記は別に李徴を虎と見間違える話じゃないですよ」
遊佐はやれやれと言いたげにそう指摘した。
俺はその言い方でピンとくることがあった。
「ははぁん、わかったぜ。お前ら俺をからかってるんだろ? 俺が目を逸らしたすきに虎に化けたんだな? 山月記みたいに」
「山月記は別に目を離した隙に虎になる話ではないですよ」
俺はそう辺りを付けて、虎の方に近づいてポンと叩いた。
「愛上。俺はやられてばっかりじゃないぜ。お前のやってることはお見通しだ!」
俺は虎に向けてそう言った。すると、虎は俺の方を見て悲しそうに一言つぶやいた。
「なんで終わっちゃったんだろう、犬夜叉……」
言葉が終わると共に、一粒の涙をこぼした。そして、手元(虎だから足元?)に置いてあったツボを俺に差し出してきた。さっきまで蛇を出すのに使っていたツボだ。
虎なのに喋ってるし、こいつは愛上で間違いないだろう。やはり、俺が目を離したすきに虎になってたんだな。そう思いつつ、差し出されたツボを手に取って見ると、何かが書いてあることに気が付いた。
『犬夜叉のツボ』
「……、そういやそんなコーナーもあったけどさ」
次回予告の時にやってたやつだろ?
誰が覚えてんだよそんなの。
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私はひさ子と共に音楽ステージに来ていた。このステージでは、有志による音楽パフォーマンスが1組5分程度で行われている。
ここに来た目的は一つ。足りないメンバーのスカウトだ。
だが今のところ、うちのバンドにスカウトしようと思えるだけの人材はいなかった。
以上。
「なかなかいないもんだなぁ。なぁ岩沢、いっそもう一個のバンドの方からヘッドハンティングするか?」
ひさ子が私にそんなことを聞いてきた。
もう一個のバンド、というのは、以前愛上から聞いたNPCで構成された人気バンドのことだ。
私はそれでもかまわないが、対バン相手がいるというのは切磋琢磨しあえて良い気もするので、やはりどうせなら自分たちのバンド専属のベースとドラムは見つけたいな。
「岩沢?」
「え? あぁ、うん。そうだな」
「まぁあと3組くらいは見てから考えるか。そろそろ飯時だし」
「言われてみれば、確かに腹も減ってきたな」
「お前はそろそろ空腹を自覚できるようになってくれ」
失礼だな、ひさ子。私だって腹も減っているかいないかくらいわかるぞ。今だってしっかりとわかっている。
うどん、食べたいなぁ。
そういえば、戦線のメンバーが伊勢うどんを出しているとか言ったな。取っておいてもらうよう言っておけば良かったな。あのうどんは確かに美味い。
そんなことを考えていると、どうやら今しがたやっていたアカペラグループは終幕したようで、次の人がステージに入ってきた。
お、どこかで見たシルエットだと思ったら、愛上じゃないか。
PCとキーボードと、他にもよくわからない機械を持ち込んで、何をするつもりだ。ドラムとかをやるんじゃないのか?
「愛上です。さっきのダンスでは滋賀県をあんな目にあわせてしまってすんませんでした。今度はオリジナル曲の演奏します」
そう言って愛上はPCを少しいじると、ステージ両サイドのスピーカーから何やらエレクトロなジャズが流れだした。それに合わせて、愛上は手元にあるキーボードの演奏を開始した。キャッチーなリフを数回繰り返したのち、ピアノソロに入っていった。
リズムやコードには私が知らないような変な調子のものがあったが、それに合わせて大胆なソロを演奏する曲を演奏する愛上。私はすっかりその曲に引き込まれると同時に、あることを思った。
似てる。
メロディは違うけど、このバッキングとリズム、それにリフのキャッチ―さ。私はこの曲を、いや、、この曲に似ている曲を知ってる。
何分やっていたのかはわからない。体感では1分ほどだったが、もしかしたら10分以上演奏していたかもしれない。ともかく、幾ばくかの時間が経ったとき、気が付くと、なぜかドラムの音が混ざっていた。
先ほどまでの電子的な音ではなく、リアルなドラムの音。今まさにそこで演奏しているかのような圧を、私は全身で感じた。
視線をステージ上の後方に向けると、そこには髪を猫耳のように結わえた女子が愛上の曲に合わせて叩いていた。
それがあいつの仕込みか、それとも飛び入りかはわからないが、愛上はキーボードを弾きながらぴょんぴょんと飛び跳ねてドラムの登場を喜び、演奏をヒートアップさせた。
愛上はPCを操作し、キーボード以外の音を止めて、ドラムと二人だけの世界に入っていた。パワフルでありながら、繊細な粒も感じられるドラム。即興とは思えないフレーズを叩きだすピアノ。二人はアイコンタクトでコミュニケーションをとりながら、息の合った演奏を披露している。
その光景は、とても楽しそうで、魅力的で、心揺さぶられるものがあった。
私も混ざりたい。
「ひさ子!」
私が隣にいる親友に声をかけた時、ひさ子は既にギターを手に持っていた。考えていることは同じだったようだ。
私達はステージに駆けあがり、ギターをかき鳴らした。音の圧が上がるのと同時に、観客たちのボルテージも上昇していった。
楽しいな。
これが、音楽か。
このドラムの人は漫画オリジナルキャラで、NPCです