かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった 作:おこめ大統領
どうも、遊佐です。
本日は学校主催のクリスマスパーティ、もとい仮面舞踏会の日です。
仮面をかぶるので、生徒会などに目を付けられている戦線メンバーも参加できます。ラッキーですね。まぁそうなるようにゆりっぺさんが仕向けたのですが、それについて言及するのは野暮でしょう。
おや、戦線メンバーも続々と会場に集まっているようです。皆さん、NPCの制服と仮面を着用しているので、一度見逃したら探すのに苦労しそうです。
ちなみに私は参加してません。パーティに向いている性格ではないですしね。
なので私は、体育館の2階にある簡易的な放送室のようなところから会場全体を見渡しています。特に何かをお願いされているわけではないのでこんなところから監視する必要はないのですが、まぁ癖ですね。
ステージから聞こえてくるひさ子さんのアコースティックギターによる心地いい演奏に耳を傾けつつ会場全体を見渡していると、天使らしき人物を発見することが出来ました。小柄なので返って目立ちます。
ゆりっぺさんもその存在に気が付いたのか、天使に近づいていき、何もやましいことなど無いかのように話しかけました。
仮面をつけてるとはいえ声でゆりっぺさんだと気が付きそうですが、そんなことは無いみたいですね。相変わらず天使は少し抜けているようです。
……それにしても、愛上さんがいませんね。
全然いなくていいんですが、いなかったらいなかったで不安です。この隙に寮が全焼とかしていないといいんですが……。ほんとに。まじで。
もしかしたら、馬に乗って登場して場をめちゃくちゃにするとか、そんな感じのことをするかもしれません。……やはり愛上さんと幼子は目の届くところに置いておくのが吉ですね。
そんな時、入り口の方で誰かが揉めているような様子が確認できました。角度的にちゃんとは確認できませんが、おそらく入場のルールなどを守れていないのに強行突破でもしようとしているのでしょう。
どうせ愛上さんだろうと思ってそちらの方を見た瞬間、思っていたのと違ったものが体育館に入ってきました。
それは、真っ赤なスポーツカーでした。
会場内に3mほど侵入すると運転席から一人の男性が下りてきました。言わずもがな、愛上さんです。会場に車で侵入するなと言いたいです。彼は既に仮面をつけており、さらにはタキシードまで着込んでいた。相当気合を入れてきたことは分かるのですが、かなりの逆効果ではないかと思います。
おや? よく見たら仮面じゃないですね。なんか四角くて薄いです。まるで紙を顔に張り付けているような感じです。
私は手元にある双眼鏡を通して愛上さんの顔を覗き込みます。そこにくっついていたのは、"仮免" でした。仮面と仮免を間違えたという小ボケだろうが、そんなことより「仮免でスポーツカー運転するな」のツッコミが勝ってしまいますね。
そんな愛上さんですが、意外と周りに女子たちが集まってきています。
あんなのがいいんですかね。NPCの感性はいかれているのでしょうか。それともスポーツカーだけに惹かれているのでしょうか。しょせん金ですかね。
「はっはっは、いやいや、参っちゃうなぁ」
愛上さんはその有様に笑みを浮かべながら、全然困ってなさそうにそう言った。
てっきりそういうのには興味ないと思ってましたが、意外とデレデレするんですね。その割には私やゆりっぺさん、椎名さん、天使などといるときにああいう面は出てきませんね。出したら多分殺されますけど。
愛上さんはへらへらと笑顔を浮かべながら、後部座席の扉を開けて何かを探してます。十分にがさがさと後部座席をいじった後、扉を閉めてこちらを向いた愛上さんのタキシードには、6匹の小さなイルカが張り付いていた。
「うわぁ、かわいいイルカですね。お名前はなんていうんですか?」
NPCの女子生徒が、何もおかしなことなどないかのように話しかけます。
おいおい、まじかよですよ。
おっと、驚きのあまり口調が崩れてしまいました。
それにしても、なんであんなヤバい奴に積極的に話しかけられるのでしょうか。むしろ一生懸命に避けると思うんですが。
これ、ある意味NPCかどうかの指標になりそうですね。NPCは愛上さんに近づく、人間だったら絶対自分からは近寄らない、的な。
「イルカの名前ですか? こいつが『高さ』でこっちが『幅』、この太ももに付けてるのが 『奥行き』で背中のこいつは『重さ』だ」
くそみたいな名前だった。愛情のかけらも感じられません。もし私がそんな立体の構成要素みたいな名前を付けられたらどうしましょう。『遊佐高さ』。絶対に嫌ですね。韻を踏んでいるのもマイナスです。普通の名前を付けてくれた親に感謝です。
「へ~変わった名前なんですね。この両肩についているイルカは何て名前なんですか?」
「こいつらは双子でね。名前は『#5』と『#6』だ」
「なるほど、揃ったお名前にしてるんですね」
もっと愛情のない名前を付けられてるイルカがいた。せめて統一感は持たせましょうよ。余ったからしょうがなく付けたみたいに聞こえますよ。
「ふぅ、さすがにちょっと重いな。すみません、この辺にイルカ置きはありますか?」
「え? なんですって?」
愛上さんは近くにいた運営っぽい生徒に謎のモノを要求しだした。イルカ置きなんて言葉自体、この世で彼が初めて行ったのではないでしょうか? ここがこの世かどうかは議論が分かれるところですが。
「すみません、そのようなものはなくてですね」
「そうなんですね……、ってなんだ、ここにあるじゃないですか」
そういって愛上さんは食事が置いてあるテーブルに近づき、オムライスにイルカの口をぐさぐさと刺していった。
刺さった6匹のイルカは背筋もぴんと張っており、見ようによってはそう言う装飾に思えますが、あれをそんな風に見えてしまう人とはお近づきにはなりたくないです。
無理やりイルカを刺し終えると、やり切った表情を浮かべ振り返る愛上さん。しかし、先ほどまでいた女の子たちはもういません。
最初のイルカを刺した時点で怯えてどこかに行ってしまいました。離れたのは確かに正しい判断かと思いますが、さっきまで愛想振りまいてたのを考えると、怖がる基準が良くわからないので逆に怖いです。
「まったく、しょうがないなぁ」
愛上さんはジャケットのポケットからリボルバーを取り出して、1人でロシアンルーレットをやり始めました。いくら暇でもそんなことをする人間はいません。あなた以外は。
あ、弾丸が発射されました。6発目でついに引き当ててしまいました。というか本来の装填数が6発なのに、なんで5発目で止めないんですか。絶対死にますよ。
愛上さんはその弾丸で死亡しましたが、楽器を持って通りかかった岩沢さんと新木さん(新しくバンドに加入したNPCのドラムの方です)にステージの方まで引きずられていきました。どうやらバンドでの演奏を開始するようです。
4人が演奏を開始すると、会場の空気はさらに盛り上がりました。といっても、熱狂して会場が騒がしくなったのではなく、皆さんの内に秘めてあるボルテージが静かに上昇した、と言った印象です。
愛上さんも、さっきまで意味不明な行動をしていたのに、音楽をやるときは普通になるんですね。普段からこれくらい大人しいと助かるのですが。
おや、そうこうしているうちに、ゆりっぺさんが天使に投げ飛ばされたね。天使と踊ろうとするからですよ。彼女、馬鹿力なんでああなりますって。
まぁ、その犠牲が一般生徒ではなくゆりっぺさんだったのは不幸中の幸いでしょう。
そんなおふざけ空気の漂っていた時でした。
「やめてくれ……っ‼」
日向さんの悲痛な叫びが私の耳に届きました。
そちらは全くのノーマークだったので何事かと思って目を向けると、日向さんの目の前には大人しそうな女子生徒がいるのみで、他に気になる点はありませんでした。
日向さんは自分が叫んだことに今気が付いたのか、あたりを見渡し、その空気に耐え切れなくなり、体育館から出ていきました。
他の戦線メンバーも気が付いたようで、大山さんや高松さんが日向さんを追いかけ、松下さんは件の女子生徒に話を聞いてます。
急なシリアスに私はついていけなくなっていましたが、頭をフルフルと左右に振り、無理やり切り替えます。
私も追いかけようかと検討しましたが、現場で既に適切な対処もとられているようなのでとりあえず遠くから様子を見ましょう。私は行ったからといって状況が好転するとも思えないので。
とはいえ、やはり少し心配ですね。もう少しだけ近づきますか。
話し声が聞こえるくらいの距離まで近づくと同時に、別の男子生徒も日向さんのところに到着しました。彼、松下さんは女子生徒に話を聞いていたようで、それを日向さんに伝えると、彼は憑き物の落ちたような表情になりました。
あれならもう大丈夫そうですね。
さて、このままでは特にオチもないので、いきなり愛上さんに罵詈雑言でもぶつけることにしますか。
張り切ってきましたよ。どういう反応をするか楽しみです。
罵詈雑言をぶつけてきました。愛上さんの反応は「首が伸びる」でした。
罵詈雑言を言うほど、首が伸びて言って、最終的には体育館の天井を突き破ってしまいました。カスのピノキオですか?
私の予想は「穴があったら入りたいとか言って、急にあたりを掘り出す」だったので外れて少し残念です。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
楽しみにしていただいていた方々には申し訳ないのですが、一度ここらで更新ペースを落とさせていただきます。
今後の展開につきましては、きちんと考えております。
エタらないよう、自身のペースで進めていきますので、これからもよろしくお願いします。