かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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4、回想など

「おいおいゆりっぺ、ようやくそいつが話そうとしているときに何してるんだよ」

「何よ、意味わかんないこと言うこいつが悪いんじゃない」

「貴様、ゆりっぺに生意気な口をきいたな?」

 

 日向君が皮肉っぽく言うと同時に野田君がハルバードを日向君の眼前に構えたが、ゆりっぺの合図と共に渋々取り下げた。

 目の前にある出来立ての死体の胸からは血がどくどくと流れ続けている。この世界にきて結構経つが未だにこういうのには慣れない。

 

「とりあえず、生き返るまで待ちましょう。それにしても彼、少なくともNPCではなさそうね。まぁおおよそわかっていたことだけど」

「問題はその先だろう。こいつが敵か味方か、だ」

 

 チャーが重苦しくそう言うと、先ほどまでにふざけた雰囲気が少し締まったような気がした。

 

「そうね、大山君はどう思う?」

「僕は、そうだなぁ……。少なくとも天使と彼が仲間だとは思えないかな。反抗的みたいだし」

「俺もそう思うぜ。ちゃんと話せば味方になってくれるんじゃないか?」

「ふん、どうだか。こいつは俺たちにも反抗的だったぞ」

「そこは、ほら。敵の敵は味方理論でうまいことやりましょうよ。ね、日向君」

「俺がやんの⁈」

「すでに気に入られてるじゃない。一人だけグラタン貰ってたし」

「麦茶味のな」

「っ! おい、起きるぞ」

 

 椎名さんのその言葉に僕たちはいっせいに死体の方を向く。

 

「早すぎないかしら⁈ まだ5分も立ってないわよ!」

「お前ら、構えておけよ。俺らはこいつを殺した、いわば敵対者だ。こいつにいきなり殺されても文句は言えんぞ」

 

 チャーの鋭い言葉とは裏腹に、すくっと緊張感もなく彼は起き上がった。

 

「ふぅ、いきなり殺すなんてひどいよ。この胸ポケットに仕舞った8が無かったら、俺の体も無事では済まなかっただろう」

「いや、無事で済んでないぞ。めちゃめちゃ血ぃ出てたぞ」

 

 彼は日向君を無視して胸ポケットから8、ではなく4の形をした何かを取り出した。

 

「あぁぁぁぁぁ! さっきの銃撃で8が欠けて4になってるぅぅぅ! よくも、よくもこんなひどいことを!!」

「なんか、ごめんね……?」

「いや、そうはならないだろ」

 

 血の涙を流しながら叫ぶ彼に僕は反射的に謝ってしまった。日向君は冷静だった。僕たちが彼への対応に困っていると、椎名さんが彼にゆっくり近づき屈むと、頭に手をぽんと置いた。

 

「それは貴様にとって大事なものだったのだな。すまなかった」

「うぅぅ、あんたぁ、わかってくれるがやぁ?」

「あぁ。痛いほどわかる」

「おお、意外だぜ。椎名っちが慰めるとは」

 

 確かに意外だ。まだ、出会ってからそこまで経過していないが、そもそも彼女が人に積極的に話すことさえ見たことがなかった。きっと生前にあった何かの琴線に触れたのだろう。だからこそ、微妙にツッコミづらい。

 

 愛上君はしくしくと泣きながら、パク、と彼はその4を頬張った。

 

「えぇぇ! それ食えんの⁈ 一体何なんだよ、その4は!」

「心配すんなって。これは食用の4だから、体には無害なんだ。あの7とは違ってな」

「答えになってねぇ! 食べる用途の数字があってたまるか! それに7がお前に何をしたって言うんだ……って違う違う! また話が逸れてる! そんなものはどうでもいいんだよ!」

「確かに7ってラッキーナンバーの割にはおいしくなさそうだよね。ニッチを突こうとして失敗したみたいな味がしそう」

「うおぉい! 共感すんな、大山! 頼むからお前だけはこっち側にいてくれ」

 

「マジで話が進まないわね。ちょっと面倒になってきたわ」

 

 ゆりっぺが頭を抱えながらつぶやいた。無理もないよね。僕だって彼と同じクラスじゃなかったらとっくに音を上げていたと思うよ。

 会話がいったん切れたあたりで、愛上君が頭をぽりぽりとかいて話し始めた。

 

「まぁ、そろそろいいだろ。つまるところ、俺にあんたらへの敵対の意思がないことを示せばいいのかな?」

「そうね、それが前提条件ね。次点で、あなたのその意味不明な力のことも話してくれるとありがたい」

「そうなると、やっぱり回想に入ったほうが早そうだな」

「今度こそ頼むぜ。俺はもう1週間分の体力は使ったぜ」

「任せな。ほわんほわんほわ~ん」

 

 愛上君が腕を組んでほわほわ言い出すと、彼の頭からもくもくと煙が出てきて、その煙の中に映像が投影された。古い漫画の回想そのものだった。

 

「ほわんほわん、って効果音じゃないのか? 自分で言ってるやつ初めて見たぞ」

「日向君、いい加減にツッコむのをやめなさい。もたないわ」

 

 

 

 

「あ、映像が始まった。」

 

 映像の中で、校舎の外に寝転がってた愛上君が目を覚まして体を起こした。きっとこの世界に来たばかりなのだろう。

 

『ここは一体どこだ? 俺はさっきまでクジャクの永久脱毛をしていたはずなのに……』

 

「そんな状況あってたまるか!」

「あったとしたらその回想からやってほしかったね」

 

 回想での愛上君の発言に日向君とゆりっぺがツッコミをいれた。さっきツッコむなって言われたばかりなのに元気だね〜。

 

 

『あなたは死んだのよ。ここは生前にまともな学生生活を送れなかった子供たちが集まる場所なの。あなたも、ここで真面目に学園生活を送っていれば、きっと成仏できるわ』

 

「っ! 天使が出てきたわよ!」

「つっても、ここまではよくあるパターンだぜ。俺もこんな感じだったしよ」

 

『学校? こんなブブゼラの一つも生えていないようなところがか? そんなん信じろって方が無茶だぜ』

 

「どう思う日向君」

「むしろそんなところを学校だって信じる方が無理だろ」

 

『いえ、ちゃんと生えているわ。ほら』

 

 そこには花壇いっぱいに広がるブブゼラ畑があった。

 

「「生えてんのかい!!」」

「きれいにハモったね。流石設立者2人は違うね」

「くそ、俺もゆりっぺと一緒に叫びたかった……」

 

 野田君の変な願望は無視された。彼のためにも、その願望は実現されないでほしい。

 

『あ、本当だ。じゃあ信じるしかないな。でも、俺普通に学園生活送ってたぞ。死んだのも、多分普通に電車事故だ、と思うし……?』

『そうなの? じゃあ、とりあえず授業を受けてみたらどう? きっと何をしたら成仏できるか、自分でわかるようになる日が来るわ』

 

 意外と回想内容は普通なんだね。さっき日向君も言ってたけど、この学校にいる人間のほとんどがしたであろう会話を普通にしているように聞こえた。

 

『万物を理解した。とりあえずそうするよ。じゃあ次の回想行きますね。映像切り替わりまーす!』

 

「おいおい、ちょっと待てー! なんで回想のお前が回想であることを理解してるんだよ」

『素敵やん?』

「回想で返事しないでくれますかねー⁉」

「まぁまぁ日向君、どうせブブゼラのあたりから本当の回想ではないことは分かっていたでしょ」

「いや、最初のクジャクの永久脱毛の段階で気づけよ!」

 

 

 そして場面は切り替わって、焼却炉の前で何かを山のように積んでそこに転んでいる愛上君が映っていた。

 

『はぁ、せっかく異世界転生したのに、何もなくてつまらないな』

 

「あ、始まったわよ」

「異世界転生って解釈なんだな。あながち間違ってはないけど」

 

『俺にできることと言ったら、泥を桂馬に変えることだけだし、なんというか地味だよなぁ』

 

「つまり、こいつは将棋の駒の構造を完璧に理解しているってことだな。棋士だったのか?」

「桂馬にできるなら金とか歩にもできるだろ」

「出来たところで、だけどね」

 

『はぁ、もっとマンガみたいなことが出来るようになりたいなぁ。おや、生徒会長じゃん。どうしたんですか?』

『あなたを探していたのだけれど、なんでそんな桂馬まみれなの?』

 

 愛上くんは山のように積まれた桂馬に埋もれていた。

 

「声に出したい日本語だな。桂馬まみれ」

「言ったところで何にもならないわよ」

 

『これをあなたにあげるわ』

『なんですかこれは』

 

 愛上君はそう言って天使の差し出した光の球を受け取った。電球などではなく、本当にただ発行しているだけのナニカだ。本当にこういう形のものをもらったのか、それともここも嘘の回想なのか、僕には判断できない。 

 

 でも、これはもしや……?

 

『これを使うととても不思議な力が使えるようになるわ。あなたに渡すよう言われたの』

 

 

「きたー‼ 神フラグよ!」

「おいおい、ほんとに神がいたのかよ」

「これはとんでもない展開になったきたね!」

「なるほど!! つまりどういうことだ!?」

「分かんないなら叫ぶなよ」

 

『俺に? なんで? 誰から?』

『さぁ? じゃあ、私はこれで』

『おう、よくわかんないけど、ありがとう!』

『……どういたしまして』

 

 そこで映像はぶちっと切れて、あたりには煙だけが残った。

 終わると同時に、ゆりっぺは愛上君に駆け寄って思いっきり肩を掴んだ。

 

「ねぇ! あの時天使にもらったやつ! あなたはそのおかげでそんな変な力が使えているのよね!? どうなの?!」

「うん、そうだよ。手に入れて以来いろんなことを試してる。主たる目的はかめはめ波を撃つことだけど……」

「私にそれをよこしなさい! 今すぐに!!」

 

 そういってゆりっぺは、彼の頭に銃を突き付けた。

 それに珍しく愛上君が目を見開いて驚きの表情を浮かべていた。よく見たら額に一筋汗が流れていた。

 その光景に、さすがに日向君が止めに入った。

 

「お、おい、ゆりっぺ、少し落ち着けって。いくら何でも横暴だぞ。それじゃ、やってることがほとんど強盗と一緒だぞ」

「ごーとうと、いっしょ、……っ!」

「っ! ゆりっぺ!」

 

 ゆりっぺが急に力なく崩れ落ちた。僕たちは慌てて駆け寄る。手を貸す前にゆりっぺはすぐに自力で立ち上がったが、表情は険しいままだった。

 

「大丈夫? ゆりっぺ?」

 

 僕がそう問いかけると、頭を数回振った。何か嫌な記憶でも刺激してしまったのかもしれない。

 

「大丈夫よ、大丈夫。それより、あの天使からもらった力よ。早く、それについて、聞き出さないと……」

「ゆりっぺ、心配するな。俺がついてる」

「大丈夫だから‼ ちょっと黙ってて!」

 

 そういって野田君に持っていた拳銃を投げる。しかし、当てる気がなかったからか、銃は野田を逸れ、ハルバードに一直線に向かっていった。

 

「あ、まずい! この煙は可燃性なんだ! 火花が!」

「そんなもんで回想するんじゃ…っ!」

 

 ハルバードと銃が衝突した途端、あたり一帯が爆発した。

 

 

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