かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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久しぶりの更新なのでオリ主の紹介

◆愛上くん
・ギャグキャラ
・「Angel Player※」を何故か持っている
(※天使がガードスキルを発動するのに使用するソフト)
・愛上くんがAPを持っていること、APで何が出来るかは現状天使と彼しか知らない
・1度も一人称視点や内面描写が書かれていない


42、ローテンションシンドローム前編

「ローテンションシンドローム?」

 

 ゆりっぺの突然の発言に首をかしげる一同。かくいう俺も眉をひそめて脳内にあるページ数の少ない辞書でローテンションシンドロームを調べる。

 

「ええ。ちょっと確認したいことがあるの。だからみんなには今日1日ローテンションで過ごしてもらうわ」

「説明がなさすぎる……!」

 

 疑問に対する答えになってなさ過ぎて低いトーンでツッコんでしまった。ある意味ローテンションだったので、奇しくも議題には即してしまった。

 というか、今この場、つまり校長室には俺以外にも戦線メンバーが全員いるのに(岩沢とひさ子はいないが)なんでみんなツッコまずにいられるんだよ。

 

「俺たちがローテンションで過ごすことで何がわかるというのだ?」

 

 従順な松下が珍しくゆりっぺに質問をする。口調から察するに、反抗とかではなく純粋に疑問なんだろうな。

 

「愛上君がNPCかどうかよ。決まってるじゃない」

「は?」

 

 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。そんな表情のまま目線だけ周りに向けるとおおよそみんなも俺と同じような顔をしていた。

 

「そろそろはっきりさせておいた方がいいと思うのよ。つまり、彼がこっち側の人間なのか、向こう側の人間なのか」

「ちょ、ちょっと待てよ、ゆりっぺ! あいつは人間だろ! 他のNPCとは違うし、ってか違いすぎるけど……、何より死んだ記憶があるって言ってたじゃねーか!」

「ええ、そうね。でも、本人が言ってるだけでしょ? 私は、彼は天使と同じ特別なNPCじゃないかと疑っているわ」

 

 もちろん私達も自分が死んだことの証明なんてできないけど、と神妙な面持ちで付け加えるゆりっぺだが、今はそれどころじゃない。

 みんな俺と同じ気持ちだと思ったが、どうやら違うようだ。

 

「確かに人間には到底できないようなことばっかりしているのは事実だな」

「天使も何もないところから剣を出しますし、共通点はありますね」

 

 松下五段と高松がゆりっぺの意見に賛同する。

 

「反応もカオス一辺倒だし、ある意味機械的なのかも……?」

「そういやあいつ、高校に上がる前にここに来た、みたいなことを言ってた気がするな。あんときゃ特に疑問持たなかったけど、もしかしてこの世界に元々いて進学してきたって意味なのか?」

 

 大山と藤巻まで……!

 しかも藤巻に至ってはそれっぽい推測までしちゃってるぜ。

 

 この状況で野田が「あいつの母親に似た存在が学校にいた」と言ってしまえばあいつはもっと不利な状況になる。あんなやつでも友達だし、戦線メンバーと溝が出来るのは個人的には避けたい。

 そう思いながら野田の方に目を向けると壁に背中を預け、何やら思案してるかのような表情で無言を貫いていた。愛上を庇ってるのか? あいつのことだし、単に状況を理解できていないという可能性もあるが……。

 

 ちなみに、反対側の壁にいる椎名も壁に背中を預けている。ゆりっぺの後ろにいる遊佐同様、女子二人は何も言葉を発しなかった。

 

 正直なことを言うと、俺もあいつの正体は明かしたいと思っている。

 

少なくとも、なんで天使と同じ力を持っているのかはちゃんと知りたい。出会った最初の方に映像として見せられたがどうにも信憑性がない。そもそもその映像の背景にブブゼラとかが咲いてた気がするし。

 それに、あいつの母親似の教師の存在も謎だ。俺の高校時代の野球部マネージャーに似た存在しかり、何かこの世界についての手掛かりになるかもしれない。

 

 ともかく、あいつが敵だとは思えないが、あいつについて解明したいことがあるのは間違いない。みんなが愛上について疑いの心があるなら、逆にこういった場できちっと晴らしておくのも大事だし、一石二鳥だ。

 

 俺が意を決した表情をすると、ゆりっぺはにやりと笑った。

 

「決まりね」

 

 

 

 

 

「でもよ遊佐、なんでローテンションで過ごさないといけないんだよ」

「ゆりっぺさんが言っていた通りです。普段とあまりに違う行動には特殊とはいえNPCでは対処できないのではないかと」

「つまり、普段の俺らはハイテンションでやかましいってことか……。俺はそうでもないと思うんだけどな」

 

 あいつらと一緒にされるのは心外だぜ。

 

「いえ、日向さんが一番ハイテンションでやかましくて暑苦しくて邪魔くさいです」

「そこまで言ってなくね⁈」

 

 遊佐の軽い口調から発せられる重い一撃に早くもダウンしそうになるが、この場合ダウンしたほうがテンションも下がっていいかもしれないと思い始めてきた。

 

 あの後、ローテンションシンドロームが俺たちに下され、「今日1日をローテンションで過ごさないとひどい目にあうから気を付けてね」と笑顔で校長室から見送り出された。

 

 今までテンションを意識して生活したことがなかったのでどうしていいか分からず、とりあえずその辺の廊下の窓に肘をついて項垂れていたところに遊佐に話しかけられたという次第だ。

 

「遊佐はいいよな。普段からテンション低いからそのままでいればいいんだし」

「そうでしょうか? 普段は結構アゲアゲなつもりなんですが」

「冗談きついぜ……。ん? あれ、愛上じゃないか?」

 

 遊佐のボケ(?)を聞き流しつつ何となく窓の外に視線を向けると、そこには手に持っているトースターから食パンを取り出して中庭の空中に等間隔に並べている愛上がいた。

 NPCがあんなことするとしたら、あれを作り出した神は狂ってるとしか言いようがないな。

 

「普通の人間でもあんなことはしませんよ」

「ナチュラルに心を読まないでくれませんかねえ‼︎」

 

 パンを並べている愛上に気を取られていたが、よく見るとその進行方向には大山と藤巻がいた。二人とも空を見上げて突っ立っており、愛上には気が付いていない様子だ。

 

 何かぶつぶつ言ってるようだが、遠すぎて聞こえないな。

 

 近づこうかこのままの距離を維持しようか、そんなことを遊佐に相談しようとそちらを見ると何やら遊佐がアンテナのような機械を取り出していた。

 

「なんだそれ?」

「指向性のマイクです。この距離では彼らの声は聞こえないので」

 

 そう言ってマイクから出ているイヤホンの片耳を俺に渡す遊佐。

 

 その仕草に少しドキッとしつつも、感情のこもっていない眼で「早く取れよ」と訴えてきているので、俺はため息を一つつきイヤホンを耳に入れた。

 

『あれ、大山先輩と藤巻先輩じゃん。どうしたのさ、ボーっと空なんか見て。思考停止が効能の温泉にでも入ったの?』

 

 おぉ、ちゃんと聞こえるぞ。

 しかもタイミングいいことに、大山たちとちょうどバッティングしたとこみたいだ。

 

 大山たちもそこで初めて愛上に気が付いたようで、ゆっくりとそちらの方に首だけを動かして顔を向ける。

 

『あぁ、うん……おはよう』

 

 大山の目、なんか死んでねぇか?

 なんか、心なしか頬もこけて見えるぜ。

 

「あれが大山さんなりのローテンションのようですね」

「ローテンションっつうか、ありゃただ病んでるだけみたいだな」

 

 そんな大山に違和感を覚えたのか、愛上は首をこてんと傾けて手に持っていた食パンを大山の方に差し出した。

 

『どうしたの? 死んだ目になる効能の温泉にでも入ったの? お腹減ってるなら食パンあるけど』

『うん、大丈夫……。死にたくなったらもらうよ。はは、もう死んでるんだったね』

 

 大山は眉一つ動かさず、低いトーンでそう返す。

 てか、さっきから物騒な温泉ばかり出てくるな。そんな効能の温泉があってたまるか。

 

 流石に不審に思ったのか、愛上は今度は隣にいた藤巻に話を振った。

 

『藤巻先輩、大山先輩どうしちゃったの? 毒食パンでも拾い食いしたの?』

『はい、藤巻です。問題ありません』

『そんな淡々とした喋り方だっけ?』

『了解です』

『せめて会話はしてくれ!』

 

 藤巻は大山とは打って変わってはきはきと声を出している。しかし、声に一切の波がないので、いつものチンピラのような喋り方を知っているだけに違和感が半端ない。

 というか、あの喋り方って、

 

「遊佐の真似じゃないのか?」

「……、私は皆さんからああ見えているのですね」

 

 普段と変わらぬ口調だが、どことなく悲しげな声を出す遊佐だった。

 

『二人とも変だぞ。リーダーに精神を侵されたのかな』

 

 愛上が頭を掻きながらそんな2人を心底心配するような表情でそう問いかけた。

 

「奇しくもいい線いったな」

「日向さん、今の発言ゆりっぺさんに報告しました」

「仕事が早すぎる!」

 

 俺の超絶罰ゲームが決まったと同時に、愛上もその場を離れようと踵を返した。あまりに2人のリアクションがなさすぎるので、そっとしておいた方がいいと判断したんだろうか。

 

 その時、ちょうど愛上のそばに松下五段が通りかかった。いつもと変わらずズンズンと歩いており、大山の時のようにぱっと見でわかるローテンションさは感じられない。

 

『あ、松下先輩、ちょうどよかった。あの二人ちょっと様子がおかしいんだけど、戦線ってヤバい効能の温泉とか作ってないよね?』

 

 愛上が松下の方へ小走りで掛けて行ったが、松下五段はそれを意に介さずに歩き続けた。

 

『インド、ドミニカ、カザフスタン……、だめだ。クロアチア、アメリカ、カザフスタン……、ああこれもだめだ』

 

 なぜか国名しりとりを失敗し続けながら。

 

「あれって、ローテンションなのか?」

「彼の中でテンションの低い人とは国名しりとりを一人でやり続けるような人、ということなのではないでしょうか?」

「どんな偏見だよ松下五段‼ お前の生前が不安になるぜ!」

 

 そんな松下五段を見た愛上はというものの、小走りの姿勢のまま完全に硬直していた。俺たちでさえ引いているのだから、当たり前と言えば当たり前だ。

 

 

 なんかごめんな、愛上。

 




3か月も空いてしまいすみません。
明日の18時に後編を上げます。

補足:
無事就職活動が終わりましたー!
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