かめはめ波を撃とうとしたら、新世界を作ってしまった   作:おこめ大統領

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4話の続きです。


5、飼い犬など

 目を覚ますとそこは知らない天井ではなく、めちゃめちゃ知ってる天井だった。見覚えしかなかった。なにせ、僕の部屋の天井だったのだから。

 直近の記憶を手繰り寄せると、なにか爆発に巻き込まれた気がしてならないけど、今着てる服のボロボロさを鑑みたら、その予想は合っているに違いない。

 

 あれ、なんで自分の部屋にいるんだっけ。

 

 体を起こすと、日向君がそれに気が付いて、声をかけてくれた。

 

「お、起きたか大山。随分とお休みだったな」

「うん、日向君こそ無事でよかったよ。あれからどうなった?」

「それについては、俺から説明しよう!」

 

 僕と日向君の会話に突如として別の何者かが入ってきた。その声で気が付いたが、部屋には戦線メンバーが勢ぞろいだった。あと、黒くてアフロのサンバみあふれる人もいたけど、彼は知らない人だ。今声かけてきたのも彼だけど、きっと今初めて会ったサンバに違いない。

 

「いや、おれだよおれ! 愛上だよ! さっきの爆発で黒焦げになって、頭がアフロになっただけで、ソウルまでサンバに売ったりはしてないよ!」

「へぇ、人間て爆発に巻き込まれると、ほんとうにそんな風になるんだ~。てっきりトムとジェリーの世界だけかと思ってたよ」

「俺たちまで一緒にすんな、そんなわけないだろ。トムとジェリーとアイーガだけだよ」

 

 日向君が訂正を入れた。やっぱりそうだよね。僕もそう思ってたよ。

 

 見渡すとゆりっぺや野田くんなど、さっきまで一緒にいたメンバーがぼろぼろの姿で座っていた。どうやら爆発に巻き込まれた後、みんなでこの部屋に来たようだ。

 

 日向君の部屋でもあるので、おそらく彼の主導だろう。

 

「誰がアイーガだ。そんな外国チックな名前を付けられたら、ますますサンバに寄っちゃうだろ! ほんとは今すぐ踊りたくてしょうがないのを我慢してるんだから、勘弁してよ!」

 

 彼はそう言って、マテ茶と書かれたラベルの飲み物を数口飲んで、頭にでっかいクジャクの羽みたいなのを付けた。

 

「めちゃめちゃサンバに魂売ってるじゃん!」

「大丈夫だ、大山君。サンバはサンバでも、これは『散婆』だ。今から片っ端からばばぁを蹴散らしてくるぜ!」

 

 そう言って彼は窓を開けて飛び出していった。

 ここ、上階なんだけど。

 

「しまったぁぁぁ! 逃げられちゃったじゃない! 大山君のせいよ!」

「えぇぇ! 今のどこに一体僕のせいがあったんだ!」

「多分すぐ戻ってくるだろ、あ、ほら」

 

 日向君がそういうと彼は全身に青あざやこぶ、更には流血まみれで泣きながら戻ってきた。ここ、上階なんだけど。

 

「ばばぁ、強かった……」

「負けちゃったの⁈ てか、ほんとに戦ってきたの⁈」

「首が8本もあるのはずるいよ。こっちは一本で正々堂々戦ってんのに……」

「あれ、僕の思ってるばばぁ像と食い違うぞ?」

「誰にやられたかはわからないけど、夜襲仕掛けたやつが正々堂々とか言うなよ」

 

 日向君のその指摘で気が付いたが、外はすっかり暗くなっていて。僕たちが愛上君と遭遇してから6時間以上経過してるようだ。そんなに長い間気絶してたんだ、僕。もしくは、死んでたのか。

 

「はいはい、茶番はここまででねー。たかが質問を2個答えるだけにどれだけ時間かかってるのよ全く。もう日が暮れちゃったじゃない」

 

 ゆりっぺがいつもの調子でそう言った。爆発前のあの鬱屈とした感じはもう感じられないから、きっと一旦は整理がついたんだろうけど、やっぱり心配だな。

 僕のその視線に気が付いてか、ゆりっぺが「大丈夫よ」と言った。彼女がそういう以上、きっと大丈夫なんだろう。おそらく今は。

 

「それもそうだね。で、なんだっけ? 『俺が君たちの味方かどうか』『僕の力はいったいなんなのか』の二つだっけ? 回想見せたじゃん。あの可燃性のやつ」

「みたけど、あれってどこまで本当なの? それに、アレを見ただけじゃわからないこともまだあるわ。あと、次は絶対不燃性の回想にしなさいよ」

「そうは言うけどさぁ。いきなり来てそんなこと言われても答えられないって。ちなみに、あの回想は大体真実だよ。少なくとも、今の君たちに見せれる範囲では」

 

 意味深な発言をする愛上くん。ああ、やっと真面目モードになってくれたよ。ぼろぼろのサンバスタイルなのでいまいち締まらないけど。

 

「大山、愛上が真面目っぽいこと言ってるぞ」

「感動だね。ついに僕たちここまで来たんだよ……!」

「ちょっとあなたのせいで私の仲間たちが変な感動しちゃってるじゃない?! 謝りなさいよ!」

「ごごごごごめんなさぁっぁいぃぃぃ! ぁぁぁぁっぁあああああ!!」

 

 突然、引くほど大声で引くほど顔を顰めて服をびりびりに破きながら地面にヘッドバンキングして謝りだす愛上君。

 みんながみんなして引いてると、愛上君が急にすっと真顔に戻った。

 

「謝るときは相手が引くくらいの勢いでやる。すると相手は許さざるを得ない。これが、俺の処世術だ」

「処世できてないから死んだんじゃないか?」

「ひどいね、日向君。傷ついたよ。どれくらい傷ついたかって言うと……」

 

 彼はそう言いながらテーブルの下から小型のテレビを取り出して電源を付けた。

 ここ、僕と日向君の部屋なんだけど、勝手に変なものを持ち込まないでほしいな。

 

 テレビには、高そうなレストランにいる愛上と料理を運んできたウェイターが映し出されていた。

 ウェイターが愛上の前に皿を置く。見た感じは、パスタだろうか? いったい何を見せられているのだろう。

 

『おいしそうですね。今日のメインはなんでしょうか?』

『そんなことより、お前んちの飼い犬、逃がしておいたから』

『ガーン!』

 

「これくらい傷ついたんだぞ!!」

「想定しにくいよ! ねぇ、日向君!」

「え? あ、あぁ」

 

 日向君に話しを振るも、どこか上の空だった。何か地雷を踏んでしまったのだろうか? レストランか犬の話は日向君の前ではしないでおこう。

 

「まぁ、冗談はともかく」

 

 愛上君が手を叩いて話題の転換を図った。日向君の変化に気がついてのことだろうか。意外と気が利くのかもしれない。今更そんなことをしても、ここまでの減点を考えたらほとんど無意味だけど。

 

「そもそも、敵味方も何も、俺は君らを知らないんだけど。何か有名な組織か何かなの? サインくださる?」

「あ、そういえば死んだ世界戦線の話をしてなかったわね」

「なるほど、森羅万象を理解した」

「まだなにも言ってないんだけど」

 

 ゆりっぺが未だにペースを掴めないでいる。これはなかなかの難敵だね! がんばれゆりっぺ!

 ゆりっぺが呆れながらも説明しようとした瞬間、愛上君はびしっと手のひらをこちらに向けて発言を制止した。

 

「名前から察するに! 君たちはこの世界が死後の世界だと認識し、この世界の仕組みやら生前やらに関与してきたであろう存在に復讐を誓っている組織ってわけだな」

「ほんとに理解してるじゃない‼」

「すごいよ、名前だけでここまで推測できるなんて! やっぱりただモノじゃないね!」

 

 意外と頭が回るのかもしれない。ちょっとだけ好感度が上がった。現在の彼への好感度はマイナス51くらいだ。

 

「そして、そのきっかけとして生徒会長を狙おうとするも、彼女の謎の力が強すぎて勝てない。そこで、同じく謎の力を使う俺のところに来た。、そういうことですな?」

 

「すごい! あんた、やればできるじゃない!」

「ほー、こいつはすげぇぜ! みるみる正解にたどり着いてるねー!」

「ふん、これしきの事、造作もない」

「野田君は今でもあんまり理解してないでしょ?」

 

「つまり、この俺がぎゃいんぎゃいんぎゃいんぎゃいんぎゃいんぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」

 

 急に機械音が彼の体内から鳴り響き、目がキラキラと輝いた後、口からA4サイズの紙が大量に出てきた。さながらプリンターのようだ。

 

「うわ、なんだいきなり!」

「ちょっと、押さないでよ! こんなんに近寄りたくなんてないわ。大山君、頼むわ」

「えぇぇ! なんでいつも僕なんだよ! たまにはチャーとか椎名さんにやらせようよ!」

「ほう、大山、いい度胸だな?」

「あさはかなり」

「いいだろ大山。減るものでもないし、お前が行けよ」

「精神がゴリゴリを削り減って言ってるんだけど‼」

 

 僕は恐る恐る彼に近づいていく。特に反応はなく、ひたすらに紙を吐き出し続けてる。そろりとその紙を手に取ると、そこには『アカネ、アオベエ、キスケのくいしん坊万歳!』の文字がびっしりと書いてあった。こわっ。

 

 僕は野田くんの手からハルバードをひったくり、愛上君ごと、紙をぶった切った。

 

「ふ、それはざんぞ…痛い痛い痛い! わざとじゃないと思うんだけど! 足を、めちゃめちゃ踏んでるよ、大山君!」

「ごめんねー、気が付かなかったよ。だから、次ももしかしたら気が付かないで何かしでかしちゃうかもしれないから、先に謝っとくよ。ごめんね」

 

「ひぃぃぃ! 真面目にやります! 僕は元気です!」

 

 バカ愛上がぴしっと敬礼の姿勢で声高に叫んだ。

 ちなみに他のメンバーも、少し僕から距離を取ってる。

 そんな、ひどいじゃないか。ふざけてる彼をちょっといさめただけなのに。

 

「えっとね。まぁ単刀直入に言うと、俺は君たちの味方にはなれないかな。今は何かの組織に属さず自由にやっていきたいからね。でも、何かあったら声かけてみてよ。俺にできることなら力になるからさ」

 

 にっこりと笑っていう愛上君。今度こそ、きっと本心でいっているんだろうな。

 彼の発言を聞いたゆりっぺは小さくため息を吐いた。

 

「まぁ、正直そうくるだろうなとは思ってたわ。ちなみにあなた、天使、いや生徒会長のことはどう思ってるの?」

「うーん、……遊び相手、かな? 何回も命かけたバトルもしてるし、まぁ良きライバルってかんじかな」

「なるほど、わかったわ。今日はいろいろとありがとう。時間を取らせて悪かったわね」

 

 ゆりっぺはそういうと立ち上がって少し伸びをした。爆発でボロボロの制服のスキマからおへそが見えてしまったので、とっさに目を逸らしてしまった。

 

「気にしないで。むしろ、遊んでくれてありがとうね。とっても面白かったよ。それで、結局俺たちの関係ってどうなるの?」

 

 確かに言われて気が付いた。敵でもないし味方でもない。今後彼にはどういう風に接すればいいのかよく分からない気がしてきた。

 

「そうね、同盟関係ってことでどう? 何かあったらお互いに協力し、助けあうっていう、そんな関係よ」

「それはいいね。お互いよろしく頼むよ」

 

 そういって、彼は手を差し出す。ゆりっぺもそれに握手で答える。

 

「捕まえたわ! みんな、彼から天使の力の正体を聞き出すのよ!」

 

 ゆりっぺは万力で愛上君の手を握り締めて、彼をこの部屋から逃がさないようにした。

 

「さすがゆりっぺ! やることが汚いぜ!」

「うむ。私も騙されかけた」

 

 日向君や椎名さんも称賛(?)するほどのえげつなさ。僕も思わず感心してしまった。

 

「甘い! 拙者はこれにてドロンさせていただきまする!」

 

 僕たちが感心してる隙に、彼が空いてるほうの手で地面に何かを叩きつけるとぼふんと煙が舞った。だが、あっという間に煙は消え、同時に愛上君もいなくなっていた。窓も空いてないのに、いったいどうやった煙が消えたんだろう?

 僕が咳をしながら、窓を開けて換気をすると、部屋の中から小さな声が聞こえてきた。

 

「……かっこいい」

 

 本場の忍者である椎名さんが今の移動法に感銘を受けて、今までに見たことないほど目を輝かせていた。

 

 やっぱりうちの忍者はどこかズレているみたいだ。

 

 

 




感想や評価ありがとうございます。
とても励みになります。


このペースでいったらアニメ本編にいくまで50話くらいかかるんじゃないだろうか。
せめて早く関根を出したい。
天然じゃない純粋なボケキャラというこの作品にしては珍しいタイプだし。
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