ではどうぞ〜
「ノート良し!参考書良し!筆箱良し!珈琲良し!」
只今、蓮花は久し振りに大学に向けての勉強を1人でする事に。かなり気合いが入ってるのか、準備物に指差し確認までしていた
(紅牙は用事があると言って出掛けたし、今日はのどか達とは約束してないからゆっくり勉強出来るな!)
蓮花はリビングの机に座って、優雅なひと時を過ごそうとしていたのだが
「蓮兄遊びに来たよ〜!!…ってどうしたの?」
現実は無慈悲である。神は蓮花を見捨てたのだ
突然の来訪者の顔を見ないようにして、顔を机に突っ伏してしまう始末
「ねえねえ!蓮兄開けてよ!」
庭の窓をバンバンと叩きひなたは家に入ろうとお願いする
「ナニカゴヨウカナ?ヒナタ?」
「遊ぼ!」
「これから大学受験へ向けての勉強をするんだけど…」
「蓮兄なら大丈夫だよ!頭良いから!」
そう言ってくれるのは本当に嬉しい。だけど今は、本当に追い込まれている状況なのだ。
ビョーゲンズとの戦いやのどか達と遊ぶ日々で、勉強なんて殆ど手を付けてない
今回ばかりは蓮花も心を鬼にする
「ひなた、受験はそう簡単じゃないんだよ。今回は悪いけど諦めて」
「…は〜い」
蓮花の心中を察したのかトボトボと帰って行った。
申し訳ない気持ちでいっぱいだが受験も大事
「さてと、え〜っと何々?この問題は──」
気を取り直して机に向かって問題を解こうとしたが
「ジャジャーン!」
ひなたが家に上がり込んで居た
「…もうどうにでもなって」
蓮花は両手を大きく広げた。ひなたは、犬の様にはしゃいで飛び込んだ
蓮花は完全に諦めてムード。今日もまた勉強出来ない日となってしまった
////////
紅牙はというと旅館沢泉の前に来ていた
「…行くか」
「鬼麿さん?」
旅館に入ろうとしたところで、紅牙の姿を見てちゆが声を掛ける
「何か用事ですか?」
「前言った通り手伝いに来た」
「本当に手伝いに来たんですか!?」
「旅館の人には職業体験として話がついた。悪いが案内を頼む」
「いつの間に。随分と根回しが早い…」
旅館に入ってちゆの母親である「なお」と挨拶を交わしてから着替える
「どうよちゆ!この俺の着こなし術は!」
「意外に和も合いますね」
「さぁ手伝うぞ!掃除、洗濯、料理、何でも御座れのお利口さんだ!」
(感じがいつもと違うから話しにくい…)
そんな訳でちゆの指導の下で手伝いを始める
先ずは風呂場の掃除
「にしても、この広さを1人で掃除してるのか?」
「はい」
「頑張るんだな」
「……」
ちゆの背中がむず痒くなる。集中出来て無い状態で掃除してると
「きゃっ!?」
「ちゆ!」
水で足を滑らせてしまった。偶々近くで掃除してた紅牙は、後ろから包み込む感じにちゆを受け止めた
「おい大丈夫か?」
「はい、ありがとう…ッ!?」
声のする上へと顔を上げると、思ったよりお互いの顔が近く、ちゆは驚いて紅牙の顎を頭突きする感じで跳ね上げた
「うごぉぉぉ……」
「だ、大丈夫ですか?」
「んな訳ねぇだろ!!舌まで噛んだわ!!」
「お、鬼麿さんの顔が近……恐ろしかったからよ!!」
「はぁ!?意味分かんねぇよ!!」
次は部屋の掃除
「布団はこっちへ」
「おう…って、この布団ほつれてるぞ」
「本当。今は皆んな忙しいから後で直すとして…」
「俺が直すから道具持って来い。すぐ終わらせる」
ちゆは言われた通り手芸道具を渡し、紅牙は手慣れてる事もありすぐに終わらせた
「本当器用ですね」
「見たか?見たよな!俺の手捌きを!」
「おいちゆ。わざわざ、ゆめポートまで来て買い物するものか?近くの店にあったろ」
「わたしに言われましても…」
2人は只今買い出し中。近くの店に行けばある物を、何故かゆめポートで買って来るよう言われたのだ
「あれとそれとこれだな」
「後これもです」
ゆめポートまで来たからといっても何も変わらない。只々、買い物をしてすぐに終わらせた
買い物袋を手にポート内を歩いてると、ちゆはショーケースに飾られてあるウェディングドレスに目がいく
「へぇ〜、こんなんに興味あるのか?」
「そうゆう訳では無いですけど綺麗だなと」
女の子なら一度は夢を見て憧れる純白のドレス。興味が無いと言いつつも、本音はそうでもなかった
「未来の旦那が可哀想だな」
「なっ!?それはどうゆう意味ですか!」
「お前、すぐ俺に暴力振るうだろ?旦那が心配だ」
「それは鬼麿さんが──」
紅牙はちゆの唇に指を当てて静かにさせる
「だから俺がお前の旦那になってやる」
「……えっ!?///」
突然の物言いに少し間が空いたが、すぐに言葉の意味を理解して顔を赤くする
「お前の相手を出来るのは俺だけだ」
「え、あ、あの///」
「…と言うのは簡単だ。誰がお前となんか」
その瞬間紅牙は天を見上げていた
「ちょっとはその気になっていたわたしが馬鹿でした!」
頬を膨らませてプンスカと怒るちゆは、1人何処かへと行ってしまった
紅牙はというと、殴られた顎を押さえてちゆの背中を眺めていた
(やっぱり鬼麿さんは鬼麿さんでした)
「はぁ…」
溜め息を吐きつつ歩いてると誰かとぶつかってしまった。紅牙の事を考え過ぎていた
「すみません!」
すぐさま謝って立ち去ろうとしたのだが
「ちょっと待てよ」
腕を掴まれてしまった。ちゆは嫌な予感がし、振り解こうとするが力で負けている
相手は男。しかも大人なのだ
「こっち来い」
強引に引き込まれて、ちゆは人気の無い所へ連れ去られてしまった
「まさか謝って済むと思っているのか?本当に許しを請うつもりなら!」
男はちゆの両腕を掴んで更に動きを封じた
「それなりのものを払って貰おうか」
「離して!」
振り解けない。逃げたくても逃げられない
(嫌…誰か助けて!)
迫り来る恐怖に涙を流しながら怯えてると
「何面白い事してんだよ。俺も混ぜろや」
(──ッ!)
紅牙がちゆを見つけた
「誰だ!」
「そんなお決まり文句を聞きに来たんじゃねぇよ」
紅牙は男の腕を掴んだ
「言ったろ?俺も混ぜろや」
掴む手の握力が増す。紅牙の髪色が徐々に白く染まっていく
「あが!?」
ミシミシと嫌な音を立てる。男は反撃しようと拳を作り攻撃しようとするが
「俺の女に、手を出すな!!」
紅く光る瞳が男を射抜く。それだけで相手は殺されると思う程の恐怖を感じた
「鬼麿さん…!」
紅牙は最後の言葉を冷たく言い放つ
「消えろ。蹂躙されたくなければ」
男は怯えながら走って2人の前から消えた
「全く手間を掛けさせるな」
髪色や瞳の色が元に戻り安堵の息を吐く
「帰るぞ」
素っ気ない態度で帰ろうとするのだが足止める
「…ウェディングドレスから始まった会話、一部本当だからな」
「へぇ〜一部ですか……一部!?」
ウェディングドレスから始まった会話と言うと、紅牙が旦那がどうこうと言う話も含まれているのだろう
「あの!一部って何処のですか!」
「うるさいぞ!さっさと悪い虫が付く前に帰るぞ!」
繋がれる手を見てちゆの鼓動は速くなる。そしてそれは紅牙も同じ
(チッ!やっぱり俺はコイツの事を──)
(わたし、やっぱり鬼麿さんの事を──)
((──好きになったみたいだ))
内容としては強引でした!チャンチャン!
自分の気持ちには気付いたが、相手の気持ちにはお互いに気付いて無いので片思い。
両思いなのに片思い。
ここまでの拝読ありがとうございました