ではスタート
張られていた結界が解除され、蓮花はフラフラとした足取りで上半身のみとなった紫苑に近付く
「その状態では死ぬのも時間の問題だな」
「ッ!!!」
果てしなき蒼を喚び出し怒りの波動を撒き散らす
「殺シテヤル!!バラバラニシテヤル!!細切レニシテヤル!!マトモニ死ネルト思ウナァァァァァッッ!!!」
「別に相手にしても良いが…そうしてる内に紫苑が死ぬぞ?」
「蓮兄!」
「蓮花!早く治療を!!」
ひなたとアスミの言葉で我に帰った
「約束通り今回は見逃してやる。けれど、次来る時は覚悟しろ。蓮花」
始はレンカを連れて何処かへ消えた
「紫苑!今
「もう…無理よ……」
切断された部分に翠遠の息吹を当てようとするが、紫苑は血塗れの手でそれを静止させる
「何諦めてるんだ!傷を塞げば何とかなるんだ!何とか……」
癒しの風が傷を塞ごうとするも時間が掛かる。綺麗に治療が終わる頃には大量出血で死ぬ
何をしようともう紫苑は助からない
「まさか身体を上下真っ二つにされるなんてね……そうそうない経験だわ…」
「何こんな時に悠長な事言ってるんだ!」
「こういう冗談言わないと、悲しいだけの御涙頂戴になっちゃうじゃない…」
泣き崩れていたちゆやのどかも集まった
「ごめんねちゆちゃん、あわよくば紅牙の仇も取れたら良かったのだけど…」
「天道さん…」
「…果てしない道のりだった。だけど、たかが1年も経たずして私を善の道へと示してくれた。こんな、どうしようも無い私を…」
「紫苑さんは、どうしようも無くなんか──」
「かはっ…!」
口から吐き出した血が蓮花の顔や衣服に飛び散る
「魔剣の存在を知って、プリキュア も知って、ダメな私を誘ってお手当てを共にしてくれた貴方達は、私の人生で掛け替えの無い存在となっていた。それもとても大きな存在に。命を懸けて守りたいと思うくらい…」
「だったら俺達ともっと楽しい事をしよ!のどか達だって!!」
「無理だ。私は人として取り返しの付かない事をしている。貴方達と居る資格なんて、これっぽっちも無い。バチが当たったのよ。そんな私に相応しい最後がこの結果よ…」
「許さないよ…沢山約束したじゃないか!ついこの前だって、皆んなで色んな所周って写真撮って、また来年…来年も一緒に過ごすんだ!!君の運命はここで終わっていい筈がないだろ!!」
「いいのよ…ここが私の終点。こんな私が望んだ、私の意思で望んだ、終わりの運命」
最初から紫苑は死ぬつもりで挑んでいた
しかし死ぬ運命であっても、逃げる事は無く、最後まで大切な人達を守る為に戦って散った。
紫苑にとってそれは、とても幸せな事だった
「貴方達の居るこの場所は、私からすれば眩し過ぎた。いい思い出も、頑張った思い出も、悲しい思い出も全てが眩し過ぎてもう、嫌になっていた。罪悪感に押し潰されそうになって…貴方達の事が大好きだからこそ辛かった…!」
「何を言ってるか分からないけど、大好きなら生きてよ!俺達の事が大好きなら生きてよ!!」
「私だって、生きたいわよ!!」
紫苑は涙を流していた
「でも、私には生きれない。生きたところで傷付けるだけ。お手当てなんて、私には到底無理な事だったのよ。でも、そのお手伝いをして、こんな風に代わりに傷付いてあげる事が出来る。私はそれで満足よ…」
「それじゃあ紫苑の人生傷付いてばっかりじゃないか。満足なんて……紫苑にだって幸せになる権利があるんだよ!こんな道半ばで切られて満足って馬鹿じゃないのか!?一体何がしたいんだよ!!」
「全く、その通りね。でもね、何回も言ってるけどこの運命が私の幸せなのよ。だって、貴方達をピンチから救ったのよ」
紫苑は上着のポケットから、血塗られた写真を一枚取り出した。
その写真は、いつか展望台で皆んなと撮った写真
「蒼咲蓮花、貴方は最後までプリキュア と共にお手当てを完了させなさい。それが、私の最後の願いであり、恐らく紅牙の願いでもある」
最後の思い出を噛み締める様に写真を強く握り潰し、そして蓮花の胸へと押し付けた
「俺達はこれからどうすれば良いんだよ。お手当てするにしたって、紫苑や紅牙が居なければ何も出来ないよ…」
「ねぇ蓮花、私の可愛い蓮花。貴方にはのどかちゃん達が付いてる。最初に戻るだけ。何も心配なんて無いわよ。いつも通り、お手当てして、地球を元気にすれば良いのよ」
涙を流す蓮花を、優しく、力も無く、震える指先で拭う
「私は自分の目的の為に人を殺し、人を利用し、偽善者ぶってお手当てして、失礼な事言って、貴方達に沢山迷惑を掛けた。酷い、あまりにも酷い事をした、悪い女だけど…」
言葉に力が無くなって来た。もう紫苑には時間無い
だから最後、紫苑は力を振り絞って蓮花に言う
「最後にひとつ……こんな私でも、貴方達の…と、友達…になれたのか…な………?」
微笑む笑顔で最後の言葉を発して、力無く胸に押し付けていた手を落とした
蓮花は既に遺体となった紫苑を、静かに抱き締めるしか無かった
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あの後全員、一度心を落ち着かせる為それぞれ帰宅した
「ただいま…」
『──紫苑今日の飯何にすんだよ?』
『──いつものよ』
いつもなら、玄関先でこんな会話が起きる
『──ハッハ!ここは俺の特等席だ!』
『──子供じみた事しないの。蓮花も座ろう?』
いつもなら、こんな風にリビングで席の取り合いもしていた
「…」
いつもなら…と蓮花は考えてしまう。もう2人はいない
いない
いない
死んだ
死んだ
死んだ
「死んだ…死んだ死んだ!フフッ、皆んな!み〜んな死んだ!アハハッ!!」
蓮花は突然高笑いし始めた
「アハハハッ!ハッハッハッハッ!!フフフ…クククッ!」
狂った様に笑い続けて
それが10分程続いて
「あ、あは……」
糸の切れた人形の様に途端に倒れた
それから2時間が経った時、蓮花ゆっくりと立ち上がった
外は雨が降っていた。蓮花はそれを眺めていた
「あぁ…もうこんな時間か。早く夕飯の支度をしないと」
蓮花はいつも通りエプロンに身を包み
「何を作ろうか?」
そしていつも通りの
「紅牙、紫苑」
日常を過ごし始める
TCGひゃっほいの私です
ここまでの拝読ありがとうございました