目が覚めたとき、俺は田んぼに囲まれた道の真ん中で寝転んでいた。
「ここは異世界なのか?」
めちゃくちゃ日本ぽいんだが。ていうか俺の声。
「あー、あー」
なんか高くね?てか視界も低いし。
そう疑問に感じた俺は自分の体を見た。
「うぉあ、小さくなってる」
そういや、女神が言っていたな。才能のある体を与えると。
「考えることはたくさんあるけど、まずは寝る場所とか確保しないとな」
俺の現在の手持ちは自分が今着ている服(江戸時代っぽいなコレ)とか籠に入れてあった刀が十本ばかり。そして、麻布に入っていた貨幣だ。
てか刀多すぎでしょ。何か意味があるのだろうか。子供に運べるのこれ?
「とりあえず移動すっか」
まずは人里を目指そう。刀の入ってた籠は何故か持てた。流石はチートボディだ。
ここの田んぼを維持している人たちが居るはずだ。そこで宿を探そう。
「申し訳ありませんが、お引き取り下さい」
全敗である。
人里を見つけることに成功した俺はどこか泊めてくれる人がいないか探し回った。
奮闘むなしく、どこもかしこもNoと言われてしまった。
よく考えたら刀を持って宿なしのガキってかなり怪しくないか?
この時代の村は閉鎖的だと聞いた事がある。殺されて刀を奪われなかっただけでも運が良かったのだろうか。
そんな思考に耽っていた時、俺の中にある感覚が走った。
近くにすごくやばそうな奴がいる!
それだけが漠然と分かった。俺は反射的にその気配がする方向へと走った。
そこにいたのは亜麻色の髪を長く伸ばした男だった。
子供を三人引き連れこの村へと向かっていた。
間違いない。あいつが気配の正体だ。
という事は奴が悪魔王か?
だとしたら周りの子供は何だろうか。奴の臣下か。それとも幹部候補生?
それにあの見た目、人に擬態しているのだろうか。
「二・・も、喧・は・・・せん・」
俺の隠れている茂みからでは会話は聞こえなかったが、なにやら子供二人がいがみ合っている様子。
そして亜麻色の髪をした二人に拳骨を落とした。
「ぐあ!」
「あげ!」
次の瞬間、二人は地面に埋まっていた。
(は?)
こんなことが普通の人間に可能なのであろうか。
あの威力、普通の人間出せるものではない。
そして頭から直角にくらったのであれば頸椎や脊椎、頭蓋骨に深刻な損傷を負っていてもおかしくはない。
あの子供は無事なのか。
しばらくした後、男は子供を地面から引き揚げ、一行は何事もなかったように村へ向かって移動を始めた。
(なん……だと?)
あれだけの攻撃、無事である筈がない!
そうか、やはり奴らは人間じゃない
あの男こそ悪魔王ディアブロッサ。そして周りの子供は奴が生み出した超常の存在。
人に擬態してこの地に潜伏しているのだ。
というか、あいつら村に向かってないか。
まずい、このままではあそこに住む人達が危ない!
たまたま進行方向にいた俺は茂みに隠れ奇襲を行うことにした。
あいつらは強い、勝つことは出来ないかもしれない、しかし、引くわけにはいかない。
今だ!俺は背後から切りかかった。
「そいや!」
そして普通に避けられた。
「おやおや、可愛らしい刺客ですね。何か私に御用ですか?」
ニコニコと笑みを絶やさないその男は俺にそう問いかけてきた。
カマを掛けてみるか。
「俺は、お前の正体を知っている」
「ほう、私がどこの誰であるのかをご存知なのですね。それで私を殺しに来たと」
そう言った男は笑みを絶やしてはいなかった。しかし男から感じるプレッシャーの様なものはさらに強くなった。
ここで俺は確信した。
やはりこいつが悪魔王ディアブロッサ!
「ああそうだ。ここの人達には手出しさせない」
「ここで何かをするつもりはないのですが……。分かりました。受けて立ちましょう」
とぼけやがって。
「おい先生!こんな奴の相手することないって!」
俺達の立ち会いにケチを付けて来たのは銀髪の子供だった。年の頃は中学生だろうか?
いや、こいつも人間では無い筈。外見はあてにならない。
「あんなチンチクリンの相手してないで早く村に入ろうぜ。腹減っちまった」
腹が減っただと?人間を喰らうつもりなのかこいつら。
「銀時の言う通りだ。こんなチビ無視して、とっとこ行こうぜ」
それに黒紫色の髪をした子供がそう続けた。
俺は食べるにも値しないくらい小さいと言いたいのか。
「まぁ待てお前ら。あの子供が持っているのは真剣だ。そう易々と手に入るものでもない。何か事情があると考えるのが普通だ。少しくらい話を聞いてやっても良いのではないか?」
ここで黒髪の子供が反対した。こいつ、俺の刀を奪うつもりなのか。
「そうですね、ではすぐに終わらせるとしましょうか。それなら問題ないでしょう」
最後にそうまとめたのは悪魔王だ。
くそ、さっきから冷汗が止まらない。手足が震える。思考も定まらない。
この化け物どもめ。なんとしてでもここで俺が引導を渡してやる!
「始める前に一つ聞いても良いでしょうか?君の名前は?」
こいつに名乗る名などない。
「無ぇよンなもん。行くぞ!」
そう言って俺は勢い良く斬りかかり
「隙あり!」
あっさり負けた。
「なん......だと?」
俺は腹を抑えながら絞り出す様な声でそう言った。
「峰打ちです。手加減はしました。もうお家へお帰りなさい」
「うわ、痛そー」
誰が言ったかそんな声が聞こえた。
「さて、行きましょうか」
そう言って悪魔王は立ち去ろうとした。
ここで行かせるわけにはいかない。
俺はその瞬間に走り出し、悪魔王に突きを放った。
「隙あり!」
しかし、俺の突きは悪魔王を貫く事はなかった。
「残像です」
「なん......だと?」
いつの間にか悪魔王は俺の背後にいた。
「あまりおいたはいけませんよ?」
そう言って悪魔王は俺の頭に拳骨を落とした。
「げふぉあ!」
俺は地面に埋まった。