ありふれてはならない職業で世界最強(旧:憑依転生した俺、チートでがんばるぞい!!)   作:覇王風神刃

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勇者達 1 (見なくてもいい)

響き渡り消えゆくベヒモスの断末魔。ガラガラと騒音を立てながら崩れ落ちてゆく石橋

 

そして……

 

瓦礫と共に奈落へと吸い込まれるように消えてゆく彼

 

その光景を、まるでスローモーションのように緩やかになった時間の中で、ただ見ていることしかできない香織は自分に絶望する

 

香織の頭の中には、昨夜の光景が繰り返し流れていた

 

月明かりの射す部屋の中で、ハジメの入れたお世辞にも美味しいとは言えない紅茶モドキを飲みながら二人きりで話をした。あんなにじっくり話したのは初めてだった

 

夢見が悪く不安に駆られて、いきなり訪ねた香織に随分と驚いていたハジメ。それでも真剣に話を聞いてくれて、気がつけば不安は消え去り思い出話に花を咲かせていた

 

浮かれた気分で部屋に戻ったあと、今更のように自分が随分と大胆な格好をしていたことに気がつき、羞恥に身悶えると同時に、特に反応していなかったハジメを思い出して自分には魅力がないのかと落ち込んだりした。一人百面相する香織に、同室の雫が呆れた表情をしていたのも黒歴史だろう

 

そして、あの晩、一番重要なことは、香織が約束をしたことだ

 

〝ハジメを守る〟という約束。ハジメが香織の不安を和らげるために提案してくれた香織のための約束だ。奈落の底へ消えたハジメを見つめながら、その時の記憶が何度も何度も脳裏を巡る。

 

どこか遠くで聞こえていた悲鳴が、実は自分のものだと気がついた香織は、急速に戻ってきた正常な感覚に顔を顰めた

 

 

「離して! 南雲くんの所に行かないと! 約束したのに! 私がぁ、私が守るって! 離してぇ!」

 

飛び出そうとする香織を雫と光輝が必死に羽交い締めにする

香織は、細い体のどこにそんな力があるのかと疑問に思うほど尋常ではない力で引き剥がそうとする

 

このままでは香織の体の方が壊れるかもしれない

しかし、だからといって、

断じて離すわけにはいかない

今の香織を離せば、

そのまま崖を飛び降りるだろう

それくらい、普段の穏やかさが見る影もないほど必死の形相だった

いや、悲痛というべきかもしれない

 

「……あいつが……あいつが落としたんだ南雲君を」

 

「え?」

 

「コロシテヤル……」

 

突然、

香織が光輝の腹を殴って、

痛みで動けなくなった光輝をどかして走った

 

檜山のいる方向に

 

「ガッ!!」

 

「コロシテヤル」

 

だが……

その時、メルド団長がツカツカと歩み寄り、

問答無用で香織の首筋に手刀を落とした。ビクッと一瞬痙攣し、

そのまま意識を落とす香織

 

ぐったりする香織を抱きかかえ、

光輝がキッとメルド団長を睨む

文句を言おうとした矢先、

雫が遮るように機先を制し、

団長に頭を下げた

 

「すいません。ありがとうございます」

 

「礼など……止めてくれ。もう一人も死なせるわけにはいかない。全力で迷宮を離脱する。……彼女を頼む」

 

「言われるまでもなく」

 

離れていく団長を見つめながら、

口を挟めず憮然とした表情の光輝から香織を受け取った雫は、

光輝に告げる

 

「私達が止められないから団長が止めてくれたのよ。わかるでしょ? 今は時間がないの。香織の叫びが皆の心にもダメージを与えてしまう前に、何より香織が壊れる前に止める必要があった。……ほら、あんたが道を切り開くのよ。全員が脱出するまで。……南雲君も言っていたでしょう?」

 

雫の言葉に、光輝は頷いた

 

「そうだな、早く出よう」

 

目の前でクラスメイトが一人死んだのだ。クラスメイト達の精神にも多大なダメージが刻まれている

誰もが茫然自失といった表情で石橋のあった方をボーと眺めていた

中には「もう嫌!」と言って座り込んでしまう子もいる

 

ハジメが光輝に叫んだように今の彼等にはリーダーが必要なのだ。

 

 光輝がクラスメイト達に向けて声を張り上げる

 

「皆! 今は、生き残ることだけ考えるんだ! 撤退するぞ!」

 

その言葉に、クラスメイト達はノロノロと動き出す

トラウムソルジャーの魔法陣は未だ健在だ

続々とその数を増やしている。今の精神状態で戦うことは無謀であるし、戦う必要もない

 

光輝は必死に声を張り上げ、

クラスメイト達に脱出を促した

メルド団長や騎士団員達も生徒達を鼓舞する

 

そして全員が階段への脱出を果たした。

 

上階への階段は長かった

 

先が暗闇で見えない程ずっと上方へ続いており、

感覚では既に三十階以上、

上っているはずだ。魔法による身体強化をしていても、

そろそろ疲労を感じる頃である

先の戦いでのダメージもある

薄暗く長い階段はそれだけで気が滅入るものだ

 

そろそろ小休止を挟むべきかとメルド団長が考え始めたとき、

ついに上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた

 

クラスメイト達の顔に生気が戻り始める

メルド団長は扉に駆け寄り詳しく調べ始めたフェアスコープを使うのも忘れない

 

その結果、どうやらトラップの可能性はなさそうであることがわかった。魔法陣に刻まれた式は、目の前の壁を動かすためのもののようだ。

 

メルド団長は魔法陣に刻まれた式通りに一言の詠唱をして魔力を流し込む

すると、まるで忍者屋敷の隠し扉のように扉がクルリと回転し奥の部屋へと道を開いた

 

扉を潜ると、そこは元の二十階層の部屋だった。

 

「帰ってきたの?」

 

「戻ったのか!」

 

「帰れた……帰れたよぉ……」

 

クラスメイト達が次々と安堵の吐息を漏らす

中には泣き出す子やへたり込む生徒もいた

光輝達ですら壁にもたれかかり今にも座り込んでしまいそうだ

 

しかし、ここはまだ迷宮の中。低レベルとは言え、

いつどこから魔物が現れるかわからない

完全に緊張の糸が切れてしまう前に、

迷宮からの脱出を果たさなければならない。

 

メルド団長は休ませてやりたいという気持ちを抑え、

心を鬼にして生徒達を立ち上がらせた

 

「お前達! 座り込むな! ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ! 魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する! ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」

 

少しくらい休ませてくれよ、

という生徒達の無言の訴えをギンッと目を吊り上げて封殺する

 

渋々、フラフラしながら立ち上がる生徒達

光輝が疲れを隠して率先して先をゆく

道中の敵を、

騎士団員達が中心となって最小限だけ倒しながら一気に地上へ向けて突き進んだ

 

そして遂に、一階の正面門となんだか懐かしい気さえする受付が見えた

迷宮に入って一日も立っていないはずなのに、

ここを通ったのがもう随分昔のような気がしているのは、

きっと少数ではないだろう

 

今度こそ本当に安堵の表情で外に出て行く生徒達

正面門の広場で大の字になって倒れ込む生徒もいる

一様に生き残ったことを喜び合っているようだ

 

だが、一部の生徒――未だ目を覚まさない香織を背負った雫や光輝、

その様子を見る龍太郎、恵里、鈴、そしてハジメが助けた女子生徒などは暗い表情だ

 

そんな生徒達を横目に気にしつつ、受付に報告に行くメルド団長

 

二十階層で発見した新たなトラップは危険すぎる

石橋が崩れてしまったので罠として未だ機能するかはわからないが報告は必要だ

 

そして、ハジメの死亡報告もしなければならない

 

憂鬱な気持ちを顔に出さないように苦労しながら、それでも溜息を吐かずにはいられないメルド団長だった

スキルを追加していいですか? 追加したいと思ってるスキルは(無限魔力・魔神化)二つです

  • いいよ~ 
  • 駄目です
  • 無限魔力は要らない(魔神化は要る)
  • 魔神化要らない(無限魔力はいる)
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