魔銃使いは異界の夢を見る   作:魔法少女()

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 作品名『ソードアート・レジェンド』
 原作『ソードアート・オンライン』
 作者『にゃはっふー』
 https://syosetu.org/novel/153552/

 神様転生したオリ主が『退魔の英雄』の能力を得てソードアート・オンラインのキャラと関わっていく作品。


 ※クロスオーバー要素『ゼルダの伝説』




ソードアート・レジェンド

 深い森の中、木々に囲まれた木漏れ日に照らし出された茶会の席。周囲を見回せば木々の合間を不可思議な淡い光────俗に妖精とも言われそうな光球────が時折姿を見せるのが確認できる。

 呆れた様な表情を浮かべて茶会用のテーブルに着く幼い容姿の少女が羊皮紙に書かれた文言を見ていた。

 『異界と交わる夢、語り合え、目覚めのその時まで』

 羊皮紙に書かれたそれと、目の前に居る見知らぬ人物を目にし、これまでの経験則からここが夢の中であると理解した少女は溜息をついた。

 

「また、夢ねぇ……」

 

 小人族(パルゥム)特有の低い背丈、幼い容姿に見合わない知的で左右で異なる異色の瞳。紺色のローブ姿の彼女は目の前の人物が身動ぎしたのに気付いて羊皮紙をテーブルに戻して様子を伺った。

 

 少女は少し変わっていた。左右の瞳の色が違うオッドアイであり、片手の肌色が違うと言う不思議な少女。いや少女と言うよりか、実年齢が見た目より高そうに見える。

 

(背の低いアバターでも引き当てた大人かな? いや、ここはゲームじゃない現実のようなものだし、ゲームでもないのにオッドアイは珍しい。魔法使い、かな? 魔法があればそうだろうが、ここはどこの世界だ?)

 

 そう感じながら自分の姿にも違和感がある。

 

(これはゲーム、『ソードアート・オンライン』の『テイル』の姿だな。仮想世界の姿で異世界に来た? まあそれはいいか、だけど周りは『ゼルダ』の世界で見る妖精がちらほらいるし、なんなんだここ?)

 

 いままでの経験からして異世界か夢と考える中、青年も羊皮紙に書かれた文章を読む。見たことの無い文字なのに、なぜか意味を理解した。

 

『異界と交わる夢、語り合え、目覚めのその時まで』

 

(………ふむ、つまりここは仮想世界ではなく夢の世界で、異世界と混じりあっていると)

 

 すぐにこの状況を受け入れる。見たことの無い文字が読めるのも夢だからこそであり、自分がいまここにいるのは、目の前の少女と会話するためだと理解する。

 

(………えっ、なに会話って。仲間たちのおかげでコミュ障なんとかなったけど、知らない少女と会話って、これも試練かなんかか)

 

 急に青ざめる青年。現状を一つ一つ確認していって変化してく彼の百面相を他所に少女は軽く肩を竦める。

 

「初めまして、【ヘスティア・ファミリア】所属の【魔銃使い】ミリア・ノースリスよ。まあその紙切れを見たならわかると思うけれど、ここは夢よ」

 

 突然の異変に青褪めたのかとミリアが安心感を抱かせるような優しい声色で自己紹介を口にした。

 

 少女、ミリアの自己紹介に青年は少しだけ考え込み、静かに口を開く。

 

「いまの俺は………『テイル』だ。現実(リアル)だと日本で大学生として過ごして、普段はテイルで仮想世界で仲間と過ごしている。たぶんいまはそう名乗った方が正しいだろう」

 

 本来なら本名を名乗るべきだろうが、現実(リアル)だと苗字だけ、仲間の間で自分の名前を覚えているか疑問になるほど呼ばれていない。彼にとって本当の名前よりもしっくりくるのだ。

 

 黒髪黒目で無造作な髪型、極東を思わせる見た目でありながら『現実(リアル)』と言う単語を使った事に僅かながらに驚愕しながら、ミリアは小さく吐息を零した。

 

「ふぅん、そっか。えっと、仮想世界ねぇ……って事は迷宮都市(オラリオ)の人間じゃないのね」

 

 ミリアが過去に経験した二度の夢での異界人との邂逅。米好きのエルフに、恐ろしい力を持ちながらも話好きな竜神。どちらも迷宮都市(オラリオ)における別の時間軸とも呼べる世界に居た者達であった。故に今回も同様かと思えばそうでも無かったことに驚き、彼女はふと伺う様にテイルに質問を飛ばす。

 

「って事は……『ミリカン』とかって知ってるのかしら?」

 

見た目と違い大人びた少女ミリアの言葉に、テイルは考え込む。

 

「みりかん? すまない、聞き覚えは無いな………」

 

 腕を組み考え込む。彼女が言う迷宮都市(オラリオ)と言う言葉には聞き覚えが無い。

 

「もしかして、お互い全く知らない世界が混じってるのか?」

 

 テイルはそれに少し驚きつつも、目の前の少女も自分と同じではないかと考える。自分よりこの状況を落ち着いて受け入れている。少なくても慣れているのは確かだと内心で頷く。

 

「少し整理しよう、こちらの世界の事を話す。そっちもそちらの世界、君の世界を教えてほしい」

 

 テイルはまず自分が神の手違いで死に別世界に転生されられた。その時に特典をもらい、異世界の勇者の能力を得る為、その軌跡を体験したりして戦い方を初めとしたものを会得。HPゼロが本当の死に繋がるデスゲーム、ソードアート・オンラインで2年半ほど仮想世界に閉じ込められていたことを話す。

 

 いまは物騒な事件は起きておらず、時々異世界に引っ張られること以外、仮想世界で仲間たちと仲良く平和に過ごしていると彼女に伝えた。

 

「神の手違い、か……」

 

 俗に言う『神様転生』というものだろうとミリアは小さく頷く。テイルの話す一部の事には興味はあるが、先に自身の住まう世界について話すべきかと口を開いた。

 

「私は、まあ一度死んで……気付いたら迷宮都市(オラリオ)迷宮(ダンジョン)に居たわ。私が生きている時代より千年ぐらい前に神々が降り立ち、神代という時代が続いてる世界ね。迷宮都市(オラリオ)は世界で唯一、迷宮(ダンジョン)を保有している最も人気(ホット)な都市って言われてるわ」

 

 その迷宮に何があるのかは誰も知らない。神々は何か知っている素振りはあれど口にはしない。

 そしてその迷宮からは無限に怪物(モンスター)が湧き出てくる事。神々が降り立つより以前は地上に怪物が溢れ返っていた事。ミリアが住まう世界は傍から見ればまるでファンタジーゲームの様な世界観だった。

 その世界に住まうミリアからすれば冗談では済まないが。

 

「地上に降り立った神々は自らの血を人に分け与え『神の恩恵(ファルナ)』を授けたわ。経験値(エクセリア)を得る事で能力(ステイタス)を伸ばし、器の昇格(ランクアップ)で階位を上げる。階位があがればあがるほど神に近づいて…………まあ、過去に神の領域に至ったなんて話は聞かないけれどね」

 

 基本的な世界観の話はこんな感じだろう。身の上話ともなるととてもではないが語り切れないものがあると考えた彼女はここで話を止める。

 

「神様がいる世界で、恩恵を受けて経験値を得て強くなる。俺を転生させた神様もいるのだろうか………」

 

 興味はあるが、知り合いの事を考えると何も言えない。知り合い、転生者である事を知る仲間の一人は、この転生が詐欺に近いと言い、かなり不平不満があるのだ。特典は自分で決めたのだが、細かい内容は知らなかった。勇者が得た経験、物語を追体験する内容で自分の物にするので、ミスして死んでもやり直せる。クリアするまで繰り返される世界を僅かな時間で過ごす内容だ。もちろん拒否権なんて無い。

 

 おかげで槍だろうが剣だろうがなんでも扱え、砂漠も極寒地帯も横断できる精神力があると自負している。

 

 だがさすがにこんなこと話しても困るだろうと、それはあえて言わないことにした。他に会話する内容はあるとすればと、普段の妹のような子との会話を思い出しながら、四苦八苦しながら話す。

 

「俺のところでファンタジーは俺が転生者で、いまみたいに時々異世界に来ることがあるだけだ。普通の世界だな。仮想世界、VRで仲間と共にゲームするだけ。そっちはどんな風に過ごしてるんだ?」

 

 彼の質問に対しミリアは顎に手を当て、言葉を選びながら呟く様に語りだす。

 

「どんな風にと言うと基本的に、まあ迷宮(ダンジョン)怪物(モンスター)相手に戦ってるとか、かしらね。怪物(モンスター)の核である魔石を集めてギルドに持ち込んで報酬を貰うのが収入を得る方法だし。遊びは……まあ、ほどほど?」

 

 冒険に必須な武具の整備費用。回復薬(ポーション)等の消耗品費用。そして日々の食費や税金等を考えるとあまり遊びにさく時間はミリアにはない。

 そも、彼女は最近戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けられてゆっくりとした時間を過ごした記憶は無いのである。

 

「あー……まあ、遊びらしい遊びってのは無いわね」

 

 近々娯楽施設の大賭博場(カジノ)に足を運ぶ予定ではあるが、あれは依頼を受けての事で遊びが主目的ではないためノーカウントを決め込み、ミリアは曖昧に笑った。

 

 曖昧に笑うミリアの様子を見ながら、テイルは少しだけ申し訳ない顔をする。

 

 おそらく忙しいのだろう。強くなるために神の恩恵(ファルナ)を鍛えたり、稼いだりする。異世界でも強くなるのは当たり前であり、稼ぐことも大変だ。ゆっくりする時間は無かったのだろう。

 

「とりあえず、全く違う世界同士の邂逅か。語り合えと言うが、俺はあまり話し上手じゃないんだが……」

 

 落ち着きを取り戻すために紅茶を飲み、会話を終わるまで続けるかと思う。

 

「君はヘスティア、炉の神様に所属してるのか。女神様や仲間の話を聞かせてくれないか?」

 

 彼女はいまの世界は好きのはずだ。少なくてもそんな雰囲気はする。会話する内容は好ましいものがいいだろう。テイルは自分が大切な仲間たちの顔を思い出し、自分も彼らのことを話そうと思った。

 

「ヘスティア様や仲間の事ね……主神はとても優しい神よ。ベル、派閥の団長であるベル・クラネルって男の子も優しいし、眩しいぐらい綺麗な人達ね。他には毒を吐く事も多いけどしっかり者のリリルカ・アーデ、頼りになる兄貴分のヴェルフ・クロッゾ、真面目が服を着てる様なヤマト・ミコトとか、かしらねぇ」

 

 ミリアが仲間を思い浮かべる様に目を細めて語るさ中、ふと気づいた様に顔を上げてテイルを見た。

 

「ああ、言って無かったわね。私はこんななりだけど小人族(パルゥム)って種族よ。ベル、ヴェルフ、ミコトがヒューマンで、リリルカも私と同じ小人族(パルゥム)ね」

小人族(パルゥム)? その、見た目子供みたいな種族か?」

 

 そう呟き、今度は自分だろうと仲間たちのことを話しだす。【黒の剣士】と言われる双剣使いのキリト、その彼女【閃光】のアスナ。ピナと言うテイムモンスターの竜を連れたシリカに、鍛治師のリズベット。

 みんなの兄貴分のクライン。狙撃が得意なスナイパーのシノン。絶対負けない剣士と言われた【絶剣】のユウキ。キリトとアスナの娘、仮想世界の住人ユイと話す。

 仮想世界に生きるAIと言い切るには個性豊かな住人たちや、自分のように仮想世界にログインする仲間たち。テイルは現実に生きる仲間も、仮想世界に生きる仲間も分けずに大切な仲間として話した。

 

 彼の話す内容から一部の人物が仮想現実と呼ばれる世界に住まう者。つまりは現実世界には居ないAI(ヒト)の事を語っているのに気付いたミリアは小さく吐息を零す。

 

「……AIに感情機能が組み込まれてるのかしらね。ウチの所だと数値管理で対人的な好感を判断、反応に対して不規則(ランダム)性を確保する事で疑似的に感情(エモーション)機能(システム)とは呼んでたけど、かなり進んだ技術力ね。羨ましいわ」

 

 彼女の義父が生み出した『ミリカン』の限界点。ゲーム内で活動するNPC達は泣き笑い嘆き怒り、殆ど人間と大差ないとまで言われてはいても、想定外の言葉を投げかけられれば反応が曖昧なモノになり、化けの皮が剥がれる事は多々あった。

 

「まあ、今となってはファンタジーよりファンタジーした世界に居るから関係ないんだけどねぇ」

 

 前世を思い浮かべ、苦笑いを浮かべたミリアは紅茶に手を伸ばす。

 

「ファンタジーか。なぜか近未来な世界なのに、時々いまみたいな状態になるな」

 

 この状況もファンタジーと言えばファンタジーだ。別世界の住人と会話するなんてユウキが知れば羨むだろう。

 

「俺はこの通り、武器を利用した前衛だが、ミリアは魔法かな? 何が使えるんだ?」

 

 テイルも魔法らしいものは使った事はある。ほとんどが道具を使用したものでそれらしいのは使っていない。仮想世界でメイジ職がいないため、穴埋めでアクセサリーを使い底上げして担当するが本職では無いために気になった。

 

「んー……まあ良いか。本来なら魔法とかステイタスに関する話は他の人にしないのだけれど、夢だしね」

 

 迷宮都市(オラリオ)の冒険者は本来なら魔法や能力(ステイタス)については口にしない。

 それこそ、同一派閥の仲間にさえ秘する事すらあるほどに。その人の人生と経験、得意不得意を映し出すステイタスは知られると致命的な事になる事すらあるからだ。

 特に魔法は一人三つまでしか普通なら取得できない切札的存在でもある為、それを知られれば敵対した時に面倒な事に成り得る。

 

「私の魔法は、そうね銃魔法とでも言えばいいかしら。使い勝手は良いけれど、威力がねぇ」

 

 夢だからと口にしつつも、ミリアは最低限の魔法の情報のみを口にした。全てを語るには多すぎるというのもあるが、主に彼女の無駄に高い警戒心による情報秘匿の為だろう。

 

「銃の魔法か、シノンが喜びそうだな」

 

 妖精の世界では弓を使うスナイパーのことを考えながら、紅茶を飲み、空になったからミリアの分も淹れて、おかわりしておく。

 

「シノンって言うと……ああ、狙撃手の」

 

 狙撃手に良い思いでの無いミリアが若干表情を歪ませる。幾度とない重低音、飛来する強力無比な魔弾。姿の見えない狙撃手ほど怖いモノは無い。

 頭を振ってその恐怖を飛ばし、今度はミリアから質問を飛ばした。

 

「そっちはどうなのかしら、武装とか、得意な戦術とか」

「武装はこの通り、剣でも槍でも弓でもなんでもござれ。特典のおかげで、魔王とも戦える」

 

 これは話していいだろうと思い話す。勇者の技を持つ、歴史に名を残さなかった勇者が鍛錬を付けてくれるので基本の武器なら問題なく扱えるほど鍛えられたと話す。

 

 普段は片手剣と盾で、影や刀身に映る敵の姿から周りの把握、避けながら懐を斬ったりと器用なことができると言う。

 

「まあ、キリトとユウキって子も練習して、できるようになったけどね」

 

 GGO、銃を使った世界だとアサルトライフルとスナイパーライフル。フォトンソードと言う近接武器を使い、ビームを剣で跳ね返して、弾丸を斬ったりしながら、走りながら狙撃する。そんなゲームでもできないだろうことをできると言うテイル。嘘を言っている様子は無い。

 

「やろうと思えば誰にでもできるよ。教えようか?」

「なんでも使える、ってのはタケミカヅチファミリアの眷属みたいね」

 

 武神が率いるオラリオでも有名な者達。各々、どんな武装でも使いこなせる様に鍛錬をしており、規模こそ小さいモノのその知名度はかなり高い派閥。

 そしてその後語った技能。影ではなく気配で察知する性質のミリアとは相性が悪そうだと肩を竦める。

 

「『弾丸切断(バレットスラッシュ)』に『疾走狙撃(ラン&スナイプ)』……」

 

 ミリアの知るそれらの技能は主に『ミリカン』の第三勢力『大帝国』が使用するモノだ。主に剣や斧で弾丸を切り落とし、全力疾走しながら弓で数キロ先から脳天打ち抜いてきたり。化物連中が多い彼の勢力と同等の技能を持っていると聞いた彼女は眉間を揉み、呟く。

 

「え、遠慮しとくわ。それに夢から覚めたらここの出来事は思い出せなくなってしまうし」

 

「そうか、これはそういう世界か……」

 

 夢の世界で鍛錬は当たり前なのでこれは少し悲しい。

 

「せっかく知り合いになれたのに、ミリアのことを覚えていられないのか」

 

 テイルはそう残念がる。話せる仲間と言うのは大切だ。転生の事を話せたのは珍しいし、ユウキに話しても心配されない夢。だと言うのに忘れるのは悲しいことだと呟いた。

 

「もう一度似た夢を見れば思い出せるわよ……夢の中だけだけど」

 

 ミリアが知る限り、過去に二度ほど似た夢を見ている。そして、夢から覚めればその時には記憶に残りはしない。

 

「まあ、あんまり深く考えても仕方ないと思うわ。ヘスティア様に聞こうにもわかんないし……ただの予測だけど、転生者っていうのも何か関係があるかも?」

 

 転生者が関係するこの夢の世界。何がしたいか分からないが、悪意では無いだろう。

 

「俺と君だとかなり様変わりしてるな」

 

 近未来的な世界とダンジョンがある世界。異なる世界過ぎて同会話するか悩んでしまう。いまは話す前よりかは気が楽だがと、そう思うテイル。

 

「私はそもそも死後、神と出会った記憶は無いのよね。それこそ、意識を失って次の瞬間にはこっちの世界……もしかしたら記憶にないだけで神と会話した可能性はあるかもだけどね」

 

 冗談めいた風に呟いたミリアはふと青年を見て質問を飛ばす。

 

「そういえば、そっちの【黒の剣士】やら【閃光】、あとは【絶剣】とかは誰かに着けられた二つ名なのかしら。私の所だとノリノリな神々が痛々しい二つ名とか付けてくるけど」

 

 私の【魔銃使い】はかなり良心的な二つ名だと呟き、ミリアは肩を竦めた。

 

「なぜ痛い名前を付けるんだ……? こっちの通り名的なものは、ゲームだから他のプレイヤーが付けたものが多いよ。キリトとアスナはデスゲーム時代のがそのままで、ユウキはALO、妖精の世界で決闘システムを使った対戦をしていた時に、そう呼ばれ始めたんだ」

 

 キリトは黒一色の装備を好んで装備、アスナはおそらく速過ぎる様子からとテイルは説明する。テイル自身も二つ名はいくつもある。剣の世界では【沈黙の蒼】と呼ばれていたらしい。

 

 らしいと言うのは、彼はデスゲーム時代ほとんどの人と交流せず、黙々とドロップアイテムやエネミー情報を売る為にフィールド探索ばかりしていて、そう言う情報に疎かった。交流があるプレイヤーからそう教えられたからだ。

 

「いまではもう喋ったりするから、沈黙は付かないだろうけどね」

「そっちのはどちらかと言うと二つ名というよりは異名なのね。こっちだと……そうね、地上の人間全員が中二病真っ盛りというか、殆どの人がそういった痛い二つ名を喜ぶのよ」

 

 【万能者(ペルセウス)】【重傑(エルガルム)】【絶†影】、人によっては痛々しいと感じるモノまで数多の二つ名があるが、それを人々は喜ぶのだ。

 ただ、その二つ名を受け取った眷属の主神が喜ぶとは限らない。むしろ背中を掻きむしって苦しむ神も多い。そういった眷属(こども)が喜ぶのを見た主神(おや)が苦しむ様子を見て楽しむのが神々の趣味の様な所がある。

 

「異名と言えば、ウチの団長は【闘牛殺し(オックス・スレイヤー)】、私も【竜を従える者(ドラゴン・テイマー)】とかあるわね」

 

 【()()()()()】等と言う異名も最近得たが欲しくて得たモノではない為、ミリアは口にしなかった。

 

「………なんていうか酷いな」

 

 異世界だから感性が違うのは分かるが、それで苦しみ、喜ぶ者を笑って何が楽しいのだろう。テイルはそう思い呟いた。

 

「シノンがいたら全員ハチの巣だろうな」

 

 ユウキなら笑って受け入れそうだが、シノンはダメだきっと怒る。間違えて殺して転生させると言う神に怒るのだから止められない。

 

 内心そう思いながら、ミリアの団長や彼女のことを尋ねた。

 

「オックススレイヤーは意味は分かる、牛型のモンスターを多く倒したんだろう。だがドラゴン・テイマー? 意味がそのままなら、ミリアはシリカのように、ドラゴン種をテイムしてるのか?」

「ベルの【闘牛殺し(オックス・スレイヤー)】は討伐数は1体だけだけど、Lv.1の冒険者がLv.2でも苦戦するミノタウロスっていう怪物を倒したから付けられたモノね。付け加えると強化種でLv.3相当の強さがあった個体だったのだけれどね」

 

 彼女も共に挑み、討伐せしめた怪物ではある。しかしミリアの方はその際に『偉業の経験値(エクセリア)』の取得量の差によって器の昇格(ランクアップ)を逃した。その事からベルの方にだけ異名が着けられることになったのだ。

 

「私の【竜を従える者(ドラゴン・テイマー)】は、まあその名の通り。赤飛竜(レッドワイヴァーン)小竜(インファントドラゴン)を従えてる事からね。普通だと竜種の調教(テイム)は難易度が高いんだけど……私の場合は魔法で従えてる感じだから自慢出来るモノではないのだけれどね」

 

「何かを倒しての称号か………」

 

 テイルはしみじみと呟きながら考え込む。彼自身では無いが、時の勇者などの称号を持つ勇者を知っている。そう思いながら紅茶を一口飲んだ。

 

(ミリアは【ゼルダの伝説】を知っているのか?)

 

 そう思い、彼女が勇者リンクについてどんな反応するか呟く。

 

「勇者リンク、彼も様々な時代で様々な称号で呼ばれてるな」

「勇者……リンクねぇ。聞いた事は無いわね、そっちの世界での英雄か何かかしら?」

 

 ミリアにとって、勇者と言えば小人族(パルゥム)の一族復興を願って自らを旗印とし【勇者(ブレイバー)】という二つ名を背負って都市の強豪派閥として知られる【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナが真っ先に浮かんだ。

 

「私の知る勇者は、【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナね」

「俺の前世ではゲームの物語だったけど、どうも異世界で本当にある世界なんだ。俺は転生した時に勇者リンクみたいな能力が欲しいと願って、魂の状態だけど鍛えてもらったんだ」

 

 ざっくりと言えばそうだ。死ぬ前はゲームの物語と思ったが、転生後、彼の勇者はテイルを鍛えてくれた。

 

「有名な日本のゲームだから、前世の世界も違うようだな。共通点関係ないのかも、このお茶会」

 

 ミリカンと言う言葉を知らない以上、いまの世界と彼女の転生前は違う世界なのは分かる。ゼルダの知らないとなると、テイルは自分の転生前も違う世界だと確信する。

 

「これからもこういうことあるかもな、共通点が少ない人とお茶会」

 

 さすがに共通点が無い場合でお茶会する。考えただけで会話が苦手なテイルは青ざめた。

 

「ゲームの物語が異世界であった出来事……ねえ、夢のある話ね。実際に異世界の観測が出来ない以上、有り得ないと否定できないし、こうして異世界の住民と雑談する羽目になってるし、ミリカンの世界も……」

 

 ミリカン世界が実在するとなると、世界観が混沌としており、一部魔法少女に至っては狂人だったりと、転生後に苦労処か幾度とない死亡フラグ乱立に胃を痛めそうだ、とミリアが小さく吐息を零した所で、ふと彼女は周囲の違和感に気付いた。

 木々の合間に落ちる木漏れ日を浴びて動き回る妖精らしき光点が霧にぼやけている。

 過去二度の異界との邂逅。その終わりが近づいた証拠とし、周囲の霧は色濃くなり、徐々に背景となっていた深い森林が霧に覆われていく。

 

「まあ、私は会話が嫌いではないのよね。まあ人間嫌いではあるけど、貴方との会話は楽しかったわ。警戒する必要が無さ……あー、貶してる訳ではないのよ? ただ、警戒しなくて良さそうな人となりをしてたのよね。それと、そろそろ夢が覚めると思うわ」

 

 その言葉に霧が深くなったことに気づき、そうかと頷くテイル。

 

「そうか、結局分からないままだったけど、楽しかったのなら幸いだ。俺は話すのが苦手だからな」

 

 苦笑しながら、手を前に伸ばす。もうすることは無いから、握手のつもりだろう。

 

「まあ、悪く無い時間だったわ」

 

 差し出された手に自らの手を重ねて世辞を述べる。素直に楽しかったと伝えるぐらいしても良かったかなとミリアが小さく苦笑するのと同時、霧は急速にその色濃さを増していく。

 握手しあう距離の相手の顔すら判別できなくなり、繋いだはずの手の感触も姿が見えなくなるのと同時に消え失せる。異界との交流の場は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 小鳥の囀りが響く自室。ベッドで身を起こしたままぼんやりと部屋の中を眺めていた少女が、小さく欠伸をしたところでぱたぱたと騒がしく廊下を駆ける音が響く。

 

「あー、どうぞー?」

 

 扉を叩く(ノックする)音、部屋の主が声を返せば間を置かずに扉が開かれ、茶髪の少女が顔を覗かせた。

 

「ミリア様、朝ですよ……起きるのが遅いなんて珍しいですねぇ」

「んー……ん、なんか変な夢を見たのよ。思い出せないんだけど」

「夢ですか? それよりも朝食が冷めてしまいますので早くしてくださいね」

 

 同派閥に所属する同族の少女が消えた扉をぼんやりと見てから、部屋の主であるミリアは窓から差し込む朝日に目を細めた。

 

 

 

 

 

 VRMMO、アルヴヘイム・オンライン、通称ALO。そこにログインしているテイルは眠たそうな顔でレベル上げしている仲間たちを見る。いまの自分は休憩と他プレイヤーの警戒に当たっている。

 

 眠たそうなテイルに苦笑しながら、ユウキは彼に話しかけた。

 

「どうしたのテイル? いつもより眠たそうだよ」

 

「夢を見た感覚があるが、どんな夢か思い出せなくてね」

 

「? それが夢ってものじゃないの?」

 

「なんかユウキが気に入りそうな話だった気がする」

 

 首を傾げたところ、キリトが手を振りながら近づいてくる。

 

「そろそろ次のダンジョンに行こうぜ。今度は地下迷宮なんだ」

 

「あ~分かった」

 

 地下迷宮、ダンジョン。そんな言葉を聞くと妙な引っ掛かりを覚えたが、意識を切り替えた後は気にせず、彼らと共に仮想世界を歩き出した。

 




 作者:魔法少女() あとがき

 コラボ第三弾! 初のダンまち以外の作品とのコラボでグダグダな気もしますが、コラボなんていつもグダグダですしね()

 今後は他の原作のオリ主ともコラボしてみたいですな。

 コラボの方ありがとうございました。



 作者:にゃはっふー様 あとがき
 今回のコラボありがとうございます。ホントこういうの楽しくて好きなので嬉しいです。

 いやーダンまちに関係ないから、どうしようか悩んで結局コラボしました。これが他のダンまち以外の作者さんの切っ掛けになれば嬉しいな。

 ミリアも三回目だからテイルをよく導いてもらい、助かりました。

 テイル共々、今回のコラボ楽しかったです。本当にありがとうございます。
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