魔銃使いは異界の夢を見る 作:魔法少女()
原作『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
作者『超高校級の切望』
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狂ったキャラを突っ込んだらどうなるのか、というコンセプトを元にした作品らしく、オリ主が
石造りの暖炉の火に照らされた古びた家屋。おぼろげに照らし出された漆喰の壁。天井から吊るされた木製の燭台には半分程の長さの蝋燭。
ぎっしりと本が詰め込まれた書棚。本を綴じる道具、執筆机、本格的な製本を行うための道具等も見受けられる。
そんな室内の片隅に置かれた机と、三つの椅子。その一つに腰掛けて室内を見回していた
「また、夢……」
金髪に紅蒼の異色の瞳。小柄な体躯を野暮ったいローブで包み込んだ彼女は視線を机に置かれた羊皮紙に向けた。
羊皮紙には『異界と交わる夢、語り合え、目覚めのその時まで』と記されている。
対面の席で眠る人物に視線を向けた少女は、恐る恐るその人物に声をかけ、反応を伺う。
「起きてくれるとありがたいのだけれど」
その声に男はゆっくりと目を開く。紫の瞳で周囲を見回し、首を傾げながら目の前の少女に語りかける。
「お前、人の家で何やってんだ?」
彼の問いかけに少女は僅かに肩を竦め、机に置かれていた羊皮紙を差し出しながら口を開いた。
「ここが貴方の家だとは知らなかったわ。勘違いされる前に言っておくけれど、不法侵入ではないし。此処は夢の中って奴よ。信じる信じないは貴方次第だけど」
「だろうな。もう数カ月も前に出た家だし。帰る気はなかったが、こうして夢で見るのはなかなか気分が良い………」
懐かしむように笑うと少女が差し出してきた羊皮紙に書かれた内容を読む。
「『異界と交わる夢、語り合え、目覚めのその時まで』ねえ………異世界。ああ、爺がたまに話してたなあ。てことはオラリオもねえ、別の体系の神々が支配する世界の人間か?」
見た目は子供だが、中身が違う。
案外体を入れ替え若さを保てる世界の住人なのかも知れないと、そこまで考えどうでも良くなった。夢でしか交われないなら関係のない事だ。嫌なことを思い出したし起きたらヘルメスを殴りに行こう。
「私は
過去か未来か、それとも異なる流れの世界か。文字通り全く文化形態が違う世界とも交わる夢と知るからこそ、ミリアは推し量る様に言葉を放つ。
「【ヘスティア・ファミリア】? てことはベルと同じか?」
少年はほお、と少女を見つめる。少年が知る限り、【ヘスティア・ファミリア】所属でこそないが最も近い
左右の異なる瞳から見ても印象的だしそれ以前に中身、精神性からして忘れることはないと思うし確かに自分の世界には存在しない人間なのだろう。
「そうそう、ベルと同じ派閥だけど……ふぅん、そっちにはベルも居るのね」
彼の発言から女神ヘスティアも居るのだろうと推測を立てながらも、ミリアは片目を閉じ、紅い瞳で対面の人物を見据えながら質問を返した。
「ところで、名前を伺っても良いかしら」
「こいつは失敬。俺は【ミアハ・ファミリア】所属のLv.2。2つ名は決定待ちのヴァハ・クラネルだ」
弟と同じ派閥だという少女。反応からして、あちらも此方を知らないのだろう。なのでからかうように己の名を名乗る。
「違う世界とはいえ弟が世話になってんなあ。惚れりゃ一途なくせに女に甘くて弱えし、苦労すんだろ?」
「あー、兄だったのね。こっちのベルは一人っ子だったはず。それにミアハ様の所はナァーザさん一人だし……なるほど異界ね」
顎に手を当てて記憶を漁り、互いに共通している白髪赤眼の少年の情報を引っ張りだしたミリアは肩を竦める。
「弱い、と言える程ベルは弱くはないわ。むしろウチの最高戦力だし」
「へえ、まあオラリオに来てから今まで無かった、片鱗すら見えなかった才能を手に入れたしな。早熟スキルには目覚めたと思っていたが最高戦力ねえ………お前もそこまで弱いわけじゃなさそうだが………ちなみに何人の派閥だ?」
最高戦力なんて言い方をするぐらいだから、複数人はいるのだろう。
「戦闘員11名、戦闘員兼鍛冶師が1名、非戦闘員が1名、合計団員数は13名ね。あと私はLv.3ね」
といっても戦闘員の内8人は他派閥からの臨時団員なので、一年後には元の派閥に戻ってしまうと付け加え、ミリアは溜息を零して「入団希望者がねぇ」と窓の外に視線を向けた。
「13ね………まあ零細ファミリアにしちゃ十分な成長だろ。あんまり嬉しそうに見えねえが、なんか条件付きか?」
ヴァハとしては弟がいる派閥が成長するのはそれなりに喜ばしい事だ。とはいえ、何処か影のある少女を前に単純に増えたわけではなそうだと推測する。
「戦闘員の内8人は元の派閥に戻る予定だから、純粋な団員は5人しか居ないのよ。しかも最近の
追い出さなかったら追い出さなかったで逆恨みで面倒事になるのもあったが、その後の新規団員募集をかけた際にやってきたのは欠損冒険者ばかり、と嫌な記憶がよみがえりミリアが舌打ちを零す。
「団員募集しても禄なのが来ないし。……ふと気になったのだけど、そっちの【ヘスティア・ファミリア】は、どんな感じ? えっと……アポロンとか、そういうのとかは?」
「アポロン? ああ、何時かは狙われるかもなあ。取りあえず今の団員はベル一人だ。団員じゃねえがベルにひっつくガキも一人いるなあ。最高レベルはベルのLv.2………2つ名は、神会の結果待ち」
アポロン。ヘルメスや祖父から聞いてたが、やはり手を出してくるのか。
「一応、ベルを現状狙ってんのはフレイアぐらいだな。まあベルを育てる気らしいからやってる事は見逃してるが」
「育てる……? しかもフレイア……」
眉間揉み、自らの二つ名の名付けた神を思い浮かべたミリアが更に溜息を吐いた。
「まあ、そうね。こっちはアポロンに戦争遊戯吹っ掛けられて酷い目にあった。とだけ言っておくわ。どのみち、この夢の内容は目覚めたら思い出せなくなるし」
「なんだ、そうか。そういや話は変わるが、ベルは一人っ子なんだよなあ? てことはそっちのヘルメスはマシかあ?」
一応ヘルメスに関して忠告してやろうかと思ったが、己が誕生してない以上は此方のヘルメスよりマシな可能性がある。マシと言っても、まあ何かをやらかしてる可能性はあるが。
「ヘルメス……? ああ、あの胡散臭い優男の神ね。そっちのヘルメスを知らないから比べられないけど、そうね……腹に何か抱えてて気持ち悪いわね」
神の中でも特に嫌いなタイプだとミリアが吐き捨てた。
なるほど、やはり向こうのヘルメスも大概らしい。まあこうして警戒しているあたり、大丈夫だろう。あの神は大胆ながら慎重。こうして警戒する奴がいる以上派手には動けないはず。
「なかなか見る目あるな。
「
エルフや
「あいつは四十代だろ? 俺はその辺、見ればわかる。少し特殊な事情でな」
その上で、年齢と中身が合わぬと思ったのだが………。
「まあ良いか。そういや、【
少なくともベルがミノタウロスに襲われた際、フィンはリリを見ていた。彼の在り方を考えると、おのれを受け継ぐ者を欲するのは想像に難くない。
「……私も、まあ特殊な事情があるのよ。それよりも、求婚されたわ。断ったけど」
肉体的な衰えは恩恵の影響で緩やかになる事もあり、第一級冒険者は見た目で年齢を推し量るのが難しくなる。そうであるのに『見ればわかる』と口にする以上、魂などの肉体以外の部分を見ているのかとミリアが推測しながら言葉を続ける。
「尊敬できる人物ではあるし、出来るなら協力したいとも思ってたけれどね。今は【ヘスティア・ファミリア】があるもの」
「そうか。これからも彼奴を頼むぜ………多分だが、ミノタウロスとは戦ったろ? ありゃもう運命だ。また戦う事になる」
どうせ忘れてしまうなら詳しいことも話してしまおうと思ったが、やはりやめておく。適当に世間話程度の忠告はしておこう。
「ミノタウロスと戦う運命、ねぇ……『
ヴァハの言葉を口の中で転がしながら、ミリアは窓の外に視線を向ける。霧はまだ遠く、時間が有り余っていると知らせてくる。それを見ながらも今度はミリアの方から質問を投げかけた。
「兄、と言っていたけれど、仲は良くないの? 兄弟なら同じ派閥に所属するものって訳ではないけれど、同一派閥に入るとかあったんじゃないかしら」
「俺達は見た目、あまり強くなさそうだろ? だから二人で別れて派閥を探してな。俺は別段同じ派閥じゃなくても良いと思っていたから、ベルはまあ多分、俺に自慢したかったのか恩恵を受け取ったあと合流してな………」
ベルが互いに違う派閥に所属してしまった時のショックを受けたような顔からして、出来る事なら一緒の派閥が良かっだろう。
「ま、だが同じ派閥になりゃ一緒に行こうってくっついてくるだろうし、これでいいと思ってるぜ?
仲に関しちゃ、俺は良いつもりだがこの前アイズに『虐めちゃダメ』とか言われたなあ………ちょっとボコボコにして外壁から蹴り落しただけなんだが」
キチンと助けたし、ベルも怒っていなかったんだがなあ、と笑う。
あの場でアイズが怒るのは想定内だったがそれでもやったのは、その方が面白いかと思ったからだ。事実あの時ミノタウロスは、明らかに生まれたばかり故に存在する筈のない過去を思い出していた。
「市壁から蹴り落とす……? Lv.1だと普通に死ねる高さだと思うのだけれど」
少し、というにはかなり過激な愛情表現にミリアが頬を引き攣らせる。
「ま、まあ……偶然が重なって他派閥に所属したってのはわかったわ。……ん、つまり貴方もベルと同じで最速ランクアップを果たしたって事?」
所属先を探すのが同時期であったのならば、冒険者になったのも同時期。それでありながらベルがLv.2で、目の前のヴァハもまたLv.2だという事に気付いたミリアが僅かに驚きながらも呟く。
「冒険者になって3週間ぐれえだな。その後ベルもミノタウロスでランクアップ………そういや今はLv.なんだ? お前が3で、ベルが最高戦力なら少なくとも2ではねえんだろ?」
「ベルはLv.3だけど……3週間って、どんな無茶したらそんな……はぁ、なんというかベルの兄って感じね」
妙なところで目の前の人物が彼の少年の兄であると納得したミリアは深い溜息を零す。
「こっちも同じ、かどうかはわからないけれど、変異種のミノタウロス討伐でベルがLv.2に、私は少し後ぐらいに
「ドラゴンをテイム?」
ドラゴンと言えば基本的にモンスターを種別に分ければ、かなり強力な存在だ。それをテイムとは、恐らくはスキルか魔法だろう。調教してLv.2と言うことは下したのはLv.1。現状Lv.3としての強さを見ても、魔法が不明だが勝つことは出来ても屈服させることは出来そうにない。
「ちなみ俺は………まあ経験自体は色々。ランクアップは漆黒のワイヴァーンをLv.3二人と組んで倒した。黒のモンスターは基本的にゃ神がいねえと生まれねえが通常のモンスターより強いから気ぃつけろよ」
「漆黒の、怪物……? ああ~、『漆黒の
既に交戦済みで、それも特殊な怪物『
「遅い忠告どうも……」
「なんだ、経験済みか。しかし
少なくとも17階層以降に潜ったという事だろう。ダンジョンが神を憎んでることを、他でもない神がよく知っているだろうに。
17階層までは潜れたのなら少なくとも神威を押さえるすべを知ってるというのに神威を放った………
「何処の馬鹿だそれは。自分達神々がダンジョンに何をしたか忘れてやがんのか?」
「……ウチの主神なのよね、その馬鹿っていうのは。まあ少しは私にも原因があるけど」
怒りの余り冒険者を殺傷する寸前にまでいき、それを女神の神威で止められた事を思い出してミリアは苦い表情を浮かべる。
「あのヘスティアがねえ……仮にも爺の姉だ。神威の加減でも間違えたか? いや、お前に原因ねえ………」
17階層以降で、モンスターと異なり神威が通じる相手。まあ人類だろう。使用理由は、ヘスティアの性格から考えて仲裁か?
「最速ランクアップ者に対する嫉妬かあ? 俺も気を付けなきゃなあ」
などと口では言いながらも、ヴァハは楽しみだと言うような笑みを浮かべた。
「気を付けるって、楽しそうに言うわね。まあ、私の関係ない所でやるなら別に構わないけれど、あとベルを泣かせない様にやって欲しいわね」
暗に隠れてやるなら別に良いと発言し、ミリアは肩を竦める。
「そういえば、全部忘れるしステイタスについて聞いても良いかしら。私は魔力特化、器用高めで力と耐久が絶望的。典型的な魔術師タイプよ、発展アビリティに《魔導》もあるし」
「良いぜえ。アビリティはどれが特化とかはねえなあ。魔法は2つ。血液を操って武器にしたり体内で動かすことで身体能力を上げる血液操作魔法と、血を燃やす火炎系。スキルのお蔭で人だろうとモンスターだろうと血を飲めば魔力や傷も回復出来る。何なら腕だってはやせるぜえ」
そういえば、目の前の少女の赤い瞳と肌の白い腕。そこだけやけに新しい。移植したようには見えないしまさか彼女も生えてきたのだろうか?
「発展アビリティは《加護》。俺の血を武器に塗れば雷の魔剣の完成だ。モンスターの魔石に塗りゃ、そのモンスターが高い知能か俺よりも遥かに強い
「腕が生えて、血を飲んで……え、何? 『
思ったより過激なスキル、魔法構成に若干引きながらもミリアは眉間を揉む。戦闘方法まで語れと言った積りはなかったが、一方的に語られたのならこちらも、と魔法についても口にした。
「私の魔法は『分岐詠唱』の特殊な魔法で、銃器の様な特徴を持つわ。単発威力は弱いけど連射できるから使い勝手は良好ね。後は……『クラスチェンジ』で魔法やスキルの構成をごっそり変更できるスキル。説明すると長くなるから省くけど、かなり戦闘法が変わるわね。それと、竜種限定で従える事が出来る使役魔法みたいなのも少々……
やはり竜種のテイムに関するスキルを持っていたか。
しかし、予想通り律儀な性格だ。こちらが手の内を晒せばあっさり話してくれた。まあ、説明が長いからと詳細は聞けなかったが。【魔力放出・雷】を教えればもう少し知れるだろうか?
いや、別に竜に関してだけ確かめたかっただけだし良いか。
「最後の一匹に関しちゃ知らねえが、スキルってのは本人の思いが形になりやすいらしいなあ。俺は血を流させるのも流すのも好きだしなあ。お前、なんか竜に思い入れでもあるのか?」
「思い入れ、思い入れねぇ……」
ミリアは大きく首を傾げながら考え込む。たっぷり三十秒ほどかけて答えを得られなかった彼女は肩を竦めた。
「さあ、私にもさっぱりだわ。どうして竜なのかしらね。いやそもそも使役するって関係もなんかしっくりこない、というか嫌いではあるのに、なんでかしら?」
「何だ、お前竜嫌いなのか。まあ、普通はそうだよな」
何せドラゴンは人類が憎むべきモンスターの頂点。特にヴァハが今も焦がれる隻眼の黒竜もまた、ドラゴンだ。
「ああ、そうそう。ドラゴンつえば、隻眼の黒竜にゃ気ぃつけな。あれは『古代』のモンスター。神が食われりゃ、強制送還なんて救済すらなくなる」
「あー、嫌いなのは『使役する事』であって『竜』じゃないのよ。一時期は『怪物趣味』とまで言われたし……いや、今でも知らない所で言われてそうね。それはともかく、『隻眼の黒竜』、っていうと三大
ヴァハの言葉にミリアが肩を竦めて鼻で笑った。
「そんな怪物と相対なんて冗談でしょ。そういうのは【ロキ・ファミリア】とか【フレイヤ・ファミリア】の管轄でしょうし? ……それよりもさらっと流しかけたけど、貴方
「そうか、なら『竜』とは仲良くやれてんのか。しかし怪物趣味かあ。蔑みの言葉としちゃ一級らしいなあ……」
そういう意味では黒竜に焦がれる自分も、『怪物趣味』に含まれるかもしれない。
「だが、ロキにフレイヤねえ………現状あそこだけで勝つのは無理だな。絶対に不可能だ………それと、確かに血は好きだな。何なら、理由は解らねえが腕や目が再生したお前の血の味とかも興味ある」
ヴァハはそう言って舌なめずりをした。これまでの経験を踏まえるに、血液の味はLv.、希少なスキルの有無、健康などで変わった。
竜を従える希少なスキルに加え、『分岐魔法』という聞いたことがないスキル。さらには『クラスチェンジ』という戦闘スタイルを変えるスキルと来た。
どんな味がするのだろうか? というか、この夢の中で味は感じれるのだろうか?
「おっと、なんか変なスイッチを押したみたいね……頼むからいきなり襲ってこないで欲しいわね。一応、こっちの方がレベルは上だから返り討ちにするわよ?」
襲われるのは御免だとレベル差だけ示しながらミリアは牽制する。それが牽制として効果を発揮しているかはともかく。
「貴方の言う通り、腕と目は再生した代物よ。私が従える竜種、赤飛竜は特殊な血らしくてね。それを素材として再生能力を極限まで高める事で失った手や足、目なんかの重要部位も再生可能な『再生薬』という薬が出来てるのよ……まあ、見ての通りまだ不完全な再生しかできないけれど」
透き通るような白い肌に、弟と同じ血の色を透かして見せた赤い瞳。なるほど、色素までは再生しないのか。
「しかしレベルねぇ。お前の目の前でそっちのベルが適正レベル2のミノタウロスを倒したのは見たんだろ? レベルは絶対じゃねえ…………しかし特殊な血ねえ。ここにいねえのが残念だ」
夢とはいえ仮にも実家だ。暴れる気にもなれないし、戦闘はやめておく。彼女が此方の世界に現れなかったのが残念だ。
「…しかし、『再生薬』と来たか。元の派閥に戻る奴等は、それを対価に協力を仰いだってどこか。確かに冒険者として役に立たねえ奴を仲間にしても警戒されねえだろうしな………」
普通に考えて一年だけとはいえ派閥の団員を貸し与える神がいるとは思えない。いや、タケミカヅチやミアハ辺りならしそうだが、11名となるの話が別だし3名も帰らないことを選び、主神が許すということはつまりそれだけの恩ということだろう。
「アミッド辺りが欲しがりそうだな。んで、ディアンケヒトが独占する………つーか、してるのか? うちのダンチョじゃ作れねえだろうし、作っても襲われない医療系派閥となると【ディアンケヒト・ファミリア】ぐらいだしな」
「レベル差って本当に恐ろしいモノの筈なのだけれどねぇ……クラネルの血にレベル差の概念ってないのかしら」
深い溜息と共に戦闘の意思を引っ込めたヴァハの様子に安堵し、ミリアは半眼で答える。
「正解。というか作れるのが【ディアンケヒト・ファミリア】オンリーで、全独占済み。契約で雁字搦めにされて、新規団員としてやってくる欠損冒険者にはきっちり金を払わせようって魂胆よ。容赦無く足元見られたわ。まあ
この夢を記憶できればアミッドに教えて異世界の自分に叶わぬ嫉妬をする姿を堪能できたかもしれない。非常に残念だ。
「クラネルの血筋ねえ。母親の方な普通だから、俺はともかくベルはあんまり血は関係ねえだろ。彼奴は魂レベルで特殊なんだよ」
「母親の方は普通? ベルは両親の事を知らないみたいだったけれど……ん?」
ミリアが違和感を覚え、視線を向けた先は玄関扉。固く閉められているはずの扉の隙間から濃密な霧が室内に侵入してきている。気が付けば窓の外は真っ白に染まり上がり、夢の終わりが近づいている事を知らせてきた。
「少し、気になるから聞きたかったのだけれどね。時間切れみたいね。まあ、少しその血液好きはどうかと思うけれど、話自体は楽しかったわ」
「あー、なんだ。時間か?」
その霧を見て、コキリと首を鳴らすヴァハ。目の前に極上の獲物がいるが仕方ない。我慢しよう。
「そこそこ楽しかったぜえ。こっちの世界にも、お前みたいのが現れることを祈ってる」
叶うことなら、殺しても文句を言われない敵として。
「……私は遠慮したいわね。流石に」
最後の最後で妙に殺気立ったヴァハの様子にミリアが眉間を揉んで立ち上がる。
「それじゃあ、叶うなら二度と出会う事が無い事を願ってるわ」
彼女の言葉を皮切りとし、濃霧が部屋に流れ込んでくる。
隙間から流れ込むというよりは、壁すらも透過して霧が全てを覆い尽くしていく。
酒臭い吐息を零し、妙にクラクラする頭を抑えながらミリア・ノースリスは自室で目覚めた。
自身の最後の記憶を辿り、冒険者流儀の験担ぎの為にドワーフの用意した『ドワーフ殺し』をグラス一杯、一気飲みをした結果倒れた事を思い出しつつも、妙に汗ばんだ首元を押さえて眉間を揉む。
「何か、妙な気分……酔い、じゃないわね。何かしら」
僅かに視線を逸らした先、部屋に備え付けられた姿見に映る自分の瞳を見て、ミリアは眉を顰めた。
原因は、その紅い瞳。まるで血を連想させる────というよりは血そのものの色合いのソレ。
「……当分の間、血は見たく無いわ」
酒を見たくないならまだしも、血を見たく無いとは何事かと奇妙に思いながら、彼女は汗ばんだ寝間着を着替える為に立ち上がり、妙に外が騒がしい事に首を傾げながら部屋を後にした。
「……さん、兄さん………起きて」
「ん〜?」
肩を揺らされ目を覚ます。体を伸ばし、ゴキゴキと骨を鳴らす。
「よおベル………何だ、何時の間にか寝てたか」
ヴァハが現在いるのは【ヘスティア・ファミリア】のホームの地下室。そのソファで寝ていたらしい。
「もう夕方だし、そろそろ帰ったほうが………ミアハ様達も心配してるかも」
「ああ、そうかあ…………」
ふぁ、と欠伸をして立ち上がる。何だか、とても喉が渇く。
美味い酒を目の前にして、口はすっかり受け入れ体勢になったのにお預けを食らった気分だ。
「じゃあ帰るわベル。無難な二つ名が決まるといいな」
ヴァハはそう言うと、己のホームに帰るために地下室から出て行った。
作者:魔法少女() あとがき
コラボの方ありがとうございましたー。超楽しかったです。
今までと違って最速、申請から書き上げまで4~5時間という超スピードで完走。キャラ相性が良かったんでしょうなぁ。
……本編執筆と並行作業してたから割とカツカツでしたが、速筆ですな(白目)
重ね重ね、コラボしていただき本当にありがとうございました。
作者:超高校級の切望様 あとがき
今回のコラボ、ありがとうございました。
ヴァハ君はレアな存在程血が美味しく感じるので、ミリアちゃんの様な存在と出会ったら血を欲しがるんだろうな、などと考えていたのでこんな感じになりました。今回出た伏線は一応本編でも散りばめている伏線ですがいたか回収したいと思います。
最後に、まだ原作4巻冒頭にしか進んでいない作品とコラボしていただき本当にありがとうございました