しかし未だ、敵の全容は見えていない……。
本作はおそらく数十巻を超える長編になるので、長い目でご覧ください!
「そうだね、神殿には職員用の寮みたいなのあるし。」
オレの提案に、ポリアフさんはそう頷いて受け入れてくれたみたいだ。
安心しながら、莉里に体重を預ける。すると彼も同じように返してくれて、胸がぎゅっと締まるのを感じた。
「うんうん! メグもどこかにいると思うし...あっ!」
だけど少し間を置いてオレは、反射的に後ずさりしてしまう。
イトカクさんがいきなり小さく嗚咽を漏らしたからだ。
こういう小さい仕草に反応しちゃうのは、オレの前からの悪い癖だ。
「?」
ミオさんが首をかしげる。同時にオレも彼女に目を向けると、狐の女王は思ったより小さいバックから、光る球体を取り出した。
そー言えばそんなのあったなぁ...と思いながら、彼女の手元を見つめる。
「あ、みんな先行くよ? 別に歩きながらできるし。
...あ、メグ? 今どこ?」
...と、イトカクさんが連絡を取ってくれたみたいなので、オレたちも歩き出す。
もう一度莉里の方へ眼を向けると、丁度彼と目が合った。
二人同時に微笑むと、一回だけ唇を触れさせる。
それで一旦気持ちを切り替えてから、莉里が先頭でポリアフさんへ付いていく。
「綺羅、さっき泊ろうって言ったの...」
彼の言葉を途中で切るようにして、オレは彼の口の中に指を突っ込んだ。
すぐに耳元に口を寄せると、小声で囁く。
「そうだよ莉里。期待してて。」
「ん…うん…えへへ…。」
すると途端に莉里の顔が赤くなって、すぐに「でも」と返ってくる。オレがほんのすこしいたずらに返すと、莉里がさらに顔を赤らめて口をもごもごさせる。
「でも?」
意識を集中させても未来は見えなかったけれど、これからどうすればいいのか、どうなるのかは何だかわかったような気分だ。
「で…でもぉ…、明日だってここを歩くんでしょ? だったら…その、あんまり遅くまで起きてたら…。ひぁっ?!」
…と、そこで声が途切れる。何か要因があったわけじゃないけど、オレの仕草…莉里の首筋を、軽く噛んでみせたのが悪かったかな?
莉里が声をあげてオレをとり落した。
「いてて…いきなり落とさないでよねっ」
オレも受け身を取って立ち上がると、莉里の顔を見つめる。
こうジッと見つめてると、莉里が表情を変えるのは昔から知ってた。
その顔が、すっごく魅力的だってことも。
「だってぇ! 綺羅が噛んでくるからぁ…!」
「………」
下手に返事するとその顔が途切れちゃうから、黙ったまま莉里の襟を掴む。右手は襟とボタンを直しながら、左手で莉里の頬を引いてオレに向けさせる。
「っ…綺羅…。」
流石に瞳までは無理やり動かせないから不安だったんだけど、こうあごを引いた仕草で莉里が察してくれて嬉しい。
「莉里、オレ。君に伝えたいことが…」
目が合ってからさらに見つめていると、ふと不気味な音楽が鳴った。
てててててててん…という、簡素なピアノの音色。それだけならまだいいけど、途中途中に重々しい和音を響かせるのはやつら…【シェイプ】が来る合図だ。
「へぇ。もう来るんだ。」
ミオさんが力なくつぶやく。
すぐにポリアフさんも両手を構えながら、オレたちへ向かって叫ぶ。
「みんな、剣抜いて!」
その両手に水色…氷属性のオーラが集まると、湾曲した細長い棒を生み出した。
それを構えながら飛び退ると、水平に構えて右手だけ引く。
その構えは、本物の弓矢を引きしぼる動作とそっくりだ。
「みんな、円陣組んで! どこから何がやって来るかわからない!!」
ポリアフさんの言葉に合わせて、全員で周囲を警戒する。
周囲にはまだ何もいないけれど、どこか重たい空気…無機質な雰囲気が肌を撫でる。莉
里の暖かいタレ目も、この空気の中だとなぜか苦しそうだ。
「もお、ポリアフさんもいっつも経験してるでしょ?
そんなにビビること…うわっ?!!」
瞬間、ミオさんへ赤い矢が飛んでくる。彼女は間一髪避けられたみたいだけど、すぐに周囲からドールの影が囲んでくる。
光学銃の弾丸みたいだ。一本だけだったところを見ると、〇七式あたりのセミオート弾だと思われる。
キャタピラの上にモーターと、アークスを構える小さな歩兵。サイズは犬と同じくらいだけど、囲んでくるドールの過半数をこいつが占めている。
〇七式ドール…あいつらのアークスは連射してこない、セミオートってやつだ。
「〇七式は手数はあんまりない! 一匹ずつ潰せば大した相手じゃないよ!!」
莉里が叫びながら、剣をなれた手つきで構えた。
左腰にあてがうようにして構えた剣を、真っ直ぐに突き出しながら駆け出す。
片手直剣用突進刺突「ヘイトレッド・パイル」火属性。
「やぁっ!!」
一撃で3体、〇七式を串刺しにする。3体のドールは青緑のヒビを体に広げると、そこを中心にしてバラバラに砕けた。
そのすぐあとに、莉里の背後から人っぽい姿のドールが歩み寄る。
クモを彷彿とさせる4つの脚の上に、先端を丸く尖らせた弾丸っぽい形状のモーター。そして、右側には剣と一体化した腕を持っている。六一式と呼ばれる、剣士型のドールだ。
「莉里! 危ない!!」
その影を見た瞬間に、オレは駆け出していた。光剣を左腰まで引きしぼると、振り払いながら突進する。
片刄剣用突進なぎ払い「牙烈斬」火属性
この技は「牙烈斬」のほかに、通じやすい名前だと「騎馬烈」とかって呼ばれる。ホントは「牙烈斬」ってのを「きばれつ」と略して、それがそのまま「騎馬烈」になった感じだ。
「……らぁっ!!」
なぎ払いは、ちょうど剣を振りかぶったドールを真っ二つにかち割った。莉里が少し驚いた顔を見せてから、「ありがとう」と囁く。
「ううん、大事な人が切られそうなのに、助けないやつがいるかな?」
オレの後ろにいたドールを振り返りで切り裂いてから、肩越しに莉里を見つめる。ホントは正面から見つめたいんだけど、後隙だから動けない…。
片刄剣用振り返りなぎ払い「荒神」土属性
「それは…その…。えっと……そんな言い方されたら困っちゃうよお!」
莉里が恥ずかしそうに叫んでから、すぐ隣のドールに剣を叩きつけた。
カラスっぽい見た目をした、偵察用のドールだ。こいつは連射してくる「フルオート」って型の銃を、口の中に入れてる。一四式偵察型。
「ふっ……やぁ!」
まず剣を当てて、地面へ叩きつける。少し跳ね上がったそいつを、さらに強く下へ叩きつける。二回の剣戟だけど、地面への叩きつけは剣と同じくらいの破壊力がある。技後硬直が少ないのも、地面の衝撃は魔力を使わないからだ。
突進二連撃「デッド・ナース」無属性
「綺羅!」
途端に莉里の視線が、オレの右目…眼帯側を向く。感覚的には、もうちょっと右側だ。
つまるところ、オレの右目が見てるはずの位置。今は見えない、オレの右横。
「?! うっらぁっ!」
振り返った先に、ドールの姿があった。さっきと同じ、剣を持った六一式。オレはその勢いのまま剣を左手に構え、時計回りに回転。台風のように回りながら、ドールもろとも周囲を切り裂く。
「天災剣」風と雷属性、回転斬り。
「綺羅の方にも回転斬りあるんだ!」
莉里が叫んだ。彼も剣を持ち直してから、オレと同じような回転斬りを披露する。
だけど同じような技があるのは、別に珍しいことじゃない。オレはこう答えた。
「大体の剣にはあるんじゃないの? リュウくんどうだった?」
「リュウくん…、あ、あったかも。バトルスイングってやつ。」
莉里の答えに、「回転斬りはそんな珍しいものじゃないよ」と答えながら、オレは左側のドールを叩き切った。
斜めの切りおろしのあと、そのさらに少し左側にいたドールも上への切り上げで怯ませる。
最後に、回転して勢いをつけた切り払いで二頭とも破裂させる。
「莉里、ちょっと…オラァ! いいかな?」
回転斬りだけ気合を入れちゃったけど、多分違和感なく切り裂きながら聞けたはず。あとで確認すると、さっきのは九〇式と呼ばれる大型の人形ドールだ。オレらより少し大きめの体格で、右手にチェーンソー、左手にアームを持ったドール。
攻撃力は並みじゃないんだけど、そんなに強い相手じゃない。
「なあに? やっ!」
莉里の方も多少なり気合が必要みたいで、光を伸ばした刃を縦に叩きつけた。伸びた光の刃が、真っ直ぐ先にいる歩兵ドール…〇七式をいくらか巻き込みながら六一式の剣士を叩き斬る。
長射程叩きつけ「ブレイク・ライトニング」光属性。
「オレのこと……」
莉里の答えにホッとしながら、尋ねようと口を開く。
けれど、それは莉里の剣に抑えられてしまった。
「綺羅! 危ない!!」
オレのすぐ右上に、偵察用のカラスが飛びかかってきてたからだ。
莉里がとっさに一四式がいたのを見つけて、貫いてくれたからよかった。
突進刺突「デサイシブ・ピアーシング」雷属性。
2、3匹のカラスを貫いてすぐ、それが青い光の破片になって割れる。
「あっ…莉里、ありがと。」
莉里の頬をなでながら微笑む。すると、莉里も同じように返して微笑んでくれた。なんだか暖かい気持ちになるのを、肌で感じる。
「綺羅も、さっき助けてくれたでしょ?」
「あんなの助けたうちに入んないよっ」
そうかぶりを振ったところで、オレからも莉里からも見えない位置から3本の矢が飛んでくる。
放射状に広がったそれは、3体のドール…一四式カラス、〇七式歩兵、六一式剣士を一体ずつ貫いて破片へと変えた。
「[[rb:氷山の統制 > ブルー・ディバージョン]]。
君たち、こんな時にイチャイチャしない!!」
ポリアフさんがそう叫んで、[[rb:魔術 > スペル]]をつけてない矢をオレたちの間に飛ばしてくる。ちょうど距離が離れてから、二人で少しムッとしながらうなずく。
「「えっ……はーい」」
そう言ってオレは、すぐ隣の六一式ドールを光剣で切り裂いた。
左に全力で振り払うけど、剣術はつけてない。
すぐに右へ振り返り、その勢いで斬りはらう。
歩兵を2体切り裂いたところで飛び上がり、オレは光剣を振りかぶりながら空中で叫んだ。
「うりゃぁぁーーっ!!」
叫びながら剣を力任せに叩きつけると、剣術でもなんでもないのに六一式の硬いやつが真っ二つに割れる。
光剣の魔力を剣に変えるっていう性質上、こういう感情の変化が威力に繋がるみたいだ。
「綺羅、そんなすねることー?」
莉里がそうたずねる。確かにちょっと気分悪いけど、ここまで八つ当たりすることでもなかったかも…。
「ううん、ちょっと腹たっちゃって。」
そう言いながら、光剣を振り払う。たまたまカラスに当たって、後ろにいた九〇式にうち当たってから二体とも青緑の破片に変える。
「ほら、やっぱり! 綺羅、そんなにボクのこと好きだったんだー?」
莉里がいたずらに笑った。彼がすぐに振り返り、水属性の刃を打ち付ける。後ろにいた剣士ドールを切り裂いてから、短い後隙のあとオレに首をかしげる。
「い…今のはこいつらの運が悪かっただけだもん!」
そう被りを振ってすぐ、莉里が泣きだしそうな顔を見せた。
両手で顔を隠してから、右目だけ覗きながらたずねる。
「ボクのこと嫌いだったの?」
と、そこで莉里の足元に歩兵が寄ってきたのを見つけた。
雷の魔術を掌にためてから、〇七式へそれを飛ばす。
〇七式歩兵がそれを食らって吹き飛んだのを見て、オレはそのまま電撃で莉里の首を撫でた。
「あっ…綺羅、ありが…いったっ!!」
すぐに莉里に鏡を渡して、首の文字を見せる。裏返った形で書いたから、鏡に写せばそのまま読めるはずだ。
「えっと…【大好き】…?!」
こくこくと頷いてから、銃を抜いて構える。左手だけで莉里を狙うと、そのままこうつぶやく。
「莉里、私は今機嫌が悪い。痛いことされたくなかったら3時の方向にクアルムして。」
そう言ってから、莉里がオレから見て左側へ飛びかかる。泣きそうな顔が一瞬でキリッと変わったのを見て、やっぱこの子は違うなぁと確信する。
「おっけー。もう機嫌治ったからー!」
そう言いながらロックを解除、オレは引き金を引いた。莉里を追って少しだけ動いた剣士ドールを貫いた弾丸が、さらに突き進んで六〇式人形3体を貫く。
「やったぁ! 4コンボっ!」
莉里も不思議そうな顔を見せてから、3連撃をドールに叩きつけてた。人形を2体切り裂いてから、オレに苦笑いして見せる。
「綺羅、もうちょっと優しい言い方できなかったの?」
「急いでると言い方キツくなるの、莉里知ってるでしょ?」
そう言って指さすと、オレの後ろで機械音が響いた。
すぐに振り返ってから、膝蹴りを食らわして飛び上がる。
空中で飛び蹴りをかましてから、さらにアークスでドールの足を潰す。
「おらぁっ!」
叫びながら蹴りつけてすかさず、アークスを全弾撃ち放つ。
最後の一体が起き上がったのを見て、オレは引き絞った光剣を突き出した。
雷属性の刺突は、莉里のデサイシブと大体同じだ。
雷属性単発刺突「悪鬼解」
「綺羅…。」
莉里がもう一度、怖がるように後ずさりする。オレは途端に我に返って、莉里に両手を合わせて謝る。
「あ、ごめんっ! ちょっと怖かったよね?」
だけど莉里は、怖がって後ずさったわけじゃなかった。
「綺羅、すっごいカッコイイ! 広範囲に暴れてると思ったら、実は一体をずっといじめてただけ…とか! すっごいクールだよー!」
えっ…と声に出してから周囲を見渡すと、かなりの数のドールが、破片になって消えていく最中。
思ったより広範囲に暴れてたらしいけど、オレにはさっきのドール…姿は確認してないしもう消えてるから誰かわかんないけど、あいつをずっといじめてた記憶しかない。
「綺羅のおかげでこの辺りはある程度済んだし、あっち側に加勢してもいいんじゃないかな?」
そう莉里が加えたのを聞いて、この子は違うなぁとまた思い直す。
一緒に戦ったり剣を交えたりするとわかるけど、この子の剣撃は一撃が重い上に素早いんだ。
かなり前から莉里の動作を解説したりしてるけど、大半は「今莉里はこの体勢で、さっきこの構えだったから、莉里はこういう行動を取ったんだろうな」という推測を語ってるだけ。
もちろん、大事な人の動作を読み間違えたりはしないけど。
「そうだね、オレはイトカクさんに加勢するから…、莉里はミオさん手伝ってあげて!」
後半は駆け出しながらの叫びで、莉里が頷いてから剣を振り回す。
左右からブンブンと何度も振り回しながら走り続けて、最終的に真っ直ぐに叩きつける動きでフィニッシュ。
「レザー・スライサー」闇属性7連撃。
確か大剣の技だった気がするけど…。とか考えたのは、これが終わった後だ。莉里が駆け出したのを見てホッとしながら、まずはオレンジ色のお嬢さんより先に茶髪の剣士を探し当てる。
「シオン! エリとリュウくんの指揮取れる?!」
「わかった! 綺羅はミオさんのカバーお願い!」
シオンの返事に大きく頷いて、ミオさんを探す。灰色か黒あたりが多いドールの中で、オレンジの衣装はものすごく目立っている。
「あっ! キラちゃん! 拳銃の使い心地はどう?」
ドールの剣を必死に受け止めながらも、ミオさんはそうたずねるほどの余裕を残していた。
よくよくその手を見てみると、バトンかな? 魔術用の杖みたいなのが握られている。装飾のない質素な棒が、鳥かごを作るように枝分かれ、広がってから結ばれている。
籠の中には緑色の光…、多分ミオさんの魔力が固まっていて、きっと魔術の発動を強化する…みたいなやつだと思われる。
「うん! 大丈夫!!」
叫んでから、右手の光剣を引きしぼる。
左の脇腹まで引いた剣を、振り払いながら駆け出す。
雷の刃に水がまとうと同時に、オレの突進も速度を上げる。
「おっけー! ちょっと手伝って!
呪詛・鳳凰の使命…、セダー!」
そのまま走り出してドールを3体ほど、薙ぎ払いで吹き飛ばす。
そのままの勢いで回転、六一式の剣士三体の後ろからやってきた人形型、九〇式を縦に切りつける。
波状の魔力が一度広がって、また集まる姿はさながら荒れ狂う大波だ。
片刄剣用突進二連撃「堤崩落」水属性
「ミオさん!」
「わかってる!」
オレの呼びかけで気づいたみたいで、彼女の右側から襲ってくるコンテナ状のドールへ枝を伸ばした。
ドールは三七式。キャタピラの上についたコンテナと、ドクロを模したセンサーが特徴だ。
コンテナの中には実弾、光学のガトリングガンと、エネルギー砲を詰め込んである。ドクロはたまに喋る。
「キラちゃん! 10秒だけ持ちこたえて!」
ミオさんがそう叫んで、魔力を操作して何かをはじめた。
そこでこくりと頷いて、三七式へ剣を向ける。
「コッチヲ見ロォ…」
まず小手先に左手で拳銃を撃ってみると、その走行に小さな穴が開く。どうやら効いてくれるみたいだけど、他のドールとは強度が桁違いだ。
「これは…剣使わなきゃ無理だな…。」
「オイ…コッチヲ見ロッテ言ッテルンダゼ…」
ドクロが徐々に近づいてきて、キャタピラの音も激しくなっていく。そろそろかなという所で、オレは光剣を点灯させた。
両手で持った剣を真っ直ぐ相手へ向ける、片刄剣の構えだ。
「行くぞっ!!」
ほとんど咆哮気味に叫ぶと、右腰まで剣を引いて駆け出す。
雷の光に炎が加わったのを確認して、地面にひきづるように突進。
刃の炎が薄くなったのを見てオレは、そのまま地面ごとえぐって剣を振り上げた。
炎の輝きはいつのまにか消えていて、無属性の銀光だけが光剣をなぞる。
「燃え上がれ……業火よ!!」
とかって叫んでみると、振り上げ切った光剣に少し遅れて、爆発が前方へ駆け出していいった。
オレのすぐ手前で爆発、吹っ飛んだドールをさらに爆発が叩きつけ、その連鎖で何十ヤードも飛びすさっていく。
「ミオさん!」
あいつらは基本的に防御が硬いんだけど、電気と水、ついで熱や炎が弱点だ。それもフルコンボで爆発を受けたんだから、あんな使い捨てコンテナなんかはもうチリジリのはず。
片刄剣用炎属性突進上段「煉獄刃」
得意げに彼女に目を向けると、厳しい返事が返ってきた。
「キラちゃん! 目離しちゃダメ!!」
「へっ?」
と聞き返した直後、オレの頬を実弾の破裂音と、弾丸がかすめた。すぐに破裂音のした方向へ向き直ると、さっきのコンテナが起き上がっている。
「コッチヲ……コッチヲ見ロォ……」
唸り声もさっきに増しておぞましくなり、左右に展開したガトリングとコンテナ上部からオレを狙うキャノン砲が、オレの身体を狙い始める。
「ミオさん、周りのちっちゃいのを片付けてて。
………こいつは私が削る。」
そう呟いて、オレは銃を抜いた。走りながら3、4回ほど引き金を引いてから、速度を上げて駆け出す。
そこでドールの光学ガトリングが光ったので、空中に飛び上がって銃を放つ。1発、2発、3発。ミオさんによると、この銃って道具は使用者の魔力で弾丸を生成、1度保留してから弾き飛ばすっていう武器みたいだ。
「ふっ………うらぁっー!!」
構えを取って、空中で飛び出す。右手に握った光剣を、突き出しながらコンテナへ翔ける。
ドールの光学銃弾がオレの足元を通り過ぎていくのを気にしながら、オレは角ばった球体に剣を突き刺した。
「おらおらおらぁーーっ!!」
一回目を当ててからさらに、ドールの装甲に4度剣を突き出す。
合計5つ、星型の頂点を描く刺し傷がついてから、オレは剣を振り上げた。
剣ごと飛び上がった身体を、全体重と圧力、手足の振りを剣に加えて叩きつける。
星の真ん中に、「x」の切り傷ができて剣術は終わり。
聖剣用7連撃「雷光神」雷属性
聖剣っていうのは、メグさんの赤鷹の大剣みたいな武具兼祭具って武器の、大型な剣を指す。
「…っ……らぁっ!」
最後の一撃を終えて自由落下しながら、オレは三七式のキャノン砲に違和感を覚えた。
すぐにその違和感が形になって、銃口が淡い青色に光る。
「ニヤリ」
音に出そうな笑みが溢れると、オレは無意識に駆け出していた。
剣を振りかぶって突進、剣術なしの縦切りを食らわせる。すぐあとに、右手の剣を左肩まで振りかぶる。
「忘れない…!」
軽い掛け声でそれを振り下げ、右下への斜めの斬撃。
もう身体が覚えて頭が忘れちゃったから解説はできないけど、一回の剣戟で2本の傷を結ぶ。
「雨晴れ混じる…、」
円弧を描くようにして振りかぶり、右上から左下への縦1文字が二本。これも同じく一回の動作で、二回の剣戟を行う。
「……あの空を!」
素早いんじゃなくて無駄のない動きーーー残像が見えるレベルーーーで左腕あたりまで剣をひきしぼり、右へ振り払う。反転させて左へ戻すと、一撃で2の傷x2回で4つの傷が付けられる。
「凛花っ! ぃぃぃぃぇぇぇぇえ乱舞ぅぅーーっ!!」
短い気合いで飛び上がり、途中の伸ばしで空中からの叩きつけ。
最後の叫びで、そこから残ってる全ての魔力体力をつぎ込んだ、刺突を加える。二個傷をつけるのは技術だから、この部分だけ省いて1個の刺し傷。
動作は6回だけど、ついた傷は全部で11個。
「凛花連斬」片刄剣用11連撃の無属性。
「おおー! キラちゃんナイスーっ! コンテナって硬いからさ、電気とか水とか使おっかなーって思ってたんだけど、まさか剣と銃だけでやっちゃうなんてすごいね!」
ミオさんが嬉しそうに手を叩く。オレは辺りを見渡して、ドールの数が明らかに減ってるのを認識した。きっと莉里やシオンたちが頑張ってくれたんだろうな。
「えへへ…そんな、私ただ暴れてただけですよっ!
戦い方わかってればもっと速く倒せたはずですし、周りのドールをみんなが一掃してくれなかったら…。」
と謙遜するような言葉を並べていると、ミオさんがオレの肩を軽く叩いた。どうやら身長はオレより少し低いけど、多分エリやシオンよりは高い。
「いやいや、私何もしてないよ? どっちかっていうと、キラちゃんが全滅させてくるから全然良いとこ見せれなかったしー」
そう言って笑ったミオさんの後ろで、ビリビリと漏電してる剣士、六一式が立ち上がった。彼女の首筋に刃を振りかぶると、重たい動きで振り下ろす。
「危な……っ」
オレの叫び声は、途中で止まってしまった。謎の破裂音が響いた後、ドールが動きを止めて完全に消滅したからだ。青い光の破片に変わってから、そのすぐ下に弾薬…見たことない形だけど、多分長距離を飛んで一発の破壊力が高いタイプのが転がってる。
「あっ……これ、スナイパー用の弾丸じゃん。どこかから援護してる人がいるのかも。」
なんだか曖昧な言い方だけど、とりあえず納得したので莉里の方へ目線を向ける。
3つ片手用の剣が踊りながら、そのすぐ近くで鮮やかな魔術が背景を彩ってる。メグさんの炎と風、そしてイトカクさんの雷と土だ。
「なるほど…。ところでミオさん、莉里たちの方手伝った方がいいんですかね?」
そうたずねると、ミオさんが首を横に振る。「やめとけ」というよりは、「必要ではないと思うな」って感じ。
確かに莉里は剣術うまいし、シオンやエリスタも大丈夫そう。
ポリアフさんとスナイパーの誰かもいるし、オレたちは必要じゃないだろうな。
「んー…、別にいいんじゃない? あの黒コートの二人、あいつらに効く剣持ってないのに魔術で戦うって…、かなり戦い慣れしてるね?」
「みたいですねー」
頷いてから右手を鳴らして、茶色…土属性の魔術を集める。
それをぎゅっと込めてから、オレは足元に向けて放った。すると、茶色い魔術はたちまち木製の机と椅子に早変わり。
「ミオさん、おかけくださいっ」
手振りを加えながら微笑むと、ミオさんが少しぼやっとしたような顔を元に戻す。どうやら「みたいですね」辺りからぼーっとしてたみたいで、首を傾げてからオレに抱きついてきた。
「んー? あ、椅子作ってくれたんだ! ありがとー! 」
茶色い装束でわからなかったけど、思ったより大きな胸の圧力でドキッとする。
だけどオレは、莉里の視線が怖くって受け止めれなかった。
「わわっ…ちょっと…!」
と小さく息を漏らしながら、オレはわたわたと両手を振る。
机は正方形の角に足がついたやつ、椅子は木の皮を網目状に縫ったやつだ。しばらく暴れてから、ミオさんが座ったところでオレも座る。
「キラちゃんさ、なんか距離遠いよね。」
一瞬の沈黙の後、ミオさんがこう口を開いた。
オレはその言葉に重い何かを感じて、彼女の目を見つめる。
真っ黒い瞳の奥に、どこか儚げな光が踊っていた。
「えっ?」
「なんか…隠してること、3つも4つもない?
それも、【言わなくてもいい】みたいに思ってる。」
少しいたずらな表情でそう言われて、オレは内心焦りを感じた。
黒い長髪を伝って、汗が頬を撫でる。
それがそのままテーブルにこぼれ落ちると、その音を合図にミオさんがさらに言葉を続けた。
「私…ミオがどうとかじゃなくて、【言ったところでどうなる?】って自分の中で塞ぎ込んでるから。」
焦りのせいか、震えたような声音でミオさんに尋ねる。
彼女の瞳の中に、やっぱり儚い光が踊り始める。
「…………私に何を求めてるんですか?」
その光が揺れを止めて、安定したとき。
オレの言葉に彼女が、「えへへ」と笑ってこう答える。
「言ってなにかが起こるような会話、私人生でしたことないよ。
だから、どんな話題もお話も【どうなる】とか考えないし関係ない。キラちゃんが言いたくなければ別にいいんだよ。」
ミオさんがそう言ってさらに強く笑ってから、前かがみになってオレに顔を近づける。
オレにだけ聞こえるようなボリュームで、彼女は最後にこうささやいた。
「………だけど、言って何もないんだったら、言わない理由もないと私は思うな。
もし言うべきだって少しでも思ったら、黙ることに迷いができたら、教えてほしいな。」
彼女の言葉に、こくこくとうなずく。
ミオさんもにっこり笑って、「約束だよ?」とオレに手を差し出す。
オレはそれを握って、「もちろんですよっ!」とうなずいた。
3歩歩いたら忘れるようなくだらない会話をしたあと、オレは莉里たちの方をまた見ていた。ドールも半分…いや、4分の1以下にまで減っていて、きっと大丈夫だろうな。
そう思いながら、オレはミオさんに「大丈夫ですか?」とたずねて水を渡した。
ふと見てみると、端っこに何か書いてある。「りり」。
あれ…と思いながら、オレは自分のカバンを漁ってみた。中にオレの水筒はなくって、多分お互い間違って持ってるなと理解する。
ーーー莉里、さっき水筒飲んでたよね?
ーーーあれ、オレが口つけたやつかな…。
[newpage]
キラちゃんがミオと話している間に、私はリリたちに支援されてドールを殲滅していた。
ミオはここでも有名な「鳳凰」、「皇主」の下の血筋の王女だ。
監獄の地は立場がめんどくさいから、明確に「この人は目上!」ってわからなければ呼び捨てタメ語でよし、となっている。
「[[rb:氷山の災厄 > ブルー・カラミティ]]!!」
そう叫んでから、番えた矢を上空へ撃ち放つ。
それが星になったと思ったすぐ後に、巨大な月が降って来た。
それは禍々しいしかめっ面を浮かべる、黒っぽい灰色をした災厄の一矢。
降りてきた月が、ちょうど硬いコンテナドール、三七式に直撃する。衝撃波で周囲のドールも粉々になったところで、残った数体をリリちゃんが叩っ斬る。
剣を肩より少し上に振りかぶって、駆け出した後に円弧を描いて叩きつける動き。
片手直剣用突進上段「チャージ・キル」の上位技、「アサルト・キラー」。
だっけ? とかって思わないのは、一応公務員として騎士の剣術は必要なだけ覚えてるからだ。
「おっけー、エリスタちゃん! リリちゃんとドール分散させて!
シオンちゃんは私のとこ寄ってきたやつ片っ端から切って!」
そう叫びながら、氷の魔力を極限まで冷やす。
これで50本分の冷気が出来たはずだから、矢筒だけ作ってこう叫ぶ。
「[[rb:氷山の憤怒 > ブルー・イルプション]]っ!」
この矢は極限まで冷やした、絶対零度とか比にならない温度だから、これが電気やエネルギーで熱の溜まったドールなんかに当たったら…。
「「ニヤリ」」
隣にいたシオンちゃんと同時にいやらしく笑うと、私は20本くらい同時につがえて引き絞った。
シオンちゃんは逆に、両手で握った剣を腰に構えて、一直線に突き進む。
「一瞬で断ち切る!!」
ブルー・イルプションはある程度熱のあるものに当たった時、色々計算した結果…計算上でしかないけど、魔術なしの普通の矢の1.35倍になるのがわかってる。
「全弾命中、覚悟してもらうから!」
知り合いのガンマンは「全弾命中(したから)、覚悟してもらうぜ!」っていう言い方をするんだけど、そんなの待ってらんない。
私はさっさと「全弾命中(の危険を)覚悟してもらうから」。
シオンちゃんが駆け出して、そのすぐ隣を私の20本が並走する。
私の矢はコンテナのドクロを真っ向から、全弾命中で貫いた。超低音の矢はドールの熱で瞬時に溶かされ、いきなり体積が肥大化する。
それだけでも十分な破壊力なんだけど、さらに蒸気爆発でまだまだダメージ。
ドクロを被ったコンテナは、蒸気が消えたらいなかった。
「やっ!!」
シオンちゃんが剣を振り払って、息の残ってた剣士ドールが3体真っ二つになる。
炎属性の突進なぎ払い「牙烈斬」だ。
短くは「騎馬烈」。
「シオンちゃん、私の後ろ!」
剣を振り払ったばかりで悪いけど、後ろからドールが襲ってきてたんだ。
多分剣士タイプだけど、それを彼女に切ってもらいたい。
飛び上がったシオンちゃんは、空中で小さく呟いた。
「不毛…」
私も4本ほど矢をつがえながら、前方の4体を睨みつける。
中距離や遠距離の騎士…今は公務官だけど、それをやってると睨んだだけで並大抵のゴロツキは病院送りだ。
多分、「離れてるから大丈夫だもんね!」みたいなのを思えない心理…「多少の距離なら仕留めるけど」という殺意が飛んでくのかな?
「お前もズタズタに削いでやる!」
シオンちゃんも射程に近づいたみたいで、頭上に大きく掲げてた剣を真っ直ぐに叩きつけた。
硬質なドールの身体が、青い線を入れたすぐ後にひび割れて光の破片に変わる。
「[[rb:氷山の統制 > ブルー・ディバージョン]]…!」
今度は私の叫び声で、4本の矢にエイムと威力がブーストされる。
それを一斉に解き放つと、どれも狙い違わず一本ずつドールの身体を貫いた。
ディバージョンは発動速度が速くて火力も高い、扱いやすい技が欲しくて編み出したものだ。いくつかの矢にちょっとだけ魔力を加えて、まとめて放つだけ。
一本一本も充分な威力を持ってるけど、例えば一つの対象に全弾命中させればそこらの剣戟に負けない威力になる。
「ポリアフさん、スラスター!」
シオンちゃんが叫ぶ。もう私の技を覚えたのは尊敬するけど、こう適切なタイミングで言われるのもなんだか悔しい。
「わかった!…[[rb:氷山の貫通矢 > ブルー・スラスター]]!!」
少し長い貯めのあとに、あらゆるものを貫く一本の矢を放つ。
それはいくつか並んだドールの中心を貫通、数十体をまとめて破片に変えた。
もちろん当たった時点でとてつもないダメージをたたき出すけど、貫通して内部を抉りまくって貫くっていう矢の特性が凄まじいんだ。
「ありが…とっ!!」
シオンちゃんが剣を振り払う。いつの間にかさやにしまっていたカタナを抜き打ちで振り払うと、その刃から黄金の衝撃波がドールへ駆け出した。
私がやり残した九〇式ドール、人形型の数体を黄金の衝撃波が断ち切る。
続けざまに満足げに微笑むと、彼女はカタナを左肩まで引きしぼった。
「ふっ!」
小さな気合いで一体、偵察用のカラスを斜めに叩く。すぐに軸を直して垂直に切り上げると、その一撃は隣の六一式に。
最後、一回転しての左斬りはらい。これは四八式のよくわかんないドールを叩き斬る。
「必死刃」片刃剣用3連撃。
四八式はうさぎの骨格の一対の足の上に、湾曲した盾で中身を隠してる。
中身は確か、モーターと排熱機構だったはず。
こいつは左側に拳銃を構えてるんだけど、それよりも前方についた排熱機構からエネルギー弾を射出するっていう攻撃が厄介だ。
「シオンちゃんナイス!」
三体を吹き飛ばしたシオンちゃんに叫んで、私は何者かに呼ばれて振り向いた。
その方向には、ドクロを被った球体。
コンテナってあだ名のついた、三七式の重機タイプがいる。
「コッチヲ見ロォ…」
「もちろん。じゃなきゃ狙えないからね。」
そう答えてから、弓矢を引きしぼる。こいつのガトリングとキャノンは充分な脅威だけど、それ以上に厄介なのはこいつの硬さだ。
「あいつ、絶対硬いやつだよね。」
シオンちゃんのつぶやきに大きく頷いて、指から無駄な力を抜く。
コンテナと対峙するとき、下手な刃は刃こぼれするし、銃弾もただ無駄になるってことがしょっちゅう。
だから、こいつには二つの選択肢を選ばせられる。
「なら、そのコンテナごとぶった切るか。」
「圧倒的手数でコンテナを貫くか。」
シオンちゃんも構えを取ったけど、これは一撃必殺用の重たい構えだ。
両手で持ったカタナを体ごとひねって引きしぼり、その切っ先を真っ直ぐに三七式へ向ける。
魔術も何もないけど、彼女の鍛えられた業ならコンテナの小さな弱点【目】を切り裂くことができる。
「[[rb:氷山の機関銃 > ブルー・マシンガン]]…!!」
力を抜いて持っていたのは、この魔術にそれが必要ないからだ。
引き絞った指を離すと、弦が矢を押し出している間に次の矢を矢筒から引き抜く。
矢が離れた一瞬で構えて、前の矢が着弾する直前で撃ち放つ。
「……覚悟!」
残像が見える程度の速度だけど、残り30本の矢を全て使い切るのに5秒もかからなかった。それから更に普通の矢を放ち続け、シオンちゃんがとどめの一撃を放つ。
大きく引き絞った剣をさらに引きながら、大股かつ超スピードのダッシュ。
近づいた瞬間に飛び上がって、彼女はそのままカタナを突き出した。
「おらぁっ!!」
巨大な気合いに合わせて、スペルウィザンではないけれど鋭利で、それでいて力強い刺突がコンテナを貫く。
私が30本当て続けたほんの一点を、カタナの切っ先がトレースするように。
「ふぅ…。ポリア…ちょっと! ポリアフさんあぶない!!」
シオンちゃんが振り向くや否や、途端にその表情を変えてしまった。私の背後を睨む瞳に、剣を振りかぶるドールの姿。
「ふぁっ?!」
無意識に氷の小刀を作って防御すると、ドールは剣を振りかぶったまま倒れてしまった。
懐かしい狙撃用銃弾が転がると同時に、ドールが青い光の破片に変わる。
「あ…アンタいたのね。」
と呟いたと途端に、指先が小さく震えた。
すぐに目の前に画面が広がって、どうやらメールの通知みたいだけど…、それを開く。
私とか、あとミオちゃんもだと思うけどそういう人間はこの機械を支給される。
マイクロプロジェクタって言って、腕輪とか指輪、首輪みたいな形で身体に装着する。
昔はスマートフォンっていうちっちゃい板に画面を移す機械だったんだけど、こうして空間に映像を放映できるようになってからは無くなった。
「………やっぱアンタってツンデレだよね。
………へカートちゃんっ!」
近くの建物に弓を放つと、「きゃーっ!!」という叫び声とともに少女の影が飛び移る。やっぱり…と思いながら、私はメールの本文を確認した。
【私がいることは周りに黙ってて】
…だって。そういうことか…と思いながら、私は大きく頷いて弓矢を引き直した。それを待ってたみたいに爆音が響いて、私のすぐ近くの岩が砕ける。
「もお、ごめんってば!」
と言ってすぐにメールが届く。開きっぱなしだったメールを覗くと、【くだらないことしてないでドールやって】と書いてある。
若干いらっとくるのを気にしながらも、私は振り返ってドールをにらんだ。
「じゃ、へカートちゃんもあー言ってるし。
……君らを始末させてもらうよっ!」
そう叫んで、氷で作った弓を引き絞る。
もう一度、すぐにでもそれを真実にできるように。