PERSONA3 Side story Out of the world 作:karna
「澤田くん…だよね。同じB組の」
手に持った召喚器を仕舞いながら僕ー天田乾は言った。
目の前で何が何だか分からないといった顔をしている子は同じクラスの澤田俊明くんだろう。直接話したことはないけれど顔は知っている。
クラスのムードメーカー的な存在であり確か学級委員で皆に慕われている(成績はとても悪いと誰かが言っていたけれど)。深夜にこんなポートアイランド付近の路地裏をうろつくような子ではないはずだ。
それに、日常的にシャドウが見える人間はそういない。僕のペルソナも見えているような素振りもあった。
澤田くんに対して聞きたいことは山ほどあったけれど、まずは彼の気を落ち着かせるところから始めないといけない。僕は落ちていたスマートフォンを拾い澤田くんに渡した。
「これ、君のだよね…。画面、割れちゃったみたいだ。ごめん。僕が弁償するよ」
澤田くんはぽかんとした顔で僕を見た。何を言っているんだろう、といった顔だ。その後急にプッと吹き出し、肩を揺すって笑い始めた。
僕は何かおかしな事を言ったのかな…?
訝しがる僕を見てひとしきり笑った後、澤田くんは面白そうに言った。
「弁償するって、なんだよ。天田が壊したわけじゃ無いじゃないか。」
「確かにそうだけれど…」
あれはシャドウのせいだから、と言いかけて僕は口をつぐんだ。部外者にシャドウやペルソナの事を無闇に言ってはいけないと美鶴さんに釘を刺されたばかりだからだ。詳しく言えないのと、何がおかしいのかよく分からないのとで少しムッとしたが澤田くんの気が紛れたようで良かった。
でも、あの時澤田くんがシャドウやペルソナを目視出来ていたのなら適合者の可能性がある。もしかしたらペルソナだって…。それにあの日から今までシャドウの出現は殆ど無かったのに、ここ最近になって急に増え出した。それも影時間とかではなくごく普通の時間帯に。
あの日僕らがニュクスを退けた時から、影時間は消えた。シャドウは今までと同じように出現するけれど、その頻度も数カ月に一度くらいだった。
ここ一ヶ月、シャドウの事故や事件が急に増えた。何処から現れるのか、どの条件で現れるのかも分かっていない。
今だってシャドウの気配を感じたと思って巌戸台寮から真っ直ぐ飛び出していったばかりなのだ。
美鶴さんに報告しなきゃいけないな。いや、その前に澤田くんを家に返さないと…。
「とりあえず詳しい話は明日にして、今日は家に帰ったほうがいいよ。…ところで澤田くんはどうしてこんなところに?」
そういったすぐ後、澤田くんは少し気不味そうに目を逸らした。切れ長の一重瞼がピクピク動いている。
「い、いや、少し忘れ物を取りに学校に…な。」
「こんな時間に?」
時間は既に24時を過ぎている。忘れ物を取りに来るには遅すぎるし、次の日学校に登校するときにでも問題ないはずだ。
澤田くんはうう…と伏し目がちに呻いた後、「まあ、無理があるよな…」と言いながらため息をついた。
「実はな、旧校舎の噂を聞いてそんなものはないことを証明しようと思って学校に来たんだ。」
先生には内緒にしてくれないか?と片目を瞑りながら澤田くんは言う。まあ、学校の教師に言うつもりは元々無いけども、シャドウが蔓延っている深夜にうろつくのはかなり危ない。だからといって澤田くんをこのまま一人で帰すのも危険だ。それに最近学校で流行っているらしい噂のことも気になる(僕は噂や都市伝説には興味がない方なので)。すぐにでも彼から話を聞いた方がいいかもしれない。僕は少し悩んで澤田くんに言う。
「大丈夫、ほかの人達には言わないようにするよ。だけど一つだけお願いがあるんだ。」
「お願い?」
「今日は僕と一緒に、巌戸台にある寮に来てほしいんだ。」