PERSONA3 Side story Out of the world 作:karna
目覚めたら俺は、金縛りになっていた。
というか、目はバッチリ冴えてんのに身体が動かない。なんだこれ?今流行りの心霊体験?マジにあった怖い話?マジ怖?
かろうじて動く目だけをキョロキョロさせる。部屋自体はいつもと変わらない俺の部屋だ。厳戸台分寮を出てからは一人暮らしをしている、ちょっと(処刑が口癖のあの人からしたらちょっとどころではないかもしれない)散らかっている俺の部屋だ。横目でテーブルの上に置いてある目覚まし時計を見ると1時の針を指していた。ゲームやって寝たのが確か23時だから、え、まだ2時間しか寝れてないの俺?!こりゃもう一度寝るっきゃない!思えば確かに身体はまだ重い気がするし、充分に休まってない気もする。
いやそんなことよりも、マジで身体が動かない。動こうと意識してもピクリともしない。本当にどうなってんだコレ。
こういう話には大概、何か物音がするとか、血塗れの女の人がこちらを見ているとか、身体にずっしりと重みがあるとか、そういう体験がつきものなはずだがそんなことは全くなかった。
ただ単に身体が動かないだけ。
いや、金縛りにあってるってだけでも充分に心霊体験か。とは言っても、横になってからまだ2時間しか経っていないわけだしすぐに眠れば気にはならないだろ。俺の眠りを妨げるものじゃないなら問題ないか。そう思って俺は再び目を閉じた。
そんな現在進行形で金縛りに遭っている俺の名前は伊織順平。日本で1番の名スラッガー!
……になるつもりが、ちょっぴり挫折して今ではちびっ子達に野球のコーチをしている。
それはそれでやってみれば案外楽しいし、この道も悪くないと思っている。こうして毎日笑って暮らせるのも俺達の、いや、あいつのおかげだと思うと少しむずがゆい気持ちになる。いつも考えてる訳では無いけれどふとした時に、毎回の如く思う。
「俺達が……守ったんだよな」
そう声に出して初めて、声は出せるんだなと気付いた。金縛りって声が出せるのか……なるほど…。
俺がまたひとつ知識を蓄えた事に喜びを噛み締めていると、不意に天井で黒い何かが俺の真上を横切った。
その瞬間、いつもの雰囲気がガラリとかわった……ような気がした。
虫……にしてはかなり大きかった。いや待て、俺はあの影をよく知っている。そんでもってこの異様な雰囲気も、よーく知っている。というより、身体が覚えている。と、なると、あれ?俺もしかして絶体絶命?
横目で見渡してもさっきの黒い何かは見当たらない。何処に行った?流石に金縛りプラスこいつがセットとなると話は別だ。召喚機無しでペルソナを出すのは少し危険だが、いざとなったらやるしかない。ていうか金縛り状態でペルソナ出せんのかな…。
その時、不意に携帯の着信音が鳴った。今流行りの音ネタ芸人、3,9秒ロックオンの「ドッスンコロリンのテーマソング」だ。俺は妙な違和感を感じながらそちらの方へ目を向ける。…あ、待てよ。そう言えばこの前、着信音で誰か分かるようにと特に重要な人達の着信音はこの「ドッスンコロリンのテーマソング」にしていたはずだ。……確かその中に「処刑が口癖の例のあの人」も入っていた…はず……。
「それはやばい!!!!」
ガバッ!と本当にそんな音がしそうな勢いで俺は布団を跳ね除け起き上がった。あれ、金縛りが解けた。やったぜ!人間処刑される気になればなんでも出来るんだな!
俺は直ぐに普段からカバンの中に入れている召喚機を取り出して身構えながら携帯を手に取った。
「もしもし、桐条先輩っスか?どうしたんです、こんな時間に」
桐条先輩の声は微妙に緊張しているみたいだった。かく言う俺もこの状況で緊張しないなんてことは無いのだが。
「伊織か。夜分に済まないがシャドウ案件だ。今からポロニアンモールに来れないか?」
「あー……行けるには行けるっスけど、ちょっと時間かかるかもしんないっスね。今シャドウっぽいのが家にいるっぽいんで」
俺のマジな答えに桐条先輩は明らかに驚いたようだ。
「何……?!数はどれくらいだ?」
「いや、多分一体だけだと思うんですが…また後で合流します!」
俺はそう言って「あ…おい!待て!」と話を続けようとする桐条先輩に構わず電話を切り携帯をポケットに入れ、すぐさま召喚機を頭の横に構える。
電話を直ぐに切ってしまったことによって処刑されるかもしれないという雑念は今は取り払っておこう。
「よっしゃあ!久々に行くぜ……ペルソナ!!」