【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

10 / 95
メニュー9 お粥

メニュー9 お粥

 

巌勝が連れて帰って来た猪と5~7歳と思われる何らかの病を患っている童の容態を確認しながら珠世は冷や汗をかいていた。

 

(……流石にこんな状況での診察は初めてです)

 

診察室に響く猪の静かな呼吸。だがその目は敵意を露にしていて、この童に被害を加えればその牙は自分を容易く貫くと判っていた。

 

「……あの馬鹿のせいですね」

 

「ええ、あのお馬鹿さんのせいですね」

 

愈史郎と意見が完全に合致した。おそらく幼児に倒錯的な愛を抱く朝日が何かしてこの猪が敵意を抱いてしまったと判断した。

 

「か……あ……ちゃ……ん」

 

被っていた猪の頭部を外して、額の汗を拭っていると、ベッドに寝ている童が魘されながら母を呼ぶ。その事に私は正直驚いた。

 

(……しかし、この子供は……ある程度人間と交流があったのですね)

 

猪に育てられたという事は言葉に触れる機会なんて殆ど無いだろう。ある一定年齢までに言葉に触れなければ、言葉を習得する難易度は爆発的に高まる。普通猪に育てられたと言う事を考えれば、この童は唸り声くらいしか上げれないはずなのに母を呼んだ。つまりある程度は人に触れていることになる。

 

(……少し調べてみる必要があるかもしれませんね)

 

巌勝さんに何処の山に行っていたのかを聞く必要がある。もしかすると隠れ住んでいる呼吸の継承者……医者とその鬼に追われている「日の呼吸」「月の呼吸」の継承者のどちらか、もしくはその両方の可能性がある。

 

「珠世さん、愈史郎。その子供の調子は……うん?」

 

「あれえ? この顔どこかで……?」

 

子供の容態を聞きに来たカワサキさんと童磨がベッドの上の子供を見て首を傾げた。

 

「知り合いなのか?」

 

「ふごッ!!!」

 

愈史郎の問いかけに猪が怒りの鳴き声を上げる。それにカワサキさんはびくっと身体を竦めた。

 

「いや、怖いな……うーん、でもこの顔……どっかで見たことがあるぞ?」

 

「カワサキさんも? 実は俺もなんだ」

 

「お2人の知り合いの子供なのですか?」

 

カワサキさんと童磨の知り合い……その共通点は何処にも無いはず。それなのにお2人が見た事がある……その共通点は何処にあるのか……カワサキさんと童磨の2人が首を傾げ、腕を組んで唸っていると2人がああっと同時に叫んだ。

 

「「琴葉だッ!!」」

 

「琴葉さんですか? 万世極楽教のですか?」

 

言われて見ると万世極楽教の琴葉さんに似ているかもしれない、何回か診察したから覚えていましたが確かに、この童は琴葉さんに良く似ている。

 

「伊之助だよ! ちょっと待って! 琴葉呼んで来るッ!!」

 

童磨が背を向けて医務室を出て行く、その姿を見送りカワサキさんにどういうことですか?と尋ねる。

 

「伊之助って言う子供が琴葉には居たんだが、医者の鬼に襲われてな。童磨が助ける前に伊之助と逸れたらしい。それを童磨はずっと探していた」

 

カワサキさんはそう言うと布団を捲り、童の下半身を覆っているおくるみを広げた。そこには「嘴平伊之助」の名前が縫い付けられているのだった……。

 

 

 

万世極楽教の厨房の巨大な鍋の前で鼻歌を歌いながら女性が調理をしている。

 

「生米を油で炒めて、香りが出てきたら鶏の出汁汁と水を注いでっと」

 

メモを手に呟きながら楽しそうに料理をする女性……「嘴平琴葉」は童磨がいない時の万世極楽教の最高責任者だった。

 

「こ、琴葉さま! それは私達が」

 

「良いの良いの、今日はすごくいい夢を見たのよ。だからお料理したくなっちゃって」

 

私を止めに来た信者に良いのよと返事を返して、鍋の中に塩を加えて味を調えながら丁寧に掻き雑ぜる。

 

「しかし……」

 

「良いの。きっと童磨様も私らしいって言うわ、それに今日は沢山作らないと! 鬼殺隊の方もいるんでしょう?」

 

「それはそうですが」

 

「駄目よ。全てに等しくなんだからね?」

 

鬼に襲われた村人を助け、食事を配るのが万世極楽教だ。そこに鬼殺隊が関わってきても、それは変わらない。

 

「でも教祖様や、黒死牟様を追う奴らなんて」

 

「しょうがないわ、あの人達も話をしようとしないからね。やっぱり話し合うことは大事なのにね」

 

鬼だけど、鬼じゃない。童磨様や無惨さん達も鬼殺隊からすれば鬼だ、追うのは判る。だけどその前に話し合わないといけないってどうして判らないのかしらねと言いながら、仕上げの溶き卵を加えているとべべんっと琵琶の音が響いて空中に障子が浮かんだ。

 

「琴葉ぁッ! いたあッ!」

 

「あらあら、童磨様。まだ朝早いのですよ?」

 

転がり落ちるように出てきた童磨様に朝はお静かにと言っていると童磨様は私の両手を掴んだ。

 

「伊之助ッ! 伊之助が居たんだ!! ちょっと弱ってるけど、間違いないよ!!」

 

「え? ほ、本当ですか!?」

 

川へ落とす事で逃がした自分の息子。それが見つかったと興奮した面持ちで言う童磨様に私は目を見開いた。

 

「そうだよ! それお粥? それ持って行くよッ! 早く早くッ!!」

 

「は、はいッ!」

 

椀にお粥を入れて童磨様に手を引かれ、私は障子の奥……童磨様達が住まう無限城に足を踏み入れた。

 

「ふぎゅる」

 

「……こんにちわ」

 

「ぷぎッ!」

 

珠世さんの部屋に連れて行かれると巨大な猪がベッドの前にうつ伏せになっていた。こんにちわと頭を下げると着物の匂いを嗅がれた。

 

「ふぎー」

 

「貴女が護ってくれたの?」

 

「ぷぎっ!!」

 

「そう、ありがとう。優しいわね」

 

ベッドの前に伏せていたのはきっと伊之助を護ってくれていたのだ。いや、それよりももっと前から、私達が探している時からずっとこの猪は伊之助を護ってくれたのだ。ありがとうと感謝の言葉を口にしてその頭を撫でて、寝所のそばの椅子に腰掛ける。

 

「伊之助……伊之助……」

 

お腹を痛めて大事な大事な1人息子がそこには目を閉じて眠っていた。その姿を見ると自然に涙が零れた。

 

「んん……お、お前……」

 

私がベッドに座ると伊之助が身体を起し、私を見て目を見開いた。

 

「か、母ちゃん?」

 

「ええ、ええ! そうよ」

 

「……ほんとに?」

 

「ええ、今までごめんなさい。でもやっと会えた」

 

大きく見開かれた目からぼろぼろと涙が零れ落ちた、きっと私も泣いていたと思う。

 

「待って、行かないで!」

 

「……」

 

声も無く部屋を出て行こうとした猪を呼び止め、寝所から降りようとする伊之助を抱き上げる。

 

「母ちゃん、母ちゃん、行かないで」

 

「ぷぎゅう……」

 

「母ちゃんだけど、母ちゃん」

 

私と猪を交互に見る伊之助……ああ、そうか、伊之助にとってはこの猪も母親なんだ。

 

「母親が2人でも良いと思うのッ!」

 

「ぷぎ?」

 

「良いじゃない、お母さんが2人ッ! 1人じゃなきゃ駄目って事はないわ!」

 

私はぼんやりしているし、その分猪さんが厳しくしてくれたらきっと伊之助は強い子になると思う。

 

「ふご」

 

「あれ? 呆れてる?」

 

呆れたような鳴き声をあげる猪さんだったけど、私達の足元に戻って来てくれた。

 

「母ちゃん」

 

「うん」

 

「母ちゃん」

 

「ぷぎいッ!」

 

私と猪さんが返事を返すと伊之助は歯を出してにっこりと笑ってくれた。

 

「これね、お粥なんだけど食べれる?」

 

「くうッ! はらへった!」

 

あーっと口を開く伊之助の口に覚ましたお粥を入れてあげる。

 

「うまいッ! もっとくれ!」

 

あーっあーっと口を開く伊之助の口に何度も冷ましたお粥を入れてあげる。結構量があったのに伊之助はぺろりと平らげる。

 

「んー母ちゃん」

 

「ぷぎゅう」

 

寝所ではなく、丸くなった猪の懐で丸くなる伊之助の頭を撫でる。

 

「猪さんも何か食べる?」

 

「ぷぎ」

 

「ふふ、じゃあ何か貰ってくるね」

 

猪さんに伊之助を頼んで珠世さんの部屋を出ると、別の部屋で珠世さんが何かを書いていた。

 

「どうでした?」

 

「はい! 猪さんと一緒に伊之助を育てます」

 

「……そうですか。頑張ってください」

 

何か遠い目をしていた珠世さんだけど、どうしたんだろうと思いながら私は猪さんの餌を貰う為に果樹園に足を向けるのだった……。

 

 

 

 

伊之助はそれから凄まじい回復力で回復し、今では母猪と共に子供の鬼と一緒に無限城の中を駆け回っていた。

 

「がははははッ! ちょとつもうしん! ちょとつもうしんッ!!」

 

「「「ちょとつもうしんっ!」」」

 

猪突猛進と叫びながら駆け回る伊之助と子供の鬼達。その勢いは凄まじく、1度伊之助を捕えようとした朝日を弾き飛ばし、全員で踏みつけるという方法で変態を撃退していた。

 

「凄く元気そうだな」

 

「うん、俺も安心したよ。でもちょっと驚いたよ、琴葉の選択に」

 

茶を童磨と飲みながら確かに驚いたなあと口を揃えた。琴葉はなんと猪に自分の息子を預けることを選んだ、万世極楽教の仕事であちこちを転々とする以上伊之助とずっと居る事が出来ないから、そして伊之助が猪に懐いているからだ。

 

「カワサキ! あられくれッ!」

 

「「「あられー!!」」」

 

「はいはいっと、仲良く分けて食べな」

 

こぶんどもーいくぞーっと行って駆けて行く伊之助。毎日無限城にいるわけではなく、基本的に母猪の山で暮らし、1週間に2、3日無限城で遊んでまた山に帰っていく。伊之助はそんな暮らしを気に入っている様子だ。

 

「そう言えば、伊之助が住んでいる山に黒死牟殿の子孫が居たんだろ? それはどうなったの?」

 

「あー……うん。縁壱2号が生まれそうかな?」

 

「何があったのかな?」

 

「うん、継国の血は業が深いみたいだな。うん……」

 

巌勝の目が死んでいたのでもうそれはあまり触れてあげない方が良いと思う。ただ、自分の子孫の時透の家の双子の弟がなんかやばいとしか聞いてないけど、多分深入りしない方がいい。

 

「……カワサキ……私は……もう駄目かもしれない」

 

「なんだ。急にどうした!?」

 

食堂に倒れこんできた巌勝は死んだ目で天井を仰ぎ見た。

 

「……縁壱が日の呼吸を伝えた家も時透の家の近くに在ったのだが……そこの長女が……やばい」

 

「「語彙力を失ってる!?」」

 

「私は……責任を取らないといけないかも……しれない」

 

2つの家に爆弾を撒いて来た縁壱の兄として、自害しなければならないと言い出した巌勝にカワサキと童磨は必死にメンタルケアを行う中。縁壱はと言うと……。

 

「大事な者は奪われてはいけない、絶対に自分の傍においておかないといけないのだ」

 

「うん、私ね。お兄ちゃん大好き!」

 

「ぼ、僕も!」

 

幼い少女と少年の言葉に縁壱はにんまりと満足そうに笑い、少年の方に自分がサキュバスに転生したのと同じ魔道書を渡した。

 

「どうしても自分に悩んだ時それを使うといい、きっとお前の道を明るく照らしてくれることだろう」

 

「はい!」

 

「私は?」

 

「大丈夫、お前はそのままでな。兄を大事にな」

 

「「はーいッ!!」」

 

2人に背を向けて歩き出す縁壱の笑みは邪悪な色に染まっているのだった。弟・妹属性の2人に戦国クレイジー縁壱と言う劇物が混じった時……とんでもない化学変化を起す、その種は確かに撒かれてしまっていたのだった……。

 

大正クレイジーブラコン禰豆子ちゃんのフラグ1が立ちました。

 

大正クレイジーブラコンむいちゃん君のフラグ1が立ちました。

 

 

 

 

 

 

無限城ひそひそ噂話

 

伊之助が無限城、山で暮らし始めて10数年後のある日。伊之助はどこで見つけてきたのか、日輪刀を2本持ち雄叫びを上げていた。

 

「「「鬼殺隊に入る!?」」」

 

「そうだあ! 俺様は鬼殺隊になって中から変えてやる! 良い鬼だっているんだってなあ! そして子分達が外で遊べるようにする!」

 

「「「親分! 伊之助親分!! がんばえーッ!!!」」」

 

「頑張るぜ! 待ってろ子分共ッ!! がっははっはあーッ! 猪突猛進!! 猪突猛進ッ!!!!」

 

猪の被り物、上半身裸、下半身は隊服と腰蓑姿の伊之助は障子の外へ飛び出していった。

 

「誰だ、伊之助に鬼殺隊を教えたのは?」

 

「いや、俺じゃないよ?」

 

「俺でも無いです」

 

どこで伊之助が鬼殺隊を知ったのかは不明だった。だが強くなりたいと言う伊之助に黒死牟こと巌勝達は惜しげもなく技術を教え、そして母琴葉から優しさを教えられ、強さと優しさを兼ね備えた伊之助は無限城の優しい鬼を受け入れられるようにすると、最終選別へと旅立っていった。

 

「伊之助が強く優しい子に育ってくれましたね」

 

「ぷぎっ!」

 

「ありがとうございます、貴女のお陰です」

 

「ふぎいーッ!!」

 

どうしようと顔を曇らせる巌勝達の後ろで琴葉と母猪は満足そうに伊之助を見送った。強く、優しい子に育った伊之助ならば、きっと何かを変えてくれるとそう信じていた。

 

「がはははっーーーッ!!! 行くぜ行くぜ行くぜーーーッ!!」

 

そして伊之助は走る、最終選別が行われる藤襲山まで迷う事無く走り続けるのだった……。

 

 

 

 

ふんわり系最強おかん 嘴平琴葉

 

童磨には食い殺されなかったが、医者の鬼の万世極楽教襲撃事件の折、信者を逃がし終えた後に一番最後に脱出したが、鬼に発見され、苦渋の決断で伊之助を川の中に落として逃がした。その後1人で必死に逃げ回り、あわやと言う所で童磨によって救われ、伊之助を探すが、見つけることが出来ず。それ以降ずっと伊之助を探していた、やや天然と言うかかなりの天然気質だが、芯は強く万世極楽教のNO.2としての地位を確立し、童磨のいない間の最高責任者になっている。伊之助と再会後は1週間に2~3回の伊之助と過ごし日々を大切にし、伊之助を守り育ててくれた母猪とは種族を超えた友情を育んだストロングお母さん。ふんわりぽやぽやしているが、母は強しを地で行っており、無限城の鬼にも慕われている。なおある程度料理は出来るがレシピを口で読み上げながら調理しないとダークマターを生成してしまう。

 

 

無限城のセコム 母猪

 

伊之助を拾い育てた母猪。言葉は勿論話せないが、その知性は非常に高く人語を理解している節がある。伊之助や子供鬼を乗せて走り回っており、子供鬼達にも好かれている。既に猪としての寿命を越える年数を生きているが、それはユグドラシルのアイテムで延命しており、それに伴い鬼を倒す能力も有した無限城保有戦力及び子守の達人(?)猪として今では無限城の中の山で暮らしている。なお、変態絶対許さない猪で朝日をその牙で何度も突き刺し、体当たりで弾き飛ばし子供鬼を護っている。子供鬼のセコムであり、変態の天敵。

 

 

 

真の強者を目指す者 嘴平伊之助

 

巌勝によって保護され、流行り病を患っている所を珠世に救われ、母琴葉とも再会した。無限城の住人が鬼だと知っているが、優しく接してくれたこともあり鬼=悪と言う認識は持っておらず、鬼でも良い奴は良い奴と考えている。母琴葉から優しさを、母猪と巌勝達から強さを教えられ、真の強者とは強さと優しさを兼ね備える者と知り、強さと優しさを持つ強者を目指し、そして鬼殺隊の認識を変える為に旅立った。子供鬼達の親分であり、意外と面倒見も良い為子供鬼達の人気者。巌勝達は伊之助を鬼に関わらせるつもりは無かった為、体術や間合いの計り方等は教えたが、全集中の呼吸などは教えていない。だが伊之助は巌勝の鍛錬を見て、全集中の呼吸を見よう見真似で習得し、獣の呼吸を開眼した。なお体術や間合いの計り方は教えられたが完全に習得しておらず、我流体術として昇華されている。最終選別に合格した後は原作通り炭治郎達と出会い行動を共にすることになり、山の中で一晩過ごす折に炭治郎達を無限城へと案内している。

 

 

 

メニュー10 ビーフシチューへ続く

 

 

 




次回は下弦のサイコパスこと「魘夢」にピントを合わせて書いて行こうと思います。無限城の外で活動している鬼がどんな風に動いているのかって言うのを書いてみようと思いまして、洋食だから洋装してた魘夢だなっていう感じですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

  • 間違っている
  • 間違っていない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。