【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
メニュー13 いわしの南蛮漬け
今日は無惨達の姿は無限城にはなく、全員人化を施され沖合いの無人島にあった。
「はい、ではこのように、下の篭に餌を詰めて海の中へ落とします」
玉壷がサビキ仕掛けをつけた竿を海の中に沈め、竿を上下に動かすと海面に無数の魚が集まってくるのが見える。
「玉壷さん。引いてる! 引いてるよ」
「はっは、大丈夫ですよ。これは沢山仕掛けがついていますからね。1匹ずつ回収するのではなく、沢山ついたタイミングで……それッ!」
「「「おおおーッ!!」」」
鈴なりになって付いている15~20cmほどの魚に子供鬼達からの歓声が上がる。
「見事な物だな」
「お褒めに預かり光栄です。無惨様、して、このように魚が釣れます。良いですかな? この篭を餌のバケツの中に入れて海の中に沈める。それだけです、さー皆釣りを楽しみましょう」
「「「はーい!!」」」
玉壷は子供鬼に釣りを教える教師として忙しく動き回っているが、その顔は穏やかでとても楽しそうだ。
「お姉ちゃんもやろうよ?」
「ええー、良いよ。私は見てるから、頑張っておいで」
「うむ。小生達はここで見ていよう」
普段子供達の面倒を見ている零余子達はパラソルの下で子供鬼達が楽しそうにはしゃいでいるのを見て、楽しそうに笑っていた。自分達は釣りをしていないが、楽しそうにしている子供達を見ているだけで子供好きの2人は楽しいようだ。
「……うむ。悪くない」
「……そうだな」
変態な妹に悩まされている巌勝と日丸は並んで釣り糸を海に垂らし、右へ流れていくウキをぼんやりと見つめている。
「……ほわあああッ!!! なんかやばいッ! 助けて!」
「恋雪さん。危ないですから、お手を」
「狛治さん。はい、ありがとうございます」
「やだ!? 俺無視されてる!? わああーーッ!?」
童磨が海の中に引きずり込まれていくのを狛治と恋雪はガン無視で、海に出掛けて来た事を心から楽しんでいた。そしてその背後で童磨は岩場から海の中へ頭から飛び込んでいた。
「……おお、見つけたぜぇ」
「やった! これ前に食べた貝だよね!」
「おおそうだあ。でもあんまり獲りすぎると玉壷に怒られるから程々にしようなあ?」
「はーい」
謝花兄妹は岩場で貝などを集めながら膝までだけ海に入っている。おそろいの麦藁帽子が仲良し兄妹と言う感じを全面的にアピールしていた。
「とっとと……」
「おおおおッ!?」
「珠世様も鳴女も落ち着いて、大丈夫です。ゆっくりと竿を上げましょう」
愈史郎は珠世が日焼けしないように日傘などを用意しながら、釣り糸を垂れている2人に助言を口にし、飲み物などの準備をしているが、彼は彼なりに海を楽しんでいるようだ。
「んで、なんで、お前はそこにいるんだ?」
「いえ、押して駄目なら引いてみろというらしいので、1回距離を取ってみようかなと」
「そうかー? まあどっちでも良いけどさ、ほい。釣り竿」
「ありがとうございます」
そして珍しく縁壱はカワサキと共に行動しており、大物釣り用の釣り竿を並んで構え沖に向かって思いっきり遠投しているのだった。
「なんで私だけ隔離されてるのかな?」
「お前が変態的なことをするからだ」
「一緒に釣りをしましょう?」
「う、うん、それはそれで良いんだけど……なんだかなあ……」
そして変態その2は蛍火と弦三郎の監視の下、寂しそうに釣り糸をのんびりと垂れているのだった……。
無人島でのレクリエーションを終えた俺達は無限城へと戻っていた。皆が温泉などで汗を流している最中だが、俺は俺でまだ仕事が残っている。
「いや、しかし大漁だな」
なんだかんだで50人近い大所帯で動いたので魚が大量である。
「鰯が多いなあ」
俺も頑張ったが、今回は子供鬼達が本当に良く頑張った。恥ずかしい事に坊主だから、今回は鰯を主体に夕食にしたいと思う。
「まずはっと」
鱗を取り除いた鰯の頭を落として、腹を斜めに切ってワタを取り出したら親指で中骨に滑らせるように尾に向かって動かす。そして尾の付け根で骨を折って身が剥がれないように骨を持ち上げて骨を身から外す。
「ん、脂が乗っていて美味そうだな」
天ぷらと南蛮漬け、それと鯵が少しいるからアジフライと鰯フライで今日は魚の揚げ物で行こう。
「よっと」
ボウルの中に卵を割りいれて、冷水を注いで全体を混ぜ合わせる。そこに薄力粉と塩を加えて混ぜ合わせたらバッター液の完成だ。
「薄力粉と片栗粉、それとパン粉っと」
それぞれの粉をトレーの中に入れて準備しておく、これで天ぷら、フライ、南蛮漬けと3種類に作り分ける事が出来る。
「よし、行くか」
バッター液の中に開いた鰯と鯵をどんどん潜らせて、薄力粉を塗した物、パン粉を塗した物を4つ並べている鍋の中にどんどん潜らせていく。
「良い音だ」
この揚げ物をしている音ってテンションが上がるよなあ。そんなことを感じながらにんじんの皮を剥いて千切りにして、紫玉葱を薄切りにする。
「酢、しょうゆ、砂糖、酒っと」
小鍋の中に調味料を入れて加熱して1度沸騰させたら火を止めて冷ましておく間に、片栗粉を塗した鰯を準備したら、天ぷらとフライを鍋からあげて油を切っておいて片栗粉を塗した鰯を鍋の中に入れる。
「後はタルタルソースと天つゆ……大きいのは刺身にでもするかな」
晩酌の時に刺身があると無惨が上機嫌になるので、鰯と鯵の大きいのを刺身にすることにして、ぱちぱちと音を立てる鍋に視線を落とすのだった……。
今日は朝から私の所有する無人島で子供達を連れて遊んでいたが、中々に面白かった。魚釣りと言うのは気分転換に案外優れているのかもしれない。
「美味い。なんだ、案外行けるではないか」
「はい、無惨様は鮪などをお好みになられますが、鰯も美味しい物ですよ」
全く持って玉壷の言う通りである。とろりとした食感と脂が乗った味わいは実に絶品だ。
「日本酒にとても良く合う」
「喜んで貰えて何よりです」
普段玉壷に釣ってこさせる魚と比べても味に大差は無い。勿論私の好きな鯵もあるので私としては申し分は無い。
「……うん。これは美味い」
「そうですね。見た目はちょっとあれですが……」
「はははは、なめろうはお嫌いですかな? 漁師飯なのですがね」
カワサキではなく玉壷が作成した小皿の中身は見た目が少々あれだ。
「美味いのか?」
「勿論です。漁師が作る食事に外れはありませんよ」
自信満々にそう言われては私としても興味がある。箸で味噌のようなそれを少し摘んで口の中に入れる。
「美味いじゃないか」
「そうでしょうそうでしょう、これを飯の上に乗せてだし汁を掛けるのもまた乙なのですよ」
魚の味だけではなく味噌の風味と香味野菜の辛味が甘めの日本酒と実に良く合う。
「はいよ、揚げ立てのフライと天ぷら、お待ちどうさま!」
カワサキが大皿にフライと天ぷらを運んでくる。
「ほう、これは美味そうだな」
「揚げ立てだから美味いぜ! 熱い内に食べてくれ」
分厚いアジフライを持ち上げて取り皿に取り、アジフライに齧り付く。ザクリっと言う音と共に魚の脂が口一杯に広がる。
「美味いなぁ」
「ええ、本当に美味ですな」
鯵は味とカワサキがよく言っているがまさしくその通り。最初はタルタルソースをつけないで食べたが、二口目はたっぷりとタルタルソースをつけて頬張る。
「はぁ……酒にも良く合う。実に満足だ」
卵の濃い味わいと、マヨネーズの酸味。そして刻んだ玉葱のしゃきしゃきとした食感、それら全てがアジフライの味を何倍にも美味い物にしている。
「ふわふわー」
「お口の中が幸せ」
子供達も天ぷらを頬張ってニコニコと笑っている。自分達で釣り上げた物だから、余計に美味く感じるだろう。
「……ん、これも行けるな。天ぷらも」
鰯の天ぷらは衣がさくりとしていて、中がふわふわとしている。天つゆの甘辛い味とこれも実に良く合う。
「大きい魚だけが美味い訳ではないな」
「勿論ですとも、黒死牟殿。確かに大きい魚は脂が乗っていて美味いですが、大きすぎればそれもまた味がくどくなる。何者にも適切と言うものがあるのですよ」
「なるほどなるほど、では鯵や鰯はと言うとあまり大きすぎないほうが美味い訳だな」
「ええ、それに鯵や鰯は大衆魚。入手しやすい物ですから、庶民でも食べやすいですが、何よりも入手しやすいからこそ色々な料理があるのですよ」
勿論カワサキ様は色んな料理をご存知ですから余計な事かもしれませんがねと笑う玉壷。それは本当に余計なお世話だと言わざるを得ないだろう。
「全くだ、この世にカワサキ以上に優れた料理人などは存在しない」
「いや、俺はそんなに大した物じゃないんだがな」
「「「いや、それはないだろ?」」」
そうかあと照れた様子のカワサキだが、私達は知っている。カワサキ以上に優れた料理人などこの世には存在しないと、この舌で、そしてカワサキとの暮らしで判りきっているのだから……。
無惨様達が天ぷらやフライを口にしながら上機嫌に酒を呷っているのを見て、小さく溜め息を吐いた。
「これ絶対また酔い潰れますね」
「お薬出して貰えますか?」
「考えておきましょうか」
上機嫌に飲んでいるときは確実に呑みすぎて酔い潰れる。二日酔いでぐったりした様子で珠世さんの部屋に来るんだろうなと思いながら、南蛮漬けに箸を向ける。彩り鮮やかな野菜の上に乗せられた鰯の唐揚げと甘酸っぱいタレ、天ぷらやフライも紛れも無く絶品だが、私達はこの酸味のある南蛮漬けの鯵の方が好みだ。
「いつも思いますけど、これ美味しいですよね」
「ええ。とても美味しいです」
甘辛く酸味のあるタレと脂の乗っている鰯の唐揚げ。あんまりカワサキさんが出してくれること無いけど、カルパッチョとかが好きな私と珠世さんにはこの南蛮漬けは実に好きな味だ。
「ご飯のおかずにも合いますしね」
「本当ですよね」
野菜が沢山使われるので男の人達にはあんまり人気の無い品なんですけど、その分これは女性の鬼に人気の品だ。
「駄目ですよ、ちゃんとお野菜も食べてくださいね」
「……はい、判っています」
「野菜苦手だもんねえ」
「童磨さんもですよ?」
うげえっと呻いている童磨と狛治の2人。そんな2人を見て恋雪さんはくすくす笑っているが、その儚い様子からは想像出来ないほどに強かで、そして案外押しが強い人だ。
「栄養が偏ってる人がいたら彼女に注意してもらいましょうか」
「それが良いかもしれないですね」
私達やカワサキさん、そして珠世さんが注意してものらりくらりと逃げる男達だが、恋雪さんに言われると結構素直に言う事を聞くのだ。
その大人しそうな容姿と可憐な素振りから中々反論しにくい所があるのかもしれない……そんなことを考えながら鰯の唐揚げと野菜を同時に摘んで頬張る。衣にタレのしみこんだ部分とそうじゃない部分、そして生野菜の食感が舌と歯を楽しませてくれて、思わず笑みが零れる。
「美味しいですね」
「ええ、とても美味しいですよ」
唐揚げの衣にも甘酸っぱいタレが染みこんでいて、しゃきしゃきとした野菜の食感と辛味のある玉葱の味が口の中一杯に広がり、そこから鰯の脂が口の中に広がる。
「1口で何回も美味しいですね」
「味のバランスと野菜の事も良く考えているのでしょうね」
見た目の彩りも美しく、そして味のバランスまでも良く考えられているからこそここまで完璧な味なのだと思う。
「ふわふわしてますね。天ぷらも絶品ですね」
天ぷらの衣の店で食べる物よりもふわふわとしていて、鰯の柔らかい食感と実に合う。
「私はフライの方も好きですよ」
「あー、あのサクサクした衣も良いですよね」
私はうどんが好きだが、それだけを食べる訳ではない。天ぷらのふわふわとした食感もサクリと音を立てるフライの味も紛れも無く絶品だ。
「でもこの揚げ立ての唐揚げをタレにつけるって言う発想が凄いですよね」
「確かにそうですよね」
普通から揚げはサクサクした食感を楽しむ物だと私は思う、それをタレにつけるという発想は私達には無い。
「お代わりは沢山あるからなー」
笑顔でフライと天ぷらをどんどん運んでくるカワサキさんを見ながら、カワサキさんの料理の知識は凄いなぁと珠世さんと揃ってしみじみ思うのだった……。
無限城ひそひそ噂話
「カワサキさん、どう言う事ですか? 押して駄目なら引いてみたのに何も効果が無い」
「知らんよ、と言うか俺のせいじゃない」
押して駄目なら引いてみろ作戦を決行した縁壱だが、求めていた効果が出ずカワサキに文句を言いに来たがカワサキからすればそんな物は何の関係の無い話である。
「カワサキさんの本に書いてあったのにッ!」
「言っとくけど、それ俺の本じゃないからな? 俺の友達……うん、多分友達の本」
「その間は何ですか?」
「まぁ、色々と思うところはある」
友人ではある筈なんだが……友人と言うにはいささか問題行動がありすぎるからカワサキからしても、即座に友人と言い切る事は出来なかったようだ。
「押して駄目、引いて駄目ならどうすれば良いんですか」
「諦めれば良いんじゃないかな?」
「それは嫌です」
なんで血縁関係があると言う大きな壁に気付かないんだろうなとカワサキは頭を抱える。
「もう良いです、判りました。押して駄目、引いて駄目なら」
「引いて駄目なら?」
「押し倒せです」
完全に意を決した表情で駆けて行く縁壱を呆然とカワサキは見送り、そして疲れた表情でキッチンの札を1枚取る。
「あ?鳴女?悪いんだけど、縁壱が暴走したから巌勝の逃走を手伝ってやってくれる?」
「はい、判りました。それと今日は烏賊天のてんぷらうどんを希望します」
「はいはい、そう言うわけで頼んだぜ」
愈史郎の血鬼術を発展させたそれは無限城で電話のように扱われ、そしてカワサキから巌勝を助けてやって欲しいと言う頼みを聞いていた鳴女によって巌勝は上半身の着物を引き裂かれ、下半身の着物が切り裂かれる少し前に縁壱からの逃亡に成功していたのだった……。
「あああああーーーッ! 何故何故何故エエエッ!!!」
「鳴女ぇッ! 助かったああああッ!!」
慟哭の悲鳴を上げる縁壱と歓喜の叫び声を上げる巌勝。継国兄妹の叫びと言うことは同じだったが、その余りに方向性の違う声にあちこちから失笑が零れているのだった……。
メニュー14 漬物へ続く
次回は「村人(LvMAX)」様のリクエストで漬物でお送りしたいと思います。子供鬼達もお手伝いで大活躍するそんな微笑ましい話にしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない