【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
メニュー14 漬物
時々無惨はとんでもない我侭を口にすることがある。だがまぁ、今回のはそんなに難しく無いし、そしてなんとなく微笑ましくなる我侭だったなと思いながら2人用の中くらいの大きさの土鍋の中から鳥肉を取り出す。鶏ではなく、鳥。普通の野鳥であるから鶏程出汁は出ていないので、塩と酒で味を調えているがやはり鶏と比べるとその味はいくらか薄味だ。ただ野鳥特有の野性味溢れる味と考えればこれはこれで良いものである、
「まぁなんとでもなるけどな」
薄味なら薄味で頭を使うのが料理人と言うものだ。冷や飯を入れて軽く解して再び煮汁が沸騰するのを待ちながら、その間に昨日の夜に漬け込んだ大根、白菜、キュウリなどの漬物を食べやすい大きさに切り分け、溶き卵とネギを切っておけば後は沸騰するのを待つだけである。
「味噌を入れてっと」
いかに野性味溢れる味と言っても限度と言うものがあるので臭み消しで味噌を溶かしいれ、焦げ付かないようにかき混ぜながら再び沸騰させる。そしたら溶き卵を回し入れ、漬物を小鉢に入れてカートに載せて厨房を出る。無惨の部屋に行くまでの間に丁度良い按配で蒸らし上がる筈だ。
「昔でも思い出したのかねえ」
まだ俺と無惨の2人で医者の鬼と戦っている頃は拠点も無い、その頃は人助けをして、野菜を貰ってそれで漬物を作り。煮魚や、今回のように野鳥や野兎を捕まえて、それで鍋にしたり雑炊にして食べた。仲間が増えてからそんなことも無くなったが、漬物と雑炊と言うのは俺と無惨に取っては原点と言っても良いだろう。
「ま、あの時ほど質素じゃないけどなあ」
無惨と旅をしている頃はアイテムボックスなどを使うのに制限があった。後にちゃんとした厨房等ではないと安定して使えないと判明したからこうしてしっかりとした厨房を無惨が用意してくれたのだが、平安時代からは殆ど野宿か、善意で泊めさせて貰ったりしていただけなので、安定して使えるわけも無かった。最低限の調味料しかない時を思えば今は大分変わったよなあとしみじみ思う。
「無惨。入るぞ」
「ああ。構わない」
ノックしてから無惨の部屋に入る。そこでは既に机に腰掛けて待っている無惨の姿があり、思わず苦笑しながら土鍋を机の真ん中に置いて蓋を開ける。
「うん、懐かしい香りだ」
「はは、そうだよなあ」
高級な物を好んだとしても、やはり記憶に残っている料理が勝るときがある。俺と無惨にとっては漬物と雑炊がそれに当たる。
「さて、食うか」
「ああ、大分待たされたぞ」
「急に言うからだ」
互いに笑いあい、俺は御玉で雑炊をお椀によそるのだった。
味噌の強い香りとトロリとした半熟卵の雑炊からは湯気が出ている。すぐにでも食べたいが、今食べると舌を火傷しそうなので箸を掴んでまずは漬物を頬張る。
「……うん。これだ」
「何がこれなんだ?」
カワサキは既に雑炊を口にしている。こいつは猫舌じゃないからな、私もそこまで酷い訳ではないが好き好んで火傷したい訳ではないので、ここはジッと我慢する。
「大根のコリコリとした食感の事だ」
適当に4つに切ったそれは厚さも形もバラバラだ。だがだからこそこれで良い、最初はこんな風に形など整っていない方が多かった。そんなことを考えながら程よく冷めた雑炊を口にする。
「ふー」
「美味いか?」
「美味いに決まっている」
鶏ではなく、野鳥の癖のある香りと人に飼育された生き物ではない、野生で生きている動物のパワーのような物を感じる。米にたっぷりとその出汁が染みていて変な話だが、建物の中で食べているのに外で食べているような気がした。
「はむ」
しゃきしゃきっと言う小気味良い音が口の中から広がる。
「良いキュウリだ」
「累達が頑張ってるからな」
カワサキの口からもぽりぽりと小気味良い音がしている。カワサキの腕が良いのもあるが、累達の頑張りか……。
「今度見学してみるか」
「見学といわず参加してみたらどうだ?」
「む、それも面白いかもしれないな」
基本的に通貨を稼ぎに外で活動しているが、偶には累達と一緒に野菜などを育てても面白いかもしれない。
「これを食べているとあれを思い出す」
「何を?」
「料理を食べて、日光が少しだけ平気になった時だ」
「ああ、太陽克服したぁって走り出したあれか」
「……半刻も持たなかったがな……」
黒歴史だが、耐性がどうとか言う料理を食べたら少し日の光が平気になった。だから私は走った、思いっきり鬼の身体能力で駆け回った。
「木の幹にしがみ付いていたな」
「あそこに樹木が無ければ死んでいたな」
雑炊を啜りながらしみじみ思う。カワサキが探しに来てくれるのがもう少し遅ければ私はもっとも情けない状態で死んでいただろう。
「やはり人化だな」
「戦闘力が落ちるのが問題だ」
「そこさえ解決出来ればな」
医者……天津は口がうまい、そして人心掌握術に長けている。人間にも配下がいるのが実に厄介な所だと思いながら白菜の漬物を口にする。
「……ん」
「辛いか?」
「いや、これくらいなら平気だ」
唐辛子の輪切りを噛んでしまいかなり辛かったが、そこは味噌雑炊を流し込み我慢する。
「美味い」
「偶にはこういうのも悪くないな、ジビエでもやるか」
味噌雑炊のおかわりをよそいながらカワサキが今度の計画を口にする。
「ジビエか、それなら鹿だな」
「鹿は美味いよなあ」
「ああ、よく捕ったな」
2人で放浪している時に食料が無くなって、必死に追い回したのは今思い出しても笑えるほどの楽しい思い出だ。
「色々したなあ」
「そうだな。お前が川に流された事もあった」
「滝壺に落ちる一歩手前だったなあ」
昔良く食べた料理を食べているからか、お互いに必死だった時の事を思い出して笑えて来る。
「偶にはこういうのを食べるのも悪く無いな」
「ふん、そうだな。ステーキとかも好きだが、これもやはり好きだよ」
野鳥の雑炊は普段食べている物よりかは雑で、そして普段のカワサキの丁寧な料理の影は微塵も無い。だけどこの料理もカワサキの料理だと思わせてくれる。
「おかわりだ」
「……あいよ」
3杯目の雑炊のおかわりを頼み、漬物を食べながら雑炊を口に運ぶ。
「ああ、やはり美味い」
「喜んで貰えて何よりだ」
野鳥の臭みを消す為の味噌の香り、それでも野鳥の香りを全て消している訳では無い。その味噌の香りのお陰で野鳥の香りを臭いとは思わず、味わいを良くする一因になっている。
「ご馳走様でした」
「お粗末でした」
これからもカワサキがいれば私が完全に鬼になる事は無い。
「これからも頼むぞ、友よ」
「はっ、無惨がそんなことを言うなんてな。明日は雨か?」
そう笑いながらも拳を突き出してくるカワサキに拳を打ち付ける。私はよき友人を得た、そして良き仲間を得た。だから私はこれからも歩いていける……私は心からそう思うのだった……。
無限城ひそひそ噂話
「ほわあッ!?」
「無惨様へたくそー」
「そんなに力いっぱい振り回すからだよー」
子供鬼に混じって鍬を振るう無惨だが、思うように振るえずひっくり返り、子供達に笑われている。
「ははははッ! これだからわかめは駄目なんだ! 俺を見ろ!!」
「こら、伊之助!」
「うう……ゴメンネ……」
「宜しい」
伊之助が無惨を笑うが琴葉の一喝でしょんぼりとする。子供鬼の親分である伊之助だが、やはり自分の母親には勝てないでいた。
「もっと小さくて良いんですよ、こうやってこう」
「む、そうか。なるほどな」
腕まくり、ズボンも膝まで捲って、頬をドロだらけにしながらも無惨は鍬を振るう。
「おーおー頑張ってるなあ」
「ちゃかすならお前も手伝え、カワサキ」
「ははッ! 判ってるよ。ほら、皆手伝ってくれー」
「「「はーい!!」」」
カワサキの差し出した種や苗を受け取り、無惨達が耕した畑に植えていく子供鬼達。
「ううーん、こういうのも良いなあ。今度は牛とかも飼うか」
「それを食うのか? 私は少なくとも嫌だぞ」
「……そう言われるとなぁ……」
自分達が育てて、それを食うのは抵抗があるぞと言う無惨にカワサキは頭を悩ませる。
「じゃあ馬でも飼うか?」
「馬車か?」
「そうそう、どうだろう?」
「まぁ。悪くないな、子供達も喜びそうだ」
きゃっきゃっとはしゃいでいる子供達に紛れ、農作業をするカワサキと無惨の顔はとても楽しそうだった。
「これ良いのかな……」
「小生は考えるのをやめた」
「え、ずるくない!?」
普段子守をする2人は無限城のトップ2人が農作業をするのを死んだ目で見つめているのだが、カワサキと無惨はそれに気付く事は無かった。
「ふがあっ!?」
「おいおい、なにやってるううッ!?」
「はっはーッ! お前も道連れだぁッ!!」
「おい、馬鹿止めろおおッ!!!」
「はーはははっ!!! お前達もやれえ!」
「上等だぁ! 無惨てめえこらあッ! その顔泥まみれにしてやるぜぇッ!!」
「ははっははッ!! 掛かって来いッ!!!」
「「「「わーッ!!!」」」
子供鬼まで混じり、泥塗れになっているカワサキと無惨に零余子と響凱は考えるのをやめた……。
メニュー15 塩ケーキへ続く
カワサキさんと無惨様、農作業でドロドロになるまで戯れる。子供鬼+伊之助も参戦で全員ドロドロの砂塗れですが、非常に楽しんでおりました。次回は「ゼツリンCHICKEN」様の塩ケーキと言う事で梅ちゃんのターンで行きたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない