【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー1 月夜の卵焼き

 

 

生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 

 

 

メニュー1 月夜の卵焼き

 

古めかしい城を思わせる建物の一箇所にあるその場には似つかわしくない、最新の調理器具が並べられた一室に黄色い異形の姿があった。

 

「あいつも急にだよなあ、いやまぁ、良いんだけどさぁ」

 

ぶつぶつと呟きながらボウルの中に卵を割り入れていく黄色い異形……「カワサキ」は少しだけ困ったような顔をしながらも嬉しそうに割りいれた卵を解き解す。

 

「俺も正直驚いてばっかりなんだけどなあ」

 

カワサキは本来ユグドラシルとDMORPGをプレイしていた荒廃した未来を生きる人間だった。だが、ユグドラシルのサーバーが閉鎖されるその日にギルドマスターのモモンガに会う為にログインしたはず……だったのだが、気が付いたらカワサキは1000年前の都にいた。

 

「……俺どうなったんだろうなあ」

 

何故と言う疑問はある、1日に数度の制限こそあるが、ゲームのスキルも使える。そして1000年も生きていても寿命が尽きる気配も無い、最初はモモンガの事を心配していた。友人であったし、何よりも寂しがりなモモンガの事を心配した。だがそれと同時に平安時代の都で出会った、出会ってしまった「鬼舞辻無惨」を放っておけないと言うのがあった。

 

「……モモンガさん、どうしたんだろうなあ」

 

1000年経った今でもモモンガの事を心配している。だが出会う術がない、元の時代に戻る方法も無い。それならば、今出来る事をやるしかない、人を喰らわなければならない「鬼」になってしまった無惨を本当の化け物にする訳には行かないと、彼を人間に留める事が今自分がやるべき事だとカワサキは考えていた。

 

「……うーん」

 

だが物事と言うのは複雑でそして簡単な話ではなかった。無惨を鬼に変えた医者……「天津」が鬼を増やし、鬼によって食い殺された人間がいる。それに対抗するには無惨も鬼を増やすしかなかった……。人間からすればどちらも化け物、化け物と化け物が争っているようにしか見えないというのが最大の難点だ。

 

「無惨が何か良い方法を考えてくれるだろう」

 

生憎カワサキは料理にその頭脳を全て振り切っている。それなりに頭は良いが、ここまで複雑に入り乱れた状況を解決する術などは持ち合わせていなかった。

 

「素直じゃないから拗れないといいんだけどなぁ……」

 

人間なんてどうでも良いと言いつつも人助けをしてくれる無惨と無惨一派の鬼。本来は人の血肉を喰わなければならないのは無惨達も同じだが、ここで制約こそあるがクックマンの姿でこの時代を生きているカワサキのスキルが非常に役立った。

 

「何が役に立つか判らんなあ」

 

人化の術で異形種を人にするのがクックマンの得意技だが、それと同時にクックマンは人に物を食べさせるというのが生きがいの種族であると言う設定がある、その設定が反映され人食いのパッシブスキルを持つ異形に人間を食べずに普通の食物で人間を食べたいと思わせる欲求を封じ込める事が出来た。無論そうなれば人間を喰って力をつける鬼としては弱くなる、だがそこは料理に大量のバフを掛け、それを3食続けさせる事でバフを永続的にすると言う力技で解決している。

 

「よっと」

 

考え事をしている間もカワサキの手は動き続け、溶き解した卵に醤油と砂糖、そして昆布だしを加え、熱した卵焼き器に卵液を流し込み、焦がさないように細心の注意を払いながら、何層にも卵を焼き重ねる。

 

「うし、こんなもんか」

 

十分な厚さになった所で卵焼き器から降ろし、冷やしている間に2本目の卵焼きを焼き始める。

 

「厄介な奴だよ」

 

プライドが山のように高いが、変な所で寂しがりやだから困る。確実に無惨の分しか持って行かないとふてくされるのでカワサキは自分の分もゆっくり焼き始めるのだった……。

 

 

 

 

異空間にある異形の城の天守閣で月を見つめる若い男、血の様な真紅の瞳に縦に割れた瞳孔、そしてゆるくパーマの掛かった黒髪の男は満月を見つめたまま背後に声を掛ける。

 

「遅い。何時まで待たせる気だ」

 

「あのなあ?夕飯の後で行き成り酒飲むから卵焼きって言われて準備できると思うか?洗い物を半天狗に押し付けたとき何て言ったか知ってるか?過労死するだったぞ?」

 

「知らん。首でも切って増えてろとでも言え」

 

「お前本当辛辣だな」

 

私の隣に腰掛けた黄色い異形……カワサキはその顔に苦笑いを浮かべている。

 

「こんな月夜だった。お前に出会ったのは」

 

「ああ、スーパームーンだな。確かにこんな月夜だった」

 

すーぱー?こいつは相変わらず訳の判らないことを言う。だがこの大きな月の事を指しているのならば、確かにスーパームーンと言うのは判らないでもない。

 

「……大根おろしだと?いらん」

 

「酒飲むなら大根おろしも一緒に食え。身体に良い」

 

「鬼に健康を説いてどうする?」

 

「文句言うなら下げるぞ」

 

……下げるとまで言われては仕方ない。大根おろしなど食わんと思いながら厚い卵焼きに笑みを浮かべる。

 

「お前本当に卵焼き好きだな」

 

「ふん、その為に無限城の中に養鶏場を作ったのだ」

 

「あと畑な。この調子で豚と牛も育てて欲しいな」

 

「……考えておくとしよう」

 

無限城は私の居城だが、カワサキに思う存分料理を作らせる為に様々な動物や野菜、そして果物も育てている。しかし、牛と豚か……。

 

「農家のやつでも探してみるか、医者の鬼が暴れているからな」

 

「……ああ、でもよ。同じ鬼でもお前達とは随分違うよなあ」

 

「主食の違いだな、うん。美味い」

 

卵焼きのふわりとした食感と甘い味わいに笑みが零れた。医者の鬼は人を喰う、だが私達は違う。カワサキの料理で人間と同じ様に食事をする。それが姿と能力の違いになっているのだと私は考えている。

 

「ん」

 

「ほう、気が利くな」

 

カワサキに酒の瓶を向けられ、お猪口に中身を注がせる。

 

「……辛いな」

 

「卵焼きが甘いからな、嫌いか?」

 

「いや、これは良い」

 

卵焼きの甘さと酒の辛味が実に良く合うと返事を返し、再び卵焼きを口に運ぶ。

 

「鬼殺隊とか言うのはどうするんだ?」

 

「判断に悩む所ではある」

 

鬼であると言うことは変わらない、人助けをしているが人間からすれば鬼は鬼だ。しかし敵が同じと言うのもまた頭を悩ませる。

 

「今の所は戦わないことを徹底させている。これからはどうするかと言う所だ」

 

「やっぱり首領同士の話し合いかねえ」

 

「殺そうとする連中の中に入れというのか?ご免こうむる」

 

異形になった事でカワサキと1000年過ごせたのは私としても喜ばしいことではある。人間のままではカワサキの料理も満足に楽しめなかったからな。しかし問題はあの医者だ。鬼を増やし続けているあの愚か者、あれと同類扱いは私のプライドが許さない。

 

「まぁ追々考えていこうか」

 

「そうだな」

 

今はまずは医者の足取りを掴むこと、そして不快な鬼を倒す事。そしてカワサキの料理を食べる事、鬼殺隊は……優先度が低いな、弱い人間と関わり合いになるメリットが余りにも少ない。

 

「……今、戻りました」

 

「医者の鬼の討伐が完了しました」

 

べんっと言う琵琶の音と共に6つ目の異形の侍「黒死牟」と袖の無い羽織と素肌に線の浮かびあがった「猗窩座」が姿を現した。

 

「おう、お疲れ。おにぎり食うか?」

 

「……ありがたく、いただきたいと思います」

 

「感謝します」

 

仕事を終えて戻って来た2人にカワサキがお握りを差し出し、2人が座ってお握りを口に運んでいると再び琵琶の音が響いた。

 

「無惨様、カワサキ様、ちゃんと今回も鬼を退治してきたんだぜ!特にカワサキ様は俺を褒めてくれてもいいんだぜ!」

 

「おう、童磨お疲れさん。ほれお握り」

 

「やったぜッ!美味いッ!」

 

黒死牟と猗窩座だけならば静かなのに、童磨までが報告に来て一気に騒がしくなった。

 

「童磨、お前は何時もいつも!」

 

「おお、怖い怖い!良いじゃないか、カワサキ様はそんな事を気にしないぜ?」

 

「はいはい、お前は図体ばっかりでかい餓鬼だからな」

 

「え?俺罵倒されてる?」

 

「……呆れられているのだ……」

 

「いや、呆れてる訳じゃないんだけどな?無惨と似てる」

 

「はぁ!?私が童磨と似ているだと!」

 

「構って欲しい所とかそっくりだろ?」

 

カワサキの名を叫ぶ私にカワサキはにこにこと笑うままで全く懲りた様子が無い、それ所か他の仲間の鬼も呼べと叫ぶとべんっと言う音が響き、無限城にいる鬼全てが天守閣に集まっていた。

 

「静かに酒を飲みたいというのにッ!」

 

「良いだろ?そんな事を言ってもお前、賑やかなの好きだろ?」

 

判っているんだぜと言わんばかりの視線を向けられ言葉に詰まる、確かに……確かに好きではあるが……ッ!

 

「今日はゆっくり酒を飲みたい気分なんだ!」

 

「残念、俺は楽しく、わいわいと酒を飲みたいんだよ」

 

この自由人めッ!だがまぁ……騒がしいのは嫌いだが、この感じは……そう悪くない。

 

「これがツンデレって奴ですね?」

 

「あれえ?なんでツンデレ知ってる?」

 

「カワサキ様の書庫にぶくぶく茶釜って人の名前とぺロロンチーノって書いてある本に書いてありました」

 

「よーし、その本は2度と閲覧禁止だ。出すんだ」

 

「え?皆で回し読みしてますよ?男の娘とか、ふたなりい?とか書いてましたねえ」

 

「ほげええーッ!誰だぁ!誰が持ってる!!あれを読むな!深刻な精神汚染が起きるぞッ!!」

 

カワサキの叫びに返事を返す者はいない、と言うか、今私が持っているが……それを口にすることは無く、騒がしくなった天守閣の一角で冷たい日本酒を口に運ぶのだった。

 

 

 

メニュー2 魚の干物定食

 

 




鬼サイド、ほのぼのしてる無限城でした。活動報告で書きましたが、飯を食えのオーバーロード編が消失によるモチベーションの低下により鬼殺に逃げました、申し訳無い。メンタルが回復するまでは暫くお時間をください。ちょっと続きが今は書けそうに無いのです、何とか話の流れを元に戻しながら、修正してみようとは思っておりますので、それでは失礼いたします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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