【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー19 田楽

メニュー19 田楽

 

私は神様を知っている。

 

使い潰されて死に掛けている時、私は……いや、私達は神様に出会った。

 

毒の治療を受け、骨が折れている箇所は丁寧に治療され……。

 

もう二度と会えないと思っていた妹と弟にも会えた。

 

だからあの人が何と言おうと……。

 

私に取っては神様なのだ。

 

尊敬し、敬愛する神様に出会えた私はきっと誰よりもこの世界で幸福なのだ……。

 

 

 

 

 

深い木々が生い茂る谷川にカワサキと玉壷、そして巌勝の姿があった。3人はそれぞれが竹竿を手に、雪が積っている渓流の巨大な岩を飛び跳ねるように移動していた。

 

「カワサキ様、鮪を釣れてないのにこんな事をしてていいんでしょうか?」

 

「時期が合わないからしょうがないだろ? 焦ってもしょうがないさ」

 

釣り糸に羽の目印をつけて、ゆっくりと渓流に振り込むカワサキ。

 

「うむ、焦っても良い結果は出ない。こうして息抜きも大事だろう」

 

「いや、巌勝殿は逃げてきた……いたたたたたたッ!!!」

 

余計なことを言ってアイアンクローをされている玉壷に苦笑しながら、足元まで流れてきた仕掛けを回収して再び上流に振り込む。肌寒い山の間に吹く風が山登りをして火照った身体に心地良い。自分も仕掛けを作り、振り込む準備をしているとカワサキが真っ先に仕掛けを川の中に投げ入れる。

 

「相変わらず早いな」

 

「痩せ馬のさきっ走りさ」

 

そうは言うが、私と玉壷とカワサキで釣りに行くと竿頭になっているのはカワサキだ。だが何時までも負けっぱなしでは面白くない、今日こそは勝つと気合を入れて仕掛けを作っていると山の中にカワサキの声が響いた。

 

「よっと!」

 

羽の目印が勢い良く沈んだタイミングで竿をあおるカワサキ。すると穂先が小気味良く、水面に引きこまれる。竿を高く立てて、魚が好きなように動けないように竿を動かし、ゆっくりと上層へと引き上げる。

 

「相変わらず早いですなあ」

 

「……負けてはおられんな」

 

私達が仕掛けを作る間に1匹もう釣り上げようとしているカワサキを見て、私と玉壷も仕掛けを上流に投げ入れた。

 

「ほっと」

 

空気を吸って弱った所を一気に引き寄せ、テグスを掴んで川から引き上げる。ちらりと見ただけだが、まずまずの大きさのようだ。

 

「シッ!」

 

目印が引きこまれた瞬間に竿を立てる。手元まで伝わってくる魚の感触を楽しみながら、魚の動きに合わせて川を下り、流れの緩やかな場所に魚を引き寄せる。

 

「ん、良いサイズじゃないか」

 

「尺はある」

 

手応えから大物だと確信していたが、尺サイズのアマゴを無事に釣り上げ魚籠の中に入れる。

 

「やれやれ、これだけ暴れたら、ここでは駄目ではないですか」

 

「仕掛けを投げ入れるのが遅いのが悪いのさ」

 

「そう言うことだ」

 

川魚は非常に臆病だ。尺の魚が暴れまわれば暫くはそこでは魚は釣れないだろう。仕掛けを川から引き上げ、私達は渓流を上へ上と遡りながら、順調に数を釣り上げていたのだが……。

 

「「「……」」」

 

途中で3人とも完全に黙り込んだ、なぜならば……その忍び衣装を真紅に染め上げたくのいちがゆっくりと川を下っていくのを見て、流石の私達も思考が停止してしまった。

 

「はっ!? 思考停止している場合じゃない! 助けるぞ!」

 

「あの先は滝ですぞ!?」

 

「いかん! 急げッ!!」

 

今正に自分達が滝の横の壁を上ってきたのを思い出し、私達は慌てて瀕死のくのいちの救出に走り出した。

 

「どうですか? カワサキ様」

 

「とりあえずポーションをぶっ掛けたから大丈夫だと思うけど、忍者なんているのか?」

 

「そうですなあ、江戸の頃には忍者なんて絶滅しているので存在しないと思うのですが、そこの所どうですか?」

 

「……忍びの術を失われないように継承している可能性はある、それか……暗殺者として雇われていると言う可能性も捨て切れないな」

 

顔を覆っていた布を外すと白銀の髪の整った容姿のくのいちだった。暗殺か、潜入任務に失敗して追われたと言う可能性は高いだろう。

 

「なるほど、だけど忍者って良くないか?」

 

「使い勝手は良いが、私達に忠誠を誓うかどうか……」

 

「命を救えばある程度は従ってくれるのではないですかな?」

 

従わない可能性もあるが、だがこうして拾ったのを見捨てるのも夢見が悪い。焚き火の側にくのいちを寝かせる。流石に男しかいないので、服を脱がせる訳には行かないが、呼吸も整っているので死ぬことは無いだろう。

 

「じゃあ助けるって言う方向性で行こう。玉壷、火を起こしてくれ、昼食の準備だ」

 

「判りました。すぐに準備をいたしますね」

 

薪を拾い集める玉壷と調理の準備をしているカワサキを見ながら、女が持っていたクナイに視線を向ける。

 

(……宇随か、これは拾い物かもしれん)

 

戦国時代にも存在していた忍者……宇随家の末裔となれば忍者としての力量は高いだろう。目を覚まして、従うと言うのならば童磨の所に情報収集係として送り込んでもいいかもしれないと私は考えをめぐらせるのだった……。

 

 

 

釣り上げた岩魚や山女の腹をナイフで開き、内臓を取り出して川水で一度洗った後、無限の水差しで更に魚を綺麗に洗う。

 

「川水だと危ないからな」

 

綺麗に見えても中には微生物が沢山いる。そんな水で調理をしては食中毒になるので、綺麗な水で血を綺麗に洗い流し、魚の内臓は地面の中に埋める。

 

「カワサキ様、出来ました」

 

「すまないな」

 

「いえいえ、とんでもない」

 

玉壷が綺麗に削った木の棒を受け取って確認するが、流石手先が器用な玉壷だ。売り物と遜色ない出来栄えだな……これをナイフ一本で作ったとか正直感心する。

 

「よっと」

 

木串を口から差し入れて、エラから串先を出し、1cmぐらい先の身にすっと串先を刺す。

 

「そしたらっと」

 

今度は身をくの字のように持って、中骨を縫うようくねらせながら串を差し込んで形を整える。魚らしい泳いでいるような姿に仕上げるのがやはり、串焼きのコツだと思う。

 

「良し、良い感じだ」

 

最後に尾っぽを上げるように持ち、串先を出せば出来上がりだ。出来た串を塩も振らず、焚き火の周りに刺して、遠火でじっくりと焼き上げる。

 

「おや? 塩は使わないのですか?」

 

「ああ。今日は別に良い物を持ってきた」

 

タッパーに入れた赤いどろりとした調味料を見せると玉壷は納得と言う様子で笑った。

 

「魚田楽ですか?」

 

「乙だろ?」

 

本来は豆腐やこんにゃくに塗って食べる田楽味噌だが、魚田楽と言って魚にも良く合うのだ。だから今回は塩ではなく、無限城でみそ、卵黄、酒、砂糖と混ぜ合わせ、弱火で丁寧に練り上げて作った味噌だ。淡白な川魚にも合うようにやや甘めに仕上げてある。

 

「ははは、違いない!」

 

釣り立ての魚を焼いて魚田楽で食べる。これほど贅沢な物は無いだろう、岩魚がこんがり焼ける間に鍋にお湯を沸かし、味噌玉を中に入れて味噌汁を作る。

 

「カワサキ様。そろそろ良いのでは?」

 

「ああ、良い焼き具合だな」

 

魚がしっかりと焼けた所で田楽味噌を塗り、再び焚き火で焼き始める。味噌汁の匂いと味噌が焦げる香りが周囲に満ち始めると意識を失いぐったりとしていたくのいちがゆっくりと目を開いた。

 

「こ……こは? 私は……生きて?」

 

「目覚めたか。川に落ちて身体が冷えている、味噌汁飲めるか?」

 

竹を半分に切って作った器に味噌汁を入れて、身体を起こしたくのいちに俺は味噌汁を差し出すのだった……。

 

 

 

 

焚き火の近くに座っている3人組……恐らく釣り人なのだろう、岩に立てかけてある釣り竿を見てそう予想するのと同時に、姿を見られたと言う事で排除するかどうか考え、苦笑した。

 

(……いや、そんなことをする必要はないか)

 

私は失敗作として父に切られ、川の中に捨てられた。運よく溺れる前に釣り人に回収されたようだが、忍者としての私は必要とされていなかった。だが私はもうあの父の狂った方針には従いたくなかった……あえて任務を失敗したが、まさかその日のうちに処分されるとは思っていなかった。

 

「川に落ちて身体が冷えている、味噌汁飲めるか?」

 

「あ、ああ……ありがとう」

 

竹を半分に切った器に盛り付けられた味噌汁を受け取る。

 

「服を脱がせる訳にも行かなかったから、焚き火の近くに寝かしたんだ」

 

「いや……ありが……」

 

腹部に手を当てて気付いた。身体が痛くない、父に刺された筈なのにだ。それに脱がせる訳には行かなかったと言っていたが、既に完全に乾いている装束にも驚かされた。それほど、私は気絶していない筈だ。これだけの短時間で服が乾くとは思えない、それに父の忍び刀には毒が塗ってある。仮に生き延びたとしても、手足の痺れと共に死ぬ筈……だがそれがない。

 

「混乱しているのは判るが、先に味噌汁を飲め」

 

「ひょひょひょ、そうですぞ。カワサキ様の料理は絶品、食べないなんて勿体無いですぞ」

 

大袈裟だと笑う黒髪の男と、不気味な笑い方の作務衣の男、そして圧倒的な威圧感を持つ長髪の男……仮に1人を倒せたとしても、残りの2人に鎮圧されると、もう忍者ではないと判っていても長い間教えられた暗殺術が頭から離れないことに苦笑しながら、味噌汁を口にした。

 

「……美味い、なんだこれは……」

 

1口飲んで、すぐにそれを口にしていた。今まで味噌汁なんて腐るほど飲んできた……だけどそれとは根本的に違う。口にしたところから全身に広がる心地よい熱に気が付けばがっつくように味噌汁を啜っていた。

 

「お代わりあるぞ」

 

「あ、ああ。貰おうかな」

 

3人に見られている事に気付き気恥ずかしいと思いながら3人が座っている丸太の方へ移動する。

 

「はい、どうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

味噌汁のお代わりを受け取り、丸太に腰掛けてちびちびと飲みながら焚き火の周りに視線を向けると大振りの川魚が焚き火で遠火で焼かれている。

 

「ああ、これか、もう少し待ってくれるか」

 

「い、いや、そう言うつもりでは……」

 

催促したつもりではないのにそう言う風に受け取られて焦ってしまう。だがカワサキと呼ばれた男はいいからと笑い、膝の上に乗せていた入れ物から味噌をたっぷりと塗りつけ、再び焚き火の前に刺す。

 

「……私は怪我をしていたはず。貴方達は何者か?」

 

「話は飯を食ってからだ。焦る事は無い、時間はあるんだからな。ほれ」

 

味噌を塗って焼かれた川魚を差し出され、それを殆ど反射的に受け取る。だが女が大口を開けて魚に齧り付くのはどうかと悩む。

 

「巌勝、玉壷も」

 

「いやいや、楽しみにしてましたぞ」

 

「……うむ」

 

他の2人もそれを受け取り魚に齧り付いている。それを見ると、私も食べたいと言う気持ちが強くなる。

 

「んー味噌の甘さと焦げた香りがいいですな」

 

「魚も脂が乗っている」

 

美味しそうに食べているのを見て、行儀が悪いと思いながらも私も魚の腹に齧りついた。

 

「美味しい……」

 

焦げた味噌の香りと甘い味。そして魚の脂が口の中で一杯になる、魚を焼いて味噌を塗っただけ、料理と言うのもおこがましいほどに単純な物なのに、その味は驚くほどに美味だった。

 

「カワサキ様。2本目は塩が良いですなあ」

 

「塩焼きか、OKOK」

 

おけ?何を言っているのか判らないが了承と言う意味なのだろうか? 魚に塩を振りかけて焼く準備をしているカワサキの姿を見ていると、突如長髪の男が立ち上がった。

 

「月の呼吸壱ノ型 闇月・宵の宮」

 

手の平から生える様に現れた異形の刀。振るうと同時に飛び出した月輪が茂みから顔を出した、異形を両断した。

 

「ごぎっ!? な、なんで……」

 

「殺気くらい隠すのだな、未熟者」

 

両断された異形は倒れながら塵と化し、消滅していく。何が起きたのか判らず、思わず手にしていた魚を落としかけた。

 

「あーあ、巌勝。こんなの見せたら、街で別れるとか出来ないじゃないか」

 

「忍びは役に立つ。私は元より連れて行くつもりだ」

 

「ひょひょひょ、そうですなあ。裏方は何人いても足りませんしなぁ……ですが、やれやれ、楽しい時間を邪魔されたのは面白くありませんなあ」

 

作務衣の男も立ち上がると何時の間にか小脇に抱えていた壷から無数の魚が飛び出し空を舞う。そのありえない光景に目を見開いた……こんな物見たことがなかったからだ。

 

「て、天狗……?」

 

思わず天狗と呟くとカワサキはてきぱきと道具を片付ける。私を見つめて笑った。

 

「天狗では無いが、人間でもないな。でも悪党ではないつもりだ、どうする? 非日常を見たわけだが……望むのなら、日常に帰そう。だけど、来ると言うのなら歓迎しよう。この非日常の世界を」

 

空中に浮かぶ障子が開く、これはきっと分岐点……戻りたいと言えば、きっと日常に帰れる。でも私には日常なんてものは無い、忍者として生きた私が日常の中で生きていられる訳が無い。

 

「ようこそ、非日常へ。歓迎する」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

私はカワサキの手を取り、彼に手を引かれるように障子の中へと落ちていくのだった……。これが私、「宇随幽玄」が神様に出会った日の事である……。

 

 

 

無限城ひそひそ噂話

 

「ったく、本当にいるのかねえ……人を救う鬼なんて」

 

屋根の上に腰掛ける背中に巨大な2本の刀、宝石のついた額当て、大正時代では珍しいノースリーブからは鍛え上げられた腕が剥き出しになっていた。男の名は「宇髄天元」……鬼殺隊の最大戦力である柱であり「音柱」を呼ばれる鬼殺隊の最強の9人の1人である。

 

「カナエは幻でも見たんじゃねえか?」

 

数ヶ月前に人間の臓器だけを食べる鬼に襲われたカナエを助けたという鬼――だが鬼は悪辣で、そして邪悪だ。お館様の手前捜索に協力すると口にしたが、惨たらしい死体を何度も見てきた天元はとてもではないが、人間を救う鬼なんて信じられなかった。

 

「て、天元様! て、天元様!!」

 

「なんだ、どうした!? 何事だ!?」

 

情報収集に出ていた妻が青い顔で震えて戻ってきたのを見て、腰掛けていた屋根の上から跳ね起き、震えて帰って来た「須磨」に駆け寄る天元。

 

「……い、いま、いままま……」

 

「どうした!? 何があった! まきをと雛鶴はどうした!?」

 

宇髄天元には3人の妻がいる。3人とも優秀なくのいちであり、須磨は気弱だがそれでもここまでうろたえる事は無かった。

 

「い、今……ゆ、ゆゆゆ……幽玄様が……虎郎様と一緒に……」

 

「……なん……だと……!?」

 

それは死んだ天元の姉と弟の名前。それを聞いて天元も驚きに目を見開いた。

 

「まきをと雛鶴が後を……私は報告に……」

 

「本当に幽玄姉さんだったのか?」

 

「み、見間違える訳がありません……間違いないです」

 

「よし、判った。そこまで案内しろ」

 

「は、はい!」

 

腰が抜けている須磨を背中に背負い走り出す天元。だがその頭の中は死んだ筈の姉と弟の名前を聞いて混乱していた。

 

「天元様!?」

 

「まきを!?」

 

屋根の上に飛び上がってきたまきをに気付き慌てて足を止める天元。その後ろから、雛鶴も屋根の上に上がってくる。

 

「幽玄姉さんを見たと聞いたが……」

 

「はい、間違いないです……あたし達が見間違えると思いますか?」

 

「いや、おもわねえ」

 

3人の妻にくのいちの指導をしたのは幽玄だ。だからこの3人が見間違えるのはありえない。

 

「それでどうなった?」

 

「……それが袋小路の中に消えまして……屋根の上にそれらしい人影はありませんでしたか?」

 

「いや、ない……雛鶴。お前、その帯どうした?」

 

「え? あッ!?」

 

雛鶴の帯に差し込まれた文。それを手に取り、中身を開く。そこには……。

 

【まだまだ修行が足りないわよ 幽玄】

 

「間違いねえ……姉さんの文字だ」

 

「た、確かに……で、でもあの人は」

 

「ああ。死んだ筈なんだが……鬼に成ってるとか言わないよな……くそ、1回戻るぜッ!」

 

カナエを助けたという鬼の手掛かりを探していたのだが、まさかの死んだ筈の縁者からの手紙――それが鬼かもしれないと考慮した天元達は1度街から撤退することを決めたのだった……。

 

だが想定しない所で、天元は死んだ筈の家族と再会することになるのだが……それはまだ先の話である。

 

 

メニュー20 親子丼へ続く

 

 

 




天元の姉弟もオリジナルで参戦ルートに入ります。ただ、医者の鬼になってる姉や弟もいるって感じで全員救済ではない感じですね。
次回も引き続き、柱の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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