【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー22 伝統的朝ごはん

メニュー22 伝統的朝ごはん

 

 

炭治郎達が鬼殺隊に入っているとは俺は正直知らなかった。無惨達も万能では無い、強力な医者の鬼に当たる為にずっと竈門家を見守っていられるわけでは無いのだ。

 

(まさかこんなことになるなんてな……)

 

それでも最悪の可能性を考慮して、それなりの力を持っている鬼を配置していたのだが……まさか天津本人が出張って来るなんて俺は想像もしていなかった。

 

「……駄目だな、気持ちが暗くなる」

 

竈門家は炭を何回も買いに行っていたし、それに愛想も良くて俺も凄く穏やかな時間を過ごす事が出来た相手だった。そんな相手が知らない内に死んでいたと聞いて、俺も当然冷静で居られる訳が無い。

 

(……成功するだろうか……)

 

蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)ならばもしかしたら蘇生出来るかもしれない。だけど失敗すれば遺体も残さす消滅する事になる……それに何よりも、今まで何人も死んだ相手に使った――だがそのどれもが失敗した。レベル低下のデメリット……それがこの世界では耐えれないのだろう……それでも俺は竈門家に蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)に使いたいと思ってしまっている……。

 

「あちゃあ……」

 

卵焼きを焦がしてしまっている事に焦げた匂いで気付いた。普段はこんなことにならないんだけどな……やっぱり思った以上に炭治郎の一家が死んだ事がショックなんだなと実感していた。

 

「駄目だなあ……」

 

この時代に生きるようになって、人の生き死には何度も見てきたし、そして協力してくれた人が死んだというのも看取ってきた……。だけど鬼に殺されたと聞くと、どうしても感情の制御が上手く行かない。

 

どうして助ける事ができなかったのか……。

 

どうしてこんなにも世界に悲劇が満ちているのか……。

 

人が死んでいく、それは悲しい事なのに……。

 

知人と顔も知らない相手で無意識に秤にかけている自分に……。

 

「駄目だなあ……俺って奴はよぉ……」

 

遺体を完全に喪失させるかもしれない、それなのに、僅かな可能性でもいい。竈門家の人間を生き返らせないかと考えている自分に正直嫌気が差した。

 

「カワサキさん、大丈夫ですか?」

 

「恋雪よ、悪いけど今日は配膳を頼むわ。こんな感じじゃ駄目だ、まともに盛り付けも料理も出来ねえよ」

 

「……はい、判りました」

 

「すまねえな」

 

手伝いに来てくれている恋雪に謝罪し、厨房を出ようとすると背後から恋雪に声を掛けられた。

 

「誰だって、知り合いを助けたいって思うのは当然の事です。どうか、思いつめないでくださいね?」

 

「……おう、ありがとな」

 

毎回と言う訳では無い、だがそれでもやっぱり見知った顔が死んだと聞くと、俺の精神状態は著しく崩れる――無惨達はそう思っているだろう。だが実際はそうでは無い、そうでは無いのだ。

 

(……やっぱり駄目なんだよな)

 

竈門家は俺にモモンガさん達を思いださせていた……ギルドメンバーに似ていると言うわけでは無い、だがあの暖かい雰囲気が、笑顔に満ちているあの家庭が……どうしてもまだ皆が揃っている時のナザリックを思い出させていた。

 

「ままならんなあ……」

 

もう何百年も経っている……どう考えてもモモンガさん達は死んでいるだろう。どうして自分だけがこうしてクックマンの姿で生きているのか、何故ゲームの中のスキルを使えるのか……考えても考えても答えは出ない、そして長い時を生きていたからこそ、俺に昔を思い出させた竈門家の皆が死んだという現実を俺はどうしても受けいれられずにいるのだった……。

 

 

 

 

無限城と言う人を食わない鬼の居城で一晩過ごしたのは、俺としては本当に良く頑張った方だと思う。あちこちから鬼の音がする中、本当に良く眠れたなと思う。

 

「無惨が飯を食ったら早く帰れって言ってたから、早く飯食って帰るぞ!」

 

伊之助に蹴り起された時は、それなら連れて来るんじゃねえと一瞬思いはしたが、あれだけのご馳走を食べれたと思うと伊之助に連れてきてもらったことに感謝するべきなのか本当に悩んだ。

 

「それじゃあ皆に迷惑を掛けないうちにご飯を食べて、俺達も任務に戻らないとな!」

 

笑顔で元気よく言う炭治郎。でも鬼の居城にいて鬼と内通していると思われるのも困るし、本当なら任務になんか行きたくないけど、今回ばかりは炭治郎の言う通りだと思い、机の上に並べられている朝食に視線を向ける。

 

(はぁー凄いご馳走)

 

本当に感心する、昨日は温泉も入れたし、太陽の匂いのする柔らかい布団は野宿なんかよりもよっぽど身体の疲れが取れた。それに今机の上に並んでいる朝食も大根と油揚げと豆腐の味噌汁に炊き立てご飯、それにほうれん草のお浸しに、鯵の開きに大根の漬物、それに卵焼きと品数も一品一品の作りも丁寧で本当の鬼の音さえしなければ、旅館か何かに泊まってたっけ? と思ってしまいそうになる。

 

「「「いただきます」」」

 

手を合わせて、3人声を揃えていただきますと口にして、朝食を食べ始める。

 

「うわ、美味ッ!! この味噌汁めちゃくちゃ美味い!」

 

普通の……本当に普通の朝ごはんなのだが、どれもこれも俺の知っている料理とは1味も2味も違う。味噌汁だって、何が違うのか全然判らないが、めちゃくちゃ美味い。

 

「はぁ……本当だ、凄く美味しい」

 

「やっぱ、カワサキの飯が1番美味いなッ!」

 

1口1口味を確かめるように食べている俺と炭治郎と違い、ガツガツと頬張る伊之助。食べている勢いが凄いのに、米粒を飛ばしたり、味噌汁を零したりしていない。

 

(いや、どうやって食べてるのさ、あれ……)

 

普段以上にがっついているのに、何故か綺麗に食べている。目の前の光景と空になっていく、皿の情報が全く合致しない。

 

「そう言えば禰豆子ちゃんは?」

 

昨日の寿司でも判ったが、ここの料理は普通に食べれるはずだ。でも禰豆子ちゃんの姿が見えないのでどうしたのかと尋ねる。

 

「あ、ああ。何か子供に誘われて遊びに行ってしまったんだ」

 

ちょっぴり寂しそうな炭治郎を見て少し驚いた。あの様子では昨日の禰豆子ちゃんに襲われたことは覚えていないのだろうか? それを指摘するべきなのかどうかと思っていると肩を掴まれた。

 

「……炭治郎。良く眠れたか?」

 

「あ、巌勝さん。はい! 良く眠れました!」

 

額と首筋に痣のある青年に笑顔で返事を返す炭治郎。だけど、俺はそれどころではなかった。鷲掴みにされた肩が軋んでいるのが判る……どうして怒らせたのかが判らないでいると、巌勝と呼ばれた男性は俺の隣に腰掛けた。

 

(言うな、忘れているのだから忘れさせておいてやれ)

 

小声でそう言われ、この人が炭治郎を心配しているのだと判り。俺は判りましたと返事を返して、箸を卵焼きに向けた。

 

「あまぁ……あー幸せの味がする」

 

「本当だな。こんなに美味しい料理を食べたのは久しぶりな気がする」

 

高級な卵をこれだけたっぷり食べれて、そしてそれがほのかに甘くて食が進む。ちょっと怖い所もあるが、俺は今ではもう無限城に来て良かったとさえ思っていた。

 

「む、むー!」

 

「わあ、禰豆子は上手だね」

 

「本当じゃなあ、それ次行くぞ?」

 

「むーん♪」

 

炭治郎達が朝食を食べている頃、禰豆子は累や朱紗丸と共に鞠で遊んでいたのだが……鞠が行き交いする勢いは凄まじく、風を切る豪音とその力に耐え切れず破裂した鞠があちこちに散乱するといったある意味凄惨な光景なのだが……。

 

「えい(ぱーン)」

 

「そやあッ!(ボキッ!)」

 

鬼達の力に耐え切れる玩具は殆ど無く、遊び=道具粉砕の図式となっているので、それを気にするものはほとんどいないのだった……。

 

 

 

 

 

 

ふっくらと焼かれた魚の開き……これは川魚ではなく海の魚、たっぷりと脂の乗ったその身をご飯の上に乗せて食べるだけで幸せな気持ちになる。

 

「……ずずう、出発の前に……少し見てやる」

 

「え、訓練しろって言うの!?」

 

「違う、私達もそう暇では無い……少し助言をしてやる程度の事だ」

 

「よっしゃあ、これは良いぞ! 巌は強いから、俺達はもっと強くなれる!!」

 

「……名は、しっかりと呼べ……伊之助」

 

「……ゴメンナサイ」

 

よろしいと言って朝食を再開する巌勝さん、背筋もピンっと伸びていて、俺や伊之助なんかよりも数段綺麗に食事をしているの見るともう少し綺麗に食べるべきなのではと思ってしまう。

 

(……う、うーん)

 

普段はもう少し綺麗に食べていると思うんだけど……今日は少し食べ方が汚いように思える、それだけカワサキさんのご飯が美味しかったということなのだろうか……。色々と悩む所はあったんだけど、箸を止めることは出来なくてそのまま俺は悩みながら食を進めることになるのだった。

 

「「「ご馳走様でした」」」

 

「……うむ。では行くか」

 

そして休む間もなく、巌勝さんに連れられて無限城から連れ出される。勿論、禰豆子も箱に入ってもらって、出発できる準備も完了している。

 

「すううう……」

 

「もう少し……深く吸い込め……呼吸が浅い」

 

「う、うぐぐ……」

 

「肺の……鍛え方が足りんな」

 

巌勝さんの見てくれるといった内容は呼吸の事だった。満腹で型はきつかったので、呼吸の助言だけでもありがたいと思った。

 

「善逸……お前は、勇気ある者だ」

 

「え、ええ? ないないない、絶対ないですよ?」

 

「いいや……刀を鞘に納めるという事は……少しでも判断が遅れれば……死に直結する……それが出来ると言うだけで……お前は勇気ある者だ……」

 

「ええ……嘘だぁ……」

 

「後……ほんの少し……だけで良い……前へ出ろ……それだけでお前の技は更に昇華される……」

 

巌勝さんの助言を信じられないと言う顔で聞いている善逸だけど、巌勝さんの言う事に間違いは無いと思う。

 

「……お前は舞えるようになったか?」

 

「……いえ、実は……まだです」

 

巌勝さんの妹……いや、弟? 正直良く判らないけど、縁壱さんが俺の家に伝わるヒノカミ神楽を考えた人物と言うのは知っている。だけど俺にはまだ、一晩中舞うということは出来ないと言うと、巌勝さんはそうかと呟いた。

 

「……あれは縁壱が自分の為に編み出した物だ……焦らず修めるがいい……それが何れ……切り札となりえる時もあるだろう」

 

「それは……どういう?」

 

「……始まりの呼吸は……2つある……太陽と月……。努々忘れるな」

 

巌勝は炭治郎の質問に答えず、そう告げると空中に現れた障子の中へと消えていった……。

 

「えっと、今のどういう意味?」

 

「……炭治郎の家に何か呼吸が伝わってるっていう風に俺には聞こえたけどよ……何か知ってるのか?」

 

「……父さんが昔言ってた、疲れない呼吸があるって……でも、俺はそれを知らない。そう言う呼吸があるってしか……」

 

「そっか……でもこうして教えてくれたって事はきっと何か意味があることだと思うよ」

 

「そうだな、俺様もそう思うぜ! うっし、じゃあ、任務だ! 行こうぜ! 那田蜘蛛山へ!」

 

伊之助の言葉に頷き、俺達は次の任務地である那田蜘蛛山へと足を向けた。だけど、俺には巌勝さんが呟くように言ったその言葉がどうしても、頭に引っかかっていて……そしてその言葉が俺を救う事になるとは今の俺は想像にもしないのだった……。

 

 

 

 

 

無限城ひそひそ噂話

 

「行くぞ、カワサキ」

 

「……どこへ?」

 

「あの竈門炭治郎と言う奴の家にだ」

 

部屋で呆然としてたカワサキの元へ無惨がやってきて呆然としているカワサキの襟首を掴んで引きずる。

 

「おいおい!? お前何言ってる!?」

 

「下らんことで悩んでいるお前を見るのはもう飽きた。お前の持っている道具で生き返らせれるかもしれないのだろう? ならばそれに挑め」

 

「失敗したら遺体も無くなるんだぞ!?」

 

「ああ、それは何度も見てきた。その度にお前が落ち込むのも見た、だがそれでもお前は僅かな可能性に縋っている。ならばやらない後悔よりも、やって後悔しろ。この戯けが」

 

失敗したらと悩みながら、それでももしかしたら生き返るかもしれないという希望を抱いて、それでも失敗したらと思うと動けないカワサキの尻を文字通り蹴っ飛ばしながら無惨は無限城の中を進む。

 

「家に戻った炭治郎が泣くかも」

 

「生き返っていたら、喜びの涙を流すだろう」

 

「……失敗したら」

 

「そんなことを考えていては、成功する物も成功しないだろう」

 

「……でも」

 

「うだうだ言うな珠世、鳴女」

 

「はい、判ってますよ」

 

「では……竈門家へとお送りしますね」

 

「待て待て待てッ!?」

 

「うるさい、腹を括れ」

 

渋るカワサキを無惨は無理やり連れて行き、その後何が起きたかは詳しくはいえないが……珠世の部屋に新しいベッドがいくつも運び込まれたという事だけは確かな事実なのだった……。

 

 

 

メニュー23 流し素麺  

 

 

 




次回はリクエストを頂いた流し素麺にしようと思います。子供鬼も多いのでこれは実にいいイベントだと思いますたので採用する事にしました不安要素としては夏場はまだ先という事ですが……そこはスルーしていただけると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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