【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー23 流し素麺

 

メニュー23 流し素麺

 

「正座」

 

「「「はい……」」」

 

カワサキに言われ3人が俯いたまま正座をする。カワサキに説教される頻度で言えば、無惨、縁壱がダントツに多いが、今回は巌勝が正座させられていた。

 

「自然破壊良くない」

 

「……すまぬ、つい興が乗った」

 

「乗りすぎだ、ドアホ」

 

カワサキの手刀が巌勝の頭に当たる。勿論避けようと思えば避けれるが、巌勝はそれをしなかった。なぜならば、これは罰だからだ。

 

「俺が師匠に強請ったから」

 

「僕が巌勝様に頼んだから」

 

師匠が叱られているのを見て実弥と無一郎がカワサキの説得を試みる。巌勝と弟子2名がカワサキに説教されている理由……それは……。

 

「別によ、鍛錬が駄目とか言わないさ。でもよ……もうちっと程度を考えようぜ?」

 

全集中の呼吸の基礎が出来たと言う事で型の修錬に入った実弥と無一郎の為に巌勝が月の呼吸を披露したのだが、気合が入りすぎて丸坊主になった竹林が原因だった。

 

「お、俺は止めました」

 

「OKOK、有一郎のお陰だよ」

 

これはやべえっとカワサキを呼びに走った有一郎のお陰で竹林が全滅と言う事は回避出来たが、カワサキが面倒を見ていた竹林は見るも無惨な姿である。

 

「竹の子は大丈夫だろうか?」

 

「思いっきり時期だから被害が甚大だよ。馬鹿」

 

そろそろ収穫の時期だったと肩を落とすカワサキに巌勝達は改めて謝罪の言葉を口にするしかなかった。

 

「まぁ反省してるみたいだし、今回は許すけど、今度はちゃんと修練場を鳴女に言って使う事。良いな?」

 

「「「……はい」」」

 

「じゃあ許す、次はやらないように」

 

初犯と言うこともあり今回はカワサキも許し、肩を落として障子の中に消えていく巌勝達を見送る。

 

「どーすっかなぁ」

 

切り倒された竹を見て、うーんっとカワサキは呻いていたが良い事を思いついたと言わんばかりに手を叩いた。

 

「鳴女。玉壷呼んでくれ、玉壷」

 

『判りました。すぐに送りますね』

 

無限城の匠玉壷を呼んで、思いついた何かを実行する為にカワサキは動き出すのだった。

 

 

 

 

万世極楽教の厨房ではカワサキと琴葉を始めとして、様々な人達が忙しく動き回り、万世極楽教の庭では玉壷と巌勝が鋸を片手に竹の加工を行う等皆が忙しく動き回っていた。

 

「ここをこうやって、こうな」

 

「なるほど……えっとこうですね?」

 

カワサキさんに教わりながら小さな赤茄子を引っくり返して、十字の切れ込みを入れる。

 

「そうそう、そうやってどんどん切れ込みを入れていってくれ、後はお湯の中に潜らせて、皮が浮いてきたら下手のほうにやると金魚になるからな、っととあーそっちはもう少し待ってくれ、タコ糸で縛らないと型崩れするからなー」

 

忙しそうに駆け回るカワサキさんですが、その忙しそうな様子と比べて、その顔は酷く楽しそうだ。

 

「あちちち、カワサキ。これ熱いよ!?」

 

「湯がき立てだから熱いのは当たり前だ」

 

「嘘ぉ!? なんでそんなに早く殻を剥けるのさ!?」

 

童磨様もお手伝いをしてくれているのですが、湯がき立ての海老の殻を向くのに四苦八苦しておいでで、それに対してカワサキさんは見本だと言って殻を剥いて見せてくれたけど、やっぱり凄く早いと思うのと同時に熱くないのかなと不思議に思う。

 

「こうですか?」

 

「もう少し具材は少な目の方が良いな。これくらいで良い」

 

「な、なるほど、判りました」

 

挽肉を小さく丸めて皮に包んで居た信者がカワサキさんにこれくらいか?と尋ねるとそれだと挽肉が多すぎるとカワサキさんはもう1度見本と言って実際に作って見せてくれている。

 

「こういう風ですよね。カワサキさん」

 

「……それはでかすぎだなあ……恋雪」

 

「あら、そうですか?」

 

狛治さんのお嫁さんの恋雪さんは料理はお上手なんですけど、どうも1つ1つの大きさが凄く大きいんですよね。でも、私みたいにメモをずっと見てないと失敗してしまう訳では無いので、恋雪さんの料理の大きさはきっと食べる人への愛情の表れなのだと思うんです。

 

「わぁ、これは可愛いね」

 

「子供が喜びそう」

 

カワサキさんが持ってきた小さな型で茹でた人参を型どりして☆の形などを作っている信者達から子供達が喜びそうと言う声が聞こえてくる。

 

「子供達の為にうどんも茹でましょう。そうしましょう」

 

「そりゃお前が食べたいだけだろ……まあ良いけどな」

 

「うどんを茹でるのは良い考えだと思いますよ」

 

素麺はその通り細いので箸が苦手な子供では掴めないかも知れない。それならうどんの方が太いし掴みやすいと思う。

 

「カワサキ。こんな感じで良いだろうか……?」

 

「……お前変なところで才能があるな……」

 

巌勝さんの妹さんである縁壱さんは料理の才能が皆無と聞いていたんですけど、野菜や果物を綺麗な形に切り分けているのを見てカワサキさんも驚いた様子だ。

 

「……凄いですね。縁壱さん」

 

「まさか、あの問題児がここまで器用とは……」

 

鳥や犬の姿に切り抜かれた瓜や西瓜には正直驚かされる。まさかここまで作れるなんてと、良い意味で驚かされた。

 

「そうでしょうか……たまには褒められるというのもいい物ですね」

 

「いや、本当に良い意味で驚いてるよ、マジで……」

 

カワサキさんのその一言で普段、一体どれだけ迷惑を掛けているのか判る。だけど人の才能と言うのは意外な所で発揮される物なので、こういう細かい作業が縁壱さんの才能が輝く場所なのだと思いながら私は茹で上がったうどんと素麺をざるに上げるのだった。

 

「ふう……まだか?」

 

「もう少しですな。狛治殿はもう少し短めでお願いしますぞ」

 

「了解した、これくらいか?」

 

「そうですそうです。では巌勝殿は竹同士を麻紐で結んでくだされ」

 

「判った」

 

庭では巌勝達が流し素麺の土台を忙しく作っていた。土台は玉壷の指示で巌勝、狛治や響凱達が行い。玉壷や半天狗といった手先が器用な者達は竹を割り、入れ物や箸などを小太刀で削っている。

 

「見て見て、お兄ちゃん、上手に出来たよ!」

 

「おおお、梅ぇ……やーっと出来たなあ……」

 

箸や入れ物の残骸の中でやっと出来たと笑う梅に良くやったと褒める妓夫太郎。

 

万世極楽教の敷地の中ではとてもほのぼのとした雰囲気で流し素麺の準備が着々と行われていた。

 

「良い仕上がりだ。流石私だな」

 

そんな中で無惨だけは自分の入れ物、箸、薬味入れに無惨と彫り込み、酷く満足そうに笑っているのだった……。

 

 

 

 

 

 

巌勝達が作った流し素麺の台の周りに累や伊之助、そして無限城に保護されている不死川家の子供達に、万世極楽教の信者の子供達が集まっている。その周りでは無限城の匠が作成した竹ベンチなどが並べられており、巌勝達が座って楽しそうに笑っている子供達を見ている。

 

「無惨様ってこういう時凄いって俺は思うんだよね」

 

「あの人の食への執念は凄まじいからな」

 

しかし子供鬼の列の後で自分で作った「無惨」と言う入れ物を片手に持ち、ベンチに座り待ち構えている無惨に大人の中にも微妙な空気が流れているが……それには触れないのが大人としての優しさである。

 

「よーし、始めるぞー」

 

2階から顔を出したカワサキが素麺の入ったざるを片手に持って、素麺を流し始める。

 

「しかし、カワサキ殿は不思議な道具を持ってますなあ」

 

「カワサキが不思議なのは今に始まった事では無い」

 

大人組の中でも流し素麺に興味のない玉壷や響凱は竹ベンチの腰掛け、水の中に入れられた素麺を竹の箸と器で音を立てて啜っている。

 

「カワサキは鬼じゃないんだよね? じゃあ何?」

 

「「「さぁ?」」」

 

子供鬼の1人の質問に答えられる者はいなかった、なんせ鬼達もカワサキに関して判っている事は少ない。料理が得意と言うこと、そして不思議な道具を持っている。そして怒ると怖いくらいしか古参の鬼も知らなかった。

 

「ふにい!」

 

「みゅー!!」

 

「や、やった、兄ちゃん取れたよッ!!」

 

「おお、やるなあ。玄弥」

 

無限の水差しから流れ続ける水によって竹のレールの上を滑っていく素麺。しかし想像通り子供達には素麺を取るのが難しいのか素通りしたのをベンチに腰掛けている無惨がゆうゆうと掴んで麺汁につけて口にする。

 

「美味い。なるほど、偶にこういうのも悪くない」

 

竹の香りを楽しみながら素麺を口にする無惨。恐らく今1番流し素麺を楽しんでいるのは無惨である事は間違いないだろう……。

 

「今度はうどんを流すなー」

 

声を掛けてからカワサキがうどんを流す。麺が太くなった事で掴みやすくなったのか取れたーっと言う声があちこちから聞こえてくる。

 

「楽しそうで何よりだな。竹を切ったのにも意味があると言うものだ」

 

「いやいや、巌勝殿。カワサキ殿相当怒ってましたぞ?」

 

「……そうか、ところで何故お前はそんなに勝ち誇った顔をしている?」

 

「今日はカワサキに褒められましたから」

 

ドヤアっと自慢げでありながらも虚無顔と言う尋常じゃない難易度の顔をする縁壱。だが巌勝達はそれどころではなかった……。

 

「よ、縁壱がカワサキに褒められた!?」

 

「あ、ありえない……天変地異の前触れか!?」

 

「ひいいっ、お、恐ろしい恐ろしい……カワサキがご乱心じゃッ!」

 

縁壱と言えばカワサキに叱られる。それがこの場にいる全員の認識であり、そんな縁壱が褒められたという言葉に万世極楽教の庭に居た全員が信じられないと言わんばかりに目を見開いた。

 

「す、すごーい! 犬の形してるー♪」

 

「これは猫……だ。凄い」

 

「母ちゃんだ! 母ちゃんの形をしてる!!」

 

子供達の楽しそうな声に振り返ると、赤茄子や西瓜のくりぬきが犬や猫、果ては猪の形になったそれがゆっくりと流れていく。

 

「もしかしてあれをお前が?」

 

「頑張りました」

 

ふんすっと胸を張り、胸が揺れる縁壱は自信満々そうな雰囲気でありながら、いつもの虚無顔である。もう少し、感情表現を上手くしろとこの場にいる全員が思った。

 

「ほうほう、味はそれほどでもないが……これはこれで風流だな」

 

味よりも見た目、竹の中を流れて来るというのが見た目にも涼しく、そして緻密に削り出されたそれが子供心をくすぐる。

 

「そろそろ餃子とかを流すぞー」

 

「餃子! 良いねえ、そろそろ俺も食べに入ろうかな」

 

「狛治さん。私も頑張ったので食べてくださいね」

「恋雪さん。判りました。私も食べさせて頂く事にします」

 

うどんや素麺だけでは腹持ちが悪いと子供達を見ていた童磨達だが、そろそろ腹持ちのいいおかずが流れてくると聞いて竹箸を手に並び始める。

 

「いくぞー」

 

流れ続ける水の中を餃子やシュウマイがゆったりと流れていく。

 

「何これ初めて見るー」

 

「なんだろ、美味しいのかな」

 

「良し良し兄ちゃんが取ってやろうな」

 

初めて見る餃子やシュウマイに興味津々と言う様子の弟達にシュウマイなどを取ってやっている実弥。自分は殆ど食べていないが、弟達が楽しそうに食べているのを見て嬉しそうな顔をしている。

 

「お前も食え、体を作るのだからな」

 

「は、はい。判りました」

 

「ま、弟の面倒を見たいって言うのは判るけどさ。大丈夫だよ、ここには沢山子供を見てくれる大人が……海老! 俺の指を焼いた海老が流れてきたッ! これは絶対食べると決めていたんだッ!」

 

海老の殻を剥くのに火傷していた童磨が実弥に良い感じの話をしていたのだが、海老を親の仇のように見つめているのを見て狛治は肩を深く落とした。

 

「童磨さんってあれで教祖なんですよね? 大丈夫なんですか?」

 

「……俺たちと居ると子供みたいな性格になるんだよ。まぁ、なんだ。子供なんだから無理に大人になろうとせずに大人に甘えればいいんだからな」

 

狛治にそう言われ、見ていたが弟に海老を譲っていた実弥の竹の入れ物に海老を入れてやる狛治なのだった……。

 

「あ、と、取れた」

 

「やっとだな。無一郎」

 

「う、うん」

 

子供達から少し離れた所で流し素麺を楽しんでいる時透兄弟も流し素麺を心から楽しんでいる様子で、普段怒り顔の有一郎もその顔が少し柔らかい。初めて開催した流し素麺だが、子供達の喜びようから毎年の無限城と万世極楽教での夏の風物詩になるのだった。

 

「よーしッ! 今度こそ取るわよ!! せいっ!」

 

「うめえ……お前はもう少し箸の練習をしたほうが良いなあ」

 

「……ほっと、ははは、良いな、これは面白いッ!」

 

食事と同時に遊びの要素もある、まだ高校生くらいの年齢の梅達も流し素麺を楽しみ、この日1日万世極楽教の庭からは笑顔と楽しそうな笑い声が途絶えることが無いのだった……。

 

 

 

 

 

無限城ひそひそ 噂話

 

 

流し素麺の台を作るのに、相当消費された竹だが当然それらを使い切る事が出来る訳も無く、玉壷が殆どの竹を引きとる事になった。元より玉壷は釣りが趣味と言うこともあり、自作の竹竿を作る事を趣味にしていた。新しい良質な竹を乾かし、また竿が作れると喜んだ玉壷は興味のある者を呼び寄せ、竹竿作り講座を開催していた。

 

「む、上手く行かないな」

 

「はっは、弦三郎殿は不器用ですなあ」

 

「こんな感じだろうか?」

 

「もう少し力を抜けば良いのさ」

 

カワサキ達は暇つぶしと言うこともあり、玉壷の指導の元、竹を加工して釣り竿を作っていた。

 

「おお、日丸とカワサキ殿は良い腕前ですな」

 

「そ、そうだろうか……」

 

「ああ、お前はいいセンスをしてるよ。日丸」

 

カワサキと玉壷に褒められ、恥ずかしそうにしている日丸の隣で玉壷とカワサキは並んで座り、竹を火で炙り木を添えて形を整えている。

 

「何をしているんだ?」

 

「竹は真っ直ぐじゃないですからね。こうやって形を整えるんですよ」

 

「しかしこれは良い竹だ。年々頑張って育てていた甲斐があるな」

 

「全くですな! これなら5本繋ぎ……いや8本繋ぎの名竿になりますな」

 

カワサキと玉壷の作る竹竿は非常に高評価で、姿を見せない竿師と言う事で、非常に高値で売買されている。紅く鬼と一文字刻まれた竿を持っている釣り師は只者では無いと言われるほどの竿で、鬼殺隊の中でも釣りを趣味にしている柱や育手にとっては憧れの一竿となっている。

 

「巌勝も偶に作っているが、今日は姿が見えないな」

 

「あいつか、くっくっく……今日は触れてやるな。あいつもあいつで複雑なのさ」

 

「そう言う事ですよ」

 

含み笑いをしているカワサキと玉壷に日丸達は首を傾げながらも、触れてはいけない話題だと判断し竹竿作りを再開するのだった。

一方その頃継国兄妹はと言うと……

 

♪~♪~♪

 

「……」

 

竹を切りすぎたと言う事で一部貰い受けた巌勝が竹笛を作り、その音色を聞きながら眠っている縁壱の姿があった。だがその姿は誰にも見られる事は無く、そして2人きりでも縁壱が巌勝を襲うことは無く、かつて継国の城で見られた穏やかな時を過ごす継国兄妹の姿がそこにはあるのだった……。

 

 

 

 

メニュー24 VS鮪へ続く

 

 




次回は釣り回で鮪を釣って来いと無茶振りをされた玉壷の頑張りの話を書いて行こうと思います。カワサキさんも交えて釣りフェイズを書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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