【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
メニュー24 VS鮪
鮪と一言に言ってもその種類は非常に多く、そして味わいも千差万別であり、また釣れる場所も大きく異なる。玉壷やカワサキが鮪を入手したいとなれば、その種類はその数を大きく絞られる事となる。
「と言う訳で俺達が狙うのは磯鮪になる」
「なるほど、時期的にも釣り易いですな!」
玉壷が何回もアタックしていた鮪だが、1人では釣れないと言う事で、玉壷はカワサキに助けを求め、カワサキも玉壷と共に小笠原諸島に訪れていた。大正時代ではまだそこまででは無いが、平成の世では磯釣りのメッカとまで呼ばれている小笠原諸島。しかもまだそこまで人間が来ていない自然のままのフィールドであり、鮪を狙うには絶好のポイントと言えるだろう。
「玉壷、リールの使い方は覚えたな?」
「はい、大丈夫ですよ、カワサキ様」
無限城で磯竿の扱いのトレーニングをしていた玉壷が気合に満ちた顔で返事を返す。カワサキはそれを見て小さく微笑み、磯竿を1本玉壷に貸し与える。
「昼間は餌のムロアジを狙う。磯鮪を釣るのは朝夕のマズメ、磯によってくる時間が勝負だ」
鮪は回遊性の魚だ。寄っていない時間に狙っては釣れないとまでは言わないが、釣り上げられる確率は極端に下がる。だから釣れる時間までは餌の小魚を狙うぞと玉壷に声を掛けて、短い竿にサビキ仕掛けを手際よくセットする。
「了解です、出来るだけ早く釣り上げて無限城に帰りたいですなあ」
「まぁそうだけど、カレーライスとかシチューとか用意してるから大丈夫さ。うっし、行こうぜ玉壷。鮪10匹目指すぞー!!」
1匹やそこらで無限城にいる鬼全員の胃を満たす事は出来ない、10匹の鮪を捕獲する事を目標にして、カワサキと玉壷は小笠原諸島の離島の1つにテントを張り、腰を据えて鮪を狙い始めるのだった……。
カワサキ様から借りた竿は普段使う竹竿等とは重みから、竿の長さまでまるで異なる物でございました。
「この軽さでこの強靭な粘り腰……いやはや、信じられませんなあ」
コマセ籠にコマセをつめて海の中に沈めて2~3回あおってやれば穂先が吸い込まれるようにして海中に突き刺さる。余り使い慣れない道具――リールと言う奴のハンドルを掴んで回し魚を海中から抜きあげる。
「ひょひょひょ、幸先良いですなあ」
鮪の餌になるムロアジが鈴なりで釣れて笑みを浮かべ、カワサキ様から借りている酸素を水の中に送り込むという奇妙な道具を入れた桶の中にムロアジを入れる。
「夕暮れの短い時間が勝負ですからなあ……まずは10匹ほどで良いですな」
釣れる時間は半刻にも満たない短い時間。余り釣り過ぎても、一晩もムロアジを生かすのは難しい話だ。10匹ほど確保しておいてこの島にいる間の夕食などを確保しても良いだろうと思い、再びコマセを籠の中に詰めて海中に沈める。
「っとと、いやはや、良いですなあ」
魚影が驚くほどに濃い、島に上陸する前に余り漁師達が来ない場荒れしていない場所を選びましたが、ここまで魚影が濃いと笑みを浮かべずにはいられない。
「玉壷よぉ、餌は十分に確保出来たからお前も少し自分の好きな釣りでもしろやーッ!」
別の磯場に陣取っていたカワサキ様の言葉にわかりましたと返事を返し、練習を兼ねてカワサキ様に借り受けた巨大な磯釣りを手に取る。
「やはり練習をしておくとしますかね」
太いワイヤーと言う物を糸に結び切れないようにして、巨大な針を頭から刺して、胴体に抜けるように針を刺す。
「よし、ではいくとしますか」
ベールを起して、竿を振りかぶり沖目掛けて思いっきり投げ込む。
「ほほーう、大分飛びましたな」
こうして初めて投げ込みましたが、かなり飛びましたな。これならば沖合いを回遊する鮪を釣り上げるのも決して夢では無いでしょうな……。
「ひょっ!!!」
ウキが馴染んで秒でウキが海中に沈むのを見て、竿を大きくあおる。
「これは良いですなあッ!!」
穂先から凄まじい勢いで糸が伸びて行き、一気にウキの姿が沖合いに消える。腰を深く落として竿を立てて、魚の突進を食い止める。
(いやいや、私の竿では駄目でしたなあ)
多分最初の突っ込みすら耐え切れず、竿が折れていただろうと思いながら何度も竿を大きくあおりリールを巻き上げる。
「手助けいるか?」
「いいえ、いいえ、大丈夫ですよぉッ! とっと!!」
私が大物と格闘しているのを見てカワサキ様が手伝いがいるか? と声を掛けてきますが、鮪を釣ろうと思うのだ。この程度で根を上げていては鮪などが釣れる訳がない。何度もポンピングを行い、リールを回してラインを回収する。
「よっとッ!!」
「いやあ、ありがとうございます!」
ギャフを打ってカワサキ様が魚を磯に引き摺り上げる精悍な顔付きの身体の真ん中に黄色の線が入ったヒラマサを見て笑みを浮かべる。
「大分使いこなせているみたいだな」
「はい、これで大丈夫ですよ!」
磯竿を使う練習も出来た。後は本番の時を待つだけだと気合を入れて、再び仕掛けを沖に向かって投げ込むのだった……。
「流石磯釣りのメッカだな、いや、魚種が豊富だ」
アジなどの小物に鯛にヒラマサとサイズも魚種も申し分ない、ビッグサイズが立て続けに釣れる。これには俺も笑みを浮かべずにはいられない。投げては釣れる、投げては釣れる。大正時代では釣りがそこまで流行しておらず、磯釣りなんて言う考えがないからこそのこの魚影には満足だ。
「っと!また来たか」
ウキが海に馴染んでほんとに数秒でウキが海中に引きずり込まれる。竿を反射的に大きくあおりバッチリ合わせをくれてやると、竿が大きく海面に突き刺さり、それを腰を落として耐える。
「この手応え……ハタかっ!?」
根に潜っていく強烈な手応えを楽しみながら、しかしそれでいて根に潜られない為に、大袈裟とも取れるポンピングを繰り返し、魚を根から引きずり出す。
「良い引きだ。最高だな」
竿越しに伝わってくる抜群の手応えを楽しみ、ラインを巻き取る。
「ふんっ!」
ユグドラシルのアイテムなので普通の魚相手におられる事など、決して無い。海面に姿をあらしたハタを強引に抜き上げる。
「ん、満足満足」
70Cmほどのハタに満足と笑い、〆てクーラーボックスにほりこんでおく、綺麗に捌いて干物にしたり、刺身にしたり色々と使い勝手が良い。
「子供には魚だからな」
成長期の子供にはカルシウムが大事だ。肉に拘る連中が多いので、魚を大量に確保しておこうと思い投げ込み仕掛けとサビキで魚をどんどん釣り上げるのに夢中になっていると日が翳っているのに気付いた。
「……時間だな」
夕マヅメ、磯鮪が回遊してくる時間だと慌てて磯鮪の仕掛けを組み上げて沖合いに投げ込む。
「回ってきていれば食うはずだ」
俺か玉壷のほうに磯鮪が巡回してくるか、それとも両方か……どっちにせよ、回遊しているかどうかはすぐに判る。投げ込んだウキが馴染んで、ムロアジが泳ぎ始めたのかウキが右に左に動く。
「……駄目か」
磯にピトンを打ち込んであるから大丈夫だが、どうも駄目なようだ。もし巡回していれば1発でウキが消し飛ぶが、それもないのではどうも俺の方には回って来てないな。
「何日掛かるかねえ」
鮪を大量に釣り上げておきたいが、さてさて、目標の10匹にはどれくらい時間が掛かるかなあとレジャーマットの上に寝転がり、夕暮れのオレンジ色の光を見つめているととんでもない悲鳴が聞こえた。
「ほぎゃああッ!?」
「玉壷!?」
尾を踏まれた猫のような玉壷の悲鳴が聞こえ、そちらに駆け寄ると玉壷が股間を押さえて泡を吹いていた。
「お前……竿の間にあれほど立つなと……」
磯鮪が食いついて、一気に走り出した瞬間に竿尻が跳ね上がり、股間を強打したのだと俺は理解した。そしてバチンっと言う音を立ててラインが断ち切られる音も響いて、俺は深く溜め息を吐きながら泡を吹いている玉壷を引っくり返し、腰の辺りを強く叩く。
「作戦変更するか」
「……で、ですなあ……」
鮪は想像以上に強敵であり、これは個別に狙うんじゃなくて2人で1本の竿を使うほうがいいかもしれないなと言う結論に至るのだった。
「ぬああああああーーーッ!!!」
「キーンッ! バチーンッ!!!」
「くそがあああッ!!!」
「まだ、まだ群れは行ってない!!」
なおその日から小笠原諸島のある離島から化け物の声が響くと言う噂が出る事になるのだが、鮪を捕獲する事に全てを賭けているカワサキと玉壷がそれに気付く事はなく。
「止めたぞぉッ!!」
「巻け巻けーッ!!」
鮪を釣り上げる為にたゆまぬ努力、そしてくじけぬ心によって鮪を釣り上げる事に成功するのだが、それはカワサキと玉壷がこの島で釣りを始めてから3日目の事であり、目標である鮪10匹を到達出来たのはそれから更に10日後の事なのだった……。
メニュー25 鮪料理
次回は鮪料理を書いて行こうと思います。小笠原諸島の離島での釣りは私の夢ですが、今のコロナの状況じゃとてもじゃないですが無理ですよね。なのでこんなふわっとした釣り描写になってしまい申し訳ありません。次回は鮪を使った料理を沢山書いて今回の少なかった文字数を補って行こうと思います! それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない