【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー26 カワサキ特製ラーメン

メニュー26 カワサキ特製ラーメン

 

 

無限城では大量の鶏肉や豚肉が消費される。その為、無限城の内部に養豚場や養鶏場が何時しか作られるようになった。最初は俺しか解体できなかったが、時間が経てば他にも解体出来る面子と言うのは自然に増えてくる。しかしだ、消費量が増えるということはそれだけ、動物を殺している事になり当然大量の骨が出る。それを無駄にする訳には行かない、しかし骨の使い道なんてそうある物ではなく、個人的に骨を利用する料理……即ちラーメンのスープを作る努力をしていた。

 

「良し……ここで水を足してっと」

 

豚骨と鶏がらのミックスで出汁を取り、途中で背脂を取り出す。正直醤油ラーメンなら良く作るが、豚を使うのはあまり無く。研究を重ねてやっとそれなりの物が出来たのではと最近思う。

 

「良し良し良い具合だ」

 

ぷるんとしたコラーゲンが良く出た背脂を泡たて器で潰しながら混ぜてグジュグジュのジュレ状にする。これで背脂って言うのはいいはずだ。水を足してスープを煮詰めている間に次の準備を始める事にする。

 

「次っと」

 

濃口醤油、水、みりん、酒、砂糖にネギの緑の所とニンニク2片を鍋の中に入れて漬けダレを作り、その中にタコ糸で縛り型崩れしないようにしておいた豚バラと豚腿肉の2種類を入れて煮詰めチャーシューの準備をする。

 

「煮卵もあると嬉しいよな」

 

チャーシューが仕上がったらすぐ煮卵にいれかえられる様に今の内に大量のゆで卵の準備も始める。

 

「これでやっと無惨達に出せるな」

 

自分で食べて人様に出せる味だと思うまではラーメンを食堂で出す事はなかったが、これでやっと無惨達に出せる味になったと言う確信がある。

 

「良し、良い具合だ」

 

白く濁った豚骨鶏がらスープ。豚の骨と鳥の骨、そしてたっぷりの香味野菜で取った出汁は間違いなく一級品だ。

 

「最後だ。醤油、みりん、砂糖っと」

 

鍋の中に醤油、みりん、酒を加えて火に掛ける。砂糖が溶けるまでかき混ぜたら、中火に変えて焦げ付かないように丁寧に混ぜる。鍋の縁が温められてふつふつとしてきたら弱火に変えて沸騰しないように様子見をしながら、チャーシューを1度取り出して、別の鍋にチャーシューが浸るくらいのタレを移して、弱火でチャーシューを煮詰め。元からタレが入っていた鍋に殻を剥いたゆで卵を大量に投入して弱火で煮詰める。

 

「かえしも出来た」

 

沸騰直前で火を止めて御椀の中に背脂、かえし、そして漉した豚骨鶏がら出汁を注いで軽く混ぜてから味見をする。

 

「……完璧だ」

 

かえしがまだ出来たてで刺々しいが、少し冷ませば味も落ち着いてもっと円やかな味になり、出汁とも良く混ざるようになるだろう。しかし問題が1つ生まれた、この濃厚な豚骨醤油スープでは細目の麺等では食われてしまい、ラーメンとは言い難いだろう。

 

「太めのがつんとした縮れ麺を作らないとな」

 

スープに浸っているだけの麺ではラーメンとは言えない、スープと麺が調和してこそのラーメンだ。俺は用意していた中華麺を冷やし中華用の麺にする事を決め、夕食に間に合わせる為に急いで太めの中華麺を打ち始めるのだった……。

 

 

 

 

 

カワサキは極稀にだが、どんな料理の希望も受け付けない時がある。それはカワサキが長い時間研究し、やっと私達に出しても恥ずかしくない料理になったと言う時だ。それは見た事が無い料理である事が大半だが、はずれが無い。

 

「ほう、今日は希望受付なしか」

 

「……これは楽しみですな。無惨様」

 

「ああ、久しぶりだ」

 

黒死牟も楽しみだと頬を緩める。ライスカレー、寿司、シチュー色々食べてきたが……さて、今日は何が食べれるかと期待して食堂に足を向ける。

 

「はい、豚骨醤油ラーメンお待ち!」

 

「おお……これは美味そうだ」

 

弦三郎が丼を手にして、螢火が待っている机に引き返していくその一瞬で丼の中を見たが汁と麺。その上に野菜と卵と肉が乗っているのが見えた――なるほど今日は麺料理か。

 

「カワサキ、私も貰おうか」

 

「カワサキ、私もだ」

 

「あいよッ! すぐに準備するぜ」

 

腕まくりと捻り鉢巻姿のカワサキが鍋の中に麺を入れて湯がき、大量の丼の中に醤油らしき物を注ぎ、その上に白く濁った汁を注ぎこむ。

 

「シャッ!!」

 

そして両手にざるを持ち、同時に大量の麺のお湯を切り、汁の中に沈める。そして鮮やかな手並みで具材が盛り付けられ、私達の前に差し出される。

 

「豚骨醤油ラーメン、お待ちどう!」

 

「ラーメン、ラーメンと言うのかこれは?」

 

「おう、中国の方の麺料理を日本風にアレンジした奴だ。熱いから気をつけて食えよ」

 

中国の麺料理か……餃子や春巻き、しゅうまいとどれも美味だったので、このラーメンもきっと美味いのだろうと思い、お盆に載せて空いている席を探すが……殆ど席が埋まってしまっている。

 

「ふーふー、ずるううううッ! うん、うん! うわあ! めちゃくちゃ美味しいね!」

 

「……確かに美味い、凄まじく強烈な味だ」

 

「ふふ、美味しいですね」

 

童磨達の席は埋まっているし、かといって妓夫太郎達の席はと言うと……。

 

「うぷ……お兄ちゃん、目とか、耳とか、口から麺が飛び出しそう……」

 

「梅よぉ? 兄ちゃんは無理に2杯目を食おうとするなって言ったよなあ?」

 

「お、美味しかったから行けると思ったの……」

 

ばたばたしていて、ゆっくり食べれそうな雰囲気ではない。

 

「ふーふー、うん。美味いですな」

 

「余り馴染みが無いがこれは美味い。「あ」んああああああーーーッ!!!」

 

「は、半天狗殿ぉッ!?」

 

子供の啜った麺から跳んだ汁が目に入ったのか悶絶する半天狗達の席も騒がしくて食事所ではない。

 

「ふーふー、はい、熱いから気をつけて食べるのよ?」

 

「「「はーい!」」」

 

「この小さい器に入れてやろうな」

 

「ありがとー」

 

……あの席は論外だな、子供鬼達がきゃっきゃっとはしゃいでおり、それこそ食事を味わう所ではない。

 

「行くぞ」

 

「……はい」

 

最終的に無限城の問題児。縁壱の座っている机だけが空いており、嫌そうな顔をしている黒死牟を引き連れてその席に向かう。

「兄上、兄上、これ物凄く美味しいのです」

 

いつもの虚無顔でありながら目を輝かせるという器用な真似をしている縁壱。普段飯を食っても美味いのか不味いのか良く判らない顔をしているので、顔に出ると言う事はさほど美味いのだろうと思い私も丼を覗き込む。

 

(汁は茶色、これは豚肉……か、軽く炙られているようだな。野菜はもやしとキャベツ、それと茶色くなるまで煮られた卵か)

 

箸を汁の中に入れて麺を持ち上げて驚いた。太い、とんでもなく麺が太い。

 

「太いな」

 

「太いですな」

 

こんなに太い麺を見たことが無いと思いながら、息を吹きかけて冷ましてから麺を勢いよく啜る。

 

「美味いッ」

 

「……なんと言う……これはなんと言う美味さ」

 

口の中一杯に広がる強烈な味、汁を直接飲んでいないのに汁を口にしたかのような強烈な後味。太めの麺を啜ると、その麺の窪みの汁が口の中に広がる。

 

「ずずう」

 

「……ほう」

 

匙で直接汁を啜るとより強烈に旨みを感じる、にんにくのパンチの利いた香りも鼻に抜け実に食欲をそそる。

 

「これは?」

 

「脂?」

 

「背脂と言うそうです。汁の中に沈めて溶かして食べるそうですよ」

 

縁壱から言われた通り野菜の上に乗っていた背脂を汁の中に沈めて麺と共に啜る。口の中に広がるのは強烈な豚の旨み……口一杯に広がり、少々脂っこいと感じたのでキャベツともやしを頬張る。

 

「なるほど、良く考えられている」

 

「塩だけなのもいいですね」

 

塩だけで軽く炒められたそれはしゃきしゃきと味わいが良く、口の中に満ちた豚の脂をさっぱりとさせてくる。

 

「チャーシューも抜群に美味い」

 

「食欲をそそりますね」

 

とろりとした豚バラのチャーシューと固い歯応えのある豚腿肉の2種のチャーシューは食感の違いで私の舌を楽しませ、麺をもっと食べたいと言う気持ちにさせる。

 

「「ぷはああっ……」」

 

熱々の汁を飲み終え、大きく息を吐く。うどんなどの麺類とはまた違う、味わいだったが実に満足感を与えてくれた。

 

「しかし、少し足りないな」

 

「そうですね……お代わりを貰いましょうか」

 

少し物足りないので少しだけ作って貰おうと席を立ったとき、鳴女が山盛りのキャベツが乗せられ、チャーシューも10枚以上、更に煮卵が10個も乗せられた巨大な丼を持って歩いてきた。

 

「「え?」」

 

「……なにか?」

 

有無を言わさない迫力がある鳴女に私達は思わず何でもありませんと敬語で返事を返すのだった……。

 

 

 

 

鳴女さんが持っているラーメンを見て大丈夫かな? と私は思わずにいられなかった。私の丼の倍近い量だからだ、しかもカワサキさんに

 

「ブタダブルヤサイタマゴマシマシニンニクアブラカラメ」

 

と言う呪文のようなことを言っていた。

 

「鳴女、それが何を意味するか判ってるか?」

 

「勿論です。カワサキさんの本で見ました」

 

「……OK。準備するよ、残すなよ?」

 

「……大丈夫です」

 

カワサキさんが念を押して用意したラーメンは私の倍近い量で思わず我が目を疑った。

 

「……美味しそう」

 

「そうか、それなら良いけどさ」

 

見るだけで満腹になりそうなそれを美味しそうと満面の笑みで言った鳴女さんにも驚いた。

 

「無理そうでしたら手伝い……」

 

無理そうでしたら少しでも手伝いますよ? と言いかけたんですけど、それを最後まで言う事はなかった。

 

「……ゴキゴキ」

 

髪を後ろで結わいて、腕の袖をまくって気合をいれた鳴女さんの一つ目がカッと見開いた。

 

(え、凄い……)

 

野菜の中に箸を突っ込み、野菜と麺を同時に持ち上げ凄まじい勢いで啜る。汁が机の上に飛び散るのも全くお構い無しだ、野菜の下から現れたチャーシューを一口で頬張り、今度は麺だけをごっそりと持ち上げ大きく口を開けて啜りこむ。

 

「ん、おいし」

 

(それ!? それですか!?)

 

机の上が凄いことになってるのにそれですか!? と思わず叫びそうになった。野菜だけを凄まじい勢いで食べ、煮卵をスープの中に沈めて、匙で掬って一口で頬張る。普段はもそもそと食べているのに、凄い食欲だ。

 

「伸びますよ。珠世さん」

 

「あ、あ。そ、そうですね!」

 

伸びてしまうと辛いので私も麺を啜る。普段のうどんの汁とは違う、獣の味と言うべきガツンっとインパクトのあるスープの味と歯応えのある麺の味は舌を楽しませてくれる。だけど、慣れていない獣の味に私はラーメンに負けてしまった。

 

「うぷ」

 

「貰いましょうか?」

 

「……お願いします」

 

あの山盛りのラーメンを食べて、私の食べ切れなかった分も食べた上で、ラーメンをお代わりする鳴女さんの姿に私は本当に鳴女さんは麺料理が好きなんだなと思いながら、口直しの漬物を口にするのだった……。

 

 

 

 

 

無限城ひそひそ噂話

 

 

鳴女と珠世は基本的に2人で食事を取る事が多い。そしてラーメンがメニューに追加されてからはほぼ毎日ラーメンを食べていた。

 

「ブタダブルヤサイタマゴマシマシニンニクアブラカラメ」

 

「えっと、ブタヌキヤサイマシでお願いします」

 

「……大丈夫?」

 

鳴女に合わせてなのか、マシの注文をする珠世に大丈夫か? とカワサキが尋ねると珠世は頬を赤くして、そっぽを向いた。

 

「食べたくなるんです……本当になんでかわからないんですけど」

 

「ぶいっ!」

 

普段食事をしない珠世は医者の不摂生を体現していると言っても良いだろう。そんな珠世の食生活を改善させる為に愈史郎は鳴女に珠世と共に食事をするように頼んだのだが、ここ数日で食事の量が増えた事を自分も気付いているのか珠世は少し恥ずかしそうに告げた。

 

「じゃあ麺少なめにしようか?」

 

「……お願いします」

 

か細い声でカワサキに注文を告げる珠世。そんな珠世を食堂の後で見つめていた愈史郎はダンっと机に拳を打ちつけた。

 

「恥ずかしそうにしておられる珠世様がお美しい」

 

「……そうか、うん、まあ良いんじゃないか?」

 

珠世を盲目的に愛している愈史郎は今日も珠世に見つからないように姿を隠して、食事量が増えたと恥ずかしそうにしている珠世をじっと食堂で見つめていて、同年代に見える鬼達にドン引きされて見られていた。

 

「にちゃあ」

 

そしてそんな愈史郎を見て、縁壱が自分の同類を見つけたと言わんばかりに笑っているのだが、愈史郎がそれに気付く事はないのだった……。

 

 

 

 

メニュー27 童磨の大失態へ続く

 

 




二郎系は実は行ったことが無い店なのでふんわりとした雰囲気になったと思いますが、ある程度は表現できたかな? と思っております。次回は料理と言うかコメデイタッチで書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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