【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー32 初めましてのおかき その2

メニュー32 初めましてのおかき その2

 

俺達がカワサキと名乗る料理人に出会ってから遊郭の中である噂が流れ始めた。月の無い夜に「鬼」が出るという話を良く聞くようになった。だけど正直俺はそれを気にすることは無かった……だってそうだろう? 鬼なんてどこにでもいる。借金のかたに娘を遊郭に売る親、足抜けさせてその遊女を殺す侍。そして俺と梅の親――鬼なんて言う者は俺のすぐ側に何人もいる。

 

「あー、うん。そっか」

 

「んだよ? 俺が変なことでも言ったかぁ?」

 

カワサキに出会って何年か……んなもんは忘れたが、梅が花魁となり吉原1の遊女と呼ばれ、俺がてめえの名前にもなっている妓夫の仕事を始めた頃合だから少なくとも7~8年は経っていると思う。時折尋ねてきては珍しい菓子を俺と梅に渡し、世間話をして帰っていくカワサキの鬼を知っているか? の言葉に俺はそう返事を返したのだが、カワサキは何とも言えない顔をしていた。

 

「あんただって知ってるだろうが、人は醜いんだぜ?」

 

「それは否定できねえなあ……」

 

俺の痩せた身体と違う大きく力強い身体――本当なら妬ましいと思う所だが、何度も飯をくれたし、それに梅が病気の時だって医者を連れてきてくれた。そう思うと妬ましいと思うよりも、頼れる相手と言う印象がどうしても強かった。それに俺が癇癪を起こした時だって、大丈夫だと言って殴られても蹴られても反撃しようともしなかった……何の見返りも、そして何も求めないカワサキは俺が梅の他に唯一信用出来る相手と言っても良いだろう。

 

(それにカワサキの言う通りにしていたら、少しはましになったしな)

 

取り立てるにしてもまず殴るんじゃない、蹴るんじゃない。言葉による問いかけを行なえとカワサキは俺に何度も言った。腕っ節が強いのはわかるが、暴力はより強い暴力に押し潰されるとカワサキは言った。そしてカワサキは俺を片手一本で押さえ込んで見せた……これだけ人のいいカワサキでも俺よりも強いと言う事実は俺に少し考えるさせるきっかけになった。確実に取り立てると言って重宝されたが、それが俺ではなく梅の身を危険に晒すかもしれないと諭されては、俺も少しは考えるって事を覚えた。そうなると前みたいに何をしでかすか判らない気狂いと言う俺の評判は少しずつだけど変わって来た。これもカワサキに言われるまでは考えようとも思わなかった事だ。

 

「ほれ、お守り袋を貸しな」

 

カワサキに言われて首から下げていたお守り袋を渡す。藤の香りのする匂い袋――正直少し臭いと思う時もあるが、カワサキがくれる物だからずっと首から下げている。

 

「じゃあこれ新しいのな。梅にもちゃんと渡すんだぞ」

 

「おう。判ってる」

 

「良し。じゃあこれな、今回の土産。大福餅、焦って食うなよ。喉に詰まるからな」

 

10個ほどの餅と俺と梅の分のお守りを渡すとカワサキは立ち上がって、腰に手を当てて背を伸ばした。

 

「梅には会って行かないのか?」

 

「花魁に1見の俺が会える訳無いだろ? 今度は梅の休みの時でも来るかねえ」

 

そう笑って歩いていくカワサキを見送り、渡された土産を手にして梅の勤めている遊郭に足を向ける。

 

(……最近多いなあ)

 

滅と書かれた着物を着ている侍を良く見る。どこかの組織の制服なのか……それとも今の流行なのか――もし流行だとしたら随分と趣味が悪いと思いながら歩いていると雪が降り始めていた。

 

「雪かよ……早く帰らないと餅が固くなっちまう」

 

折角のカワサキの土産が固くなってしまっては梅がまた癇癪を起こしかねない。俺はそう思って早足で雪の降り始めた吉原を歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 

妓夫太郎に大福と藤の花の香りがするお守りを渡し、無惨の元に向かっていると滅の文字が染め抜きされた黒い着物の侍と何回も擦れ違った。

 

(鬼殺隊か……)

 

巌勝が言うには最近この遊郭で足抜けが多くなっているとの事だが、その影に医者の鬼がいる可能性が高いと言う事だ。俺達で何とか尻尾を掴もうとして来たが、鬼殺隊が出張って来てはそろそろ動きにくくなって来たな。

 

「戻ったか、遊郭を見たか?」

 

「おお。凄い人数だな、どうするよ?」

 

人化している上に人を食っていない無惨には鬼特有の音も匂いもしないとの事。巌勝の話では、匂いと音で鬼を特定する特殊体質の隊士もいると聞く、しかもクソ医者が無惨を名乗っている上にその配下の鬼は無惨様と騒ぎ立てるので、本当に鬱陶しい上に厄介な事をしてくれる。

 

「……無惨様。そろそろ手を引くべきかと……」

 

「そうだな。もう少し様子を見ていたかったが……そうも言ってられんな。出来る限りの事はした、後は鬼殺隊に任せるとしよう」

 

貿易商として、そして身だしなみを整えるという名目で藤の花の香水や匂い袋を売っていた無惨だが、こうも鬼殺隊が流れ込んできていると医者の鬼と遭遇して無惨と呼ばれて追われる身になり兼ねない。もうそろそろ引き際なのは間違いない。

 

「そう悲しそうな顔をするな。お前が面倒を見ている兄妹か、あやつらにも匂い袋は預けてあるのだろう? それにこれが今生の別れになる訳でもない」

 

「判ってるって、いつもの事だからな」

 

少しずつ無惨も勢力を伸ばしてきているが、鬼殺隊にも、医者の鬼にもその数は大きく劣っている。更に言えば、鬼にされた母親や子供が大半だ。そうなると戦力的に大きく無惨は劣っている。第三勢力として動く事も出来ないのならば、適当な所で手を引くのは当然だ。

 

(まぁ大丈夫だろう)

 

並みの鬼ならば匂い袋に負けて妓夫太郎と梅に近づく事も出来ない。だから心配することはないと思い、無惨と巌勝の言う通り鬼殺隊が本格的に動く前に撤退しようと思っていたのだが……。

 

「目鬼、顔鬼を確認しました!」

 

偵察専門の鬼からの目鬼、顔鬼の確認報告、それは医者の鬼の中でも指折りに強い鬼がいる。しかも顔鬼は美しい女を狙う巨漢の醜い鬼――それを聞いた時俺は弾かれるように無惨達の宿泊している宿から飛び出していた。

 

「くそがあ! てめえええええッ!!!!」

 

雪の降る中に響いた妓夫太郎の怒声に最悪の展開になったことを悟り、俺は無惨達の静止の声も振り切って声の元へと走るのだった……。

 

「無惨様は急ぎ退却を……」

 

走っていくカワサキを見て人化を解除した巌勝が無惨に無限屋敷に帰るように促すが、無惨は人化の腕輪を外し、本来の姿にその姿を変えていた。

 

「ちいっ! 黒死牟ッ! 私も行くッ!」

 

「しかし!」

 

「最悪の状況になっている場合。カワサキが正体を現したほうが危ないだろうがッ!」

 

鬼である無惨達よりも、黄色でもにっとしたカワサキの正体が露になることの方が危険だと無惨は言って、黒死牟と共に雪の中に飛び出して行ったのだった……。

 

そしてそこで鬼殺隊に鬼同士が争って所を目撃され、鬼の中でも派閥があるのでは? と言う者と人を庇っている鬼も目撃され、産屋敷がかつての当主の残した日記を調べる事に繋がり、無惨が鬼の首魁ではないと言う一文が発見される事となるのだった……。

 

 

 

 

 

私は冬が嫌いだけど、好きだ。冬は私やお兄ちゃんが苦しんだ季節、そしてそれと同時に救われた季節でもある。

 

「んー、美味しい」

 

「おう、うめえな」

 

お正月に作った御餅をかびないようにして、綺麗に乾かした物をおかきにして貰うのが私とお兄ちゃんの楽しみである。

 

「ほら、カワサキも食べて」

 

「おいおい、俺も食えってか?」

 

「そうよ! 一緒に食べましょう?」

 

鬼になって長いから色々カワサキに食べさせて貰った。世の中に沢山美味しい物があるのを知ったけれど、私が1番好きなのはやっぱりこのおかきだ。決して派手ではない、そして甘い訳でもない。それでも私はお菓子の中でおかきが1番好きだ。

 

「お茶を入れたぜぇ」

 

「はいはい、最初から俺とお茶をするつもりだった訳な」

 

「そうよ! でもおかきは作れないからカワサキに作って貰うしかないじゃない」

 

最初から私とお兄ちゃんはカワサキと一緒におかきを食べながら、こうしてお茶を飲んでのんびりするつもりだったのだ。

 

「無惨が来たらどうするんだよ」

 

「そしたら無惨様も一緒にお茶をすればいいわ」

 

大体何時も何時もカワサキを独り占めしている無惨様って凄くずるいと思うのよね。皆カワサキが大好きなのだから独り占めするのは良くないと思う。

 

「はいはい、じゃあ今日の休憩は2人と過ごすかねえ」

 

カワサキも諦めて腰を下ろして、お兄ちゃんの用意した緑茶を啜りながらおかきを頬張る。私とお兄ちゃんの部屋には無惨様がカワサキを探しに来るまでの間3人のおかきを齧る音と会話する声だけがひびいているのだった……。

 

 

 

 

~無限城ひそひそ噂話~

 

妓夫太郎と梅が無限城入りするまでは約8年ほどの時間があったが、その間は当然無惨は時の権力者への根回しをする為に遊郭へと足を運んでいた。内密な話をする場合遊郭ほど適した場所はないと言う事で会合の場所として利用していたのだが……当然それを面白く思わないものもいる……そう、兄である巌勝に歪んだ愛情を持ち、自分の性別さえもカワサキのアイテムを使って変えてしまった縁壱だ。

 

「遊郭に行くなら私がいるでしょうッ!」

 

「……待て、お前は勘違いをしている。あそこには話し合いに行っているだけだ」

 

「いいえ、兄上のような人が行けば遊女などは簡単に魅了されてしまうのですよ。私には判るッ!!」

 

実際の所カワサキも無惨も巌勝も遊女から多くの熱視線を向けられていたが、当然そんなものに誘惑されるわけも無く、あくまで話し合いの場として遊郭を利用としただけであり、足抜けや買われる事を望んだ遊女の多くが肩を落とした。

 

「もう良い、もう良いですよ兄上。そういう言い訳をするのならば私にも考えがある」

 

「……寄るな、寄れば切るぞ」

 

「兄上の兄上で切っていただければ満足なんですがね。むしろ突く?」

 

「……何故お前はそうなのだッ!!」

 

変態が突き抜けている縁壱に巌勝は恐怖する、普段とは違う……なぜならば完全に目が据わっていたからだ。

 

「兄上が抱かないというのならば私が抱くまでと言う事に気付いたのですよ」

 

「……気付くな、そんなことにッ!!!」

 

「兄上も満足させれるという自信が私にはあります」

 

「……捨ててしまえ、そんな自信ッ! 何故誰もいないッ!?」

 

そして巌勝は気付いた、自分が肉食獣とたった1人で向き合っていると言う現実に……。

 

「皆も好きにしていいと言っているのですよ、兄上。大丈夫です、優しくしますから」

 

「……私に近寄るなあアアアアッ!!」

 

うっとりとした視線で近寄ってくる縁壱と巌勝の魂からの絶叫が遊郭に行くたびに無限城へと響き渡るのだった……。

 

なおそれは回数が重なるごとに激しくなり、最終的には

 

「抱けッ! 私をッ! 獣のように貪り抱けッ!!!」

 

言葉をかわすつもりもないクレイジーサキュバスになっていたが……巌勝は褌までは奪われたが、最後の防壁だけは守り通したのだった……。

 

 

メニュー33 冷汁に続く

 

 




私に文才は無かった……おかきというテーマは難しかったよ。これはもっと勉強しないといけないと反省することになりましたね。これは今度また絶対リベンジしたいと思います。次回はイメクト様のリクエストで「冷汁」を書いて行きたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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