【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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クリスマス 無限城

クリスマス 無限城

 

無限城の地下深く――子供鬼が入れない区画で何かを削るような音が響き続ける。薄暗いその部屋の中には巌勝と縁壱、そして玉壷の3人を主力にしてただ只管に木を加工していた。

 

「……良し、良い仕上がりだ」

 

「では巌勝殿。こちらへ」

 

「……ああ、頼むぞ」

 

巌勝が削り上げた物――それは木製の子供用のバットだった。それを受け取った玉壷は持ち手に包帯を巻いて、木目に沿って塗装を施していく……。

 

「玉壷。この形で切り抜いたが次はどうする?」

 

「では次はこれを」

 

縁壱が自分の分は終わったと声を掛けると玉壷は別の設計図を縁壱に手渡し、完成した木の人形を受け取る。

 

「良い仕上がりですな、では狛治殿。ばらして組み上げてみてくださいますかな?」

 

「……分かった。そこにおいておいてくれ」

 

狛治が死んだ顔で立体的な動物のパズルをばらして、それを組み上げるがその隣で童磨が鼻歌交じりで人形を組み上げる。

 

「玉壷殿、俺が変わりにやるよ。狛治殿は不器用だからね」

 

「……童磨ぁッ!」

 

「え、なんで怒るのさ」

 

自然体で煽る童磨は何故狛治が怒るのか判らず困惑するという地獄絵図が発生する。

 

「うるさいぞ、作業に集中しろ、時間が無いのだからな」

 

口に筆を加えながら丁寧に立体パズルに着色する無惨が注意すると再び静かな空気の中玩具作りが再開される。クリスマスに子供鬼達にプレゼントする玩具は無惨達による100%手作りの物なのだ。

 

「お疲れー、昼飯持って来たぞー」

 

「良し、では全員1度休憩の後に上に上がるぞ。子供達が探し出すからな」

 

玩具作りは簡単な作業ではない上に子供鬼達がいないと探し始める可能性もあり、長時間の作業が難しいがそれでも無惨は数百年に渡りこの作業を続けていた。

 

「子供は笑顔でいるべきだ」

 

口は悪く、毒舌家ではあるが無惨は無惨なりに保護している子供鬼達も、竈門家、不死川家の子供達にも愛情を持って接している。

それ故にカワサキから聞いたクリスマスには大変な興味を抱いた。良い子にしている子供にプレゼントを渡すサンタに、ご馳走を食べる日。これは良いと考えた無惨によって無限城でのクリスマスは何百年も前から定番イベントとなっていた。

 

「私の親は私を死ねと思っているクソだったが、ここにいる限りは無限城の子供は私の子供と言っても良い、ならば親として贈り物をするのは当然の事だ」

 

「……無惨様、私も協力しましょう」

 

実父がクソを通り越して外道だった巌勝もその考えに同意し、徐々に人数が増えていき無限城の地下は玩具製造工場の様になっていた。

 

「ううーお兄ちゃん、上手く行かないッ!!」

 

「落ち着いてゆっくりやりゃあ出来るさあ、ほら、こうやって皮を縫い合わせるんだ」

 

「うん……頑張ってみる」

 

「ふう、これで4つですね」

 

「鬼の力でも牛の皮を縫い合わせるのは大変ですね。少し疲れました」

 

そして上の階層では無限城の子供鬼達の間で流行っている野球の為のグローブ作りが急ピッチで行なわれ、クリスマスに備えてのプレゼント作りに無限城の鬼達は一丸となってプレゼント作りを行なっていたのだった……。

 

 

 

子供達への玩具を作る……言葉にするのは簡単だがそれを実行するのは恐ろしいほどに難しい作業だ。毎年違う物を作り、楽しんでもらえるように数多の工夫を行い、そして鬼の力でも壊れないようにカワサキが術を掛けて仕上げる……これほど手間隙をかけても子供達が遊ばない事さえある……それでも無限城から出ることが出来ない子供達の為にという無惨様の考えは非常に良く分かる……だが付け髭と鬘、そしてあの赤い衣装は毎年見ていても本当に違和感しかない。

 

「良し、揃ったな。では今年も贈り物を寝ている子供達の枕元へと配置する」

 

「……質問があります」

 

「なんだ、黒死牟」

 

「……何故寝ている子供の枕元に置く事に拘るのですか?」

 

玩具をそのまま渡すというのは駄目なのか? と恐らくこの場にいる全員が考えていることを今年は尋ねて見た。

 

「当たり前だ。子供の夢を壊してどうする。起きた時に枕元においてある贈り物はさんたが渡した物なのだ」

 

……どうやらそれは変えるつもりはないようだ。しかし寝ているとは言え子供鬼の神経はかなり鋭い、今年もかなり厳しい事になりそうだ。

 

「流石に私は力になれませんからね」

 

「小生もだ。申し訳ない」

 

転移術の使い手である鳴女と響凱だが、その術の性質上音が発生する。音が響けば起してしまうので転移して部屋に行くと言う事は出来ないのだ。

 

「では手分けをして朝までに配り終えるぞ。全員着替えを忘れるな、付け髭と鬘もだぞ」

 

着替えを忘れるなと言って贈り物を入れた袋を肩に担いで歩き出す無惨様を私達は何とも言えない表情で見送るのだった……。

 

「……」

 

眠っている子供鬼をサンタの衣装に身を包んだ巌勝がジッと見つめる。しかし巌勝が見ているのは眠っている子供ではなく、その子供の意識、そして筋肉の動きだった。

 

「……見切った」

 

襖を開けほんの僅か踏み込んだ巌勝は子供鬼が寝返りを打った一瞬でプレゼントをおいて音も立てずに襖を再び閉める……透き通る世界を無駄に使用した無駄に卓越した動きでプレゼントを置き終えた巌勝は同じ様にプレゼントを置き終えた縁壱と合流する。

 

「兄上、終わりましたか」

 

「……ああ。次だ」

 

「ええ、急ぎましょうか」

 

普段はバーサーカーな縁壱だが、子供鬼にプレゼントをするとなれば戦国クレイジーブラコンサキュバスもまともになる。何を考えているのか分からない虚無顔でプレゼントの入った袋を肩から下げて縁壱も子供鬼の部屋から出てきて、継国兄妹は足音も立てず無限城の板張りの廊下を駆け抜けていく……。

 

「お兄ちゃん、もうちょっと高く」

 

「こうかぁ?」

 

「うん、そうそう良い感じ良い感じ」

 

梅を妓夫太郎が肩車し、梅の血鬼術でプレゼントを帯の中に入れる。その帯をゆっくりと操作し、寝ている子供の枕元へ近づける。

 

「いけそうかぁ?」

 

「余裕よ! よいしょっと」

 

その言葉の通り梅は自身の血鬼術を完璧に操り、子供を起す事無くプレゼントを置いた。

 

「良し、お兄ちゃん。次のところにいこ」

 

「おう、でもその前になぁ」

 

「どうしたの?」

 

ごそごそと着物の中をまさぐる妓夫太郎は小さな小箱を梅に差し出す。

 

「お前にもぷれぜんとだぁ、簪買って来たぞぉ」

 

「お兄ちゃん、ありがとう!」

 

子供鬼へのプレゼントを贈りながらもしっかりと妹の梅の為にプレゼントを用意している出来る兄妓夫太郎であった……。

 

「……術式展開」

 

そしてここにも血鬼術を無駄に使う男が1人……狛治である。雪の結晶を模した陣を展開し、子供鬼の気配を感じ取る。

 

「ここだッ!!」

 

透き通る世界を使っている継国兄妹同様――寝返りを打ったタイミングで踏み込み枕元にプレゼントを置いた。クリスマス……それは無限城の鬼が1年の間で1番無駄に血鬼術を使う日であった。

 

「む……これは」

 

「いやいやまさかまさか」

 

「……なんともまぁ……」

 

そして手分けをし無限城の子供全てにプレゼントを届け終えた巌勝達の元にも無惨がおいたであろうプレゼントが置かれていた。

 

「はいよ、お疲れさん」

 

プレゼントを渡した事をばれたくない無惨は無限城の屋根の上に態々座布団とちゃぶ台を置いて、白い息を吐きながら雪を見つめていて、そんな無惨の後にグラスと料理を運んで来たカワサキが姿を見せて声を掛ける。

 

「全くだ。部下を労うのも上司の勤めと言うが全く持って疲れた」

 

ぶつぶつと文句を言う無残だがその姿はサンタ姿のままでカワサキが差し出した酒のグラスを受け取って呷り深く息を吐いた。

 

「時間の流れに逆らって生きているんだから何か時間を認識させる催しが欲しいって言ったのはお前だろ?」

 

「まぁそうだが……ふん」

 

素直になれない無惨にカワサキは苦笑しながら、自分と無惨の間のちゃぶ台に料理を盛りつけた皿を置いて自分のグラスに酒を注いだ。

 

「乾杯」

 

「ん、乾杯」

 

カチンとグラスをぶつけ合う音が無限城の屋根の上に響き、カワサキと無惨は手にしたグラスを呷る。

 

「ん?」

 

「お、雪だ」

 

ちらちらと降り始める雪に無惨は嫌そうな顔をするが、カワサキは楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「何故喜ぶ、寒いだろうが」

 

「雪見酒にかまくらで1杯でやるのも悪くないだろ?」

 

「む、それもそうか、いやだがやはり寒いのは嫌だな」

 

「我侭の多い奴だな」

 

くっくっくと笑うカワサキと馬鹿にするなと小さく声を荒げる無惨だが、その表情は柔らかく無惨も無惨なりに降る雪を見て楽しみながら酒を口にしているのだった……。

 

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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