【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー36 桜餅 その1

メニュー36 桜餅 その1

 

先日童磨の為にカワサキが作った激辛麻婆豆腐――その今までのカワサキが作った料理の中でもっとも辛く、そして最も危険なその麻婆豆腐は普段胡散臭く、目に光が無い童磨の目を輝かせた。それはカワサキのそばにいて、徐々に人間性を得始めていた童磨に劇的な変化を与えた。それを無限城の問題児に与えればどうなるのか? と考えた無惨によって麻婆豆腐を口にした縁壱はとんでもない変化を起させた。

 

「兄上、おはようございます」

 

「よ、縁壱!?」

 

例えば食堂に向う途中で縁壱と鉢合わせ、両腕を八の字に構え身構えた巌勝。今までならば朝鉢合わせる=押し倒されかけ、力比べになると言うのがある意味縁壱と巌勝のやり取りだった。

 

「ふふ、どうしたんですか? そんな風に構えを取ってもうすぐ朝食ですから、鍛錬も程ほどにしてくださいね」

 

「!?」

 

いつものように襲ってくると思いきや、柔らかく微笑みそのまま頭を下げて、食堂に歩いて行った。良く見ると縁壱は水の入ったバケツと雑巾、そして腰に叩きを指していた。

 

「あ、巌勝さん」

 

「珠世か。縁壱は……あれはどうした?」

 

「はい、朝早くから掃除をしていて、どこか壊すんじゃないかと思って心配していたんですけど……私から見ても完璧に掃除をしていて」

 

「馬鹿な……信じられん」

 

雑巾掛けをすれば廊下を粉砕する。箒を振るえば斬撃を飛ばす、そしてはたきを振るえば壁を粉砕する。それが縁壱だ……そんな縁壱が完璧な掃除をしたと聞いて巌勝はその目を大きく見開いた。

 

「でも事実です。それに、巌勝さんにも襲い掛かりませんでしたよね?」

 

「う、うむ。確かに……」

 

周りに静止する者がいなければ……いや、仮にいても襲ってくるのが縁壱だ。だがそれもしなかった……それ所か完璧な大和撫子という感じで微笑んでも見せた。暫く巌勝と珠世は黙り込み、2人の口から出た言葉は全く同じ言葉だった。

 

「「誰だ。あれは」」

 

痣や首の太さ等から縁壱と判っているが、それでも変質した縁壱を珠世と巌勝は縁壱と認める事が出来ないのだった……。

 

「……え?」

 

「ああ。狛治さん、お疲れ様です」

 

そしてまた別の日では恋雪と並んで編み物をしている縁壱を見て、狛治が停止した。恋雪が何度も教えてもどこか背徳的な奇妙な物体を練成していた縁壱が普通にマフラーを作っている光景は狛治の理解を完全に超えていた。

 

「狛治さんが戻って来たので、今日はもう帰りますね」

 

「ゆっくりしてくれてもいいんですよ?」

 

「いえいえ、邪魔者は去ることにします、では恋雪さん。また明日」

 

恋仲である狛治の邪魔はしないと言って穏やかに微笑んで帰っていく縁壱に狛治は驚いた目をしていた。

 

「……なんか変わりましたね」

 

「そうですね。最初は驚きましたけど、今の縁壱さんは落ち着いていていいのではないでしょうか?」

 

確かに巌勝への被害は減り、そして問題行動も減った……しかしその代りに戦闘能力は恋雪と同程度――つまり普通の街娘と同程度の力しかなく、そして勿論日の呼吸も使えなかった。そうなると問題行動が減ったと喜ぶべきか、それとも戦力の低下を嘆くべきなのかが非常に悩ましい所だった。

 

「何か問題でも?」

 

「いえ、ないですね!」

 

恋雪YESマンの狛治はその事を言えず、落ち着いていて良いですねと笑うのだった。

 

「カワサキ、縁壱をあの性格で固定した上で、戦力を回復させる料理を作れ」

 

「出来るかアホォ」

 

そして無惨の無茶振りにカワサキが頭を抱えた。激辛麻婆豆腐による性格改変は色んな所に問題を起していたのだった……

 

 

 

 

麻婆豆腐で縁壱の性格が変わったのは俺にとっても計算外だったが、意図してやった物ではないので、当然性格をそのままに戦力を戻せとか言うのは出来る訳が無かった。そもそもああなること自体が俺にとっての計算外だったのだ、それを微調整なんて出来る訳が無い。

 

「そうなのか……なら諦めるしかないな」

 

「そうしてくれ」

 

ギャンブル系のバフ・デバフの料理はあるが、勿論それも完全ランダムなので危険性が高く使えれるものではない。性格を大人しくさせて戦力を失うかは無惨の選択に任せたいと想う。

 

「それよりもだ。準備はしてくれているか?」

 

「おう、今日の夜には準備できる」

 

無惨が尋ねて来たのは麻婆豆腐の事もあるが、本命は別の方である。俺の準備が出来ていると聞くと無惨は小さく笑い、楽しみにしていると告げて、厨房を出て行った。

 

「あいつも色々複雑なんだろうな……」

 

人の過去にずけずけと踏み込んで行くつもりは無いが、それでも無惨の心情の複雑さは察してあまりある。

 

「心を込めて作らせて貰うか」

 

何時も心を込めて丁寧に作っている。少しでも無惨の心が軽くなるようにと願いを込めて鍋の中に少量の水を加えて、食紅を入れる。

 

「量に気をつけないとな」

 

入れすぎると赤くなる――そうなってしまっては台無しだ。食紅の量を気をつけ、ピンク色に近い色になったら火をかけて沸騰させる。

 

「良し、こんなもんだな」

 

沸騰したら道明寺粉――もち米を水に浸し、その後に蒸して乾燥させて砕いた昔の保存食のような物だ。それを鍋の中に加え、食紅の溶けた水と混ぜ合わせ、水気がなくなってきたら砂糖を加えヘラで練るように混ぜ合わせる。

 

「よっと」

 

布巾を入れた蒸し器の中に入れて蒸し上げる。その間に生地に包む黄金の餡子を小さく丸めて球体にし、塩漬けしてある桜の葉を綺麗に洗って笊の上に広げて乾かす。

 

「あちち」

 

餡子と桜の葉の準備を終えた所で生地が蒸し上がったので蓋を開けて生地を取り出して、餡子の玉の数……つまり30個分生地を切り分ける。

 

「良し、仕上げていくか」

 

ボウルの中に砂糖水をつくり、砂糖水で濡らした手の上に生地を乗せて、餡子を包んで綺麗に形を整え、桜の葉の葉脈側を外側にして綺麗に包んで保存を掛け、箱の中に綺麗に詰めて蓋を閉める。そしたら今度は白玉粉をボウルの中に入れ、水で溶かしながら混ぜ合わせる。良く混ざったら薄力粉と砂糖を加えて全体が滑らかになるまで混ぜ合わせる。

 

「良し、こんなもんだな」

 

生地が滑らかになったら食紅を少しずつ加えながら混ぜ合わせ、生地がピンク色になったら混ぜる手を1度止める。

 

「……ったく、菓子作りは得意じゃないんだけどな」

 

無惨に言われて毎年作っている間に上手くなったなと苦笑しながら出来た生地を熱した鉄板の上に少しずつ入れて薄く焼き始める。

 

「……命日……か」

 

今日は無惨の両親の命日――最後まで無惨が戻ると信じ、医者に殺された無惨の両親の命日が今日だった。そして無限城の窓から見える月はまるで血を流し込んだように真紅に輝いているのだった……。

 

 

 

 

紅い月に照らされた夜道を1人で歩く――医者の鬼や鬼殺隊に出くわすとしても、この日だけは私は護衛も付けず動く。これは一種の禊、そして故人を思う1つの儀式だった。

 

「……なんだ。まだ綺麗なのか」

 

どうせなら壊れてしまってくれていれば良かった、いや、それは嫌なのか……相反する2つの感情が胸の中に渦巻いた。

 

「……お前もしぶといな」

 

森の中にある開けた小さな土地。かつて鬼舞辻の屋敷があったところは何も無い廃墟となっていた……唯一残っているのはカワサキと何度か見た桜の木が1本だけ……それ以外にここに鬼舞辻の屋敷があったという痕跡は何も無い。

 

「未練か、迷いか……」

 

カワサキに連れられ広い世界を見ているのはとても楽しかった。ある日なんの気紛れか屋敷に戻った私達を出迎えたのは医者と血に満ちた生家だった。今思えば、あれは虫の知らせという奴だったのかもしれない。

 

「私は何をしたかったんだろうな」

 

親と和解したかったのか、それとも私を見捨てた親の報復したかったのか……今となっては答えは出ない。

 

「……まぁ良い」

 

カワサキに持たされた包みを開けて桜餅を食べようとした時。背後の茂みが音を立てた、摘み上げた桜餅を元に戻し振り返る。

 

「やっぱりだね。今日ここにくれば会えるような気がしていた」

 

そこに居たのは顔の上半分が焼け爛れたような柔和な笑みを浮かべた男と羽織を着た見事な赤い髪の男だった。

 

「まさか……この男が鬼舞辻無惨だと言うのですか!? お館様ッ! 俺の前に立った鬼舞辻無惨と名乗る男とは似ても似つかないこの男がッ!?」

 

「そうだよ、槇寿朗。彼が本当の鬼舞辻無惨――私の先祖だ」

 

「……なるほど、お前が産屋敷」

 

鬼殺隊の首領――私と天津を間違え、ずっと私を追い続けていた愚か者達の長。隣のやたら声の大きい男は柱とか言う奴か……。

 

「なんだ。私の首でも取りに来たか? 生憎だったな。私を殺しても鬼は増え続けるだけぞ」

 

「まさか、そんなつもりはないよ。私はずっと貴方と話をしたかった」

 

「私にそんなつもりはない」

 

月見をしながら桜餅を食べようかと思っていたが、そんな気分では無くなった。鳴女の名を呼んで無限城に引き返す事を考えた……その時だった産屋敷はその手にしている酒瓶を私に掲げた。

 

「今日はいい月だ。一献お付き合い願えないかな? 鬼としてではない、そして私もまた鬼殺隊の長ではない。ただ偶然ここで出会った者として」

 

「こんな所で偶然で会うものか……だがまぁ……そうだな。そこの男、そいつが刀を捨てれば考えなくもない」

 

話をしていて急に首を切られでもしたら笑い話にもならない。無論その程度では私は死なないが、それでも気分は良くない。

 

「槇寿朗」

 

「……御意」

 

腰から下げていた刀をその場に落とし、羽織も脱ぎ捨て武器を何も持っていないと両手を広げる男。これで刀を捨てなければ、それを理由に帰れたのだが、むこうが誠意を見せた以上ある程度の妥協は必要かと思い、産屋敷の提案を受け入れることにした。

 

「良いだろう。こっちに来い、生憎酒に合う物等は無いが、特別だ。お前らにも恵んでやろう」

 

1人で桜餅を食べて帰るつもりだったのに何て日だと思いながら私は桜餅の入った弁当箱の蓋を再び開けるのだった……。

 

 

 

 

メニュー37 桜餅 その2へ続く

 

 

 




ここでやっと鬼殺隊と遭遇。しかもお館様です、お館様が山まで来れたのは呪いではなく、医者の毒物で弱っているので原作よりも元気だからと思ってください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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