【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
メニュー39 病人食(鬼滅版)その2
「お前……日の呼吸の使い手かッ!?」
少しだけ顔色が良くなった瑠火。次の日もカワサキ殿は尋ねてきたのだが、共にいる額に痣のある男を見て、俺は思わずそう叫んでいた。最強の技……日の呼吸の使い手は額に痣のある男だと炎柱の書にあった。その容姿に合致する男に俺は敵意を見せたのだが、男の方は感心したように俺を見て頷いていた。
「日の呼吸……いや、私は月の呼吸だ。日の呼吸は私の弟になる」
「……月の呼吸?」
「……知られてはいないか、あの当時の月の呼吸は未完成だったからな」
少しだけ寂しそうに目を伏せた男はカワサキ殿に視線を向けた。
「私はこの男と話がある」
「あいあい、槇寿朗。厨借りるぜ」
俺もその後を追おうとしたのだが、目の前の男に肩を掴まれた。
「その羽織、炎柱の物だな。少し手合わせ願おうか、お前達を戦力として数えて良いのか、それを見極める為にな」
「良いだろう! この俺の力をお前に見せてやる!」
その視線に見下している色が混じっているのを感じ、俺は売り言葉に買い言葉でそう返事を返し、この男と共に煉獄家の道場に足を向けるのだった。
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「はぁ……はぁ……」
「良い太刀筋だ。流石は煉獄家の男と言った所か」
炎の呼吸の全ての型を防がれ、受け流され、俺の攻撃はただの一度も目の前の男に届くことは無かった。木刀を手に、膝をついて呼吸を必死に整えようとするが、肺を狙われた事と攻撃を空回りさせられたことによる疲労感は凄まじく、立ち上がることさえも難しかった。
「屈辱……技を使うまでも無いと言いたいのか!」
しかし何よりも悔しかったのは、男がただの1つも呼吸を用いた型を使わなかった事だ。見下されている、日の呼吸の使い手の兄というのならば、それよりも更に傲慢で残酷な男だと思った。
「仕方なかろう、私の型は1対多数用の鬼狩に特化している。1人を相手に使うには隙が多く、何よりも意味が無い。故に型は使わなかったが、私は全力だった。型の隙を突かれるのは判り切っていたからな、煉獄家の男を相手に手抜きをするなどありえんよ」
「は……?」
大多数を相手に戦う呼吸だからこそ、1対1に特化している炎の呼吸とは相性が悪いと賞賛され、思わず毒気が抜けた。
「馬鹿にしてたのではないのか?」
「剣を通じて、お前の修錬が、その研磨が伝わってきたぞ。そんな相手に手抜きをすること等あり得んよ、私は継国巌勝。お前の名は?」
「槇寿朗。煉獄、槇寿朗だ」
その目に俺を見下す色など無く、素直に俺を賞賛しているとわかり、俺は目の前の男。巌勝に自分の名前を名乗り返した。
「そうか、槇寿朗。日の呼吸に拘るのは止めるが良かろう、あれは縁壱にしか使えぬ」
「……それは最強の呼吸だからか?」
「いや違う、確かに日の呼吸は強力だがそうではない。あれは縁壱の身体能力前提の物で、常人が真似れば死に至る」
死に至る呼吸と言われ、息を呑んだ。
「なッ……だが、最強の呼吸と……」
「違う、あれは最強等ではない。あれは命を削り、鬼を倒す為だけの物だ」
日の呼吸に抱いてた幻想が目の前で崩されていく、だがそれでもだ。俺は巌勝の言葉を信じる訳には行かなかった。
「痣者は強者の証なのだろう!? そんな者に」
「痣もまた命を削る、齢25を引き換えに死ぬ。そんな呪われた力がお前は欲しいのか? 私は鬼となり、その制約を越えたが痣者は皆25で死ぬ。25を越え発現すればその瞬間に死に至る」
25で死ぬと言われ、俺は何を言われているのか判らなかった。痣者は強者の証ではないのか……命が削られていく、証何だという話は信じられなかった。
「それにだ。お前の技の冴えは素晴らしい、これほどの使い手はそうはおらん。故に、私が1つ……お前に技を伝授しよう」
巌勝はそう言うと腰に挿していた日輪刀を抜いた。
「痣者が最強と言われたのではない、そして日の呼吸が最強などではない。あの時代の者は少数だが、ある特別な技法を使えたからこそ、最強だった。それが……これだ」
巌勝が呼吸を使いながら日輪刀の柄を握り締める。手の甲に血管が浮かび、呼吸が深くなると同時に黒の日輪刀が徐々に根元から紅い赫刀へと変化を遂げた。
「それは……」
「赫刀……鬼の再生能力を封じる鬼殺しの切り札と言ってもいい。これは痣者は発現させやすいが、痣者で無くとも開眼出来る」
痣が無くとも開眼出来る鬼殺しの切り札……目の前で見たそれは俺の脳裏に深く刻まれる事となるのだった……。
瑠火さんへ振舞う2回目の料理はお粥にした、しかしだ。勿論ただのおかゆではない、栄養価などをバッチリ考えた自慢の一品だ。
「ふんふーん」
炭十郎の所と焔の所で採って来て灰汁抜きした細竹やワラビを食べやすい大きさに切り、なめこときくらげは水洗いをしてお湯でサッと下茹でをする。
「よっと」
えのきは石突を取って、手で解し。里芋は皮を剥いて食べやすい大きさに切り分ける。
「これも使わせてもらうか、あちち」
炊き立てご飯をざるに入れ、流水で洗いぬめりを取って水を切る。下湯でしていたなめこときくらげを鍋の中から取り出して、代わりにうずら卵を3個鍋の中に入れて茹でる。栄養価の高い食材や山菜、茸、そして里芋をたっぷり使った五目雑炊……。
「いや、七目か?」
なめこ、きくらげ、細竹、わらび、えのき、里芋、うずら卵……指折り数えて7種類だなと苦笑して調理を再開する。
「今日はこれで行くか」
稀少ではあるがユグドラシル産のなんか訳のわからない魚の鰹節と刻んで具材にもする予定の昆布で取った出汁を鍋の中に入れ、里芋、なめこといった下茹でをしていない具材を入れて弱火で煮詰める。
「良し、OK」
里芋等を茹でている間にゆで卵になったうずらの卵の殻を剥いてすぐに鍋の中に入れれる準備をしたら、半ば火が通った具材の中に味噌を溶かしいれる。
「……うん。ばっちり」
少し濃い目の味噌汁みたいな感じになっているのが、これで丁度良い。味の確認をしてから下湯でして置いた山菜とうずらの卵を加えて中火で煮る。火が通るのを待っている間にネギを刻み、焼き海苔を細かく千切る。
「OK、良い感じだ」
里芋が柔らかくなったのを確認したら、米ときくらげ、そしてえのきを加えて、香り付けの醤油を少しだけ加えて1煮たちさせれば完成だ。
「まだ訓練しているのか、どうしたもんか」
勝手に人様の奥さんの部屋にはいる訳には行かないので、どうした物かと思っていると憑き物が落ちたような顔をしている槇寿朗が厨にやってきた。
「もう出来ただろうか?」
「丁度できた所だ、持って行ってくれるか?」
「ああ、すまない。手間をかけさせる」
「良いさ良いさ、俺が好きでやっていることだ」
申し訳無いと何度も頭を下げる槇寿朗に土鍋を渡し、俺は借りていた厨の掃除を始めるのだった……。
布団に伏せていた時間の方が長かったのに、今日は布団から上半身を起こして座ることが出来ていた。槇寿朗様に手を引かれ、庭を散歩することは多いけれど、今ならば1人でも庭を歩けそうな気がする。
「瑠火、またカワサキ殿が食事を作ってくれたぞ」
槇寿朗様が妙に晴れやかな顔をし、土鍋を手に部屋の中に入ってきた。その憑き物が落ちたような顔を見て、何か良いことがあったのだと一目で判った。
「カワサキさんにありがとうと伝えておいてくれますか?」
「勿論だ。さ、昼食を食べて、また身体を休めるんだ。元気が出てきたからと無茶をしてはいかんぞ」
槇寿朗様はそう言うと土鍋の蓋を開ける。その瞬間部屋の中に柔らかな出汁と味噌の香りが広がった、どうも今回は雑炊のようですが具材が沢山入っているのに、どこか田舎の母が作ってくれたような素朴な雰囲気のある1品だった。
「わらびに竹の子、はは、これは随分と豪勢だな。さ、熱いから気をつけてな」
「ありがとうございます」
槇寿朗様が盛り付けてくれた雑炊を受け取り、匙を手にする。
「いただきます」
作ってくれたカワサキさんへの感謝を口にし、雑炊を口に運んだ。
「どうだ?」
「とても、とても美味しいです」
香りから判っていたが、とても丁寧に作られた出汁の香りと味噌の懐かしい味が口の中いっぱいに広がる。なめこや里芋と言ったとろみの強い食材が沢山使われているので、汁にも粘り気があるのですが本当に丁度良い。
「ふーふー」
息を吹きかけて雑炊を口に運ぶ、丁寧に煮られている米は柔らかくたっぷりと出汁を吸っている。私の食欲が無いのを知っていて、米よりも具材が多く入れられている。本当に良く食べる人の事を考えてくれている人だ。
「山菜……また採りに行きたいですね」
「行きたいですねではない、共に行こう。そうだな、杏寿朗と今度生まれる子供連れて4人で」
思わず弱気な事を言ってしまい槇寿朗様に叱られてしまった。
「そうですね。行きましょう」
また1つ楽しみが出来た。そう思うと絶対に死にたくないと言う思いが強くなる……気持ちで負けず、絶対に病を克服すると言う決意が胸の中に生まれた。
「……これなんですかね?」
「海苔ではないな?」
この黒い塊はなんだろうか? 初めて見ますけど……少し怖いと思いながらそれを口に運ぶとコリコリっとした強い歯応えがした。
「これは茸の仲間みたいですね」
「そうか、こうやって料理に入れていると言うことは身体にいい物なのだろうな!」
味はあんまり無いですが、身体にいい食材と思って米と汁と一緒に食べればその味の無さはそんなに気にならない。
「里芋入りの雑炊なんて久しぶりに見るな」
「ふふ、私の母に挨拶に来た時以来ではないですか?」
私の母に挨拶に来た槇寿朗様に母が出したのが里芋の雑炊だった。あれはすりおろした里芋に出汁を加えて伸ばした汁に米を入れて雑炊にしていたけど、それが食欲が無い時も食べやすくて好きだった。
「今度会いに行こう」
「ええ、そうですね」
今は藤の家で手伝いをしてくれている母に会いに行こうと約束がまた増えた。
「ふふ、槇寿朗様。私に約束ばかりさせますね?」
意図的に……そう、私に未練を覚えさせるように槇寿朗様は私にどこへ行こう、何をしようとばかり言う。
「そうだ。約束だ、来年も、再来年も楽しい事を、家族の思い出を増やすんだ」
「そうですね。海にも行きたいですね」
「海か、そうだな。もう冬が近いから無理だが……来年の夏は海へ行こう」
数日前まではこんな話もしなかった。それほどまでに私は物事を諦めていた……でも今は違う。生きたいと、可愛い子供が成長するのを近くで見て、そして槇寿朗様ともっと一緒にいたい……そんな欲が生まれてしまった。と槇寿朗様に言うと、槇寿朗様は私の肩を掴んで首を左右に振った。
「それは欲ではない、願いだ。もっと、もっとお前の願いを聞かせてくれ。生きたいと、死にたくないと俺に言ってくれ」
「……槇寿朗様……はい」
槇寿朗様の背中に腕を回し、厚い胸板に顔を預ける。死にたくない、生きたい、成長する杏寿朗を、まだ生まれていない我が子を見守りたい。思いつく限り、子供染みた願いを私は疲れて眠りに落ちるまでずっと槇寿朗様に言い続けるのだった……。
無限城 ひそひそ噂話
4日後――天津が煉獄家を訪れる時に無惨、そして狛治は煉獄家にやってきた。そして槇寿朗を見て、その顔に笑みを浮かべた。
「良い面構えだ。鬼殺隊……いいや、煉獄槇寿朗」
「お館様より許可はいただいた。鬼殺隊からは俺1人、瑠火も、杏寿朗も避難させた。この屋敷を更地にしてくれてかまわない、全ての悲劇の元凶を、この日に必ず打ち果たす所存だ」
瑠火の願いを聞き、天津の非道を知り、槇寿朗の魂は熱く、激しく燃え盛っていた。
「無惨様、今の槇寿朗は強い。必ず役に立つ筈です」
「顔を見れば判る。おい、槇寿朗。こいつをくれてやる」
無惨が槇寿朗に投げ渡した竹刀袋――槇寿朗は中身を取り出して息を呑んだ。
「これは日輪刀かッ! 何故お前がこれを……」
「私の仲間の中には天津に危険視され、鬼にされた鍛冶師もいる。お前の為に、初代炎柱の刀を打った鍛治師が打った刀だ、大事に使え」
初代炎柱だけではない、巌勝、縁壱の刀を打った鍛治師はその腕を天津に危険視され、鬼にされた。そして鬼殺隊に討伐される前に、無惨が救出し仲間に迎え入れたのだ。
「……なんと素晴らしい刀だ」
「煉獄は大太刀を好んだ。それよりは短いが、お前に丁度いい刀だろう」
今まで槇寿朗が使っていた刀よりも長く、そして初代炎柱が使ったものよりは短いがそれでも長大な刀が真紅に染まる。
「私が煉獄瑠火に化ける。天津を捕えたら、速攻で決めろ。良いな」
無惨が瑠火に化け、人化の術を施された鬼達が給仕達に化けて煉獄家が普通に動いているように見せる。
「ふー……」
「気を落ち着けろ、大丈夫だ」
天津が部屋の中に入り、布団に手をかけた瞬間。触手が天津の胴を貫き、畳が弾け飛び、床下に隠れていた狛治が固く握り締めた拳を突きだし、天津の顔面を穿った。
「破壊殺……滅式ッ!!!」
「ぐ、ごはあッ!?」
苦悶の声をあげ、天津が庭の外に弾き出されたと同時に襖が弾け飛び、巌勝と槇寿朗が同時に飛び出す。
「き、貴様ら!? な、何故ッ!」
何故鬼殺隊の屋敷に無惨がいるのか、そして自分が誘い込まれたという答えに辿り着かず、混乱している天津に向かって弾丸のような勢いで巌勝と槇寿朗が迫る。
「「今日この日、全ての悲劇の鎖を断ち切るッ!!!」」
渾身の力を込められた炎の呼吸 玖ノ型 煉獄、そして赫刀と化した巌勝の日輪刀が同時に天津の首に向かって振るわれたのだった……。
メニュー40 累のお料理チャレンジに続く。
天津戦はどうなったかは不明、出も手傷を負わせたという感じで終わりです。次回は黒い狼様のリクエストで久しぶりに無限城視点で累君が色々と頑張ってみる話を書いてみたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない