【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー40 累のお料理チャレンジ

メニュー40 累のお料理チャレンジ

 

昼食時の大騒動も終わり、厨房の掃除を始めようかとした所で厨房の扉が叩かれた。

 

「はいはーい。誰……なんだ、累か。どうかしたか? もしかしてお昼足りなかったか?」

 

梅が今日のおやつは何か聞きに来たか、無惨が夕食のリクエストに来たか、愈史郎が珠世の昼飯を受け取りに来たかのいずれかだと思っていたのだが、厨房の外にいたのは累でお昼が足りなくて何か欲しくなったのかと尋ねる。

 

「あの違くて」

 

「うん? じゃあおやつか? 今日はパンケーキにするつもりだけど」

 

「おやつでもなくて……」

 

お昼が足りない訳でもなくて、おやつでもなくて……累が尋ねてきた理由が本当に判らなくなった。

 

「あの…僕も何か作ってみたい」

 

「作るって…料理か?」

 

俺がそう尋ねると累はこくこくと頷いた。そっか、累も料理に興味を持つ頃合か……なんか感慨深い物があるな。

 

「ちなみに何か作ってみたいのとかあるのか?」

 

「肉じゃが。無惨様が好きだって言ってたから」

 

肉じゃがか……まぁあれは簡単だし、作りやすい料理でもあるな。それに煮物系だから、味付けさえ間違えなければ失敗もしないし……初心者でもそんなに難しくもない。味付けをちょっとすき焼き風にすれば夕食にも丁度良いか。後は漬物と味噌汁……一人用の鍋で出しても丁度良いな。

 

「よっしゃ判った。教えてやろうか」

 

「本当?」

 

「本当本当。ほれ、入って来い」

 

「うん!」

 

元気よく厨房に入ってくる累に使わせるエプロンと包丁を用意しながら、累にも作れる肉じゃがのレシピを考え始めるのだった。

 

 

 

カワサキさんに料理を作りたいと言ったら怒られると思っていたんだけど、カワサキさんは2つ返事で了承してくれた。

 

「じゃあ今回は、簡単で美味しい肉じゃがを作ります」

 

「はい!」

 

肉じゃがと言えば晩御飯とかで出てきて、甘辛くて美味しくて、野菜もお肉も食べれる。食欲が無い時は汁を掛けるだけでもご飯を食べれるので、僕がかなり好きな料理でもある。

 

「まずはこの中に出汁を入れます。はい、お玉」

 

カワサキさんに差し出されたお玉を受け取り、カワサキさんと一緒に器の中に鍋の中の澄んだ汁を器の中に入れる。

 

「カワサキさん、これは?」

 

「昆布と鰹節で作った出汁、料理の基本だな。出汁さえ上手に出来ていたら基本的に失敗はない。今度出汁を作る時は累にも作り方を教えよう」

 

料理の基本がこれなんだ……絶対に覚えないといけない物というのが良く判った。

 

「ここに醤油とみりんをこの線の入っている湯呑みのここまで入れる」

 

カワサキさんがやっているのを真似して、4つ線が入っている所の2つめまで醤油を入れて、出汁を入れた器の中に醤油を入れて、今度はみりんを同じ様に入れて器の中に入れる。

 

「今度は1つ目の所まで酒を入れる」

 

「お酒も使ってるの?」

 

料理の中にお酒を入れるって言うのは少し驚いた。でもカワサキさんが言うのならこれで間違いではないのだと思う。カワサキさんが差し出した酒瓶を受け取って入れすぎないように気をつけてお酒を注いで、器の中に入れてお玉でかき混ぜる。

 

「最後に砂糖をこの匙で4杯」

 

こんなにお砂糖を使っているんだと驚きながら、調味料を混ぜた器の中にお砂糖を入れて、またかき混ぜる。

 

「これ、舐めても大丈夫?」

 

「大丈夫だけど、あんまり美味しくないぞ?」

 

この段階ではあんまり美味しくないと言われ、味見しようとした指を引っ込める。

 

「これで調味料の準備は終わったから、次だ。材料を切り分ける。はいこれ」

 

「……これ、切れるの?」

 

「切れるよ、子供用の包丁だ。手はこうやって猫の手にする」

 

「こう?」

 

「そうそう。今回は俺が下拵えしてる野菜を使うけど、今度は下拵えからやろうな」

 

カワサキさんの言葉に頷いて、猫の手猫の手と呟きながら皮が剥かれている人参を押さえて、子供用の包丁でカワサキさんの真似をして人参を切る。

 

「そうそう、上手上手。でも、もう少し大きいほうが良いな」

 

「これくらい?」

 

「バッチリだ。じゃあ次はじゃがいもも同じ感じで切る」

 

差し出されたじゃがいもを受け取って、さっきと同じ感覚でじゃがいもを切り分ける。

 

「今度は玉葱だけど、これは目が痛くなるからな。涙が出て来たら1回休憩するといい」

 

「判りました」

 

カワサキさんの注意を聞いてから玉葱を切り始めたんだけど、カワサキさんの言う通り涙がボロボロ零れてきた。

 

「か、カワサキさんはなんで平気なんですか?」

 

「慣れだ」

 

慣れるだけでこんなに目が痛いのも平気になるのか……カワサキさんって凄いと改めて感じた。

 

「次は牛肉を炒める。フライパンの中に油を入れて、鍋を温めたら牛肉をいれて炒める」

 

「ふあっ!?」

 

「大丈夫大丈夫。そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」

 

凄い音がして思わず仰け反ったけど、カワサキさんは大丈夫だよと笑って、しゃもじを僕の手に握らせる。

 

「これで混ぜながら炒める」

 

「は、はい」

 

お肉の焼ける音を聞きながら、時折跳ねる脂に怖いと思いながらしゃもじを動かして牛肉を炒める。

 

「い、色が変わりました」

 

「よし、そしたら最初に作った割り下を入れる。でも全部入れるんじゃないぞ? 牛肉が少し隠れるくらいが目安だ」

 

カワサキさんは僕の炒めている鍋よりも数倍大きい鍋を使っているので、全部流し入れた。だけど僕には同じ量を入れては駄目だと言うので、お玉で少しずつ割り下を掬って鍋の中に入れる。

 

「おおッ!」

 

じゅわっという音がして煙が出る。それだけ熱くなっているんだと驚きながら牛肉が隠れるまで割り下を注ぎいれた。

 

「牛肉の色が変わったら野菜を全部入れて、崩さないように気をつけながら割り下と絡めながら炒める」

 

「は、はい! よいしょっ!」

 

野菜が入った事で一気に混ぜにくくなった。野菜を崩さないように気をつけて、割り下と絡めながら野菜を炒めていると野菜が茶色く色が変わってくる。

 

「野菜の色が変わったら、割り下をお玉で2杯足して、野菜の半分くらいが浸るように水を継ぎ足す」

 

「お水を入れるんですか?」

 

「煮詰めた事で味が濃くなりすぎるからな、でも水を入れると味が薄くなるから少しだけだ」

 

濃くなりすぎても駄目、薄くなりすぎても駄目。料理って難しいんだなあと思いながらカワサキさんに言われた通りに水を入れる。

 

「最後に落し蓋を落として強火で煮込めば完成だ。後は夕食まで寝かせて、味を染みこませれば美味しい肉じゃがになるぞ」

 

「楽しみです!」

 

僕が初めて作った料理がどんな感じになるのか、楽しみに思いながらカワサキさんの隣でぐつぐつと煮られる鍋をじっと見つめるのだった。

 

 

 

 

米と味噌汁と漬物といつもの夕食の組み合わせに加えて、今回は2つの平皿が置かれている。1つはカワサキ、1つは累の物だそうだ。

 

「ふむ」

 

人参を持ち上げて口に運んで噛み締める。皮は……綺麗にとってあるが、断面が均一ではないな。味は……カワサキが教えたので間違いなく良いが、普段より些か甘めだ。もう1つ人参をつまみ上げ頬張り噛み締める…切断面が均一、そして味も甘さを際立たせながら塩辛さもある。

 

「こっちがカワサキ、こっちが累」

 

驚いた顔をするカワサキと累を見れば私の指摘が間違いでは無かったと言うのは明らかだ。累の平皿からじゃがいもを取り口に運び、米を口に運ぶ。牛肉の出汁が染みこんでいる野菜だけでも十分に美味いが、累の方は味付けがしっかりと染みこんでいないな。

 

「お前は判らないと思ってた」

 

「私をなんだと思ってる?」

 

「食事に五月蝿い1000歳児。あと好き嫌いが多い」

 

……余りに無礼な言い分だが、否定できないので無言で牛肉を口に運んで逃げる。

 

「……固いな」

 

「え、あ。す、すみません」

 

容易には噛み切れたが普段と違う食感に思わずそう呟くと、累が平伏し謝罪の言葉を口にした。

 

「別に怒っている訳ではない。そうだな、梅や恋雪の初めての料理よりかはマシだな」

 

梅の料理はよく言って独創的、事実を口にすれば賭け事だ。気分屋なので味が一定ではない、辛いと思えば甘く、甘いと思えば辛い1品の中で味付けがころころ変わり、一定ではない。恋雪の料理はとにかくでかく、量が多い。味は悪くは無いが、それとこれとは話は別だ。

 

「カワサキに教わりながらより精進せよ」

 

「は、はい! 頑張ります!」

 

満面の笑みを浮かべて出て行く累を見送り、漬物を口に運んだ。

 

「悪くない、悪くは無いがまだ甘い」

 

「ま、初めてだからあんなもんじゃないか?」

 

これからに期待という所だな。カワサキ1人で無限城の全ての住人に料理を提供するのは難しい、もう1人か2人は料理を作れる人間が必要だと思っていた。

 

「志津と葵枝が動けるようになればまた変わるか」

 

私の呟きにカワサキの肩が動き、カワサキは深く溜め息を吐いた。

 

「炭治郎になんて説明すれば」

 

「良いではないか、お前の母は鬼として蘇ったとでも言ってやれ」

 

カワサキの持つ人を生き返らせる杖で竈門家の人間は生き返ったが、母の葵枝だけが鬼と化していた。ここは志津と同じで、天津の性格の悪さが滲み出ている。気に入った女を鬼にして夫と子供を食い殺させて心をへし折り、自分の物にする。天津の常套手段だ、あの女好きの外道は絶対になんとしても殺す。弱体化している今が好機なのだ、どこに隠れているのかなんとしても見つけださなければ……。

 

「それよりだ、カワサキ。これを持っておけ」

 

「黒い日輪? なんだこれ」

 

「槇寿朗の所で天津と戦っただろう? 業腹ではなるが、鬼殺隊と協力する事となるだろう。話し合って人を食わぬ鬼の証のような物だ」

 

黒く染め抜きされた太陽、それが私達が人を食わぬ証であり、そして鬼殺隊が我々を害成さんという盟約の物だ。

 

「……悪い事考えてるだろ?」

 

「悪いか? ふん、鬼殺隊が正義ではないからな、善や悪ほどつまらない物はない」

 

鬼にも悪人がいるが、人にも悪人はいる。それなのに鬼は悪党だと言い切り、狩るように追い回す鬼殺隊もいる。罠を張る者もいる、中には街その物を焼き払うなんて暴挙に出る者さえもいる。

 

「鬼で無くとも悪はいる」

 

「昔誰かが言ってたなあ。この世に悪があるとすれば、それは人の心だ。そしてこの世で最も恐れ、そして打ち勝たねばならぬ物は己の心ってな」

 

心こそが善か悪を見極めるのだ。鬼であれ、心に正しさがあれば人だ。人であっても、心に悪があればそれは鬼だ。姿形は問題ではない、すべては心が、平和を願う心が全てを決めるのだ。

 

「と言う訳で、お代わりだ」

 

「凄い良い感じだったのにそれか?」

 

呆れたように言いながらも茶碗を受け取り、お代わりを盛ってくれているカワサキを見ながら味噌汁を啜る。1000年続く天津との戦い……この今代が一斉一隅の好機なのかもしれない。この好機を手放さない為には今まで以上に慎重な立ち回りが必要なのだと私は思うのだった……。

 

 

 

 

 

無限城 ひそひそ噂話

 

 

風の噂で風の呼吸を扱う、鬼になった母を連れている隊士が居ると言う話を聞いた。最初は何を馬鹿なと思ったのだが、お館様の許可を得ていると言うこと、そして明確な意思を持ち血鬼術で手当てをしてくれたという隊士の話もあり、その隊士は特例として鬼になった母と共に鬼狩りをしていると聞いた事があった。正直俺は人を食わぬ鬼がいるなんて信じていなかったし、血鬼術で操られていることも疑っていた……あの月の晩までは……

 

「うっ……う」

 

鬼の奇襲を受けた俺は義勇と真菰とはぐれ、1人だけ谷底に落ちた。落下の衝撃は型で相殺した物の、全てを殺しきれる訳が無く全身に走った酷い痛みと落水した衝撃で意識を失った。

 

「こ……こ……は?」

 

「あ」

 

うっすらと目を明けると瞳孔が割れた子供……いや鬼が俺を覗き込んでいて、反射的にその手を払っていた。

 

「うぐっ」

 

「だ、駄目だよ動いたら。酷い怪我をしているんだから」

 

「鬼が何を言うか!」

 

俺の一喝に子供の鬼はびくんと肩を竦め、悲しそうに目を伏せた。その時だった、俺の額から濡れた布巾が滑り落ちたのは……それを見てハッとなった。流血していた足は包帯が巻かれ、皮が剥けた掌は薬草をすり潰した物が塗られ、包帯が巻かれていた。

 

「お前が手当てをしてくれたのか?」

 

「えっと、手当てをしたのは僕じゃなくて、えっとえっと」

 

「名前は名乗ったらいけない。そういう決まりだよ」

 

おろおろしている少年の鬼の後から白髪で顔に赤い斑点のある鬼が現れる。すると俺の側にいた鬼はその鬼の後ろに隠れた。どういうことか判らずにいると、2人が黒い日輪が描かれた服を着ているのに気付いた。確か黒い日輪は人を食わぬ鬼だと柱や、お館様が言っていた。

 

「怒鳴ってすまない。俺が悪かった」

 

「まぁ気が立っていたらしょうがないさ。手当てはしているけど、無理に動かないほうが良い」

 

「い、いや、仲間が待っている。立ち止まっている時間は……」

 

横の岩に立てかけられていた日輪刀を支えにして立とうとしたが、立ち上がれず姿勢を崩すと俺の手当てをしてくれていた鬼が俺の手を握った。倒れかけた筈の俺の足はしっかりと地面を踏みしめて立つことが出来ていた……。

 

「これは……血鬼術?」

 

「そうだよ。その子の血鬼術」

 

「帰ろう? お兄さんの帰りたい所へ」

 

そう声を掛けられると俺の足は俺の意思に反して歩き出す、俺を手を繋いでいる子供は鼻歌を歌っている。

 

(これは鬼なのか?)

 

どう見ても無邪気な子供にしか見えない。こんな鬼を俺は見たことが無く、完全に混乱していた。

 

「かーえーろ♪ かーえーろー♪」

 

岩も川もなにもかもを乗り越えて、俺の足は動き続け俺が転落した崖下まで来ていた。

 

「はい、とーちゃーく♪」

 

「ここからは僕が連れて行ってあげよう」

 

もう1人の鬼が俺の手を掴み、右手を掲げると糸が伸びて崖の上の太い樹木に巻きついて、俺と鬼を同時に持ち上げる。

 

「はい、ここまで来たら帰れるだろ? 近くにほかの人間の気配もするし」

 

「待て、何故助けた?」

 

崖下に飛び降りようとする鬼にそう声を掛けると鬼はゆっくりと振り返った。

 

「助けたいって思ったらそれで良いんじゃない? 別に鬼が人を助けたらいけないって決まりはないでしょ? ああ、そうだ。これも上げるよ」

 

投げ渡されたのは竹の葉に包まれた握り飯だった。鬼が食べ物を何故と更に混乱が強くなる……まるで夢か何かを見ているようだ。

 

「お前達はなんなんだ?」

 

「鬼だよ。だけど君達が殺している鬼じゃないってだけさ」

 

「だが鬼は悪だ」

 

「違うね。鬼が悪なんじゃない、この世に悪があるとすれば……それは人の心ってあの人は言ってたよ。だから僕は、僕達は身体は鬼でも心は人間だよ」

 

そう言うと鬼の少年は崖から飛び降り、空中に浮かんでいた障子の中に飛び込んで消えていった。

 

「……心」

 

鬼が心を説く……ほかの隊士ならば何を馬鹿なと言ってその首を斬ろうとしただろう。だがなぜか、俺は隙だらけなのにその首に刃を振るおうとは思えなかった。

 

「……悪は人の心か……」

 

心次第という言葉はやけに重く、そして素直に俺の胸に響いた。森の奥から俺を呼ぶ義勇と真菰が姿を現し、足を引き摺りながらそちらに足を向けると白髪の強面の箱を背負った隊士が何故か2人と一緒にいた。

 

「いたあ! 実弥! お願い」

 

「頼む」

 

「ああ、そんなに騒ぐな。お袋、頼むぜ」

 

箱が開くと真紅の目を光らせる女性が姿を現した。その姿は月の光を浴びているからか余計に美しく、神秘的な物に見えた。

 

人を食わぬ鬼3人とそして鬼連れの隊士「不死川実弥」との出会いが俺の考え方を変え始める事となるのだった……。

 

 

メニュー41 むかご料理へ続く

 

 




鬼殺隊のメインキャラもそろそろ出てきます。そして炭治郎の前に君を連れて進めをしている実弥さんですね。今は鬼つれの隊士ですが、そのうち鬼連れの柱にランクアップすることでしょう。次回は「化蛇」様のリクエストで零余子の為のむかご料理を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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