【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

44 / 95
メニュー41 むかご料理

メニュー41 むかご料理

 

無限城の一角にある山は竹の子や山菜、茸などの山の幸が多く栽培されており無限城の貴重な食料の確保に加えて、子供達の遊び場を兼ねている重要な場所の1つだった。

 

「よいしょ、よいしょ!」

 

「あった♪」

 

「おりゃおりゃおりゃッ!!!」

 

そして今日は子供達が茸狩りや山菜取り等、レクリエーションを兼ねての手伝いにやってきた。

 

「ぷぎ、ぷぎい!」

 

「おお、母ちゃんすげえッ!!」

 

山の斜面から巨大な山芋を掘り出す母ちゃんを見て、俺もと一生懸命に地面を掘る。

 

「伊之助、余り力を込めるな。折れてしまう、丁寧にやるのだ」

 

「おう! 判ったぜ!」

 

俺や累達の面倒を見てくれている響凱に言われ、手にしている三角のなんかよく判らんけど、素手で地面を掘るより楽な道具を丁寧に動かして地面を掘り進める。

 

「この茸食べれるのかな?」

 

「判らない茸には手を出すなあ」

 

「判りやすい物だけにすると良いよ」

 

実弥や玄弥、それに有一郎が他の連中の面倒を見ている声を聞きながら、母ちゃんの背中の上に乗って山の中に入る。

 

「伊之助、余り危ないことをするなよ!」

 

「大丈夫だ! 母ちゃんが一緒だからな!」

 

響凱にそう返事を返し、母ちゃんと一緒に山の中を登り、山菜や茸をどんどん収穫する。

 

「おお、ぴかぴかどんぐりだ。これも拾ってこ」

 

子分共にこの大きくてぴかぴかのどんぐりを見せてやろうと思い、脚絆の中にどんどんどんぐりを詰め込む。

 

「ん? お、こいつは良いじゃあねえか!」

 

灰色の丸い粒を見つけた。これはあんまり俺が物を食えない時に母ちゃんが持ってきてくれた奴だ。この下には山芋とかもあって、目印になる。

 

「母ちゃん。俺これ採る」

 

「ふごお」

 

「うん、母ちゃんは下の芋な!」

 

2人で泥だらけになりながら地面を掘り、俺はむかごと芋を沢山収穫し来た時と同じ様に母ちゃんの上に座って山を下るのだった。

 

「なぁなぁ! カワサキ、これでむかと響凱に料理をしてくれよ!」

 

カワサキに怒られないように風呂に入ってから、こっそり収穫していたむかごをカワサキに見せながらそう頼む。俺達とかの面倒を見てくれて、疲れているのは知っている。だからこれを食べれば元気になると思ってたのだ。

 

「むかごか、確かにこいつは栄養価は凄いな」

 

「だろだろ!」

 

さすがはカワサキだ。これが何なのかを知っていた。カワサキなら美味しい料理にしてくれると思っていると、カワサキに頭を撫でられた。

 

「流石は伊之助だ。お前は本当に優しい良い子だ」

 

わしゃわしゃと頭をなでられてほわほわとした気持ちになった。恥ずかしいけれど、何か誇らしい気持ちになった。

 

「良いか伊之助、強いって事は喧嘩が強いだけじゃねえ。困ってる人にも優しく出来るのも強さなんだ。その優しさを忘れるなよ」

 

「おう! 判ってるぜ!」

 

強いって言うのは沢山あるって事はカワサキに教えて貰ったからな! と返事を返し、俺はカワサキに向かって手を振りながら皆の所に帰った。

 

「見ろ子分共! このきらきらピカピカのどんぐりを!」

 

「「「おおー親分すげーッ!!」」」

 

「そうだろうそうだろう。子分共に1つずつやろうな」

 

「「「やったー♪」」」

 

ぴょんぴょんと跳ね回る子分共を見ていると俺までも楽しい気持ちになった。これもきっと強さの1つの形だと俺は思うのだった……。

 

 

 

 

むかごは山芋の蔓になる肉芽で、葉の付け根などに沢山出来る食べ物だ。地下の山芋同様、非常に栄養価が豊富で身体にも良い、山芋を収穫する時に集めることはあったが山盛り1杯のむかごを見るのは俺も初めてだった。

 

「よく集めたなあ」

 

しかしこれだけ集める事が出来るのは伊之助達だからだろうなあと思いながら、むかごの下拵えを始める。山菜等と違って特別な下拵えをしなくても食べやすいのだが、皮の部分の独特な香りが苦手と言う者も多い。

 

「よっと」

 

軽く水洗いをして、乾いたざるの上に並べて掌で押す様に転がすと固い皮の部分がぽろぽろと剥がれ落ちる。こうすることで土臭さとかが無くなって凄く食べやすくなる。

 

「そのままでも食べれないことはないんだけどな」

 

だけどその一手間がより物を美味しく食べれるようにするコツなので手抜きはしない。鍋にむかごがひたひたになるくらいの水を入れて、塩を入れて火に掛ける。

 

「うし、これで沸騰して更に5分だな」

 

沸騰してから5分ほど更に煮れば丁度よくなるので、その間に次の準備をする。しょうがを千切りにし、米をしっかりと水洗いする。そしたら釜の中に水、醤油、酒、塩、千切りにしたしょうがを加えて少し考え込む。

 

「うーん……」

 

油揚げや人参を加えて炊き込みご飯風にするのも美味しいんだが……少し考え、首を左右に振って昆布とむかごを入れて蓋を閉めた。

 

「折角の初物だしな」

 

旬の物を食べる時は余計な手を加えずにそのままの味を楽しんでもらおうと思い、そのまま火に掛けてむかごご飯を炊き始める。その頃合にはむかごの塩茹でも終わっているので、ざるにからげて水をよく切る。それでもまだむかごは残っているので、また水から茹で始め塩茹でむかごの準備をしながらフライパンを手に取る。

 

「バターとにんにくっと」

 

むかごと言うのはそれ単体では芋その物の味だ。芋の種類によってむかごの味は左右されるが、土臭さこそあれど全体的に山菜のような癖も無く食べやすい。どれに似ていると言われると口で説明するのは難しいのだが、自然薯の味に似ていたり、さつまいもほど甘くは無いがほんのりとした甘みもある。そして塩茹でをすれば里芋の味にも似ていると非常に味のバリエーションは豊富で食べた人間によってその感じ方は変わる。しかし共通している点とすれば和風、洋風、中華風、はてはオリーブオイルを使うイタリアンの手法まで使っても大丈夫とそのバリエーションの豊富さと味付けの自由さにある。

 

「よし、こんなもんだな」

 

バターが溶けてにんにくの香りがバターに移り始めた所でむかごを入れて、にんにくバターと絡めながら炒める。火加減は弱火でじっくりと丁寧に炒めるイメージで、むかごのしっかりと火が通ったら皿に出して、仕上げに岩塩をぱらぱらと降る。これでむかごのガーリックバターの完成だ。

 

「ん、美味い」

 

1つ味見をすれば淡白な味のむかごにガツンと来るガーリックバターの風味……飯のおかずにも、酒のアテにもバッチリだ。

 

「ほいっと」

 

油を入れてむかごをカリっとなるまで炒めたら、そこに醤油とみりんを加えて水気が無くなるまで絡めながら炒める。

 

「砂糖も入れるか」

 

ちょいと塩辛いと感じたので砂糖を加えて甘みを加えれば甘辛炒めの完成だ。ちょうどそれくらいの按配で釜戸が音を立て始める。

 

「後は味噌汁とむかごの掻き揚げ……それに魚の塩焼きでも加えるかねえ」

 

むかごご飯にガーリックバターと甘辛炒め、それに里芋の味噌汁に鮭の塩焼きに掻き揚げ、完璧な秋の食卓だなと思いながら、俺は掻き揚げに使う玉葱やにんじんの下拵えを始めるのだった……。

 

 

 

 

 

累達を初めとした子供達の晩御飯を食べさせてからやっと私と響凱の晩御飯の時間になる。別にご飯の時間が遅いから不満と言う訳ではないし、自分の食事よりも子供の方を優先しなければならないと言うのも判っている。

 

「なんか、皆だんだん大きくなるよね」

 

「人間だからな」

 

カワサキさんの人化の術で人間に成れたとしてもそれは一時的な物である。人間のように成長する事は難しく、また元の体格から大きく外れて変化する事も難しいらしい。

 

「寂しいのか?」

 

「んーどうなんだろ」

 

ちっちゃくて可愛かった実弥や玄弥、それに無一郎や有一郎が大きくなってくるのを見ると上手く説明出来ないのだけど……こう胸に穴があいたような……そんな感覚がする。

 

「伊之助もどんどん饒舌になるし」

 

「子供だからな。物覚えがいい時期だ」

 

口調こそ粗暴だけど、伊之助は優しくて良い子だ。人を思いやるという事を忘れないでくれている……強さと優しさを兼ね備えた伊之助は誇らしく、自慢出来る子だ。勿論私だけが育てたわけではない、猪さんや琴葉さんも、皆が伊之助を育てたと言っても良いだろう。

 

「はい、お待たせ。零余子、響凱。夕飯だ」

 

響凱と話をしているとカワサキさんが私達の夕食を持ってきてくれた。んだけど……ちょっと今日の夕食は珍しい物だった。

 

「むかごって、カワサキさん、私の名前も零余子じゃないですか」

 

「旬の物だからな、でもそういうのは気にしないだろ?」

 

そりゃ食材と一緒の名前だからってへそを曲げたりしないけど、ちょっとこのむかご尽くしには苦笑を隠せなかった。

 

「栄養価が高くて、身体にも良いからだろう。カワサキさん、いただきます」

 

響凱が我先に食べ始めてしまったので、私も手を合わせていただきますと言って箸を手に取った。しかし、むかごご飯にむかごと野菜の掻き揚げ、香ばしい香りをただ寄せるにんにく炒め、見るだけで甘辛いと判る炒め煮、そして申し訳ない程度の里芋の味噌汁と川魚の塩焼き――ほんとに見事にむかごで固められている。その中でもにんにく炒めの香りが強く、最初に私達はそれに箸を伸ばした。

 

「んー♪ 美味しいッ!」

 

「確かにこれは美味い」

 

むかごをにんにくで炒めた物はかなり香りが強く、その上味も濃かった。これは牛酪の香りと味だ、塩辛く、そしてにんにくの香りが食欲を誘う。

 

「うん。美味い、完璧だ」

 

「はー美味しい」

 

むかごご飯は少し味が薄いが、これだけしっかりと味がしているにんにく牛酪炒めがあるのなら、米まで味が濃いとくどくなってしまう。ほんのりと香る昆布と醤油の香り――炊き込みご飯と言うには少し味が薄いが、それくらいで丁度いい。

 

「ん、これも美味しいわね、甘辛くて」

 

「いや、これは甘辛いだけではないぞ?」

 

醤油と砂糖で煮られているむかごはそれだけではないと言われて、よく味わっていると響凱が何を言いたいのかが判った。

 

「判った。表面がカリカリしてる」

 

「ああ、多分油で焼いてあるんだろうな。表面と中の食感が違っていて面白い」

 

確かにそう言われると……言われると……。

 

「美味しいで良いんじゃない?」

 

「……まぁそうなんだがな。もっとこう無いのか?」

 

「無い」

 

美味しければそれで良いと思う。この甘辛い味とかご飯のお供には最高だと思うし、響凱が呆れたような顔をしているのを見て、味噌汁を口にする。白味噌の柔らかい味のする味噌汁は凄くほっとする味だ。そして凄くほっとしたからこそ、響凱に言いたい事がある。

 

「私だってそれなりに料理は出来るわよ? でもねえ……判るでしょう?」

 

「すまん、小生が悪かった」

 

「分かればいいのよ」

 

私だって女だから一通り料理は出来る。だけどそれはあくまで田舎娘の料理であって、カワサキさんの料理とは根底から異なっている。食べれれば良い、それが美味しければ尚良いみたいな考えの料理を作っていたのだ。そこまでしっかりとした料理なんて作ろうなんて思ったことも無い。

 

「でもこういうのだったら作れそうな気がするわよね」

 

「確かにな」

 

野菜を千切りにして、むかごと一緒に揚げた掻き揚げ。さくさくとした野菜の食感とほくほくしたむかごの食感が相まって本当にご飯に良く合う。こういう料理なら私でも作れそうな気がする……そんな話をしているとカワサキさんが私達と同じ献立を載せたお盆を手にして、私達の前に腰掛ける。

 

「美味いか? ちょっとむかご尽くし過ぎるかなあとか正直悩んでいたんだけど」

 

「凄く美味しいです。それに私達の事を考えてくれているので、感謝しかないです」

 

「本当ですよ、これで明日も元気です」

 

これだけむかご料理と山芋とかを食べれば明日も元気だと言うとカワサキさんは小さく笑った。

 

「じゃあ伊之助にありがとうって言っておくと良いな」

 

「「伊之助?」」

 

なんでここで伊之助の名前が出てくるのか判らず、思わずそう尋ね返すとカワサキさんはむかごのにんにく牛酪炒めを頬張り美味いなと笑いながら伊之助の名前を出した理由を教えてくれた。

 

「それ伊之助が2人が元気になるようにって言ってとってきたむかご」

 

さらりとカワサキさんに告げられた言葉にぶわっと涙が溢れた。カワサキさんが慌てているけど、その一言は私達の胸を貫いた。

 

「くう……伊之助が良いこすぎる……」

 

「うわぁぁああんッ! 伊之助ぇッ!」

 

「「おひゃほあわりッ!!」」

 

「うん、判った。判ったけどとりあえず泣き止もうか、2人とも」

 

私達の事を考えてくれた伊之助が余りにも尊すぎる。私と響凱の涙腺は完全に崩壊してしまうのだった……。

 

 

 

 

~無限城ひそひそ噂話~

 

※ かまぼこ隊初遭遇時の時間軸。

 

鬼殺隊になり、良い鬼もいるのだと証明する為に旅立った伊之助。先に旅立った実弥、そして家に戻っている頃に鬼殺隊に保護されてしまった無一郎と有一郎の2人に続き伊之助も旅立ったのだが……。

 

「玄弥どこ行きやがったぁ!? 逸れたなあの馬鹿ッ!(伊之助が暴走し玄弥と逸れた)」

 

一緒にいたはずの玄弥とはぐれふらふらと鬼の気配を見つけては切り倒す、見つけては切り倒すをしながら転々としていた。

 

「なんだ、夢か」

 

「やぁ、伊之助。元気そうだねえ、あれ? 玄弥は?」

 

「逸れた」

 

「なにやってるんだい? はぁ、鳴女に頼んで探しておくよ」

 

「頼んだぜ夢ッ!」

 

時折無惨一派の鬼と出会い、医者の鬼を倒し人助けをしながらとある山に足を踏み入れた伊之助。

 

「山は良いな! 元気が出るぜ! お、芋発見ッ! この気配はッ!」

 

非常食を集めながら山を登っていた伊之助だが、鬼の気配を感じ山を高速で駆け上がる。山の中の洋館の2階の窓から血塗れの着物の青年が飛び出してくるのを見て、地面を蹴り空中で受け止める。

 

「おい! 大丈夫か!? しっかりしろ、今手当てをしてやる!」

 

珠世から預かった薬を使い、てきぱきと応急処置を始める伊之助を見て、子供2人を背中に庇っていた炭治郎と善逸が驚きの声を上げた。

 

「え、え!? 猪ッ!?」

 

「ぎゃあああーーッ!? なにあの化け物おッ!!」

 

「うるせえ! 騒いでるなら手当てを手伝いやがれぇ!! おい、馬鹿! 寝るな! 死ぬぞッ!!」

 

「あ、ありがとう、でも私は」

 

「馬鹿野郎! 諦めるんじゃねえ! 死にたくねえって言え! この弱虫があッ! 死んで逃げるな! 生きて戦えッ!!! 死ぬんじゃねえ!!」

 

猪の頭部を模した兜を被っているが、必死に人を助けようとしている伊之助を見て、炭治郎と善逸も手当ての手伝いを始める、これがIFの世界のかまぼこ隊のファーストエンカウントなのだった……。

 

 

 

 

メニュー42 煮卵丼 に続く

 

 

 




次回は平均的ケイデンス様のリクエストで「煮卵」をテーマに色々やって見たいと思います。ラーメンに入れるのが定石ですが、丼にするのも案外乙な物なんですよね。そして伊之助の尊さに2名KOされてますが、優しくて強い伊之助にパワーアップするとこうなる事でしょう。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

  • 間違っている
  • 間違っていない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。