【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー43 コロッケ

メニュー43 コロッケ

 

藤の家と万世極楽教――鬼の被害が出た場所には大概ある建物だ。藤の家は鬼殺隊の隊士を優先し、万世極楽教は怪我人やその集落に住む者を優先する……正直その村に住んでいる者からすれば藤の花の家紋を掲げた豪華な屋敷に住み、滅多に顔を見せない連中よりも、相談に乗ってくれ、力仕事を協力してくれる万世極楽教の支部の方が信頼度が高いのは判る。でもだからと言って屋敷ぶっ壊すことはねえだろうよぉ……俺は藤の家の家紋の残骸が僅かに残った廃墟を前にして頭を抱えた。

 

「ははははッ! 困ったな! 宇髄ッ!」

 

「笑ってる場合じゃねえよ、煉獄!」

 

俺様音柱宇髄天元と炎柱煉獄杏寿郎の鬼殺隊の最大戦力である柱を2人を投入しなければならない程の強力な鬼の目撃情報があるって言うのに、安全に休める拠点もないとか洒落にならない。

 

「何、この集落には万世極楽教の支部がある。そこで宿を借りるとしよう!」

 

「おいおい、マジで言ってるのか? つうか泊めてくれるのか?」

 

「俺は結構泊まっているぞ!」

 

手当てを受けた経験は俺もあるが、まさか宿まで借りているとは思ってもみなかった。歩いて行ってしまう煉獄と廃墟同然の藤の家の跡地を交互に見て、俺は頭を掻いて煉獄の後を追って歩き出した。

 

「申し訳ない! 宿を貸してくれまいかッ!!」

 

「うるせえよ! 扉を叩け扉をッ!」

 

扉の外から大声で叫ぶからあちこちから村人が顔を見せている。俺達の格好を見てひそひそ話をしているので幾ら俺様でも気まずいなんて物じゃない。そんな大声じゃなく、扉を叩いて……。

 

「はい、どちら……天元?」

 

扉を開けて顔を見せた女を見て俺は目を見開いた。以前任務に出た時まきを達が見たと言う死んだ筈の姉――それが目の前に現れ、流石の俺様も何も言えず目を見開いて硬直した。

 

「なんだ宇髄。知り合いか?」

 

「あ、いや、その……」

 

他人の空似なのか、だが目の前の女は――幽幻姉さんは天元と俺の名を呼んだ。俺が混乱しきっていると幽玄姉さんは小さく溜め息を吐いた。

 

「天元の姉の幽玄と申します。とりあえず、話は中で窺いましょう」

 

目立つから万世極楽教の中に入れと言う幽玄姉さんに頷き、俺と煉獄が万世極楽教の中に足を踏み入れるのだった……。

 

 

 

 

よもやよもや、藤の家が破壊されていたので万世極楽教に宿を借りに来ればまさか宇髄の姉がいるとは驚きだ。

 

「しかし、姉がいるのなら教えてくれれば良かったではないか、それならばもっと楽に宿を借りれたぞ!」

 

かなりの重鎮のように見えたので、最初から教えてくれればよかったと言うと宇髄は搾り出すように口を開いた。

 

「幽玄姉さんは何年も前に死んでる筈なんだよ」

 

死んだ筈の人間と聞いて眉を動かしかけ首を振った。

 

「太陽の光を浴びていたではないか、鬼ではないぞ?」

 

「ああ。それは俺も見た……他人の空似とも思ったが、姉と名乗ったし、素振りも同じ。幽玄姉さんなのは間違いないと思うんだが……」

 

「確証が得られないと」

 

鬼なのか、血鬼術で姉の記憶と姿を持たされた別人なのか……その判断が付かないと言うことだろう。

 

「失礼します」

 

襖の外から声を掛けられ、返事を返すと幽玄と言う女が姿を見せる。普段冷静な宇髄の目が泳いでいるのを見て、それを背中で庇いながら前に出る。

 

「本日は宿を貸していただき感謝する!」

 

「いえいえ、お気になさらず。カワサキさんから聞いておりますので」

 

幽玄の口から出たカワサキ殿の名前に俺は目を見開いた。その言葉が何を意味するか、そして万世極楽教が何なんのかその一言で判ってしまった。

 

「そうかそうか! カワサキ殿はお元気ですか?」

 

「ええ、とても元気ですよ。かってにあっちをふらふら、こっちをふらふらとして食材や珍しい料理を調べたり、落ち着きがないお方です」

 

母上の病を治してくれた鬼の仲間――しかし俺達が戦う鬼とは違う、お館様の言う黒い月を背負った鬼達の1人。カワサキ殿の名前が出た段階で、恐らく黒月の鬼達の根城がこの万世極楽教なのだと俺は悟った。

 

「なんだ。煉獄、お前も万世極楽教に知り合いでもいるのか?」

 

「ああ! 万世極楽教で食事療法をやられている人だ! 俺の母上の病を治してくれた人でな! 数ヶ月に1回ほどだが父上を尋ねてくる人だ!」

 

もしもここに黒月の鬼がいるとすれば強力な鬼がいると言うのも真実味を帯びてくる。これは一層気を引き締めなければならないな……。

 

「幽玄姉さんもか?」

 

「ええ。毒を打たれ、川に捨てられた所を拾われまして、万世極楽教で治療を受けていました。元気そうでなによりです、天元」

 

俺の口から医者の類と聞いた宇髄は自身の姉もカワサキ殿に救われたのだと判り、肩に入っていた力が抜けた様子だった。

 

「生きてるなら教えてくれよ……。ほかにも誰かいるのか?」

 

「虎朗が別の支部にいますよ」

 

どうやらまだほかの家族も生きているようで、宇髄の顔が明るくなった。

 

「では俺は風呂に入って来よう! ゆっくり話をしていると良い!」

 

家族の再会を邪魔するほど俺は野暮ではないつもりなので手ぬぐいと着替えを手に部屋を出る。風呂の場所は適当に誰かに聞けば良いだろうと思い歩いていると、予想外の人物に遭遇した。

 

「杏寿郎? 何故ここにいる?」

 

カワサキ殿の護衛としてついて来る事の多い狛治にばったりと鉢合わせた。

 

「藤の家が破壊されていてな! 宿を借りているのだ! 狛治がいるという事は……」

 

「いるぞ、桁違いの鬼がな。気をつけろよ」

 

「うむ! 助言感謝する。それと悪いんだが風呂はどこだ!」

 

俺の肩を叩いて通り過ぎようとした狛治の肩を背後から掴んで止めてそう尋ねる。

 

「……こっちだ」

 

「すまない!」

 

呆れた顔をしながらも俺を風呂に案内してくれた狛治に感謝しながら、俺は湯船にどっぷりと浸かった。暖かく心地よい温度の筈なのに手が震えた。武者震いと言えたら良かったのだが、恐らくこれは恐怖による物だろう。

 

「心を燃やせッ! 煉獄杏寿郎!」

 

父上から譲り受けた羽織と炎柱の名、そして父上の日輪刀を溶かして作った俺の日輪刀――姿は無くとも父上はずっと俺と共にいる。恐れも恐怖も抱く必要はない、心を燃やし、魂を燃やせば何も恐れることはないのだから……。

 

 

 

 

幽玄姉さんと虎朗が生きていると判っただけでも俺は嬉しかった。しかもクソ親父の呪縛もないとなれば、今度こそ家族で暮らすというのも夢ではないと思いはしたが、俺は鬼殺隊の柱、そして幽玄姉さんと虎朗は万世極楽教とカワサキと言う男に恩があるのでそれを返すまで俺の提案を受け入れる事はないだろう。

 

(ならまず俺がやるべき事は1つだな!)

 

今まで犯してきた罪を償い、大手を振って日の下を歩く……その為に鬼殺隊にいたが、新しい目標が俺にも出来た。きっとまきを達も幽玄姉さんが万世極楽教で生きていたと聞けば喜ぶこと間違いなしだ。だからまずは鬼を倒すための腹ごしらえと思っていたのだが……

 

「……なんだこれ」

 

「コロッケとコーンスープとサラダとムニエル」

 

用意された夕食は全部洋食だった。なんか、こう想像してたのと違いすぎる。なんでレストランで出て来そうな高級料理をぽんぽんと出してくるのかと驚いた。

 

「カワサキさんが料理人って言ったでしょう? 海外の料理にも詳しいのよ」

 

そうだったとしてもこの場にいないなら、それを教えているわけでカワサキ本人はどれだけ料理が上手いんだと正直困惑した。

 

「美味いッ!」

 

迷う事無く口に運んでいる煉獄の図太さにも少し驚いたが、柱もおいそれと食えない料理だ。俺も味わってみるとするかと思い匙を手に取り平皿に盛られている汁を掬って口にする。

 

「派手にうめえ……なんだこれッ!?」

 

甘い……俺の知る餡子や果物の甘さではない、とうもろこしの甘さだけを凝縮したような甘みと旨みが1つになった汁に目を見開いた。金色と言う色も俺好みの派手さだ。だが口にすれば繊細で複雑な旨みが口の中いっぱいに広がった。なら次はとムニエルと言う魚を焼いたものを口にしてまた驚いた。

 

「牛酪かッ!」

 

「そうよ。小麦粉をつけて、牛酪で焼いた料理よ」

 

牛酪をかなり使わないとこの濃厚な旨みは出ないだろう。しかも秋鮭の濃厚な旨みと牛酪の濃い味が食欲を刺激する。山盛りの白米が盛られた丼を抱えて、米を勢いよく掻きこむ。

 

「おかわりを!」

 

「はい、判りました」

 

「俺も!」

 

煉獄に続いて、俺もおかわりを頼む。飯が盛られる間に主菜であろう平らな物を箸で切ってみる、湯気が上がってふわりとした香りが鼻をくすぐる。

 

(芋か?)

 

見たい感じは潰した芋に混ぜ物をした感じだ。黒いタレに漬けて口に運んだ。

 

「美味い!」

 

「なんだなんだ地味な見た目の割にうめえじゃねえかッ!」

 

サクリとした香ばしい衣に、潰した事で舐めらかな食感になった芋、そして潰した芋の中に混ざられた挽肉と野菜の甘みが酸味を帯びたタレのお蔭でめちゃくちゃ美味くなっている。

 

「おかわりですよ」

 

幽玄姉さんの差し出してくれた丼を受け取り、コロッケとムニエルを交互に口に運び米を食う。時々コーンスープの甘い味を楽しめば食欲がどんどん増してくる。

 

「コーンスープとコロッケおかわりしますか?」

 

幽玄姉さんの問いかけに勿論と返事を返し、満腹になるまで食事を楽しんだ。

 

「……宇髄」

 

「ああ」

 

そして日付が変わる頃に凄まじい轟音と鬼の音が周囲に響いたのを感じ取り、俺も煉獄も跳ね起きて隊服に身を包み日輪刀を握り締める。

 

「煉獄殿、天元。気をつけて」

 

誰にも言わずに出立しようとしたのだが、幽玄姉さんがどこから現れ切り火をしてくれる。

 

「ありがとう、行ってくる!」

 

「行ってくるぜ幽玄姉さん!」

 

何も言わなかったが幽玄姉さんは俺達が戦いに出るのを知っていたのだろう。そうでなければ、切り火なんかしてくれるわけが無いからだ。それに武器を手にしているのだってきっと屋敷に入る前に知っていただろう。

 

「近いぞ、しかもなんだもう誰か戦ってる?」

 

戦闘音が聞こえる、一体誰が……鬼殺隊ではない筈だが……となると。

 

「まさか黒月の鬼か? 本当にいたのか?」

 

黒い月を背負う鬼は人食い鬼を殺す鬼と言う話は聞いた。だがまさか本当に存在するなんて思ってなかった。

 

「黒月の鬼はいるぞ。俺は何回か見たことがある」

 

「なっ!? お館様は知ってるのか!?」

 

「勿論知っているし、報告もしている! それよりも行くぞッ! 相当な大物だ!」

 

地面を蹴り駆けて行く煉獄、幽玄姉さんは生きてるし、黒月の鬼もいる。

 

「ったく今日はずいぶんと派手な一日だッ!!」

 

背中に背負った2本の日輪刀を抜き、俺も戦いの中に身を投じるのだった……。

 

この日の戦いの後、炎柱、音柱の連名によって黒月の鬼の存在が証明され、人の味方となる鬼がいると言う事が正式に鬼殺隊に伝達される事となるのだった……。

 

 

 

メニュー44 ユッケビビンバ丼へ続く

 

 




今回は短めの話となりましたが、鬼殺隊を絡めるとこんな感じかなあと思います。次回は無限城で玉壷が鬼になる回ですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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