【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
メニュー2 薬膳料理
カワサキさんの事を聞きたいですか……?
ふふ、面白いですね。いいですよ、この煉獄瑠火で良ければお話しましょう。
そうですね、カワサキさんは凄く不思議な方です、ですが決して悪人ではありません。
槇寿郎さんのように燃えるような情熱があるわけでもない。
杏寿郎のように強き者でもない。
あの人は誰かを救う人なのです、それは強さとはまた違う強さなのでしょうね。
何でもない事のように誰かを救い、それを誇るでもなく、自慢する訳でもない。
あの人にとってはそれが当たり前で、何も特別なことではないと思っているのでしょう。
私も、そして煉獄家もカワサキさんに救われました。
今ではこの通り健康体ですが、昔は身体が弱かったのですよ。
きっとカワサキさんがいなければ、私は死んでいたと思います。
だからカワサキさんは煉獄家にとって、とても大事な命の恩人なのですよ。
煉獄家の近くの市場に足を向けたが、思った以上に品揃いが良い。
「これください」
「お、兄ちゃん、良い目利きしてるねえ」
「はは、どうも」
スキルなんですけどねと心の中で思いながら、買出しに行くと言っていた瑠火さんから預かった財布を取り出して……取り出して。
「すいません、俺は海外にいて日本の通貨があまり判りません」
「そうなのか、その紋は煉獄家のだね。あの方達の屋敷にお世話になってるのかい?」
「はい、居候させてもらっています。それで申し訳無いですが、ここから代金をとってくれますか?」
盗まれるリスクはあると思ったが、通貨のレートを知らなかったのは俺のミスだ。屋敷に戻ったら聞いておこうと思う。
「はいはい、ここら辺の奴は皆煉獄様がお好きだからね、ちゃんと代金だけ貰うよ」
「すいません、ご迷惑を掛けます」
「良いさ良いさ、それに兄ちゃんの手……料理人の手だね。お袋さんと同じだ」
「海外の料理を覚える為に旅をしていたんですよ」
「なるほどねえ、よっしゃ、良い店を知ってるから紹介文を書いてやろう」
大正時代の人間優しい、リアルだと絶対ありえないと思いながら案内された店を回り必要な食材をかき集め、俺は煉獄の屋敷へと戻っていくのだった。
「あら。カワサキさん、何をしているのですか?」
「ええ、ちょっとやりたいことがあったんですよ」
釜戸の扱いは難しいが、それでも使えないことは無い。細心の注意を払い黒豆を炒って、外の皮が割れたら取り出して少し値が張ったが乾燥なつめと共にすり鉢に入れて丁寧にすり潰す。
「お茶かしら?」
「ええ、とても身体に良いんですよ」
すり潰した黒豆となつめを急須の中に入れて、沸騰したお湯を入れてお茶を煮出す。
「どうぞ、昼食までの間これでも飲んでゆっくりしていてください」
「良いのかしら?」
「ええ、居候させてもらってますからね。家事は俺がやりますから」
だからゆっくりしていてくださいと言って瑠火さんを台所から追い出してほっと一息ついた。
(いや、あの人すげえな……)
クックマンの鑑定スキルがあるから判るが、あの人の身体の中身はボロボロだ。あっちこっちに痛みが見える、これは病気の予兆だろう。多分自分でもある程度自覚していると思うが、それをおくびにも見せない。なんて強い人なんだろうかと驚くのと同時に、このままでは死んでしまうが、最悪の段階になる前に俺がここに来た。それは彼女を治せるチャンスがあると言うことだ。
(死なせる訳には行かんからな)
俺の事を恩人と言っていたが、俺からすれば槇寿郎の方が恩人だ。そんな男の妻を死なせる訳には行かない。
「まだ間に合う、間に合わせてみせる」
生憎スキルは自由に使えず、アイテムボックスも時間制限がある上に人化している今の状態では、ユグドラシルの食材を引っ張り出すことすら難しい。それでも俺は今出来る最善を尽くしてみせる、治療系のスキルで少しでもあの人の病状を抑える事を誓い、かぼちゃを持ち上げる。
「ぬっくう……」
かぼちゃを切り分け、種と綿を取り出して皮も剥いて、半分は3cm角の角切りにして、残りの半分はすり鉢でマッシュ状にする。
「後はこれをっと」
砥いだ米の中にマッシュ状にしたかぼちゃを加えると水の中にかぼちゃが溶けるので、そこに具としてのかぼちゃを加え、塩を加えたら後は炊き上げるだけだ。
「……うまく行くといいけど」
かぼちゃの粥になってくれることを目標にしているが、最悪かぼちゃご飯になる。こればっかりは運だ、釜戸と御釜の習得レベルが低いのが原因だが、どっちになっても大丈夫なように料理の下拵えをしておこう。
「……やっちまったZE☆」
お粥の筈が、米粒まで黄色く染まったおいしそうなかぼちゃご飯に……違うそうじゃない、かぼちゃ粥を作るつもりだったんだ。
「……美味い、いや、美味いんだけどさあ……」
駄目だな、釜戸の使い方を早く習得する必要がありそうだ。今後の課題と言うことにしておこう。
「焼き魚と野菜とか卵を使うつもりだったんだけどなあ……」
仕方ない、かぼちゃご飯になってしまったので魚は夜に回そうと思い、次の料理の準備を始める。
「修正の範囲内だ。誤差だよな、水、酒に……」
誰も見ていないことを確認してアイテムボックスから鶏がらスープの素を入れて鍋の中でかき混ぜて、基本的な下味を作る。
「にんにくを潰して、白ネギは青い部分を使うっと」
大正時代の人間はあんまり栄養素とかを知っているわけがないので、とりあえず出来る範囲で大きく体質を改善して、そこからこまめな食事で身体を作れる食事に切り替えて、瑠火さんは弱っている身体を回復させる方向で考よう。
「しょうがを薄切りにして、木の実は洗ってっと」
しょうがに松の実、クコの実、甘栗、なつめ、八角と薬膳食材を大量に鍋の中に入れて中火で煮詰める。煮立てている間に白菜をざく切りにして、ネギの白い部分を斜め切りして、えのきは石突を切ってっとこれで基本的な下拵えは終わりだな。
「……うん、良い具合だ」
浮いてきた灰汁を取り除いたら、白菜などの具材を鍋の中に入れて火を通す。煉獄の家族は皆仲良しなので、この大きな鍋で十分だろう。
「あとはっと豚肉を盛りつければOKだな」
かぼちゃご飯はお櫃に移したし、後は槇寿郎が戻るのを……。
「今戻ったッ!」
玄関から聞こえてきた槇寿郎の声にナイスタイミングだと思い、俺は口元に浮かんだ笑みを隠す事が出来ないのだった。
ぐつぐつと煮える鍋。その下には見たことの無い箱……これは一体?
「西洋の物ですから、馴染みがないと思いますが危険はないですよ」
西洋の……大きな鞄を背負っていましたが、その中身なのだと少し納得出来ない部分があった物の、それで無理やり納得することにした。
「野菜が沢山ですね」
「うむ、それに米が黄色い。かぼちゃご飯か?」
米が黄色で中に入っているのがかぼちゃなので、かぼちゃご飯と言うのが判る。だけど大鍋1つに生の豚肉が置かれていて、何をするつもりなのか判らなかった。
「医食同源と言う言葉があります、食事は医療と同じであり、食事の中で病を治す。身体を強くするという考えなのですが、今回はその料理を作らせてもらいました」
医食同源……食事で病を治すなんて言う考えが在るとは思わなかった。日本よりも外の国の方がそう言う考えが発達しているのだとわかり、少し驚いた。
「この豚肉をこうして、この出汁の中に潜らせて色が変わったら食べごろだ」
「……それだけで大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫だよ。食べてみれば判る」
薄い豚肉だがそれだけで大丈夫なのかと不安に私達が見る中、槇寿郎さんが豚肉を潜らせて野菜と共に口に運んだ。
「む、美味い。色んな味がするな」
「たっぷりの野菜を使ってるからな」
槇寿郎さんが大丈夫と頷いたので、カワサキさんのやったように煮える出汁の中に豚肉を潜らせて、杏寿郎の椀の中に入れる。
「美味しいでふッ!!」
喜色満面という様子の杏寿郎に笑みを零しながら、私も肉を出汁の中に潜らせてポン酢の中に浸して口に運ぶ。
「……本当美味しいです」
「喜んで貰えて何よりだ」
にこにこと笑うカワサキさん。その顔に邪気や邪な色は無く、美味しいといって食べている私達を見て本当に嬉しそうにしていた。
「このかぼちゃご飯もあまくて美味しいです」
「かぼちゃは体の中を整える効果があるから身体に良いんだぞ、沢山食べるといい」
「はい!でも私はさつまいもご飯が好きです!」
杏寿郎の言葉にカワサキさんは目を丸くした後に、楽しそうに笑い出した。
「そうか、そうか、杏寿郎はさつまいもが好きか!」
「はい!食べると頭の中を神輿が通るのです」
「神輿か、ははは、そうかそうか、よしよし、今度はさつまいもで何かを作ろうな」
「はい!約束ですよ!」
カワサキさんは大柄で目付きも怖いが、杏寿郎は随分と慣れているようだ。
「むう……」
「ふう……」
「父上、母上どうかしました?」
食べているうちに身体が温かくなってきた。額の汗を槇寿郎さんと殆ど同時に拭った。杏寿郎は特に何も変化がないようですね。
「身体を温める食材を多数使っているからな、汗が出ているのは効いている証拠だ」
そう笑うカワサキさんの額にも汗が浮かんでいる。鍋を食べていて汗が出るのは当然だが、それとは違う汗。だが不快感は余り無いのが不思議だった。
「ご馳走様でした」
「はい、お粗末さまでした」
具材を食べ終えた後は汁も最後まで飲み干し、昼食にしては豪華すぎる食事は終わった。
「ああ、カワサキ。明日の昼間、お館様が謁見してくれるそうだ。明日は俺と一緒に来てくれ」
「判った。どんな人なんだ?」
「それは見てからのほうが良く判るだろう、だが俺もお館様は尊敬しているよ」
槇寿郎さんの言葉に楽しみにしているよとカワサキさんは笑い、食器を片付けながら私達に視線を向けた。
「食べた後は少し寝るといい。身体が温まっているからよく寝れると思う」
食べてすぐ寝る。そんな事はしたことないけれど、それも身体を作る事だと言われ、開いた障子から爽やかな風が吹き込むのを感じながら、杏寿郎を真ん中に寝かせ、川の字で眠りに落ちるのだった……。
「こんにちわ」
「カワサキ、邪魔するぞ!」
「いらっしゃい、槇寿郎、それに瑠火さんと千寿郎」
「はい、こんにちわ!もう少ししたら兄上も来ますよ」
「ははは、杏寿郎も来るならもう少し準備をしないといけないな」
わしゃわしゃと千寿郎の頭を撫で回すカワサキさんは楽しそうに笑い、おどけて見せてくれる。
「本日はよく来てくれました炎柱様、夕食の準備は既に出来ております。どうぞこちらへ」
「似合わんな」
「やかましい、んなこたあ判ってる」
くっくっくと笑い合う槇寿郎さんとカワサキさんを見ていると、扉が勢いよく開いた。
「申し訳ありません!父上、母上!遅れました!」
息を切らして杏寿郎がカワサキさんの店の中に入ってくる。今日はいつも羽織っている羽織は着ておらず、滅の文字が刻まれた黒い詰襟姿だ。
「遅れたことは気にするな、今日は祝いの席だ」
「はい、ありがとうございます」
「硬いですよ。杏寿郎、今日は貴方の炎柱就任の祝いの席、貴方が主役なのですよ」
「母上……はい、しかし俺はまだ未熟者で」
「ふん、そんなことは当たり前だ。これからもっと精進し、心を燃やせ、独りよがりの炎ではない、様々な者に助けられ、想いを受け取り、戦えぬ者の想いを背負い、その心を炎と燃やすのだ」
「はい!父上!判っております!」
「うむ、それに炎柱はお前に譲るが、俺はまだ鬼殺隊を辞めん。親の七光りなど言われぬように精進せよ」
槇寿郎さんの言葉に元気よく返事を返す杏寿郎を見て私は本当に嬉しかった。こうして大事な息子が炎柱の名を継ぐ事が出来る場に愛する槇寿郎さんと共に居られるのが本当に嬉しかった。そしてその機会を与えてくれたカワサキさんに感謝した。
「どうぞ、準備が出来ましたよ。洋風の祝いですから、少し違和感があるかもしれないですけどね」
こうして人の良い笑みを浮かべるカワサキさんはきっと福の神なのだと私は思う。
私は心からカワサキさんと出会えた事に感謝するのだった。
メニュー3 アイスクリームへ続く
煉獄家救済は続きます、カワサキさんの料理バフ+薬膳料理で体質改善をしておりますが、それだけではないので瑠火さんのイベントはまだ続きます。次回はアイスクリームと言う事で料理描写は少ないですが、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない