【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー7 炊き込みご飯 その1

メニュー7 炊き込みご飯 その1

 

カワサキさんがどんな人物か……か、とても穏やかでそして心優しい人物だ。

 

南無阿弥陀仏、あの人がいなければ私は今岩柱として鬼殺隊にいる事はないだろう……。

 

確かに私に鬼殺の道を示してくれたのは先代炎柱である煉獄槇寿郎様だ。

 

そして私の子らを保護してくれたのも煉獄槇寿郎様だ。

 

だが、断ち切れ掛けた家族の絆を繋いでくれたのはカワサキさんだ。

 

あの人がいなければ、きっと私は多くの事を間違えただろう……。

 

南無阿弥陀仏……忘れるな、カワサキさんは全ての柱に慕われている。

 

そして育手達にもだ、確かにあの人は隊士ではない、だが鬼殺隊に必要な方なのだ。

 

何故と思うかもしれないが、それが判る時が何れ来るだろう……。

 

 

 

 

 

山奥の寺の前に2人の男の姿があった。1人は短く刈り込まれた黒髪の大男ともう1人は金と赤と言う非常に派手な髪をした男だった。

 

「……だーれ?」

 

「すまないな、ここの責任……うーん。一番大人の人を呼んでくれるかな?」

 

「ぎょうめいさん?うん、判ったー」

 

黒髪の男……カワサキに言われた幼い少女はにぱっと笑い寺の中へと駆けて行く。そんな姿を見ながら俺は寺の奥に広がる山を見据えた。

 

「カワサキ……時間はさほどないぞ」

 

「判ってるさ。この近辺の藤の家の人に紹介してもらったんだ、拠点はここしかない」

 

古びた廃寺と言っても過言ではないボロボロの寺を見て溜め息を吐く、いや寺を見て溜め息を吐いたのではない、屋敷に残してきた杏寿郎と瑠火が心配でしょうがない。

 

「時間はある……まぁ俺のせいだからそこまで言えることではないが……」

 

「いや、お前のせいであるまい。早く見つけて屋敷に戻ろう」

 

「ああ、そうだな」

 

身重の瑠火だが、産婆だけでなく病の医者にも掛かっている。このままでは息子と引き換えに瑠火が死ぬ事になると聞いた俺は腕のいい医者を探そうとお館様に頼もうとした。だがそれにカワサキが待ったを掛けた。

 

『助ける方法はある、その為に俺達が初めてあった山に落とした俺の鞄が必要だ』

 

カワサキは料理人でこそあれ、医者ではない。だが俺は怒りを覚えるよりも先に、もしやと思ったのだ。

 

「小芭内の口を治したのはお前だな?お前は何だ?鬼ではないが……人間でもないな?」

 

判っていた。カワサキは普通ではないという事は…それでもこの気のいい男は、まるで10年来の友人のように思えていた。

 

「……まぁ人間じゃないなあ、うーん……座敷童的な……いや違うな、鶴の恩返しのような……」

 

「妖怪か?」

 

「正直俺も良く判らん。ただそうだな……人に害をなすことは無い、信用するしないはお前次第だが、俺は瑠火さんを助けたい。そこに嘘偽りは無い」

 

その真摯な言葉と瞳を俺は信じた。人間では無いとしてもカワサキを信じたいと思ったのだ。

 

「なら時間が無い、医者と護衛が着き次第出立しよう」

 

カワサキの荷物を見つけることが出来れば瑠火を救う事が出来る……それを信じて俺とカワサキはこの山に訪れていた。

 

「鬼の伝承が色濃く残る土地だ。夜の捜索は鬼が出るだろう」

 

「それでもだ。やるしかない」

 

「ああ、判っている。俺は柱だ、そこいらの雑魚鬼に遅れは取らん」

 

仮に胸に灯る炎が弱くなっているとしても……それでも妻とまだ見ぬ息子を死なせる訳には行かない。親として、父として、夫として俺は成すべきことを成す……今はそれだけを考える。余計な事を考えると再び心に灯る炎が弱くなってしまう気がするから……。

 

「お待たせいたしました。この寺の責任者の悲鳴嶼行冥と申します」

 

少女に手を引かれてきたのは上背こそあるが痩せ細った盲目のまだ少年と呼べる年頃の青年だった。

 

「ぎょうめいさん、お客さんはこっちだよ?」

 

「ああ、そうでしたか……申し訳ありません」

 

手を引いている少女に促され、行冥の視線が俺達に向けられる。

 

「それで何の御用でしょうか? ここは子供しかおりませぬが……」

 

盲目ではあるがこの寺を護っているのは紛れも無くこの男だ。子供に手を引かれているのは一種の擬態だな、油断無く構えているのを見れば俺達が子供達に害を成すと判断すればこの細腕で抗う覚悟が既に出来ている。

 

「山下の村の藤堂殿に言われてきた。この山の中に探し物がある。数日の間泊めていただきたい、無論只とは言わん。宿泊する期間は金を払う、それに」

 

隣のカワサキの背を押して前に出す、行冥は少し驚いた様子だが顔を上に上げた。

 

「料理人をしているカワサキと言う、滞在する間腕を振るわせて貰おうと思う。食材はこっちで持込だ」

 

「……このようなボロ寺で宜しいのですか?」

 

「ああ、ここじゃないと駄目なんだ。探し物はこの先の山でな……腰を据えて探したい」

 

カワサキの荷物があると思われる場所の近くまでは来た…だが、ここからが問題なのだ。カワサキ自身がどこで落としたかも判らないとなればこの広い山を虱潰しに探すしかない…だが、毎回山を登って来ては体力を消耗する一方だ。ならばこの古寺に泊まるのが最適なのだ。

 

「……判りました。あまり大したおもてなしも出来ませんが……どうぞ御緩りと……沙代、寺の中を案内し子供達に紹介してやっておくれ」

 

「はーい、おじちゃん達、こっちだよ!」

 

俺とカワサキを呼ぶ少女の後を歩き、寺の中に足を踏み入れる。あちこちから感じる観察するような視線はこの寺に住む子供の物だろう……伺うような、警戒するような視線を感じながらも俺を前を見る。

 

(待っていてくれ、瑠火……)

 

なんとしてもお前を救う手段を手にしてみせる。日に至る事の出来ぬ、間違い続きの男だが……愛する妻を救うため、このちっぽけな炎を燃やす事を胸に誓うのだった……。

 

 

 

 

古くはあるが、決して使われていないわけではない竈と茶釜。最初こそは料理を作るのに難儀したが、大分竈の扱いにも慣れて来たと思う。

 

「やれやれ、またか」

 

広間から聞こえてきた少年の怒声に腰を上げる。食事時のいつものお決まりの声だ、子供同士と思いあんまり介入しなかったが……こうも毎日続くと黙ってはいられない。

 

「だからなあ!てめえは意地汚いって言うんだ!」

 

「んだとおっ!」

 

黒髪に首元に勾玉付きの現代で言うチョーカーをつけた少年が自分よりも背丈の大きい子供に怒鳴りつけている。

 

「はいはい、喧嘩しない」

 

ぱんぱんと手を叩きながら広間に入るとここ数日で仲良くなった子供達から俺の名を呼ぶ声がする。

 

「何を喧嘩してるんだ?ん?」

 

「行冥さんがあんまり食欲がないからくれるって言うのを貰ったんだ、そしたら獪岳が……」

 

僕は悪くないという感じの子供。俺は溜め息を吐いた、槇寿郎が財布を渡してくれているので食材も豊富だし、子供全員が腹を満たすくらいの量は作ってある。

 

「お代わりは用意してあるから行冥のは取らない、行冥も強請られたら厨房に行くように言う事ッ!獪岳は悪くないぞ、むしろ悪いのはお前たち2人ッ!」

 

「は、はい……判りました」

 

「ご、ごめんなさい」

 

元々、食事を子供に譲るという習慣のある行冥と親元を捨てられたという理由で、無条件の愛を信用出来ない子供……か。

 

(俺も行くって言ってるのに……)

 

今も1人で俺の鞄を探している槇寿郎の事を思いながら、俺は厨に今日のおかずの川魚のソテーを取りに戻るのだった。

 

「……あんた変わってるな」

 

「ん? まぁある程度は自覚してる」

 

痩せているがしっかりとにんじんの形をしているそれを薄切りにしながら獪岳に返事を返す。

 

「別に怒らないから、荷物は戻しておいてくれよ」

 

「……怒らないのか?」

 

後ろ手に持っている予備の包丁と調味料の入った鞄の予備を机の上に置きながらそう尋ねて来る獪岳。

 

「怒って欲しいのか?」

 

逆にそう尋ねると黙り込む獪岳。口は悪いが、そう悪い子ではないだろう。俺からすれば十分いい子だと思う。ただ、口が致命的に悪いだけで、行冥のことを心配した結果があれでは口が悪いってレベルじゃないけどなと苦笑する。

 

「本気で盗む気なら怒るけどな。そうじゃないだろ」

 

初日に財布に手を出そうとしていたが、あまりにあからさま過ぎて怒られたいのかと思いめちゃくちゃ叱ったが、それから妙に獪岳に懐かれた気がする。

 

「……あんたお人よし過ぎるだろ?」

 

「よく言われるよ。でも俺はそれで良い」

 

騙される事に慣れているとは言わない。だけど色んな人を見てきたからこそ培った観察眼と言うものが俺にはある。獪岳は口は悪くても悪い子供ではない、それはここに来た初日で判っていた。

 

「行冥の事を心配してたんだろ? 憎まれ役も大変だ」

 

「……そんなんじゃない」

 

「ははは、素直になれよ、このツンデレ」

 

ツンデレ?っと怪訝そうな返事を返す獪岳。大正にはツンデレって概念は無いな……と改めて苦笑し、油抜きをした油揚げと1口サイズに切り分ける。

 

「あんたともう1人のおっさん、何を探しに来たんだ?」

 

「俺の鞄。これっくらいの奴なんだけど。知らないか?」

 

「知らない。行冥さんにあんまり山に入るなって言われてるし」

 

もしかしたら知ってるかなと思ったが、やっぱり山奥だから知らないか……と肩を落とし、よく洗った米を御釜の中に入れて水ではなく、鰹出汁を注ぎいれ具材のにんじんと油揚げ、それとまいたけを入れてざっとかき回す。

 

「……料理上手なんだな」

 

「これくらいしか特技が無い男なんでね」

 

料理くらいしか俺が自慢できる物なんてないさと笑い、醤油と酒で味付けして竈の上に御釜を置いた。

 

「それで昨日からずっと見てるけど、何かあるのか?」

 

「……いや、別に」

 

そっぽを向いて出て行く獪岳。その後姿を見ながら俺は左手で包丁を手に取り味噌汁の準備を始めるのだった……。

 

 

 

 

カワサキさんと煉獄殿が寺にいてくれるようになってから、寺の雰囲気は格段に良くなった。

 

「ぎょうめいさま、きょうはカワサキさんといっしょにやさいをうえたの」

 

「そうか、沙代は良くがんばったな」

 

えへへっと笑う沙代の頭を撫でながら思う、カワサキさんは何か探し物にここにきたのだが、私達の酷い食生活を見て痩せ細ったこの大地でも育てる事が出来る野菜を植えてくれた。

 

「じゃがいもはどんな場所でも育つ、水だけは忘れるなよ。それとあんまり水をやりすぎても駄目だからな」

 

「「「はい!」」」

 

最初は警戒していた子供達も美味い食事と面倒見の良いカワサキさんに良く懐いている様子だ。

 

「行冥さん、今日は風が強い」

 

「ああ、そうだな。獪岳、雨樋を見てきてくれるか?」

 

はいと返事を返し、寺の見回りに向かう獪岳。口は悪いが皆の事を良く見てくれている。子供に気を使わせている私自身が不甲斐無いと思うのと同時にどうしても甘くなってしまう私には獪岳のように、皆を叱ってくれる相手が必要だった。

 

「もうすぐ夕食だ。今日は早めに寝る準備をしたほうが良い」

 

「そうですね。そうしましょうか」

 

嵐が来ているわけでもない、それなのに妙に胸騒ぎがする。今日は早い所で寝る支度をしたほうが良いかもしれないと思った。

 

「はい、ぎょうめいさま」

 

「ああ。ありがとう」

 

沙代に手を引かれ自分の席に腰掛ける。するとふわりと良い香りが鼻をくすぐった。

 

「今日は炊き込みご飯と卵焼き、それと味噌汁にしたんだ」

 

卵……そんな高級な物を……子供達と私に栄養のある物を食べさせてくれようとするカワサキさんの好意に涙した。

 

「おまえ泣きすぎじゃないか?」

 

「すいません。これは性分なので……」

 

沙代から差し出された手ぬぐいを受け取り涙を拭ってから頂きますと子供達と手を合わせて夕食にする。

 

「ふわふわー♪」

 

「卵おいひい」

 

「茶色いご飯も味がするー」

 

子供達の楽しそうな声を聞いていると私まで楽しくなってくる。たった数日でここまで明るくなる物かと私自身も驚いている。

 

「……美味しいです」

 

「そいつは良かったな」

 

米に甘しょっぱい味が付いている。醤油と砂糖だと思うがそれが酷く優しい味になっている。それに鰹節の出汁で炊いたのか米に鰹節の味と香りが移っている。

 

(私の事も考慮してくれている)

 

仏門の物なので肉や魚は托鉢でもなければ口に出来ない。そこを考慮してにんじんと油揚げ、そして茸で味を調えてくれているのは本当にありがたい。

 

「おいしいですね」

 

「ああ、とても美味しいな」

 

ふんわりと焼き上げられた卵焼きはほんのりと甘く、醤油味の炊き込みご飯と非常に良く合う。

 

「カワサキさん、お代わりを」

 

「はいはい、沢山食べろよ」

 

獪岳がカワサキさんに率先してお代わりを頼むと、それに続くように普段私の食事を強請る子供達もお代わりと言い始める。

 

「並んでな、大丈夫だからな」

 

目が見えないからその顔を見ることは出来ないが、きっと優しい顔をしているだろう。そうでなければ子供達があんなにも懐くとは思えない、親が死んだ、親に売られた、そんな複雑な経緯を持つ子供は無条件に大人を信じる事が出来ない。けんかをしたり、物を隠したりするのは酷い事をしても大丈夫なんだという安心感が欲しいのだろう。血の繋がった親子ならば、どれだけ酷い事しても、怒られれば元の場所に戻る事が出来る。子供達の我がままは私の愛を試しているとさえ思える。

 

「カワサキさん、私もお願い出来ますか?」

 

「ああ、食え。上背があるのに痩せ細っているのは飯を食わないからだ。この子達の親なら飯を食え、身体をでっかくして子供を守ってやれ」

 

ずしりと重い茶碗に苦笑する。思えば、こんなに食事を口にしたのは何時振りだろうかと思う。子供の事を思い、自分の食事を少なくしてからやせ衰えた身体は実感している、だがカワサキさんの言う通りならば、こんな腕では子供達を守る事も出来ない。

 

「ぎょうめいさん、美味しい?」

 

「ああ、美味しいよ」

 

子供達を守る為には身体を大きくしなければならない、その為には食事をするしかない。カワサキさんの言う通り私は親なのだ、何をしてもこの子供達を守りたいと願っているのだから……。

 

真夜中に大きな音が響いた。その事に飛び起きた私は夜寝ている間に焚いている藤の花の香炉の匂いが途絶えている事に気づいた。

 

「行冥!行冥ッ!!子供を連れて逃げろッ!!」

 

「邪魔だアアッ!!」

 

「うっせえぼけえッ!!!」

 

激しい破壊の音とカワサキさんの怒声に何が起こっているのか理解した。夜盗か何かが寺に来たのだと……そしてそれに気付いたカワサキさんが応戦しているものだと思った。

 

「だ、駄目だ。行冥さん、ば、化け物がッ!」

 

「化け物?……鬼かッ!?」

 

この付近には鬼の伝承が多く残っている。まさか真実だったとは、しかしそうなればカワサキさんが危ないと立ち上がる。

 

「うわああああん……か、かいがく、かいがくがあ……」

 

「えぐ……えぐっ、うわああんッ!!」

 

子供の泣き声と短い呼吸を繰り返している音が聞こえ、顔から血の気が引いた。

 

「獪岳……獪岳はッ!」

 

「い、一番最初に化け物に気付いて……えぐっひぐっ……」

 

「藤の香を投げつけて、逃げろって……」

 

虫の息に近い呼吸音が獪岳の物だと気づいた時、私は強く拳を握り締めていた。

 

「誰でもいい、獪岳の傷口に布を、それと縛れるのなら縛ってくれ頼んだぞッ!」

 

静止する子供の声を振り切って寝室を飛び出す、音だけで鬼の位置を予測して全力で拳を振り抜いた。

 

「ぎゃあっ!?」

 

「行冥、悪い……くそったれ、鬼っつうのはこんな化けもんか……よ。いちち……」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「おう、男は黙ってやせ我慢だッ!!」

 

声を張り上げるカワサキさんだが、その声に元気が無い、間違いなく大怪我をしている。ここは自分が何とかしなければ、そう思った時燃えるような音が響いた。

 

「弐ノ型 昇り炎天ッ!!」

 

「あ……」

 

煉獄様の声と同時に聞こえた力ない化け物の声。

 

「カワサキ!行冥!大丈夫か!」

 

寺中に響くような大声で安否を尋ねて来る煉獄様の声に安堵しかけて、すぐに気を引き締めた。

 

「獪岳が!獪岳が怪我を!」

 

目が見えないので獪岳の怪我の具合がわからない、命に関わる怪我なのか、ほんの少しの怪我なのかそれすらも私には判らない。

 

「大丈夫、獪岳の血は殆ど俺のだ。獪岳が気絶してるのは、血を見た事によるショック性のもんだ。殆ど怪我はしてないはず……」

 

「他人の心配をしている場合か!」

 

「大丈夫……俺はそう簡単に死ぬような体質じゃない。俺よりも子供を見てやってくれ」

 

「しかし、「大丈夫だ」……っ判った!行冥も来い!」

 

殆ど強引に寺の中に連れ込まれ、煉獄様に手助けされながら私は子供達の手当をするのだった……。そしてこの夜が私「悲鳴嶼行冥」の人生の転機になると言う事を私はまだ知らないのだった……。

 

 

 

 

 

席について注文した料理が来るのを待つ大柄の盲目の男性。だがその大柄な身体がそわそわと動いていて、その体格に見合わない愛らしさが見え隠れしていた。

 

「行冥様、もうすぐですからね?」

 

「む、判っている。まさか、また揺れていたか?」

 

「はい、それは凄く」

 

「……南無阿弥陀仏」

 

「もう、それで誤魔化さないでくださいよ。それにこんなに泣いて」

 

沙代に顔を拭かれている岩柱悲鳴嶼行冥。普段厳格な行冥の素がカワサキの店では良く見られる。

 

「今日は私が作りましたから、きっと美味しいです。……多分」

 

「ふふふ、ではお前の修行の成果を楽しみに賞味するとしよう」

 

行冥と沙代がそんな話をしていると扉が開く音がする。黒い三角模様が刻まれた羽織を着た獪岳がその手に買い物篭を持って帰ってきたのだ。

 

「あ、お帰り獪岳兄さん」

 

「兄さん言うんじゃねえ……「獪岳」……行冥さん……沙代、お前行冥さんがいるから兄さん言いやがったな?」

 

「へへー♪あ、そろそろかなー」

 

逃げるように厨房に向かう沙代に獪岳は肩を落とした。

 

「随分と疲れているようだな」

 

「……カワサキさん専属は疲れますよ、あの人突拍子もないことしますからね。聞きました?花柱の件」

 

「聞いたぞ、上弦の弐の顔に飛び膝蹴りしてそのまま口に香辛料を突っ込んで、酒を飲ませて香辛料を無理やり飲み込ませたとか」

 

「……一緒にいた俺は死ぬかと思いましたよ……」

 

幸せの箱の穴は埋まったが、変わりに胃に穴が空いてる疑惑がある獪岳は肩を落として店の奥へと消えていく。行冥は温かいほうじ茶を飲みながら自分が頼んだ炊き込みご飯が来るのを微妙にそわそわしながら待っていた。

 

「はい、お待たせしましたー。秋刀魚の炊き込みご飯です」

 

「秋刀魚か」

 

「美味しい時期だから秋刀魚で炊き込みご飯にしたんです」

 

秋刀魚を丸々1匹使った炊き込みご飯に行冥は頬を緩め、沙代がよそってくれた茶碗を受け取る。

 

「うむ……美味い」

 

秋刀魚の脂が米に染みこみ、少し辛口のそれに行冥は舌鼓を打った。そして沙代はその言葉に満面の笑みを浮かべた。

 

「本当ですか!最近はカワサキさんに褒められる事も多いんですよ!」

 

Vっとピースサインをする沙代に隊士や隠からほうっと言う溜め息が零れる。だが、行冥の義娘の悲鳴嶼沙代に告白する勇気のある者はいない。鬼殺隊最強の一角と言われる行冥と、口ではなんだかんだ言っても沙代に甘い獪岳も通常の階級ではなく、カワサキ専属の護衛と言う事で甲に順ずる階級扱いである。そんな2人に喧嘩を売る勇者はおらず、今日もこうしてころころと表情の変わる沙代はカワサキの店の看板娘としてその顔に笑みを浮かべ仕事をしているのだった……

 

 

 

 

悲鳴嶼行冥

 

鬼襲撃時に鞄を探しに来ていたカワサキと槇寿郎によって寺の子供を1人も失う事なく、悪夢の夜を終えた。その後子供を守る為に、そして自分の桁外れた膂力を知り槇寿郎の紹介で岩の呼吸の育手の元を訪れ、呼吸を習得した後、カワサキブートキャンプの近代的トレーニングで筋肉と体格の大幅なバンプアップを行われた結果、原作よりも早く柱へと到達した。なお、岩柱屋敷は鬼の襲撃によって孤児になった子供達の一時預かり所となり、行冥のことを兄や父のように慕う子供と猫に囲まれて暮らしている。

 

 

 

悲鳴嶼沙代

 

行冥の義娘になった沙代ちゃん。鬼ショックを回避した為、表情豊かの笑顔良しの美少女に進化した。

現在はカワサキの店の給仕兼料理人見習いとして過ごしている。

 

 

 

 

桑島獪岳

 

原作では金を盗んで寺の子供に追放されてから転落人生だったが、カワサキがいたことで叱る相手がカワサキになったため寺で子供達と寝ている間に鬼に襲われた。一番最初に気付き鬼に応戦したが、殴り飛ばされ一時意識不明になったが後に持ち直し、行冥と同じく鬼殺隊に入る事になった。

カワサキ専属護衛と言う事でカワサキの店と屋敷を行ったり来たりしているが、割と後先考えないカワサキに振りまわされがち、瀕死になった経験多数だがカワサキは嫌いになれない複雑な年頃。メンタルケアを施された結果、口は悪いが根は好青年のややひねくれ者となった。善逸とは仲が良いとは言えないが、悪くも無い微妙な距離感を持つことになった。

 

なお最近死んだと思ったのは上弦の弐に飛び膝蹴りを敢行したカワサキを見た瞬間だとか……。

 

 

 

 




メニュー8 田舎風お弁当へ続く

ここら辺はご都合展開にしました、次回はまさかのゲストを出しての話にして行こうと思います。そして今回の話は「村人(LvMAX)」様よりのリクエストでした。その1の通り、また別の視点で炊き込みご飯は行おうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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