【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
メニュー12 炒飯
あァ?てめえ、それ誰から聞いたァ?
玄弥から……ちっ、余計な事をよぉ……。
ああ。そうだよ、俺は鬼殺隊に入る前からカワサキさんの事を知ってる。
俺も、玄弥も匡近もあの人に世話になった時期がある。
呼吸を使えねえ、玄弥の為に色々考えて貰った。
死に掛けていた匡近を助けてくれたのもあの人だ。
それに何よりお袋達も助けてくれた。
俺にとっちゃあ大事な恩人なんだよ。
そりゃあ面は悪いが……あぁ?似たようなもの……?
てめえ殴るぞぉッ!!
人を外見で判断するじゃねえッ!!
あーもうあっち行けぇ、俺はてめえに話すことなんかねえ。
カワサキさんの事を知りたければ他の奴にでも聞きに行くんだなぁ。
その日鬼殺隊の隠は勿論、隊士、柱も総動員でカワサキを探していた。その理由は1つ……カワサキが姿を消したのだ。
【良さそうな食材を探してきます カワサキ】
「「「「また居なくなったぁぁッ!!!!!」」」
メモ書きを残して姿を消したカワサキが原因だ。カワサキは料理人だがとにかくアグレッシブだ、珍しい食材、料理の話を聞けば誰にも何も言わずメモだけを残して姿を消す事が非常に多かった。
「誰だぁ! カワサキに何か料理か食材の話をした奴だ! 特定しろ!!」
「探せ探せ!! あの人、鬼に狙われてるんだよ!!」
「やっぱりカワサキさんの付き人って必要じゃないですか!?」
そう最近鬼がカワサキと言う料理人を探していると言うことは鬼殺隊で把握していたが、カワサキには教えていなかった。その擦れ違いによる悲劇がカワサキ単独での食材探しの旅だった。鬼殺隊がてんやわんやになっている頃……カワサキはと言うと……。
「あれえ? お前さん、前に山の馬車の所であったよなあ! 元気にしてたか?」
「ええ、元気ですよ。貴方もお元気そうで何よりです」
鬼殺隊の宿敵「鬼舞辻無惨」と夕暮れの山中でばったり出くわしていたりするのだった……。
「食材探しですか?」
「そうそう、世話になってる所がさ、色々融通してくれるんだけどさ。目利きが全然なんだわ」
鳴女にあの時の料理人を見つけたと報告を受け、私自ら動いたが、この男は私の事を人間だと思っているのか警戒する素振りも何も見せない。
(だがこれは好都合)
異常者が近くにいない今、この男を攫うには良い機会だ。
「あ、そうそう、俺カワサキって言うんだ。あんたは?」
「私ですか? 月彦と言います。貿易商ですね」
「へえ、貿易商かあ! それなら海外の調味料とかも手に入るんだろうなあ」
にこにこと楽しそうに笑うカワサキと山道を歩く、もう少しすれば日が完全に落ちる。そうすれば鳴女の血鬼術で無限城に連れて帰ればいいとほくそ笑んでいると脇道から姿を見せた女が声を掛けてきた。
「もし、どちらへ行かれるのですか?」
「ああ、この先で宿とかがないかなあっと」
「そうですか、ですがこの先の集落には宿は無いですよ?」
えっとカワサキが驚いた様子を見せるが、私は声を掛けてきた女に纏わり付いている香りに驚いていた。
(稀血……しかも極上の……)
まさかこんな所でこれほど上質な稀血に出会うとは……私はついている。
「お困りでしたら、狭い家で申し訳ありませんが、寝床をお貸ししましょうか?」
「いやあ、助かります。良かったなあ、月彦」
何故か私まで泊まることになったが……まぁ焦る事はあるまい。時間はたっぷりあるのだからな……。
「お世話になります」
「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」
それに濃い稀血の香りをさせているが、この女自身は稀血ではない、夫か子供か……はたまたその両方か……それを見極めるにもついて行くのも良いだろうと思い、私はその女の後を追って歩き出したのだった。
「おじさん、凄いねえ。なにその服」
「これはね、洋装って言うんだよ」
「へえーおしゃれー」
……だが私は来てすぐ後悔した。あの女の子供は7人も居た……きゃっきゃっと騒ぎ回る餓鬼はうるさくて仕方ない。それに母親よりも背丈の大きい2人の子供が凄い目で睨んでいるのも腹立たしい、本当ならば私を不快にさせたという事で皆殺しなのだが厨から漂ってくる香りに私は怒りを飲み込んだ。今カワサキが料理をしている、ここで暴れて食べられないのは嫌だし、なによりも本当に鬼が食事を出来るのかそれを確かめる為に餓鬼共が鬱陶しいと思いながらも笑って対応するのだった。
俺達に泊まる所を貸してくれると言った女性……「不死川志津」さんは子沢山で7人の子供がいたが、夫はいなかった。多分居たんだが、凄い顔で俺を睨んでいる白髪の少年とその少年と良く似た顔つきの少年の目を見れば判る。
(DVか……)
酒乱か何かで夫から逃げてきたと言う所だろう。そんな所に俺や月彦が来れば警戒するのは当然だ。だから俺はその目に怒りを覚えるでも、苛立つ訳でもなく、泊めてくれるお礼と言う事で料理を振舞わせてもらう事にした。
「お米と野菜くらいしかないんですけど……」
「大丈夫ですよ、俺は料理人ですからね。それに買出しの帰りでしたから、泊めてもらうお礼に色々と振舞わせてもらいます」
すみませんすみませんと謝る志津さんだが、泊めて貰うのだ。これ位しなければ、バチが当たるという物だ。
(竈か……ま、行けるだろ)
薪をガンガン入れて火を強くし、鉄鍋を加熱する。その間に青ネギの青い部分をみじん切りにし、鞄から取り出す振りをして、アイテムボックスから調味料を取り出す。
(ごま油、鶏がらの素っと)
ごま油と鶏がらの素と混ぜ合わせ、摩り下ろしにんにくとネギも入れて味付けの準備も終えたら、豚バラを取り出す。
「お肉なんてとんでも」
「良いから良いから、気にしないでください」
この時代で7人の子供を育てるのは並大抵の事ではない、しかも女手1つとなればなおの事。だから気にしないでくださいと言って豚バラを1口サイズに切り分けて、溶き卵を作った所で豚バラを加熱した鉄鍋の中に入れる。火が通ったら混ぜ合わせた調味料を全て入れる。
「良いにおーい」
「お腹すいたぁ」
「おじさんまだぁ」
月彦にじゃれ付いていた子供達がまだまだと騒ぎ始める。
「こら、迷惑を掛けたらだめだろ」
「座って待ってればすぐに食べられるさ」
俺を睨んでいた2人が笑顔で言うと幼い子供達ははーいっと元気よく返事を返す。やっぱり子供は素直で元気が一番だな、ネギとごま油の香りが出てきたら白米と溶き卵を加えて勢い良くかき混ぜる。米がぱらぱらになってきたら鉄鍋の持ち手を掴んで持ち上げる。
「よっ、ほっとっ!!」
「「「おおおーッ!!」」」
鉄鍋を振るい米を躍らせると子供達が目を輝かせる。うんうん、良いリアクションだ。4~5回それをやって見せたら塩胡椒で味を調えたらまた鍋を振るいお玉の上に炒飯を乗せ、それを数回繰り返してドームを大きくしたら皿の上に盛り付ける。
「まんまるー」
「すごいすごい!」
「おじさんすごーい♪」
「ははははッ! そうだろー? おじさんは凄いんだぞぉ」
半球型に炒飯を盛り付け机の上に並べて、匙を差す。
「はい、どうぞ、召し上がれ」
「本当にありがとうございます」
「いえいえ、感謝するのはこっちですよ、ささ、どうぞ。遠慮しないで食べてください」
エプロンを外して、俺もボロボロの畳の上に座りながらそう声を掛けるのだった……。
お袋が泊まる所がないから連れてきた2人組みに俺も玄弥も警戒していた、だけど下の妹弟の寿美・貞子・弘・こと・就也たちは見たことのない洋装の2人に興味津々って感じで俺は頭を悩ませていた。
「おいしい」
「はむはむー」
「おじさん凄いねー」
「おいしいー♪」
「むぐむぐ」
だがそれも黒髪の目付きの悪い男「カワサキ」の作ってくれた料理が机の上に並べられるまでだった。米と卵と肉を一緒に炒めると言う料理を振舞ってくれたのだが、それが凄く美味かったのだ。
(なんでこんなに美味いんだ)
米と具材を一緒に炒めただけなのに、こんなにも美味い。それが不思議でしょうがなかった、匙で持ち上げるとパラパラと米が1粒1粒零れ落ちる。それを口に運べば卵の柔らかい味と豚肉の脂が染み渡った米の味がしておかずなんかないのに、口にどんどん運んでしまう。
「美味しいですね、これはどこの国の料理ですか?」
「清だな、炒飯って言うんだけど簡単に作れて美味いだろう?」
中国……海の向こうの国の料理を知っているなんて、この男は実は本当は凄い料理人じゃないのだろうか。
「これ凄く美味しいですね」
お袋も満面の笑みを浮かべている。糞親父が死んで、険しい表情をしている事が多かったお袋が笑っているのが凄く嬉しかった。
「もぐもぐ、兄ちゃん。美味しいね」
「ああ、美味い」
米を噛んでいるとその中カリカリに焼かれた豚肉が出てきて、さらに匙で炒飯を掬う。また食べると豚肉が出てきて、また炒飯を掬うという繰り返し、美味しくてただただ無言だった。
「やさいも食べれるよ」
「そっかー、偉いなあ」
ネギの青い部分の香りは臭いと思っていたのに、これは臭くない。むしろその香りが更に食欲を進ませる。
(味付けは塩だけなのに)
肉と卵こそ使っているが味付けは塩だけのはず、それなのになんでこんなにも香りも味もいいのだろうか。
「「「あ」」」
俺と玄弥、そして月彦の3人の悲しそうな声が重なった。夢中で食べ進めていて空になっていることに今気付いた、だけどまだ全然物足りなくて……思わずカワサキを見てしまった。
「よっしゃよっしゃ、また作ろうか」
しかしカワサキは嫌そうな顔をせず、また炒飯を作る為に厨に向かった。最初あんなに睨んでいた俺達を怒るでもなく、嫌そうな顔をするでもない。またお代わりを作ってくれるというカワサキに俺は思わずすいませんと謝った。
「謝る事はねえよ、子供は飯食って、遊んで寝て、そんでいい。無理に大人になる必要も無い、さーまだ食べたいのはいるかー……なんでお前まで……」
「いや、美味いから……」
「はは、貿易商の金持ちの舌にも合ったのなら俺の腕も捨てたもんじゃないな」
そう笑い上機嫌で料理を始めるカワサキを見ていると月彦は席を立った。
「おじさん食べないの?」
「いや、勿論いただくよ。ちょっと月でも見てこようかとね、すぐ戻るよ」
そう笑うと月彦は家を出て行き、俺達はカワサキが鍋を振るうたびに具材が宙を舞うのを見て歓声を上げるのだった。
「な、なんで貴方がここにいい」
「うるさい、目障りだ。消えうせろ」
席を立った月彦は稀血に引かれてやって来た鬼を粛清し、腕を振るって血液を飛ばした。
「ふん、良い気分だったのに、鳴女。黒死牟を呼べ、近づく鬼を排除させる」
べんっと言う音と共に姿を見せた黒死牟に無惨は不機嫌そうに笑う。
「近づく鬼は私の楽しみを邪魔した、発見次第殺せ」
「御意……」
カワサキの食事は今食べても美味かった、つまり鬼でも食べられる料理を作れる男。その男が不死川家の人間を気にしている中、あの一家が死んだとなれば、もしかすると鬼が食べられる食事を作れなくなるかもしれない。そのリスクを無惨は避ける事にした。
「おーい、そろそろ出来るぞー」
「ああ、今行く」
家のほうから聞こえてきたカワサキの声。その声が聞こえたときには既に冷酷な鬼の首魁「鬼舞辻無惨」の姿は無く、貿易商「月彦」の姿があるのだった……。
「いらっしゃいませー」
「おう、カワサキさん。玄弥達は?」
「もう来てるよ、遅れたな」
「ちっと任務がよ、梃子摺ってな」
「ははは、天下の風柱も梃子摺るか、これは面白い」
上機嫌に笑うカワサキにむっとした表情の実弥だが、頭をがりがりとかきむしりながら個室に足を向ける。
「唐揚げ、餃子、後スープと炒飯の特盛」
「あいよ、要はいつも通りだろ?」
カワサキの言葉に実弥はああっと返事を返し、今度こそ個室の中に入って行った。
「遅いぞー、実弥」
「兄ちゃん、遅かったな」
「ああ、すまねえなあ。ちっと面倒な鬼でよ」
親友の匡近と弟の玄弥に迎えられて、普段怒り顔の実弥もその表情を和らげる。
「お袋から手紙だとよ」
「え? 本当! 後で見る」
「おう、俺も見てねえから後で一緒に見るか」
カワサキとの縁で藤の家紋の家へ就職が決まった志津と、そんな志津の手伝いをしている年の離れた5人の弟と妹。
「ったく、俺を追いかけてお前まで鬼殺隊に来ちまってよぉ……」
「そ、その話はもういいだろ!?」
「どうせならお袋の手伝いとかをしてくれてたら俺も心配しねえんだけどなあ」
「はは、大丈夫さ。玄弥は強いよ」
「……まぁ、それは俺も認めるけどよ……あんまり無理すんなよ」
「うん、判ってる」
普段見ることのない和やかな雰囲気の実弥達がそのまま水を飲んで話をしていると、個室の扉が開いた。
「はーい、お待たせー。唐揚げと餃子から持って来たわよー」
「すぐに匡近さんのうどんとかも持って来ますねー」
思春期真っ只中の玄弥がカナエと沙代の姿に硬直するのを見て、実弥と匡近は楽しそうに笑う。そこに風柱「不死川実弥」としての姿は無く、気の良い兄としての不死川実弥の姿があるのだった……。
メニュー13 パエリアへ続く
不死川家生存ルートです、無惨様が頭無惨様だったので、稀血とカワサキさんの料理を秤に掛けて、カワサキさんの料理を優先。満腹になって満足げに無限城に帰りカワサキの事を連れ帰るのを忘れていて、そのころには鬼殺隊と合流していたカワサキさんに無限城でうなだれている無惨様とかになっております。1000年ぶりの食欲に勝てなかった無惨様ですね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない