【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー15 甘露寺IN煉獄家 その2

メニュー15 甘露寺IN煉獄家 その2

 

鉄板の前で楽しそうに鼻歌を歌いながら調理しているカワサキさんは色々と噂の多い人だ。

 

曰く、お館様の料理番にして相談役。

 

曰く、並みの柱よりも高い権力を持つ。

 

曰く、最終選別のやり方に異議を唱えた。

 

曰く、死に掛けている時にカワサキさんの料理を食べたら持ち直した。

 

曰く、柱でもカワサキさんには頭が上がらない。

 

曰く、老いない、ずっと鬼殺隊に貢献している。

 

曰く、日輪刀も呼吸も使えないが、上弦の弐と殴り合い無事に生存した。

 

曰く、柱最強と言われる煉獄槇寿郎の妻の命の恩人である。

 

 

眉唾物から、そうかもと言う話を色々と聞いているけど、私の中ではカワサキさんは優しくて、良い人である。

 

「この後はどんなものが食べられるんですか?」

 

「んー? 鶏の照り焼きと、牛ステーキかな」

 

鶏の照り焼きなんて間違いなく高級品だ。でもビフテキはそんなにと思わず思ってしまう。

 

「ははは、心配ないぞ。甘露寺、カワサキさんが焼いてくれる牛肉は凄く美味いッ!」

 

「うむ、確かに並みのレストランよりも遥かにうまい、安い肉の筈なのにな」

 

「そこは腕さ、高級な物だけがいいとは限らないって事よ。と言う訳で、楽しみに待っていてくれよ」

 

「は、はいッ!」

 

鶏肉よりも美味しい牛肉ってどんな物なのだろうと期待していたのだが、私の思考は一瞬で鶏肉に奪われた。

 

「うわあ……美味しそう」

 

「ふふん。自信作なんだぜ」

 

粉を塗した鶏腿肉が皮の面から鉄板の上に置かれ、食欲をそそる音が部屋の中に広がる。

 

「うむ、今の内だな」

 

「そうですね。父上!」

 

大師範と師範がぺたぺたと丼にご飯を山盛りにしているのを見て、私も少しはしたないと思いながらもご飯を盛り付ける。

 

「よっと」

 

「あれ。脂を取っちゃうんですか?」

 

「んー、そうだよ、あんまり脂が多いと味が馴染まないからな」

 

畳んだ清潔な布で鶏肉の周りの脂を吸い取る。そんな調理法があるんだと思っていると、鶏肉がまず1枚だけずらされ、タレを掛けられる。鉄板の焦げる音と香ばしい香りに涎が沸いてくる。だけど、仕上げられているのは1枚だけ……。

 

(そっか、大師範からなんだ)

 

やはり家主からだ。私は何番目かなあと思いながらカワサキさんの手元をジッと見つめる。

 

「ほい、焼き上がり。まずは槇寿郎からな」

 

「うむ、待っていた」

 

切り分けられた鶏腿肉と刻んだキャベツを盛り付けられた皿を受け取り、食事を始める大師範が羨ましいと思いながら、早く私の分が焼けないかなとそわそわしながら待つのだった……。

 

 

 

 

甘露寺と杏寿郎には悪いと思うが、カワサキは基本的に俺を立ててくる。家主であり一家の大黒柱なのでそれは当然だが……。

 

(まだまだ子供か……)

 

ジッと俺の手元の照り焼きを見ている杏寿郎に苦笑しながら、照り焼きを摘み上げる。皮目はパリッと焼かれ、醤油ベースのタレで焼かれたそれは照り焼きの名の通り見事な光沢がある。

 

「うむ」

 

口の中に入れて噛み締めると真っ先に感じるのはその甘辛い味わいだ。これが実に飯に良く合う、その次に香ばしく焼かれた鶏皮の食感、そして最後鶏肉の肉汁がたっぷりと口の中一杯に広がる。

 

「槇寿郎様、おかわりをどうぞ」

 

「む、すまないな。瑠火」

 

あっという間に空になった丼を見て、即座にお代わりを差し出してくれる瑠火にありがとうと口にし、ずしりと重い丼を持ち上げる。

 

「はい、お待たせ」

 

「うむ! 待ちました。美味いッ!!!」

 

杏寿郎が中心の身の厚い部分を食べて美味いっと叫んでいるが、いつも最後の縁ばかり残って悲しそうにしているのを覚えていないのだろうか?

 

(まずは縁、身の厚い中心は残す)

 

そうすれば最後には分厚い部分が残っていると言う大変嬉しい状況になるのだ。

 

「はい、随分と待たせたな。蜜璃もどうぞ」

 

「は、はい! いただきまーす♪」

 

幸せそうに飯を食う甘露寺を見て正直少し感心する。飯を食い、身体を作るのは鬼殺隊の基本だ。それなのに俺達の食欲についてこれる隊士はそうはいない。

 

(天元と行冥くらいか……実弥も頑張っているがな……)

 

この食事形式はカワサキの訓練。食事をどこまで食べられるかと言う形式のものだ、無論身体を壊すほどではないが食べ切れない者はやはり多い。しかしこれだけの量を幸せそうに食べているのを見るとなるほど、杏寿郎が継子に選んだのも納得である。

 

「甘い、これ凄く甘いですね。砂糖ですか?」

 

「砂糖と酒と醤油と巣蜜だ」

 

「巣蜜!? そんな高級なものまで使っているんですか!?」

 

「おうよ、良い味だろ。それと後1つ隠し味があるんだが……判るかなあ?」

 

くっくっくっと笑うカワサキに苦笑する。ちょっといたずらめいていると言うか……カワサキにはこういう部分があるんだよと肩を竦め、中心部分の身を寝かせ、その上にからしを少しだけ乗せて飯と共に頬張る。

 

「うむ、美味い」

 

「はい、本当に美味しいですね! 父上!」

 

鶏肉の脂を打消しはしないが、そのピリリとした味わいが口の中を引き締めてくれる。

 

「……む、むうう……千寿郎」

 

「駄目ですよ」

 

「そこを何とか……」

 

「幾ら兄上でも嫌です」

 

「どうしてもか?」

 

「どうしてもです」

 

やっぱり縁の部分だけを残してしまい、身の厚い部分が欲しいと千寿郎に強請る杏寿郎。

 

「弟から飯をたかるな、馬鹿者」

 

「むむ、すみません、そしてありがとうございますッ!!」

 

俺の分を渡すと嬉しそうに笑う、杏寿郎に俺も甘いなと苦笑しながら、飯の上に鶏肉を乗せ丼のようにして飯をかき込むのだった……。

 

 

 

 

鉄板の上で香ばしく焼かれた大きな牛肉の塊。それは見ているだけでも美味しそうなのだが……どうしても箸が伸びない。

 

「む? どうした。甘露寺、牛肉は苦手か?」

 

「い、いえそう言う訳ではないんですけど……」

 

嫌いなものなんて殆ど無い、どんな物も美味しく食べれると私は思っていた。だけど……どうしても手が止まってしまう。

 

「あのお……これ中赤いんですけど……」

 

そう、そこなのだ。外側は香ばしく焼かれているのに中がうっすらとピンク色。生焼けで大丈夫なのかと言う不安でどうしても手が止まってしまうのだ。

 

(師範達は平気そうなんだけど……どうして?)

 

生焼けのお肉なんて食べたらお腹を壊してしまう、師範達の分は違うのかとそちらに視線を向けるけど、大師範も師範も瑠火さんも、千寿郎君も中が赤い肉を食べている。

 

(ど、どうしよう……これ大丈夫なのかしら)

 

1人だけおろおろしているとわさび醤油が目の前に置かれた。

 

「これはレアステーキって言うもんで、中が赤いが、しっかりと火が通ってる。だから食べても大丈夫だよ、それでも不安だったらわさび醤油をつけるといい」

 

海外では普通の料理法らしい……ちょっと怖いけど、箸で摘んでわさび醤油を付けて頬張る。

 

「……」

 

「どうだ? 美味しいだろ?」

 

「はいッ! すっごく美味しいです!!」

 

外はカリッとしていて、でも中は柔らかい。しかしそれでいて生肉と言う食感ではなく、しっかりと火が通っているのが判る。

 

「あむっ! んーー美味しいですッ!!」

 

「はは、そうかそうか。喜んでもらえると嬉しいよ」

 

お米の甘さと塩と胡椒が利いたお肉は肉汁がたっぷりで美味しい。しかもわさび醤油につけると牛肉の筈なのに、刺身のような味がして凄く美味しい。

 

「あむあむッ! んぐんぐッ!! 牛肉にわさびって合うんですね!」

 

「ああ、合うんだぞ! 俺も最初は驚いた! だが今ではわさび醤油は牛肉には外せないと思っている!」

 

美味い、美味しいと言う声が師範と重なる。最初は中に火が通ってるかどうか怖いと思っていたのが信じられないほどに、箸が進む。

 

「しかし、やはり最初は驚くものだな」

 

「槇寿郎様も驚いてましたものね」

 

「うむ。生肉っと思ったものだ」

 

あ、やっぱり最初は驚くんだ。でも食べてしまえばその驚きは、美味しさへの驚きに変わる。

 

「カワサキ殿! もう1枚食べたいッ!」

 

「わ、私もです!」

 

師範がお代わりと言うので私もお代わりと言うとカワサキさんは優しく笑う。

 

「はいはい、じゃあもう一枚焼こうかねえ」

 

「俺もくれ」

 

「あ、あの私も出来たら」

 

大師範や千寿郎君もお代わりと言うとカワサキさんは本当に楽しそうに笑った。その姿は本当に優しくて、故郷のお父さんとお母さんを私に思い出させるのだった……。

 

 

 

カワサキの店の扉が勢い良く開き、蜜璃と小芭内が揃って入店する。

 

「こんにちわー!」

 

「……今大丈夫だろうか?」

 

「大丈夫だよ。座りな」

 

カワサキを気遣って人の少ない時間にやってきた2人にカワサキは笑みを浮かべる。

 

「何にする?」

 

「今日はえっとちらし寿司と手巻き寿司にしたいの、勿論伊黒さんも」

 

蜜璃の注文を聞いて、カワサキが目を細める、その顔を見て伊黒は耳まで真っ赤にする。

 

「それだと、ここより奥の部屋がいいな」

 

「良いのかしら!?」

 

「良い良い、店主が良いって言ってるんだ。良いに決まってるだろ?」

 

「伊黒さん、行きましょう!」

 

「あ、ああ……行こう」

 

蜜璃にぐいぐい引かれていく伊黒を見送り、カワサキは本当に楽しそうに笑う。

 

「なるほどなるほど、良い傾向だな」

 

小芭内は最初蜜璃から逃げる傾向があったが、こうして2人で来るようになったのを見て、カワサキは楽しそうに笑いながらちらし寿司と手巻き寿司の準備をする。

 

「はーい。お待たせー」

 

「わー! やっぱりカワサキさんの散らし寿司が一番綺麗ね!」

 

「あ、ああ。流石カワサキさんだ」

 

「褒めてもハマグリの吸い物とお菓子くらいしか出ないぜ?」

 

「それは十分に出ていると思う」

 

小芭内の突っ込みに楽しそうに笑いながら、カワサキはごゆっくりと口にして個室の扉を閉める。

 

「じゃあ、私が伊黒さんの分を作るね」

 

「そんなに大きくなくても大丈夫だぞ?」

 

「判ってるわ! うふふ、こういうの楽しいですね」

 

「……そうだな」

 

柱2人が個室で食事をしている、それを目撃したとある隠と隊士が言いふらし後に鬼の形相をした小芭内に追い回されるのだが、その隠達が流した噂……それは小芭内と蜜璃が恋仲と言う物だった……。

 

「か、カワサキさん、私と伊黒さんがお付き合いしてるって噂を聞きました?」

 

「聞いたけど?」

 

「あうあう……そ、その、カワサキさんは伊黒さんが私の事をどう思っているかとか聞いたことありますか?」

 

「すまないな、生憎そう言う話は聞いたことが無い」

 

「そ、そうですか……じゃ。じゃあ相談には乗ってくれますか?」

 

「ああ、いいとも、お茶と茶菓子でも出そうか」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

ぱあっと華の咲くような顔で笑う甘露寺に大福と緑茶を出し、夕方の休憩時間までカワサキは甘露寺の話に耳を傾けた。

 

「カワサキさん、俺と甘露寺が付き合っていると言う噂を聞いたか?」

 

「聞いたけど?」

 

「……あいつら……殺す」

 

「おいおい、そんな物騒なことを言うなよ。小芭内、用件はそうじゃないんだろ?」

 

「……あ、ああ……その、カワサキさんは甘露寺が俺の事をなんて言っていたか知ってるか?」

 

「すまないなあ、生憎そう言う話は聞いた事が無い」

 

「そ、そうか……そ、それじゃあ話でも聞いてくれるか? 迷惑でなければだが……」

 

「勿論良いさ。どうせ休憩時間だしな、あんころもちとお茶で良いか?」

 

「あ、ああ。それで構わない、休憩時間なのにすまないな」

 

「良いさ良いさ、どうせ休憩っていってもやること無いしな、弟分の話くらいいくらでも聞くさ」

 

全く違う日に、同じ様な内容を相談する2人。カワサキはそれを口にせず、お茶と茶菓子を出しながら2人の相談に耳を傾けるのだった……。

 

 

 

メニュー16 寄せ鍋へ続く

 

 




次回は「野良犬ジョー」様のリクエストで「寄せ鍋」で行こうと思います。この寄せ鍋の後はかまぼこ隊なども徐々に出して行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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