【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
お正月特別短編 年越し蕎麦
年末年始と言えど鬼殺隊に休みはない、むしろ初詣や除夜の鐘等で夜遅くまで出かけている者が多く、鬼の犠牲者が増える為柱のパトロールの範囲の拡大、下級隊士と上級隊士の組み合わせによる広範囲の巡回など年末年始は鬼殺隊が最も忙しくなる時期である。順番で対応しているが、鬼の強さによっては休みなども関係なく救援要請が来る事もある。つまり休みなど無いし、年越し蕎麦なんて食べられる訳がないのだが……それをカワサキが許す訳がなかった。縁起を重視し、任務先でも食べられるようにカワサキは試行錯誤を当然行なった。
「カワサキさん、何してるんですか?」
「即席麺を作ってるんだよ。危ないから離れてろ」
カワサキさんが突然何か見たことない料理をするのは良く見るけど……あんなに高温にした油で揚げ物をして大丈夫なのだろうか? と正直心配になる。
「獪岳兄さんどう思う?」
「兄さん言うなよ……いやまぁ、カワサキさんのやる事だから大丈夫じゃないか?」
「蕎麦に醤油入れてたのに?」
そう、そうなのだ。カワサキさんは蕎麦を打っている時に乾燥させた昆布や鰹節の粉末をいれ、更に醤油も入れて練っていた。余りにも見たことがない特殊な蕎麦の打ち方。しかも打ちあがった蕎麦を今は揚げている……。
「なんか不安になって来た」
「うん、私も」
なんで麺を揚げているんだろう? 獪岳兄さんとカワサキさんが何をするつもりなのかと思いながら、店に来る事が出来る人達用の蕎麦を獪岳兄さんと並んで切り始めるのだった……。
「良し、出来た」
「カワサキさん、それ失敗なんじゃ?」
揚げられた黒い塊を見て、失敗なんじゃ? と獪岳兄さんが不安そうに尋ねる。
「俺もそう思う」
カワサキさんも失敗って思っているのって正直駄目なんじゃ? と全員で黙り込む。
「カワサキさん、お湯の準備できましたけど?」
「すまんな。カナエ……これで上手く行ってくれれば良いんだが……」
カナエ様から受け取った薬缶を片手に、黒い塊を丼の中に入れてカワサキさんがその上にお湯を注いだ。そして暫くジッと見つめているので私達も丼の中を覗きこむ。当然お湯の中に黒い塊が沈んでいると言う異様な光景がそこにはある。
「カワサキさん、これなんですか?」
「即席麺って言う、お湯で戻す持ち運び出来る麺のつもりなんだが……」
あ、だから麺に出汁の粉末と醤油を混ぜていたのかと納得する。だけどカワサキさんが作ろうとしているのは相当難しい物なのだと思う。
「お湯だけで出来るとか本当ですか?」
「……理論上は可能なはず。これで上手く行けば見回りの隊士の夜食に丁度良いだろ?」
「まぁそうだと思いますけど……」
年末年始の巡回の予定は非常に厳しい物になっている。鎹鴉が弁当を届けることもあるけど、それでも間に合わない。隊士が持ち運び出来る蕎麦となればお湯を沸かすだけで出来るので鬼殺隊の歴史を変える大発明になる筈だ。
「「「「おおッ!」」」」
お湯が少しずつ色を変え、そして固まりになっていた蕎麦が広がり始める。その姿を見て思わず歓声が重なる。暫くそうしていると徐々に蕎麦が元に戻り、少し薄色の汁と蕎麦が完成した。
「とりあえず取り分けてみるか」
お椀の中に4つに取り分けられた蕎麦を受け取って、匂いを嗅いでみる。この段階では完全に蕎麦だと思う、問題は味だ。
「「「「いただきます」」」」
箸を手に取り、蕎麦を啜る。箸で摘んで啜って食べる音だけが厨房に響いた……。
「うーん、ちょっと辛くないですか?」
「確かに……」
「粉末の出汁は別入れにするほうが良いんじゃないですか?」
「あ、私もそう思う」
蕎麦自体に醤油を練りこんでいるので少し辛いが、任務の後と考えると塩辛いものが欲しくなるのでそれで丁度良いと思う。だけどそれとは別に粉末だしが強すぎて、かなり味がくどい。
「粉末は分量を量って、1食分にしてみるか」
「それが良いと思いますよ。蕎麦自体は完璧ですし」
「ええ、これは良い。お湯を沸かすだけで食べれるっていうのは凄く良いと思いますよ」
「また鬼殺隊に役立つものが出来ましたね!」
「……うん。そうだな」
ただカワサキからするとこれは第二次世界大戦のあとに生まれる「チキンラーメン」を模した物であり、これを絶対に一般流通させてはならないと言う思いがあった事をカナエ達は知る由も無く、即席麺の誕生を喜んでいるのだった……。
新年に変わる頃合にお参りに行く者は予想していた通り相当数おり、有名な神社仏閣の周辺には鬼殺隊の隊士が多数配置されていた。
「シッ!!!」
「ギャア……」
除夜の鐘が響く音を聞きながら実弥は鬼がお参りを終えて帰る途中の男女を襲う前に首を切る事が出来た事に安堵の溜め息を吐いた。
「周辺に鬼はいねぇか?」
「いない、いない! それでさいご!」
鎹鴉の言葉を聞いて刀を振るい血糊を飛ばしてから鞘に刀を納める。
「鬼を見つけたら教えてくれ、少し休む」
「りょーかい、りょーかいッ!」
柱とは言えどすぐ近くにお参りに来ている人間が多くいる中で、目撃されないように鬼を倒すのは精神的にも肉体的にも厳しい物があった。普段なら7体くらいの鬼を倒すくらいで疲れを感じることはねえが……流石に少し疲れた。
「兄ちゃんお疲れ。大丈夫?」
「おお。俺は大丈夫だ玄弥。お前は?」
集合場所にしていた大木の下に既に来ていた玄弥に怪我はないか? と尋ねる。
「俺は全然平気、やっぱりカワサキさんが掛け合って作ってくれたこれ便利だよ」
玄弥が笑いながら俺に差し出したのは日輪刀の材料である猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を使って作った銃弾だ。勿論これも作るのにかなり騒動になったが、殉職した隊士の刀の中で打ち直すのが不可能な程に破損した物で作られる事が決まった物だ。
「隠もこれで支援がしやすくなるとなると、鬼殺の安定度も上がるな」
「匡近ぁ、お前も終わったか、そっちはどうだった?」
俺と玄弥の話の中に入って来た匡近も笑いながら焚き火の周りに腰掛ける。
「こっちも周辺の鬼はもういないみたいだよ」
「そうかぁ。じゃあ今の内に腹ごしらえを済ませておくかぁ」
夕方から日付が変わるまで戦っていたから、流石に何か食っておかないといざって言う時に力が出ない。出発前にカワサキさんが渡してくれた即席麺とやらを荷物から取り出して椀の中に入れる。
「これにお湯を入れるんだったかぁ?」
「違うよ、兄ちゃん。粉末の出汁を入れてからお湯を入れるんだよ」
「そうだったかあ……」
荷物の中を探って粉末だしの袋を取り出して、黒い塊の中に入れて玄弥が準備しておいてくれたお湯をお椀の中に注ぐ。
「これで蕎麦になるって聞いてるけど……」
「どうなんだろう……」
「カワサキさんが言うなら間違いじゃないと思うんだがなあ」
お湯を入れるだけで作れる蕎麦ってマジか? と思いながらお椀の中を見つめているとお湯に色がついて、そこから塊状の蕎麦が広がり始める。
「「「おおッ!」」」
これはすげえな、お湯を入れるだけって言うのが良いな。箸を手にしてかき混ぜると食欲を誘う出汁の香りが周囲に広がる、空腹にこの匂いは犯罪的だな。
「「「いただきます」」」
麺がしっかりとほぐれたのを確認し、いただきますと口にしてからお椀に口をつける。
「温まるなあ」
「ちょっと薄いけど美味いなあ……」
「持ち運べるって考えたら文句はいえねえよ」
出汁もしっかり効いている、味は少し薄かろうがお湯を入れるだけでこれを食えるってだけで十分だ。
「ふーふー」
「ずずう……うん、美味い」
蕎麦も少しぼそぼそしているが、喉越しもしっかりと蕎麦の味だ。
「これは良いぜ、任務の時に持って行けるだけで十分だぁ」
「うん。これは美味しいし、便利だよ」
「カワサキさんは本当に凄いよなあ」
お湯を入れるだけで作れる蕎麦を作るとか、カワサキさんの知識は本当に凄いと感心すると同時に呆れる。一体どれだけ頭が良ければこんなものが思いつくんだろうな。蕎麦を半分ほど食べた所で背後の茂みが音を立てる、脇に置いておいた日輪刀を掴み茂みから飛び出してきた鬼の首を両断する。
「鬼を誘き寄せるのも役立つなァ」
「兄ちゃん。それ絶対カワサキさん、微妙な顔をすると思う」
玄弥の言う通りだが、鬼もこの匂いに反応して寄って来るのならば腹を満たすだけではなく、鬼を誘き寄せる効果もある。これは鬼殺隊の歴史を変える発明品だと思いながら残った蕎麦を汁と共に啜りこみ立ち上がる。
「ゆっくり食ってろぉ、俺が鬼共をぶっ殺してるからよぉ」
「す、すぐ食べ。あち!?」
すぐ食べると言う玄弥が舌を火傷したのか熱いと叫ぶ声を聞きながら、焦るんじゃねえと告げ、再び飛び掛ってきた鬼に向かって日輪刀をふるうのだった……。
俺と宇随の見回りの箇所が重なる所で厄介な異能の鬼とかち合った、地面の中に潜り、取り込んだ鬼を武器として扱う……鬼としてもおぞましい化け物だった。
「煉獄ぅ! 炙りだすから一気に決めろッ! 音の呼吸壱ノ型 轟ッ!」
俺が苦戦しているのに気付いたのか宇随が救援に来てくれ、背中に背負った2本の日輪刀を地面に叩きつける。その爆発によって地面に隠れていた鬼が飛び出してくる。
「炎の呼吸弐ノ型 昇り炎天ッ!」
「「ギャアアアア……ッ!」」
鬼の胴の下から首に向かって斜めに日輪刀を振るい鬼を両断する。消滅していく鬼を見つめながら小さく息を吐いた。
「助かったぞ! 宇随ッ!」
「1人でも大丈夫だったろ? 俺様が割り込んだだけだから気にするな」
「助けられた事に感謝するのは当然だ! 助かった!」
姿を隠す鬼を相手にするには炎の呼吸では些か分が悪い、倒せない事はなかったが……それでも一撃で炙りだしてくれた宇随には感謝している。
「そうだ! お前も少し休憩にしたらどうだ! カワサキ殿がもたせてくれた即席蕎麦とやらを食ってみよう!」
「おう、あれか! そうだな。鬼の気配もないから試してみるか!」
火を起こして焚き火を焚いてその周りに腰掛けて冷えた身体を温める。
「これを椀の中に入れて粉末出汁を入れるのか! 簡単で良いな!」
「おう、確かにな」
俺と宇随は良く食べるので3個渡してくれた蕎麦を大きめのお椀の中に入れ、粉末出汁を麺の中に入れてお湯を注ぐ。
「しかしカワサキの奴は本当に派手な野郎だな」
「確かにな! こんな発想は俺達にはないからな!」
麺が解けるまでの間にカワサキ殿がどうやってこんな便利な品を作ったのかと宇随と話し合っていると、同時に腹の音がなった。
「そろそろ出来たんじゃねえか?」
「うむ! そのようだ!」
塊が蕎麦に戻り、お湯にしっかりと色がついたところで箸を手に取り、丼を片手で持ち上げる。
「「いただきます」」
湯気を立てる丼から漂う出汁の香りに口の中に溢れてくる唾を飲み込み、蕎麦を持ち上げて啜りこむ。
「美味い美味い!」
「うるせえよッ! でもまぁ確かに美味いけどな」
作りたての蕎麦には確かに劣る! だが十分に蕎麦と言える! 蕎麦は少し味気ないが、それでもだ。蕎麦の香りがしっかりと口の中に広がり、出汁の香りも食欲を掻き立てる。
「美味いッ!!!」
「だからうるせえっつうのッ!!!」
ずぞぞぞおおおッ!! っと音を立てて蕎麦を啜りこむ。冷えた身体に熱が伝わり、かじかんでいた手に力が戻ってくる。腹の中から闘志と燃え上がるような熱が全身に広がるのが判る。
「お代わりを探さなければッ!」
「おい、まだ食うのか?」
「足りんッ!!」
予備に5つほどくれていた筈だと言うと宇随は小さく頷いた。
「俺様にも2個くれ、お湯を沸かしておくからよ」
「判った! よし! まずはひとつだッ!!」
出発前に食べたおにぎりの包みを掻き分け即席麺を1つ見つけ、残り4個と粉末出汁を探して、俺は粉末出汁の袋と蕎麦を壊さないように気をつけて次の蕎麦と粉末出汁を探し始めるのだった……。
カワサキの店の近くの広場に炭治郎と禰豆子の2人は焚き火を作り、お湯を沸かしていた。
「もう少しで作れるからな禰豆子」
「むんッ!」
禰豆子と共にカワサキさんの店で年越し蕎麦を食べる事は出来ないので、即席麺を貰い俺は外で年越し蕎麦の準備をしていた。
「えっと、これをお椀の中に入れて……「おーい、炭治郎! 禰豆子ちゃーん!!」「やっと見つけたぜ!!」ぜ、善逸!? それに伊之助もなんでッ!?」
「はぁはぁ……一緒に蕎麦を食べようと思ってさ」
「カワサキのところから天ぷらも貰って来たぜ!」
「いや、寒いだろ!?」
震えるほどに寒いのにどうしてと言うと善逸と伊之助は笑った。
「仲間じゃないか、一緒に食べようよ!」
「親分と子分は一緒に飯を食うもんだ!」
2人の言葉が嬉しくて泣きそうになったが、それをぐっと堪える。
「じゃあ、お湯が足りないから水を汲んでくるよ「いや、それなら俺が汲んで来た」さ、錆兎!? 義勇さんに真菰さんに村田さんもッ!?」
善逸だけではなく、錆兎達も来てくれて俺は本当に驚いた。
「外で食っていると聞いてな。それならと俺達も外に来た」
「そうだ」
「水の呼吸の結束は固いんだよ!」
「こんなに冷えて、もう座ってろよ! 焚き火は俺が面倒見るから!」
禰豆子と一緒に食べる為に外に出て来た俺を追いかけてきてくれた皆の存在が嬉しくてしょうがなかった。確かに北風は冷たかったが、皆で集まっているだけでとても暖かく、この冷たい北風も全然気にならなかった。
「あ、炭治郎。そろそろ蕎麦出来るんじゃない?」
「うっしゃあ、天ぷら入れるぞー!」
「良し、ほら。禰豆子、お前の分だ」
「むー♪」
「炭治郎の分もだ」
「あ、ありがとうございます!」
完成した即席蕎麦を手に取り、焚き火を皆で囲む。皆の優しさで心まで温かくなるそんな気分だ。
「「「「いただきます!」」」」
「むうー♪」
声を揃えていただきますと口にして蕎麦を口に運ぶ、風は冷たいけれど何よりも暖かく、そして幸せな味がするのだった……。
年末年始の更新はゲッターロボ、GSがメインになりますので飯を食えは残念ながら鬼、鬼殺それぞれ1つずつになりますが、オバロ版はゲッターロボとGSと共に連続更新をやろうと思います。鬼滅に関してはこれはストックがないとか、そういう感じの理由なのでお許しください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない