【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃 作:混沌の魔法使い
メニュー21 みたらし団子
カワサキさんの事ですか?
あの人は凄く良い人ですよ、優しいですし、困っていると相談にも乗ってくれる。
善逸とか伊之助も兄貴みたいって言うんですから、きっとカワサキさんは長男なんですね(むんッ!)
それにカワサキさんの料理は禰豆子も食べれるのでとてもありがたいです!
え、聞きたいのはそう言うことじゃない?
じゃあどういうことなんですか?
うーん。何を聞きたいのかは判りませんが、俺にとってカワサキさんは優しくて頼りになる人です。
俺はあの人の悪口なんていいませんし……え、匂いですか?
凄く優しい匂いがしますよ。でもそうですね……偶に凄く寂しそうな匂いをしているときもありますね……。
あ、もしかしてそれを心配してくれていたんですか!?
あ、あれ!? い、いない!? 何処に行っちゃったんだろ……。
コンコン
ああ、そうだな。禰豆子もお腹空いたよな……兄ちゃんもペコペコだ。カワサキさんの所に行こうか
カリカリコンコンッ!
はいはい、判ってるよ。カワサキさんの所に行こうな。
那田蜘蛛山での下弦の伍との死闘で重傷を負った俺が、蟲柱である「胡蝶しのぶ」さんとそのお姉さんである「胡蝶カナエ」さんがいる蝶屋敷での機能回復訓練をしている頃、思い出したようにカナエさんが俺に声を掛けてきたのだ。
「炭治郎君の担当って鋼鐵塚さんだったわよね?」
「は、はい……そ、そうですけどッ!?」
逆立ちして腕立て伏せをしている時だったので、返事を返すのがやっとだ。足で錘を持ち上げているので、顔を上げるのは勿論返事をするのも凄く辛かった。
「刀折っちゃったのよね……うーん、それだと少し不味いかもしれないわね」
「ま、不味い……って何が……ですか?」
「はい、炭治郎君。姿勢が崩れたから後30回、頑張ってね」
「は、はいいい……しのぶさんッ!!」
話をしている間も俺の動きを見ていたしのぶさんに回数の追加を告げられ、絶望しかけたが、俺は長男だから耐えられた。
「姉さん、カワサキさんにお願いするの?」
「ええ、このままだと……炭治郎君が殺されちゃうわ……鋼鐵塚さんに」
えっ!? 俺殺されるの!? 鋼鐵塚さんにッ!? 冗談かと思ったのだが、凄く神妙な顔をしているので、事実なのだと判り汗が吹き出ているのに、血の気が引いた。
「鋼鐵塚さんは自分の刀を凄く大事にしてるから、折られると物凄く怒るの。それで私の知る限りでは10人近くの隊士を再起不能寸前まで追い込んでるわ」
「……鋼鐵塚さんって……刀鍛治でしたよねッ!?」
なんで隊士を再起不能に追い込めるのか俺には判らなかった……。でも刀を折っているので、俺もそうなる可能性が極めて高い……。
「鋼鐵塚さんはみたらし団子が凄くお好きなので、それを捧げ物と用意しておけば話は聞いてくれるわ」
「特にカワサキさんのみたらし団子が大好きだから、カワサキさんに手紙を書いてあげるから訓練の後に行ってみるといいわよ」
「あ、ありがとうございますッ!!」
凄く助かる情報を教えてくれたけど、出来ればこの鍛錬をしているときに教えないで欲しいと俺は心からそう思った。
「ん? よー炭治郎!」
「カワサキさん、こんにちわ!」
店の外で水を撒いていたカワサキさんに手を振りながら駆け寄る。
「あの時は本当にどうもありがとうございました」
カワサキさんは俺の家族が生きている時に何度か炭を買いに来てくれたし、鱗滝さんの所で修行している時にも何度か顔を見せてくれた。それに最終選別の時も激励してくれたし、そして何よりも柱合会議の時に俺達を庇ってくれた。本当に俺はカワサキさんには感謝しても仕切れない。
「あの時って?」
「柱合会議の時ですよ。俺本当に嬉しかったです」
禰豆子が風柱に刺されそうになったときも止めてくれたし、柱が全員俺達を殺せと言う時に義勇さんと一緒に庇ってくれた。俺にとっては本当にカワサキさんは命の恩人だ。
「大袈裟だよ。大袈裟」
「そんなこと無いですよ。カワサキさんのおかげで皆生きてます」
禰豆子は鬼にされたが、偶然炭を買いに来ていたカワサキさんを見て無惨が逃げたので皆生きている。
「植物状態じゃあ、俺は間に合わなかったよ」
「いえ、いつか目を覚ますって俺も禰豆子も信じてます!」
だけど血を流しすぎたのか、皆は蝶屋敷でずっと眠っているけど……俺はいつか皆が目を覚ましてくれると信じている。
「そうか、炭治郎は強いな……それで今日はどうした? 飯か?」
「いえ、その俺の刀の担当が鋼鐵塚さんで」
「OK、察した」
「桶?」
「ああ、西洋の言葉でわかったって意味さ。おーけーって言うんだよ、じゃあみたらし団子を拵えようかね」
「いえ、待ってください! 俺が作りたいんです!」
俺が折ってしまったのに、カワサキさんに作ってもらうのでは筋が通らない。だから俺が作って鋼鐵塚に渡すんですというと、カワサキさんは楽しそうに笑い、準備中の看板を立てて俺を店の中に招き入れてくれるのだった。
「カナエから手紙を持たせるって聞いてたんだけど?」
「……あ」
手紙を渡す前に全部自分で言ってしまったと気付き、俺は思わず小さくすいませんと謝るのだった……。
「これでいいですか?」
「良し良し。良いぞ」
炭治郎にエプロンと三角頭巾を渡し、良く手を洗わせてから厨房の中に招き入れる。
「みたらし団子なんてそう難しい物じゃない、材料はこれだ」
「……あの、これ豆腐なんですけど?」
「そうだが?」
「え? みたらし団子に使うんですか? 豆腐?」
「うん。使うぞ? ふっくらするし、冷めてもおいしい」
信じられないのか目を見開いている炭治郎。まぁ確かに、みたらしに豆腐が入っていると聞いたら驚くかもしれないなと苦笑する。
「まず見本を作ろうか?」
「いえ、練習なので、後ろから作り方を教えてください!」
むんっと胸を張る炭治朗に判ったと返事を返し、炭治郎の後ろに立つ。
「まず、その計りに印がついてるだろ? 餅粉をその印まで入れる」
「はいッ!」
「料理中は唾が飛ぶから、声は小さく」
「……はい」
料理中のエチケットは徹底させる。計りで餅粉を200g量ったら、蕎麦やうどんを打つ捏ねばちに餅粉を入れさせる。
「その中に豆腐を入れて、豆腐を握りつぶすように餅粉と混ぜる。だけど全部入れるなよ、まずは8割くらいで良い」
「こんな風ですか?」
「もっと思いっきり、握りつぶす感じでいい」
水の変わりに豆腐で纏めるのでしっかりと潰すように言うと、豆腐を握りつぶし、手の平で押すように混ぜる。
「うどんとか何か作ってたか?」
「は、はい、たまにですけど」
「なるほど、良い具合に混ざられてるぜ」
うどんを打っていたのなら上手に混ぜれるのも納得だな。
「全体が纏まってくるまでは良く混ぜる、残った豆腐は少しずつ加えて耳たぶくらいの硬さになるまで混ぜ合わせるんだ」
「はい、判りました」
うどんを打ったことがあるならある程度は感覚で判るだろう。俺はそう思い、竈に薪を入れて鍋に水を入れて沸かし始める。
「これくらいの固さですか?」
確認に尋ねて来る炭治郎に1度手を洗い生地を触る。
「少し固いな、もう少し豆腐を入れても大丈夫だ」
「判りました」
少しずつ豆腐を加えて固さを調整している炭治郎にストップと声を掛ける。
「それくらいの固さが、鋼鐵塚の好みの固さだ。手の感覚で覚えておけ」
「はい、でも鋼鐵塚さんは良くカワサキさんのお店に来るんですか?」
「担当を外された時とかは良く来るぞ? そう悪い奴じゃないんだけどな」
1つのものにあれだけ熱中出来ると言うのは正直感心するし、俺にも似た部分があるので割りと共感できる。
「まぁ、良く話せば良い奴だ。ただ俺の包丁を持ち逃げしたのは許してないけどな!」
あの野郎今度来たら絶対包丁を持ってくるように言ってやる。別にユグドラシルのアイテムでは無いが、大正時代で一番手に馴染んだ包丁なのでぜひとも取り返したいものだ。
「は、はは……そうですか。それで次はどうすれば?」
「それを食べやすい大きさに丸めて、この沸騰している鍋の中に入れる。団子が浮いてきたら掬って氷水の中で冷やして串に刺す」
「結構簡単なんですね?」
「簡単だけど奥深いぞ? 極めようと思えば何処までもいけるからな」
単純に見える料理ほど難しいんだよと笑い、俺は炭治郎が真剣な表情で団子を丸めているのをジッと見つめているのだった……。
カワサキの店に向かって歩く2人の男性。だがその顔は2人ともひょっとこの面をかぶり、少しばかり不気味な雰囲気だった。周りの人間がそさくさと道を譲る中。「鋼鐵塚蛍」と「鉄穴森鋼蔵」の2人は打ち直したばかりの日輪刀を背負い、日輪刀の受け渡し場所であるカワサキの店に向かっていた。
「殺してやる、殺してやる」
隣でぶつぶつと呟いている風鈴つきの傘を被って歩いている友人を見て溜め息を吐いた。
「鋼鐵塚さん、相手は十二鬼月だったと言うではないですか? 良く命があったと思ってあげましょうよ?」
「いいや、鉄穴森。俺の刀は十二鬼月にも通用する。折ったのはあいつが未熟だからだ!」
里を出てからずっとこの調子ですね……やれやれ、これでまた鋼鐵塚さんは担当の隊士無しになってしまうんでしょうかね……鋼鐵塚さんは腕は確かなのだが、里一の偏屈者でもある。こんな性格でなければ、長の弟子なのだから皆にも尊敬される鍛治師になっていたのでしょうから、勿体無いと思う。
「お前だって初めての刀だろ? それを折られたらどうする?」
「それは勿論怒りますが……十二鬼月相手ではまず生き残った事を喜んであげたいですよ」
独自の呼吸を作り出したと言う2刀流の隊士のために打った刀がどんな色に染まるのか楽しみだが、会えるのが夕方と聞いているのでまずは鋼鐵塚さんの担当している隊士とカワサキさんに落ち合うことになっている。
「よう、お疲れさん。2人とも元気そうだな」
店の前の掃除をしていたカワサキさんに頭を下げる。
「はい、カワサキさんもお元気そうで」
「料理を作るしか脳が無いんだ。体調くらいは維持するさ、ま、良いか。入ってくれ」
カワサキさんの店を刀の受け渡し場所に指定する鍛冶師は多い。なぜならば、里から歩いてくるので無償で食事を振舞ってくれるからだ。
「鉄穴森は今日はどうする?」
「そうですね……煮込み豚カツと、蜆の味噌汁。それと……たくあんで」
「あいよ」
「なんで俺には聞かない?」
「お前はみたらし団子しかくわねえだろうが」
かかかっと笑うカワサキさんはすぐに鋼鐵塚さんの前にみたらし団子を置いた。
「これだこれ、いただきます」
嬉々とした声で面をずらしてみたらし団子を食べる鋼鐵塚さん。僅かに見えている口元は非常に嬉しそうだ。
「はい、お待たせ」
「おお、すみません。いただきます」
手を合わせて煮込み豚カツに視線を向ける。甘辛いタレと卵で煮込まれたこれは本当に絶品なのですよね……甘いタレがたっぷりと染みこんだ豚カツを頬張り、炊きたての米を頬張る。
「美味しいです」
「それは良かった。お代わりは遠慮なく声を掛けてくれよ」
お代わり自由で里に帰るまでのお弁当も用意してくれる。本当にカワサキさんが鬼殺隊の料理番になってくれて良かったですね、そんなことを考えながら白米を頬張っていると鋼鐵塚さんがその手を止めた。
「む?」
「どうした?」
「いや、普段と少し何かが違うような……?」
みたらし団子を勢い良くぱくついていた鋼鐵塚さんが首を傾げる。するとカワサキさんは楽しそうに笑い出した。
「そうだ、今回は俺が作ってない」
カワサキさんが作ってないと聞いて私は驚いた。鋼鐵塚さんはみたらし団子に五月蝿い、そんな鋼鐵塚さんが文句を言わなかったという事は相当な腕前と見て間違いない。
「そのみたらし団子は俺が作りました!」
店の奥から姿を現したのは、額に炎に似た痣がある矍鑠の子供……その容姿を見て、鋼鐵塚さんの担当の隊士だと気付いた。確か名前は……竈門炭治郎だった筈。
「お前がこれを?」
「はい、刀を折ってしまいすみませんでした! でも俺はまだ鋼鐵塚さんの刀を使いたいんですッ! だから今回は許してくれませんか!」
自分が折ったことを謝り、また刀を作って欲しいと頼み込んだ隊士なんて初めてだ。隊士は隠や刀鍛治を馬鹿にしているのが多い、でも彼からは強い尊敬を感じる。
「柔らかくて普段よりも美味くない」
「うっ……だ、大分練習したんですけど、今の俺にはこれが限界で」
「焼いてあるけど、焦げてる」
「……すみません」
「タレも絡んでない」
「……」
何も言えなくなった炭治郎君が可哀想と思ったが、次の言葉で曇っていた顔が晴れた。
「しょうがないから、またお前のみたらし団子を食いに来てやる。刀を持ってな」
「は、鋼鐵塚さんありがとうございます!」
「だが俺の刀を折った事は許さない」
懐から出刃包丁を出した鋼鐵塚さんを見て炭治郎君の顔が引き攣った。
「殺してやるううううーーッ!!」
「ぎゃあああーーー!? た、食べに来てくれるんじゃなかったんですか!?」
「それとこれは別だああ!!」
逃げる炭治郎君を追い回す鋼鐵塚さんだけど、私は知っている。あれは、鋼鐵塚さんなりの照れ隠しだ。今までだったら、本当に刺していただろうけど、今は脅すように包丁を振り回しているだけだ。
「嬉しかったんだろうな」
「でしょうねえ……今までのことを考えればね」
鋼鐵塚さんの腕は確かに優れている。だけど、その性格で自分と組んでくれる隊士がおらず、ずっと1人で刀を打ち続けていた。それが自分の好物まで用意して、これからもお願いしますと言われたのはきっと何よりも嬉しい事なのだろう。
「ご馳走様でした」
「はい、お粗末」
だけど何時までも追いかけられているのは病み上がりの炭治郎君には辛いだろうと思い、腹ごなしを兼ねて鋼鐵塚さんを止める為に悲鳴の方向に足を向けるのだった……。
「全くしょうがないんですから」
だけど私はまだ知らなかった。まさか、私の担当隊士が渡した直後に刀を刃毀れさせるなんて……。
「私……炭治郎君の担当が良かった」
「……やらんぞ」
「まぁ飲め、今日は泊まって行け。な?」
「ううう……ありがとうございます!!!」
なんでも聞けば問題児の隊士と言う事で、私は自分の引き運の悪さに絶望してしまうのだった……。
メニュー22 探せ、冨岡義勇の好物
刀鍛治とは基本的に仲がいいカワサキさん。大事に包丁を使っているので、それを見た刀鍛治は良い人だと判断しているって感じですね。
次回は義勇さんメインでギャグテイストの話にしようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
カワサキさんがオラリオにいるのは……
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間違っている
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間違っていない