【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー24 柱合会議の後 飲み会 その2

メニュー24 柱合会議の後 飲み会 その2

 

 

大皿に盛り付けられている焼き鳥――鶏肉が牛肉よりも高級だった大正時代の事を考えれば、これは柱であろうと、心待ちにするご馳走である。更に鬼殺の任務の後に立ち寄った街や村で買って来た地酒と共に楽しむ事が出来るとなれば、いつ死ぬかもしれない鬼殺の任務の中での束の間の休息として心待ちにするのは当然だ。しかし、しかしだ。9人の柱に、お館様、槇寿郎、錆兎と10人を越える健啖家揃い、そしてその中には異次元の食欲を誇る、杏寿郎、槇寿郎、蜜璃の3人がいるのだ。カワサキが宴会に参加してしまえば、追加で料理を作ることは出来ない。では10人を越える健啖家達の食欲を満たす為にどうするのか? と言うと隠の出番である。

 

「ほい、これ上がりだぜ」

 

「はーい、運んで来ますねー」

 

「けほっ、これ慣れるまでしんどいですね」

 

「なれるまでとか言ってると次から出来ないぜー? これ隠の大人気の任務だからな」

 

大量の七輪を前に10人ほどの隠が次から次に焼き鳥を焼き続けている。新米の隠はこれが人気の任務? と首を傾げる中で先輩隠が隠の衣装の顔布を外して焼き鳥を頬張る。

 

「い、良いんですか!? そんな事をして」

 

「良いんだよ、焼いてるだけじゃ辛いだろってカワサキさんが俺達の分も用意してくれてるんだよ」

 

「あー早く柱の分を焼き終えて食べたい!」

 

「俺なんか半年振りだぜ? あー早く焼けないかなー」

 

柱の分を焼いたら自分の分と言って楽しそうに焼き鳥を焼いている隠達。驚いた様子の新米隠に先輩隊士が串を差し出す。

 

「ほれ、お前初めてだろ。食っとけよ」

 

「い、いただきます!!」

 

タレの焼ける匂いで食べたいなあと思っていた若い隊士は差し出された焼き鳥を受け取り、それを美味しそうに頬張る。

 

「うーし、次は塩だ。良いか、内臓系は後回し、まずは腿、胸肉から焼いて行くぞー」

 

「「「おーうッ!!!」」」

 

柱達が宴会をしている裏で隠達も働きながら、和気藹々と焼き鳥を焼き続けているのだった……。

 

 

 

 

 

 

海鮮丼や唐揚げも美味かったが、やはり焼き鳥! これを食べなければ柱合会議に来たと言う感じがしない。串を片手に持ち、反対の手にはやや辛めの地酒を注いだグラスを手にしてから大きく口を開けて腿に齧り付いた。程よい弾力で歯を跳ね返す、この絶妙な固さと焼き加減は本当に絶品だ。

 

「んんー美味いッ!!! やはり焼き鳥は最高だな! そう思うだろう、甘露寺ッ!」

 

「はい、師範! 美味しいですッ!!!」

 

「うむ、美味いッ!!」

 

「「美味い美味いッ!!」」

 

俺と甘露寺が美味いと叫んでいると冨岡達が少し眉を顰める。だが俺と甘露寺は逆に胸を張った。

 

「カワサキ殿が言ったのだ。美味いと叫んだ方が良いそうなのだ」

 

「身体全体が美味しいって感じるそうなんですよ」

 

嘘だろとカワサキ殿を全員が見るがカワサキ殿は焼き鳥を口にし、穏やかな顔で笑った。

 

「やるぞおって叫んだ方が気合が入るだろ? まぁ、そんな所だ。後は作ってくれた人間に対する感謝と食材に対する感謝って所だな」

 

カワサキ殿の言葉を聞いて小芭内達も美味い、とか美味しいとか口にし始める。

 

「美味い美味いッ!!!」

 

不味い物を美味いと言って食べるほど辛い事は無いが、本当に美味い物を美味いと言って食べるのは至極当たり前の事だ。

 

「なるほど、それは確かに道理だな。うめえッ!!」

 

「……美味い」

 

「うん。美味い、この甘辛いタレが本当に美味い」

 

「確かに、みたらしのそれに少しに似ていると思うが、甘さと辛さの兼ね合いが抜群にいい。それに鶏の脂が染み出しているからか、タレ

自体も最高に美味い。やはりカワサキさんの料理が最高に美味いって事だな」

小芭内はカワサキ殿と甘露寺に対しては饒舌だな。いや、その気持ちは俺も判るがなッ!

 

「美味いッ! 鶏皮、これが本当に美味いなッ!」

 

「喜んで貰えて何よりだよ、杏寿郎」

 

「美味いですッ!!」

 

鶏皮を綺麗に折りたたんで串に刺してある鶏皮。皮と皮の隙間にタレが溜まっていて、串から外すと口いっぱいにタレの味が滲み出るのが本当に美味いッ!

 

「……カワサキさんよ、玄弥に少し持って帰ってもいいか?」

 

「あ、それだったら私も蝶屋敷の皆に持って帰ってもいいかしら」

 

胡蝶姉と不死川が弟や継子に焼き鳥を持って帰りたいと言うのを聞いて、俺も手にしている焼き鳥を1度皿の上に戻した。

 

「父上! 千寿郎と母上に土産として俺も持って帰りたいです!!」

 

自分達だけが美味い物を食べていると言うのは千寿郎にも母上にも申し訳無い。だから持って帰りたいと口にすると悲鳴嶼さんと焼き鳥を少しずつ口にしていたお館様が口を開いた。

 

「大丈夫だよ、カワサキにお土産として焼き鳥も、巻き寿司も用意して貰っているよ。だから安心して食べなさい」

 

「いつも私も土産に持ち帰っている。カワサキはそう言う気遣いを忘れる事は無い」

 

「ああ、不死川もカナエも心配することは無い。安心して食べるといい」

 

そう言われると確かに父上が会議から戻られた時は土産を持ち帰って来てくれていた。前は酒を楽しみすぎて酔い潰れて父上に背負って帰られて恥ずかしい思いをしたので記憶があやふやだったが、確か前も土産はあったと思う。

 

「では大丈夫ですね! 美味いッ!!」

 

「美味しいですッ!!」

 

焼き鳥を酒で楽しむのも悪くは無いが、串から外して丼の上に乗せて食べるのも悪くない。甘露寺と共に手製の焼き鳥丼を作り声を揃えて美味いと叫ぶのだった。やはり美味いと叫びながら食べた方が美味いし、楽しいと俺は再認識するのだった……。

 

 

 

 

柱合会議の後の飲み会となるとやっぱり普段自分を戒めて生活している事もあり、少し羽目を外してしまう事になる。やれ誰と誰が逢瀬をしていたとか、あそこの藤の家の女主人と良い感じになっているとか、そう言う色恋の話になるのは更で、甘露寺さんが良くそういう話のターゲットにされるのだが、今日は違っていた。

 

「カワサキさんよ、俺はあんたに聞きたい事があったッ!」

 

宇髄君がカワサキさんを指差す。大体酔っている時に話を振るのは宇髄君だ、それを見て私達がしょうがないなあと肩を竦めたのだが、次の言葉に思わず身を乗り出した。

 

「カワサキさんみてえな伊達男となれば、1つや2つ派手に面白い話があるだろう! いつも聞いてるだけじゃなくて、偶にはカワサキさんの話を聞かせてくれよ!」

 

カワサキさんの色恋の話と聞いて、身を乗り出した私をしのぶが押しとめて座るように促す。確かに意中の男性の話だとしても、あんまりがっつきすぎるのは良くないわね。反省反省っと……。

 

「俺の話だぁ? んなもん、面白い話なんて何もないぜ?」

 

「それを決めるのは俺達だ! 皆も聞きたいだろう!」

 

宇髄君の問いかけ。それはカワサキさんが乗り気では無いから皆でカワサキさんの話を聞きたいといおうぜと目が物語っている。

 

「カワサキさんの話かぁ……確かに俺も興味があるなぁ」

 

「……聞きたい」

 

「俺もだな! カワサキさんは俺達の話を聞いてくれるが、カワサキさんが自分の話をする事は殆ど無いしなッ!」

 

「わ、私も聞きたいと思います!」

 

宇髄君の意見に不死川君と煉獄君、そして冨岡君と甘露寺さんが目を輝かせる。

 

「いや、待て、誰にだって人に話したくないことはあるだろう。無理に聞かせて欲しいとねだるものでは無い」

 

「良い男には秘密が付きものだと言う。俺は無理に聞くべきでは無いと思う」

 

「そうですね、私もそうだと思いますよ。ね、姉さん」

 

「……ソウダネー」

 

しのぶに同意を求められたけど、思いっきり目を逸らして聞きたいと遠回しに言うとしのぶに思いっきり溜め息を吐かれた。

 

「俺は無理に聞くべきでは無いと思う。行冥は?」

 

「……南無阿弥陀仏。私も同意見です」

 

槇寿郎様と行冥さんが駄目だと言ったので、この話は終わりだと私は思って、凄く残念に思った。

 

「うーん、でも私も聞きたいかなあ」

 

お館様も聞きたいと口にしたことで、駄目と言う感じの流れが消えた。私達が期待を込めた視線で見つめているとカワサキさんが深く溜め息を吐いた。

 

「判った判った、言えば良いんだろう言えば……それで天元は何がいいんだ?」

 

「そりゃもうド派手にカワサキさんの恋の話が聞きたいに決まってるッ!!」

 

宇髄君がカワサキさんにそう告げ、カワサキさんは深い溜め息と共に口を開いた。だがカワサキさんから語られる言葉は完全に想定を超えていたのだった……。

 

 

 

 

カワサキさんの昔の話が聞けると俺様は楽しみにしていたのだが、まさかその話がド派手に闇に塗れた話だとは俺様も想定外だった。

 

「まずだが、俺は婚約者とか、そういうのがいたって言うのは一切ない」

 

「「「え?」」」

 

「だーかーら、料理の修業とかでそう言う浮いた話とかは全然なかった」

 

マジか……カワサキさんみたいな伊達男だから面白い話を聞けると思ったのに、そういう話がないって言うのは驚いた。

 

「だけど、結婚してくれと言った女はいた」

 

「なんだ! あるじゃねえか! それはどんな女だったんだよ!」

 

婚約者とかがいないと聞いて浮いた話は無いと思ったのに、ちゃんとそういう話があったじゃないかと心が浮き立つのを感じた。

 

「カワサキ殿を見初めるとは良い眼をしている女子だな!」

 

「……ああ。カワサキさんは、顔は怖いが良い人だからな」

 

煉獄よ、それはいいんだがカナエの目から光が消えかけているのを少し気にして欲しいぜ……。

 

「その時俺は海外の店で修行していてな。その女は偶然俺が修行していた店にやってきた良い所のお嬢様だった」

 

「なるほど、カワサキのお嫁さんは海外にいるんだね。呼び寄せてくれてもいいんだよ?」

 

お館様がそう言うとカワサキさんは焼き鳥を食べていた手を止めて、日本酒を凄い勢いで煽った。

 

「だから、嫁とかそう言うのじゃねぇ……第一俺はあのお嬢様の名前も知らないし、2度と会いたいとも思わない」

 

「……添い遂げてくれと言ってきた女の名前も知らないのか?」

 

「知らん。と言うかだ……思い出すのも正直嫌なんだよ」

 

この時初めて気付いたが、いつも飄々としていると言うか、シャンとしているカワサキさんの腕が震えていて、顔が青褪めているのに気付いた。そしてなんかやばくね? と思ったが、もう賽は振られていて止まりようが無い。

 

「最初は良家の普通のお嬢様って感じだったさ。そうだな、海外の人だから髪は金色、目は蒼とそれはそれは美しい人とは聞いていた。修行中の身だが、オーナーに1品料理を作らせて貰って、若いが有望な料理人だと紹介して貰ったんだが……多分それが不幸の始まりだったな」

 

ぐいーっと日本酒を呷り、ふーっと息を吐いたカワサキさん。完全に目が据わっていて、酔っていると言うのが良く判った。

 

「カワサキさん、思い出したくないのなら。無理に話さなくてもいいんですよ」

 

「ああ。そうだぁ、人間誰しも嫌な事はあると思うしなぁ!」

 

「いいや、聞いとけ。女っつうのは怖いもんだ、蜜璃やカナエやしのぶは違うが、世の中にはやべえ女って言うのはいるんだよ」

 

話すのを止めようとした伊黒達を座らせてカワサキさんはグラスに日本酒を注いだ。

 

「翌日店に行くと首にされた」

 

「「「は?」」」

 

「オーナー…ああ、店主が脅されてな、俺は店にいられなくなった。その後は何処に行っても、門前払い。お嬢様とその父親が手回ししていてな、どこの店も俺を雇ってくれる所はなかった」

 

……おかしい、俺が聞きたかったのは面白話でこんなに闇の深い話ではない。

 

「そこからはおっかないぞぉ? 家に帰ったらさ、お嬢様が透き通るような、綺麗な顔で笑うんだよ。これで「私と一緒にいてくれますか?」ってさぁ笑うんだよ。曇りの無い、すっげえ透き通った綺麗な目で俺を見てさ……あの時ほどおっかねえって思ったことは無いぞ? 想像してみろ。家に帰ったら1回か2回あっただけのお嬢様が家にいるんだぜ? 怖くないか?」

 

カワサキさんに言われて想像してみたら肝がきゅっとなった。恐ろしいとかそういう問題じゃない、鬼と戦うよりおっかないぞ……。

 

「「「「ひえっ!?」」」」

 

止めろ、俺が、俺が悪かったッ!! そんな俺が悪いって言う目で俺を見ないでくれッ! 冨岡なんか想像したのか、がくがく震えて鱗滝にしがみ付いているじゃないかよ……。

 

「……それでカワサキはどうしたんだい?」

 

多分この場にいる全員がお館様ぁッ! と心の中で叫んだ。

 

「しょうがないから別の国に行こうかと思って荷物を纏めていたら、後からスタンガンでバチンってやられてな」

 

「「「すたんがん?」」」

 

聞き覚えの無い西洋言葉に思わず尋ね返すとカワサキさんは砂肝を齧りながら、首筋に手を当てる。も、もしかして、そこに攻撃を喰らったって事なのか?

 

「エレキ……電気を使う女性用の武器で電気で相手を気絶させる訳なんだが……目覚めたら手足を縛られて、斧を手にしてお嬢様が笑ってるんだよ」

 

「「「おの?」」」

 

「そう、斧。斧を抱えたまま、すっごい幸せそうに笑うんだよ。手足を切り落とせば、ずっと私と一緒ですよねってさぁ……」

 

「……お前その時どうした?」

 

「めっちゃ気合で逃げた。そこからは川に飛び込んで海まで行って逃げたな……」

 

カワサキさんの過去が重すぎる……もう2度と、興味本位なんかでカワサキさんの過去を聞くまいと俺は心に誓った。

 

「カワサキさん、もしも鬼殺隊にそういう女がいたらどうする?」

 

悲鳴嶼さんの問いかけに、俺達は思わずカナエを見た。最近噂でカワサキさんに随分と執着していると聞くカナエ……なるほどとか呟いていたのを見ると恐ろしさしか感じない。

 

「そりゃ逃げるよ。恥も外聞も無く泣き叫んで逃げるよ、そうなったら探さないでくれよ。頼むからさ」

 

そう笑うカワサキさんは冗談だよ、冗談と笑った。だがこの宴会に参加していた俺達は何れカワサキさんの恐れる展開になるのではと思うことになった。

 

「宇髄。2度とカワサキ殿の過去を聞くな」

 

「その方が良い……俺は心底怖かった」

 

「……俺もだ。女は怖い」

 

「カナエは気をつけといたほうがいいよなあ……」

 

「ああ……偶に目から光が消えてカワサキさんを見つめているしな……聞くんじゃなかった……」

 

「判ってる! もう2度とカワサキさんの過去はきかねえ! 絶対にだッ!!」

 

俺は今日この時ほど、好奇心は猫を殺すの言葉の意味を思い知った日は無いのだった……。

 

「カワサキさんって怖い女の人に好かれていたのね、私はそうならないように気をつけよう」

 

ふんっと握り拳を作る甘露寺の後でしのぶとカナエはひそひそと会話を交わす。

 

「ちょっと姉さん、やり方を変えたほうがいいかもしれないわね」

 

「そうね、カワサキさんに嫌われたらどうにもならないし……もっとゆっくり時間を掛けて、作戦を考えようと思うわ」

 

「しのぶちゃん、カナエさん。何か言った?」

 

「「ううん。なんでもないわよ」」

 

「そう? 私の気のせいね!」

 

天真爛漫な甘露寺の後で暗黒の意志に目覚めている胡蝶姉妹は楽しそうに、そして邪悪な笑みを浮かべるのだった……。

 

カワサキが鬼殺隊から逃げ出す日も……きっとそう遠くないのかもしれない……。

 

 

 

 

 

メニュー25 チョコレートへ続く

 

 




カワサキの過去話を聞いてひえっとなった男性陣と暗黒の意志開眼済みの女性陣2人とエンジェル蜜璃さんと言う話でした。
好奇心は猫を殺すと言う事で、カワサキさんの過去は興味本位では聞いてはいけないというのが鉄の掟になりましたね。
次回は「シオン・フレイザード」様のリクエストで大正時代では貴重品のチョコレートの話を書いて見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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