【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー30 焼肉の日 その1

メニュー30 焼肉の日 その1

 

その日カワサキの手紙を足に括りつけた鎹鴉達が柱、隠、甲から癸までの全ての隊士の元へと飛んだ。

 

「ほう! よもやよもや、もうこんな時期かッ!!」

 

「きゃーッ! 待ってましたぁッ!」

 

「1ヶ月に1回と言わずにもっとやれば良いのによッ!」

 

「南無阿弥陀仏……また無事に1ヶ月過ごす事が出来たか」

 

「……美味しいけど、食べ切れないからこっち」

 

「残念だが、こっちだな」

 

「何時も通りで良いか?」

 

「……ああ。楽しみだ」

 

「ちょっと今回は頑張って見ましょうか」

 

「カワサキさんによろしくなぁ」

 

柱達はその手紙を読んで○をつけて、鎹鴉の足に手紙を括りつけ返事を送り返す。

 

「お前今回はどうする?」

 

「無理無理」

 

「これが出来れば継子、柱確定って言われるけどなあ」

 

「俺達には無理だよなあ……」

 

「よっしゃあ! 待ってたぜ!」

 

「これがあるから頑張れるんだよなあ」

 

「意地でも死んで堪るかって気合が入るんだよなあ」

 

隊士と隠達も手紙に○をつけるが、柱達とは違う方に丸をつけて鎹鴉の足へと括りつける。

 

「かぁーかぁー! カワサキから手紙ー、手紙ー」

 

「ちゅんちゅん!」

 

そしてその手紙は炭治郎達の元にも届けられたが、炭治郎達はその手紙を受け取るのは初めての事だった。

 

「なんだろうこれ? 肉の日?」

 

【肉の日 特別昼食・夕食のご案内 

××ー□□ー○○までお越しください。

貴方は昼の部なのでお時間を間違えないように。】

 

と言うカワサキの店への丁寧な地図付きの手紙だったのだが、炭治郎達が首を傾げたのはその下だった。特別献立希望者の文字と参加する・参加しないの2択と別の場所の地図が添付されていたのだ。

 

「「「特別献立希望って何?」」」

 

良く考えて○をつけるように記されているそれを見て炭治郎達は訳が判らず、その手紙を持ってカワサキの店へと足を向けた。

 

「え? カワサキさん、いないんですか? カナエさん」

 

「肉の日が近いからね、私と沙代ちゃんしかいないわよ? カワサキさんに何か用事?」

 

しかしカワサキの店に捜しているカワサキの姿は無く、困った炭治郎達は手紙をカナエに差し出した。

 

「ああ、そっか。炭治郎君達は初めてなのね。これはね、継子や柱が身体を大きくする為の特別な食事をしますかどうかって言う話なのよ」

 

「もしかして悲鳴嶼さんが言ってた2ヶ月で柱になれるっていう……」

 

「ううん、そうじゃないわ。その特別な訓練を受ける為の下地作りって所ね。私やしのぶ、今の柱は皆1度は受けているんじゃないかしら?」

 

「じゃああれか!? これに参加すれば俺も柱になれるのか!?」

 

「う、うーん。そう言う訳じゃなくて、継子とか、柱候補になれる訓練に参加出来る資格がもらえるって所ね」

 

「これって失敗したら除籍とかなんですか?」

 

「違うわよ? 1ヵ月ごとに参加する人もいるくらいだし、お腹に自信があるなら参加してみたらどうかしら?」

 

「「「お腹?」」」

 

「そ、お腹。柱と継子になる訓練は凄く厳しい鍛錬が中心だけど、1番大変なのはね? 6食食べる事なのよ」

 

にこにこと笑うカナエに量を食べるくらいなら大丈夫じゃないか? と判断した炭治朗と伊之助は特別な献立を望むと丸をつけたが、これが新米隊士が陥る最初の落とし穴なのだが、カナエはあえてそれを口にする事は無く、何か嫌な予感がした善逸は普通の献立希望に丸を付けて、カナエに感謝を告げてカワサキの店を後にしたのだった……。

 

 

 

 

 

炭治郎と伊之助が特別献立の方に行ってしまったので、1人でカワサキさんの店に来たんだけど……目の前の光景を見て絶句した。

 

「兄貴ッ!? なにやってるのさ!?」

 

「あん? なんだ愚図か。何って飯作ってるんだよ。ドアホ」

 

「辛辣すぎるッ!!」

 

流れるように罵倒2つにエプロンをして鉄板の前に立っているのが兄貴だと確信した。

 

「もう、弟君に意地悪しちゃ駄目よ」

 

「カナエさん。すいません」

 

「カナエさんじゃなくて俺に謝ろうよ!?」

 

「「「やかましいッ!!」」」

 

「ごめんなさいッ!!」

 

目の前にいる俺じゃなくてなんでカナエさんに謝るのさと突っ込みを入れているとあちこちからやかましいと怒鳴られ、俺は腰を90度にして謝罪の言葉を叫ぶのだった。

 

「はい、善逸君。ご飯と味噌汁ね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

先輩隊士や隠の皆に怒られたので人気の少ない、少し暑いけど鉄板の近くの机に座る事になった。

 

「あのこれだけですか?」

 

「まさか、これからよ。獪岳君、沙代ちゃんそろそろ次のお肉焼きましょうか」

 

「何にします?」

 

「んー牛肩のスライスで行きましょうか」

 

カナエさんの言葉にあちこちからおおーって言う歓声が上がり、兄貴と沙代ちゃんが鉄板の上に肉をぶちまける。

 

「ええッ!? なにこれ!?」

 

「肉の日だからお肉を沢山料理するのよ。こうやって鉄板で一気に焼いて、自分が食べたいお肉の時に取りに行くの」

 

自分で食べたい肉を取りに行く、普段運ばれてくる料理を受け取るのが普通なのに自分で取りに行くなんて珍しいと思った。

 

「はい、焼けたよー」

 

「「「沙代ちゃん、お願いしまーす!」」」

 

「はーい」

 

「おら、沙代の所ばっか並んでるんじゃねえ」

 

「「「……はい」」」

 

兄貴と沙代ちゃんが肉を配っているのを見て、俺も空の皿を手にとって列に並んだ。

 

「あ……」

 

「あ、とは何だ貴様。大体なんださっきの大声は周りの人間に迷惑だとは思わないのか? ああ、思わないから叫んだのか、この馬鹿は」

 

「すいませんしたあッ!」

 

蛇柱 伊黒小芭内様が普通に並んでいて、謝罪の言葉を叫ぶ。なんで柱がここにいるんだよ!?

 

「うるさいなあ? 何を騒いでいるのさ?」

 

「無一郎。口にタレをつけたまま行くな、柱としての尊厳を保て」

 

「良いよ、兄さんが拭いてくれるから」

 

なんで霞柱の時透無一郎様とその兄貴までいるかなあッ!? ショックが大きすぎて叫びそうになるのを堪えるので必死だった。二人が受け取って列を抜けるまで、びくびくとして過ごし、2人がいなくなってから俺もやっと鉄板の前に立つ事が出来た。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう! 沙代ちゃん!」

 

運よく沙代ちゃんから料理を受け取ることが出来たので皿を手にして机の方に戻る。

 

「いただきまーす」

 

手を合わせてそう言ってから焼肉を箸で掴んで頬張る。

 

「んんー♪ 美味しいッ!」

 

牛肉だから少し固いけど、その歯応えがちょうどいい。それに味噌を使ったタレが良く絡んでいて、食欲をそそる味がする。

 

「これだけで飯何杯も食べれそうッ!」

 

あんまり脂っぽくなくて赤味肉で食べやすい、肉一切れだけで白米を半分くらいかっ込んでしまった。

 

「肉の日って良いなあッ!」

 

いつも美味しい食事を食べさせてくれるけど、こうやって外でわいわいと食べると余計に美味く感じる。机の上に置かれている御櫃にお代わりをよそいに行こうとすると隠が1人近づいてきた。

 

「お代わりするのはいいけどよ。1品だけでいいのか?」

 

「え?」

 

「あーお前肉の日は初めてか、カナエさんの話を聞いてなかったのか? まずは牛肩肉って」

 

た、確かにそう言っていたのを思い出した。そして白米を食べたそうにしているのに、肉だけを食べている隊士達の姿を見て、漸く俺は何を言われているのか理解した。

 

「ま、まさかまだ全然料理が出てくるの?」

 

「当たり前だ。今は牛って言ってたから、次は鶏肉だな」

 

「嘘ッ!? 鶏肉もあるの!?」

 

「豚肉もあるぞ? ま、とにかく食べる順番とかは良く考えるといいぜ。ご馳走様、また肉の日に来ます」

 

カナエさんに頭を下げて帰っていく隠。俺はご飯をお椀によそい席に戻る。

 

「次は鶏腿肉のみそ焼きを焼くからねー、言っておくけど残すのは駄目だからちゃんと食べきれる量を食べてねー」

 

カナエさんはにこにこと笑っているが、残すのは許さないという凄みを感じた。

 

「と、とりあえずまだ食べられるから、先に鶏肉を取りに行こう」

 

俺はまだ来たばかりで全然食べれるから残す事はない。だから鶏肉の味噌焼きを受け取りに並んだのだが、この後も帆立や魚のソテーなどと続いて、どれもこれも食べたいと思ってしまい、肉の日は食べる順番と自分の胃袋の許容量を知ることが大事なのだと悟るのだった。

 

 

 

 

机の上に少量だが、いろんな種類の肉を集め、少しずつタレ等を変えながら味や食感を楽しむ。

 

「伊黒さんはあんまりあっちのほうに行かないよね?」

 

「食いきれないからな」

 

杏寿郎達が食べている方が肉も料理の種類も多いが、あれは身体を作るという目的で食べているので少量しか食べれない俺が行くのはお門違いだ。

 

「僕も全然食べられないんですよね」

 

「柱になるって言う時は頑張って食べてたんですけどね」

 

「判る。俺もそうだった」

 

2ヶ月で柱になれるというカワサキさんの鍛錬で1番苦しかったのは6食食べる事だった。良質な肉と米を食べ、食べた分全てを消費するほどにきつい鍛錬を行なう。柱になると言う熱意があって耐えられたが、それが無くなると無理に食べると言うのはどうしても無理になってしまった。

 

「美味しいんですけどね」

 

「めちゃくちゃ美味いけど、やっぱり適量ってあると思うんです」

 

「ああ。俺もそう思う」

 

美味いが食べられる量というのはやはり限界がある。少量でも食べる量を良く考えて、適切な量を食べれば身体は強くなると言うのだから俺や無一郎達はそういう方が向いているのだろう。

 

「塩焼きの鶏肉は焼き鳥のときとは全然違いますよね」

 

「ああ、ぱりぱりでもっと美味いな」

 

肉を焼く、ただそれだけでも奥が驚くほどに深い。流石にカワサキさんほどでは無いが、カナエ達もかなり料理の腕前が上がっている。

 

(しかし美味い。驚きだな)

 

同じ肉でも塩味、味噌味などで焼き加減が異なる。豚肉もしっかりと焼かれ脂が抜け落ちている物とタレを絡めて脂を残しながら焼き上げられた物では味も食感も異なるから本当に不思議だ。

 

「こら、もっと綺麗に食べろ」

 

「おいひい」

 

……有一郎が甘やかすから無一郎が馬鹿な事をするんじゃないだろうか? 俺が言うのもなんだが、無一郎は有一郎に酷く執着している。それがこの甘えた行動に繋がっているのだろう。

 

(この兄弟は大丈夫か?)

 

有一郎は普通に弟の世話をしているが、弟の無一郎のほうにはその瞳に情欲の炎が宿っている気がする。俺はそんな事を考えながら野菜に肉を包んで頬張る。

 

「うむ、食べやすい」

 

肉単体で食べるよりも野菜の水分が肉をさっぱりと食べさせてくれる。俺としてはタレを付けて、こうやって野菜と一緒に食べるほうが好ましい。そんな風に豚バラ、牛肩ロース、鶏腿肉のみそ焼きや塩焼きなどを少量だが、色々と食べているとカナエが小さな鉄板を運んで来てくれた。

 

「はい、伊黒君はこれでおしまいよね」

 

「ありがとうございます」

 

もやしと玉葱をピリ辛のタレで合えて、白米と共にこんがりと焦げ目がつくまで炒めたそれは焼肉の最後に食べるのが好ましい。

 

「うえー、僕それ辛いから嫌い」

 

「こら人が食べている物にうえーとか言うんじゃない」

 

有一郎に頭を叩かれているのに、それを嬉しそうにしている無一郎は本当に危ない奴のように思える。だがこれを指摘しても、有一郎はそれを信じないだろう。兄弟の絆という物はとても強い、だがそれは下手をすれば憎み合う関係にもなりかねないし、無一郎のように性別などお構いなしに己の愛を押し付けようとするだろう。

 

(結局の所は人の心は御せ無いということか)

 

俺も甘露寺を愛してしまった。自分が罪人である事、穢れた存在であると言うことは判っている。それでも愛してしまえば、この人と共にありたいと思えば、そんな事は些細なことになってしまう。

 

(だから無一郎と有一郎はこれでいいんだろう。うん)

 

下手に突っ込むと己の命が危ない。絶対に触れてはいけない物というものがある、柱として活動しているから判る。無一郎に下手に触れてはいけないのだと、それは以前カワサキさんが言っていた危険な良家のお嬢様に通ずる物があると思う。

 

「兄さんも食べなよ。美味しいよ?」

 

「ああ、貰おう」

 

自分の食べかけを当然のように有一郎に差し出すのを見て、俺はそれを心から悟るのと同時に、俺が甘露寺に向けている感情はまだ健全なのでは? と思った。

 

(どうだろうか……甘露寺は俺の事をどう思ってくれているのだろうか?)

 

カワサキさんは脈ありと言っていたが、どうなんだろうか? 甘露寺は俺の事をよく食事に誘ってくれるし、休暇の時は一緒に出かけようと声を掛けてくれる。

 

(好かれていない訳ではないと思うのだが……)

 

甘露寺は誰にも等しく、優しく声を掛けてくれる。俺の勘違いだったらきっと俺は立ち直れなくなると思う……無一郎のように自分の思いを貫き通す信念があれば大丈夫なのだろうか? やはり今度カワサキさんに相談しようと思い、俺は有一郎にべたべたとくっついている無一郎を見ないようにしながらビビンバを口にするのだった……。

 

 

 

メニュー31 焼肉の日 その2へ続く

 

 




今回の話は短め、次回の柱サイドが焼肉の話のメインになります。なので今回は少しさっぱりとした描写となってしまいましたね。その分次回はもっと肉の描写とかをカワサキさんがいるので気合を入れて書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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